魔法少女ルカ 第十一話「人形と魔法少女」

作:シャドウ


『ここが気持ち良いの?』

「ぐっ!」

『やっぱりあなたは、データどおりの反応を見せてくれるわ。』

「や…やめ…。」

『何言ってるの? 私と同じエッチな反応をする体してるくせに。笑わせますわ。』

「やめてぇぇぇぇぇ!!」



ガバッ!!


「ゆ…夢…。」


魔法少女シュリこと雁舞 朱里はジェリーに敗れてから今日まで、ずっとこの悪夢に悩まされていた。

「コランダム、ジェリー、自分の堕落した姿の幻影に体を散々弄られ続ける」

あの時のジェリーの恨みは今も朱里の中で、生き続けているのだ…。


「どうして…どうして私の体は…あんなひどい事を覚えているのです…?」



魔法少女ルカ 第十一話「人形と魔法少女」



朱里の通う学校は、北区の弦撫学園と並ぶお嬢様学校:峰桜女学院(ほうおうじょがくいん)だ。

ちなみにこの女学院には「タイがまがっているわよ」等を言う生徒は存在しない。


悪夢のせいでちょっぴり憂鬱な朱里は、南区に最近来たというサーカスに行くことにした。

ところが、見ていて朱里はおかしなことに気づいた…。


「ん…?」


思わず客席のほうに目が向き、おかしなこと…違和感の正体が分かった。


「(小さな子が一人もいない…?)」


あなたがサーカスを最後に見たのはいつだろうか?

大人になっていく人もいるが、大抵は子供の頃に家族連れで連れてこられたはずだ。

朱里もサーカスはかなり前に行ったきりで、今日来たのも気分を少しは晴らすためのものだった。


(おかしい…。たしか入り口で何人かの子供とすれ違ったはず。)


客席はほぼ満員だが、見渡せばそれが子供か大人かの区別がつく。

なのに、客席にいる子供は朱里一人だった。


(…まさか…奴らの仕業?)


公演が終わると、朱里は人気の無いところでルビーのブローチの前で十字を切った。

朱里が魔法少女シュリに変身する。


『アタイも気になってたよ。…シュリ、大丈夫か?』

「…私みたいなことをされてる人が、何も出来ないままなんて悲しいから…! 私は…絶対に負けませんわ!」

『…シュリ。アタイはシュリのこと信じてるよ。』

「じゃ、行きますわ!」


シュリはマントをかぶると、サーカスのテントの裏口に回った。

ちなみにこのマントは、シュリの姿を消してくれる重要な役目を持っている。


「♪♪♪〜」


裏口では、荷物整理をしていたピエロがいた。

しかし、その裏口でシュリはとんでもない物を見てしまう!


(あれは…!!!)


それは人形だった。

よくある1/8フィギュアとかいったものではない。

人間サイズの人形だった。

マネキンかと思えば、間接まできれいに作られている。

…しかしシュリはこの人形が、魔族に変えられた哀れな被害者であるのだと悟った。


「タスケテ」「たすけて」「助けて」…


シュリは耳をふさぎたくなった。

魔族によって無機物に変えられた者の波動をシュリは感じる事が出来る。

そしてその波動はシュリの頭の中で声に変わる。

150以上はあろうかという人形がすべて「助けて」と言っているのだ。


(待ってて…あなた達を…私が開放してみせますから…!)

『シュリ。どうやらあのピエロが魔族らしいな。』

(なら…すぐにでもカタをつけてあげます!)


マントの力を消し、姿を現すシュリ。

その手にはすでに愛用の銃であるマシンガンがあった。


「ピエロの魔族! このような行い、許しませんわ!!」

「…おっと…。魔法少女のご登場か…意外と早かったな。」


銃を構えるシュリに向かってこの余裕。

ピエロの魔族…パペターは表情を変えずにつぶやく。
(だがピエロペイントなので表情の変化はわかりにくい)


「今日はもう公演は終了したんだ。明日また来てくれ。」

「いいえ。今日があなたの最後の日ですわ。」

『覚悟しやがれい!』

「…仕方ねえなぁ…。」


パペターは「ぐっ」と力を入れると大ジャンプ!

シュリの後ろへと降り立ち、そのままダッシュして逃げ出す!


「待ちなさいっ!!」


追いかけるシュリ。

パペターがいたのは、サーカスのステージ上…。


「クックック。ショータイムだぜ…!」

「いきますわ!」


銃口を向けるシュリの前に、一体の人形が立ちふさがった。


「おやいいのか? その銃を撃てばその人形が傷つく。元に戻ったときにそのガキはどうなるかな…?」

「ひ、卑怯者!!」

「クックック。ではこちらから攻撃させてもらおうか…!」


シュリの周りに人形たちが次々と出現する。

次々と張り付き、シュリを拘束する…。


「くっ…。」

「言っておくが、それも元はお前と同じ人間だぜ。ガキを人形にするのは魔力をそんなに消費しないですむからな。」

「卑怯者!! この子達に罪は無いのに…!!」

「だが俺達、魔族には罪の意識など無い。こうしないと生きる事が出来ないからな。猫が鳥や鼠を捕るのと同じ理屈だぜ。」

「………っ!」


振りほどこうとするシュリだが、その拘束は強く簡単に振りほどけるものではなかった…。


「さて…。お? お前、ジェリーに宝石にされたのか。こりゃいいや。クックック。」

「な、何を…!?」

「お前の心の中をのぞかしてもらってんだよ。ガキは無邪気だからすぐに人形に出来るが、
 少し成長すると相手の心を不安定にしなきゃならねぇ。」

「!?」

「お前は忘れたいんだろ? 忌まわしい記憶を。」

「…私は…。」

「楽になっちまえよ。」

「私は…忘れたい…。」


シュリの瞳は虚ろな瞳に変わっていった…。


「そうだろ? それが正常だぜ。」

「そう…ですね…。」

「お前は正常だろ?」

「私は…正常です…。」

「ところで、お前は何だっけ?」

「私は…パペター様の人形…。」


ガクン…


シュリの体は既に人形に変わっていた。

無機質な瞳。造られたような肌の色。

彼女は忌まわしい記憶を消すのと引き換えに、人で無くなってしまった…。


「…さて、他の奴らはどうなったかね。クックック。」


人形たちを元の位置に戻しながら、パペターは呟いた。


「魔法少女の近くで事件を起こし、4人を分断させて固め、最後には”王”の元へと送る…。
 クックック。さすがだぜメイズ。最高の計画だぜ!」


恐ろしい策…。
ルカ、ヤコはこの魔の手から逃れられるのか?

続く


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