魔法少女ルカ 第十三話「炭素冷却と魔法少女」

作:シャドウ


「ねぇ、そこのお姉さん」

「え? 私ですか?」


街中で、一人の少年が二十歳くらいの女性に声を掛ける。


「僕の糧になってみる?」

「え……?」


女性は突然、母性をくすぐられたように甘い顔になる。


「ええ、いいわよ。ふにふに〜」

「ちょ、ほっぺた突っつかないで……じゃ、ついて来てよ」


少年はちょっとペースを乱されながらも、女性を連れて行く。


そして…


「ここに入ればいいの?」

「うん。お願い」


女性がなにやら怪しげなケースに入ると、突然ガスが噴き出して……

見事なまでのカーボンフリーズが完成いたしました。


「……やれやれ。演技とはいえ……疲れるんだよなぁ……」


この少年……ウォールは魔族界十幹部の一人。

魅了魔法をかけて、女性を自分の隠れ家に連れ込み、カーボンフリーズさせてしまう。

これだけを見れば、この作品においては普通の魔族にも見えるが…。


「オイコラァ! 人の女になにしとんじゃあ!」


どうやら先ほど固めた女性には彼氏がついていたようで……。

しかも、かなりワルの……。


「うるさい。」


ただ一言。ウォールがその言葉を言った瞬間と、自分の手からカーボンガスを発射させたのはほぼ同時だった。


「美しくないね……」


ウォールが指パッチンをすると、ワルの彼氏は砂というよりかは炭になっていき、後には元のカーボンだけが残った。

それをなんと、粉薬を飲むかのように飲んでしまいました。


「悪く思うなよ。材料として他の女性に吹き付けてやるからさ」


ウォールは十幹部一、こういう事をしても気にならないのです……。

一言で言えば……「残酷で無邪気」……

ん? 邪気出まくりなのに無邪気っておかしくない?



魔法少女ルカ 第十三話「炭素冷却と魔法少女」



魔法少女ルカこと、糸川 瑠花は極めて普通の女子中学生である。

しかし、魔法少女になってからは多忙の毎日を送っている。


『学校のお友達と色々と遊びたいのは分かりますが……ごめんなさい、瑠花』

「いいの。その友達が奴らに取られるのを、未然に防ぐのが私たちの役目なんだから」


夕方の町並みで、瑠花はウォールの姿を見つける。


「あの子……!」

『魔族のようですね……それも……十幹部の』


ウォールは女性に話しかけると、自分の隠れ家へ連れて行った……。

その隠れ家の前で、瑠花は変身しウォールに見つからないように、その行動を見る。


『あのガスは……炭素と冷凍ガスを、同時に噴射しているみたいですね……』

「でもどうして、板にする必要があるの……?」

『見せしめでしょうね……』

「許せない……! そこの魔族!!」


ルカは怒りを抑えきれず、ついに飛び出した!


「おやおや。魔法少女か。やっと来たと言う感じだけど」

「今すぐに、固めた人たちを元に戻しなさい!!」

「無茶言うねぇ。僕らは生きるために仕方なしにやってるんだ。人間は良い餌だよ、本当に」

「人間は……あなたの餌じゃない!!」


ルカは魔法剣で衝撃波を次々と作り出し、ウォールへ攻撃する。

だがまるで効いた様子はない。


「たいした事ないな」

「まだまだ!」


再び、衝撃波を連続で発生させるルカ。

ところが発生させたうちの一つが別の方向に行ってしまった。

その先には、怪しいケースもといカーボンフリーズ装置がある…。


「おっと!!」


ウォールはわざと自分の体で攻撃を受け止める。

やはり効いた様子はない。


「壊さないでよ。これ高いんだぞ」

「え、いくら?」

『聞いてる場合ですか!』

「今度はこっちの番だ!」


ウォールはルカに肉薄し、いつも女性たちを誘うあの台詞を言った。


「僕の糧になってみる?」


しかし……。


「なりません!!」

「うそっ!?」


ウォールの魅了魔法は効果なし。それもそのはず。

「僕の糧になってみる?」という言葉で発動する魅了魔法は、年上にしか効果がない。

彼自身の年齢は14歳。ルカと一緒である。

つまり、ルカに対しては魅了魔法で魅了し、装置の中に入れるというコンボは成立しないのだ。


「なら、こうだ!!」


ウォールは再びルカに肉薄、左腕を掴むと壁に押し付け……その腕を壁に埋め込んでしまった!


「え!?」

「もう一つ!!」


右腕に持っていた剣を払いのけ、右腕も壁に埋め込んでしまう!


「う……く……」

「何とかなったな……おー、疲れた。さてと……」


ウォールは続いて、ルカの両足も壁に埋め込み、ルカは完全に拘束されてしまった。


「まったく。人間は僕らの餌なんだよ。だからおとなしく食われちまえって」


プシュー……


手から例のガスを出して、ルカの体をカーボンフリーズさせていくウォール。


「……そうか」

「あ?」


ルカの不意をついた一言にあきれた声を出すウォール。


「あなたの弱点は……そこっ!!」


魔法剣が宙を飛ぶと、カーボンフリーズ装置へと一直線に向かっていく!


「わーっ!!! やめろー!!!」


やめろと言われてやめる人などそうそういない。

ルカの魔法剣はカーボンフリーズ装置を破壊する!!

と、同時に、ウォールが光の粒となって消えていく…。


「何で分かった……あの装置が僕の本体だと……」


ウォールの敗北で壁から抜け出したルカは言う。


「あなたに攻撃が効かないのは何でか? って考えたのと、装置を自分の身を呈してまで庇った事から」

「くっそう……でもいいさ。他の三人は固められたらしいからな……」

「え!?」

「お前の仲間達……3人とも他の幹部に倒されたんだよ。今頃第二作戦に移行して、この街の中心部から魔族界に送るつもりだろうがな」

「そんな……!」

「止めれる物なら止めてみろよ……」


そう言って、ウォールは消えた。


「行くしかない!」


仲間を助けるためルカは単身、街の中心部へと向かう。

果たして……そこに待ち受けるものとは?

続く


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