Silver Fairy 第2章 第11節「姉妹」

作:Rui


公園の中央から少し離れた所
そこにはルイとフィリスが向かい合っていた

「ルイ、その身体、どうしたの?」
ふいに口を開くフィリス
「フィリス姉さん、貴女にやられて、死の境界線を彷徨っていたんです。
そして、水月邸の医療班と、唯様の力でこのサイボーグの身体に生まれ変わったんです。」
「…そうか、私のせいか。…ルイ、あの方に忠誠を誓えば元の身体に戻してくれるわ。
だから、私と一緒にいらっしゃい。」
フィリスの言葉に無言で立ち尽くすルイ
「フィリス姉さん、その申し出は、お断りします。私の主は、
後にも先にも、水月唯只1人だけです。」
その言葉に溜息をつくフィリス
「そう。なら貴女を敵と見るわ。手加減は、しない!」
そう言うと一気に魔法力を開放するフィリス
「…私もです。」
そう言うと、一気に空中に飛び上がる2人
「「ヴァーレンティア!!」」
そう言うと光弾がぶつかりあい爆発が起きる
爆煙の中から飛び出しそして同時に詠唱に入る2人
「17の精霊よ。我が名の元に来たりて敵を討て!」
先にルイが
「34の闇に生きる精霊よ。イシュヴァールの名の元に我が敵を貫け!」
後にフィリスが
詠唱が同時に終わり、それぞれ魔法を発射出来る状態になった
「エヴァーシング!!!」
「フォルズゲイン!!!」
エヴォーシングを討つルイと
フォルスゲインを討つフィリス
2人の魔法がぶつかりあい
巨大な場が形成される
その場の中で共に魔法を打ち合う2人
2人の頭の中には、
思い出が蘇っていた

―――――昔日

「フィリス姉様。アリス様がいらっしゃったのですか?」
「フィリア。えぇ、近々他の部族が攻め込んで来るそうよ。」
「それは大変ですね。戦の準備をしなければいけませんね。」
フィリアの言葉に頷くフィリス
「えぇ。民に戦の準備をさせとくわ。フィリア、貴女は女性や子供達をお願い。」
「はい。」

それから3日後

アルフェイト一族の集落

「フィリス姉さん、敵は魔獣族のようです。」
「魔獣族。手強いわね。クリス、アリス様を頼みます。フィリア、出陣するわよ。」
「はい、姉様。」
そう言うと部屋を出て行く2人
部屋の中にはクリスとアリスが残った

アルフェイト族陣営

台の上に立ち、口を開くフィリス
「アルフェイトの民よ。魔獣達が侵攻してきた。
この戦い、私達は負ける訳にはいかない。皆よ、共に戦い、そして、勝利を我が手に。」
その言葉の後歓声が沸きあがる

魔獣陣営

「夜叉様。」
「リース、相手陣営はどう?」
「はい。敵は団結力があり、我が軍では苦戦を強いられると…。」
その言葉に笑みを浮かべる夜叉
「夜叉様?」
「私が道を開く。機会を見て突撃命令を出しなさい。良いわね?リース。」
「解りました。」

アルフェイト陣営

「フィリス様。敵将が1人で突っ込んで来ます!」
「殺せ!」
「ハッ!」

突撃する夜叉目掛け矢が飛んでくる
それをことごとく手に持った炎槍ヴォルケスで薙ぎ払う夜叉
「甘い甘い甘い!」
そう言うと門を突破する夜叉

それを遠くから見ていたリースが
突撃命令を出す

壁の上に上り弓兵を倒していく夜叉
「待ちなさい!」
呼び止める声がして、振り返る夜叉
そこに立っていたのは、フィリアだった
「私はフィリア=イシュヴァール。魔獣王夜叉。お相手願えますか?」
そう言うと剣を構えるフィリア
それに応えるように、ヴォルケスを構える夜叉

アルフェイト族の神殿

「クリス、戦況はどうなっているの?」
不意に口を開くアリス
「少し押されていますね。私が参戦すれば直ぐに決着がつきますけど、
それはあまりしたくないですから。」
「では私達はここで負けるの?」
「…女神アリス、死なせたくない人は、居る?」
「…イシュヴァ―ルの姉妹。」
そう呟くアリス
「解ったわ。」
そう言うとアリスの頭に手をかざすクリス
「解放するわ。」

一進一退の攻防を繰り広げるフィリアと夜叉
不意にそこに乱入するフィリス
「フィリア―!!!」
そう言いながら乱入すると夜叉相手に牽制をし
フィリアの横に付く
「姉さん、なんで来たんですか?」
「大事な妹を、死なせたくないからよ。」
そう言った直後
神殿の方から光の柱が空へと伸びる
「何?…アリス様!」
そう言うと神殿の方へ駆け出すフィリス
それを止めるフィリア
「フィリア、止めないで!」
「間に合いませんよ、姉さん!」
「でも、私は行かなきゃ!」
そう言った直後その場にクリスが現れる
「夜叉、撤退なさい。」
そう言うとフィリスとフィリアを連れてその場からワープするクリス

集落が見渡せる丘

「神殿が…。」
呆然となるフィリス
「クリス、何をしたんですか?」
フィリアがクリスに尋ねる
「彼女の中に眠る力を解放させただけよ。」
その言葉に振り返るクリスに突っかかるフィリス
「解放させた。アリス様の力を解放させたのか?」
「えぇ。」
その言葉に手を放しその場から去るフィリス
「クリス!…貴女は必ず私が倒す!」
そう言うと姿を消すフィリス
「姉さん。クリス、一体何をしたのですか?」
「…力の解放よ。それに伴い……。」

再び羽咲中央公園

魔法を打ちつつルイの頭の中に、あの時のクリスの言葉が出て来た
「…(成る程、姉さんはそれに気付いていた。だから…。)」
そう心の中で言うと、魔法の放出を止めるルイ
それに気付くフィリス
「!! フィリア!!!」
フィリスのフォルスゲインが、ルイを直撃する
「フィリア―――!!!」
フォルスゲインの軌道が消え姿を表すルイ
そして、そのまま倒れ込む
倒れ込むルイに駆け寄るフィリス
倒れたルイを抱きかかえるフィリス
「フィリア、何故魔法の放出を止めたの?」
「…あの時、姉さんが何故去ったのかが、解ったからです。」
「それだけの理由で…。バカ。」
「…泣いて、いるんですか?姉さん。」
「泣いてなんか、ないわよ。」
「そうですか。……姉さん、唯様を、許して下さい。
あの時、あぁしなければ、アルフェイトは全滅してたそうです。だから。」
「…解った。彼女を許す。そして、力になるわ。」
「…ありがとう御座います、姉さん。」
己の身をていし、姉フィリスと和解したルイ

ルイとフィリスの戦闘が始まったのと同時刻
唯と、フィーナの戦いも、始まろうとしてた…。

続く

次回予告
ロプトウスは封印しなければいけない
それを出来るのは、銀装を持つ者と、
4人のエレメンタルフェアリーだけ
その為なら私は、何でもする
次回最終節「始まりへ続く終わり〜銀装妖精〜」
フィーナ、応えて。

つづく


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