作:Rui
剣を構え対峙するフィーナとセニア
「…行くよ。」
そう言うと動くフィーナ
そのまま正面からセニアに対し斬りかかる
それを受け止めるセニア
「正面からなんて、単純ね。」
「…正面以外から、行く気になれなかっただけよ。」
フィーナの言葉に疑問を持つセニア
剣を弾き互いに向かい合う
「…どう言う意味?」
「…貴女を、他人とは思えないの。」
そう言うと剣を納め銀装を解くフィーナ
「ふ、ふざけるな―――!!!」
そう言うとフィーナに対し突っ込むセニア
避けようともせず、微笑むフィーナ
その影響か、セニアの剣はフィーナの頬を掠っただけ
「…心の奥底では、解ってる筈よ。貴女も。」
「嘘よ嘘よ嘘よ―――!!!」
そう言うと一度剣を引きフィーナを突き刺すセニア
一瞬何が起きたか理解出来なかったフィーナ
だがそれは吐血によって判明した
「…。」
腹に刺さった剣を見ながら微笑むフィーナ
「…何故、何故この状況で笑えるの?」
「…来たれ。神のイカヅチよ。」
その詠唱に反応するセニア
「我が盟約の元に敵を討たん。」
「は、離せ!」
「…トールハンマー。」
そう言うと辺り一体が雷光に包まれる
それを感知し、バリアを貼る唯・聖・カヤキス
しばらくして光が収まると大きなクレーターが出来ていた
その中心部には倒れているフィーナと
呆然と立ち尽くすセニアの姿があった
「…何で?何で自分で受けるのよ。あのまま私に、当てれば良かったのに。」
そう言いながら涙するセニア
「…汝よ、悲しむな。」
その言葉に驚くセニア
ふと起き上がるフィーナ
「…貴女は、誰?」
ふと口を開くセニア
「私はロプト。彼女、フィーナと魂を共有する者よ。名前くらいは、聞いた事がある筈よ。」
「…暗黒竜ロプトウス。」
「正解。」
「ロプト。」
ふとロプトを呼ぶ声がする
声のした方を向くロプト
「あら、誰かと思えば光の者。何か用?」
「フィーナは?フィーナはどうなったの?」
「傷がヒドイから中に。当分は私が出ている状態になるわ。
けど安心しなさい。悪い事はしないから。」
「本当に?」
「えぇ。それに私が倒れたら出て来るのはメデューだし。」
その名前にピンと来る唯
「…成る程。解ったわ。さてセニア。貴女、これからどうするの?」
「…彼女の、フィーナの力になりたい。私は、フィーナの半神だから。」
「…神族、なのね。」
唯の言葉に頷くセニア
「…セニア。詳しい事は私の家で話すわ。聖・カヤキス。引き上げるわよ。」
そう言うとそこから去る唯達
水月邸
ロビー
ドアを開けロビーへと入る唯達
「唯様。それにフェルミナも。」
「ルイ。只今。お茶の用意、良いかしら?」
「はい。」
そう言うと奥へ去って行くルイ
「座って。」
そう言うとソファーに座る唯達
「さて、セニア。貴女、純粋な雷神トールの生まれ変わりでしょ?」
「はい。セニア=トール=フリージ。これが私の本名です。」
「フリージ。…んでセニア、貴女の目的は?」
「力を受け継いだ者の吸収。けど、彼女なら、与えても良い。そう、思った。」
セニアの言葉に静まりかえるロビー
「でもそれは、私自身の消滅を意味する事。力は、与えた者に残るけど、私は…。」
「…セニア。貴女自身で決めなさい。後悔の無いように。」
そう言うと席を立つ唯
「一晩、ゆっくり考えなさい。」
そう言うとロビーから去って行く唯
「…変わらないな。」
そう呟く聖
「…確かに。」
それに答えるカヤキス
深夜
ロビー
1人ソファーに座り考えるセニア
「何悩んでるのかしら?」
ふとセニアに声を掛ける女性
「…貴女は確か。」
「朱悠秋華よ。でもここではフェルミナで良いわ。」
「あっ、はい。」
「んで、何悩んでるの?フィーナの事?」
フェルミナの言葉に頷くセニア
「…セニア、唯も言ってたと思うけど、後悔はしないでね。
自分自身で、決めるのよ。…私も、そうだったから。」
「えっ?」
フェルミナの言葉に驚くセニア
「魔界の王。それでも良かった。けど、私はここの事が忘れられなかった。」
「…それで、戻って来たんですか。地位まで捨てて。」
「…えぇ。だから後悔は絶対しないで。お願い。…おやすみ。」
そう言うとそこから去って行くフェルミナ
「…後悔は絶対するな、ですか。」
そう言いながらソファーに寄りかかるセニア
そして、朝を迎える
水月邸から移動し、朝早い羽咲中央公園に、唯達の姿があった
「セニア、決意は、ついた?」
唯の言葉に頷くセニア
「そう。それじゃあ、その答えを、私に教えて。」
「…はい。私の出した答えは―――。」
続く
次回予告
自らの所為でフィーナを傷付けてしまったセニア
雷神トールでもある彼女が取った決断とは?
そして、水月邸には波乱を呼ぶ訪問者が
次回第6節「セニアの決断〜想いは永遠也〜」