夜明け前より瑠璃色な〜石化した月の王女〜 第2話

作:七月


そこには2人の少女が立っていた。
少女達が立つのは直径4〜5メートル円盤だ。少女達の頭上は美しい彫刻の刻まれた円蓋に覆われており、円盤から少し離れたところには無数の石柱が円盤を取り囲むように並んでいた。そして、その石柱の合間からはどこまでも続く星の海がみえた。
まるで宇宙に浮かぶ建造物――――
そこは、「ターミナル」と呼ばれる施設であった。
「さてと、これからどうするか・・・」
そして、そこにいる二人のうち、小柄な少女が言った。金色の髪に紅い瞳。フィアッカ・マルグリットだ。今のフィアッカはリースの着ていた服から着替えており、短めの白いスカートに、肩や胸元を露出させた、動き回る事に適したフィアッカ本来の衣装を身にまとっていた。
「とりあえずここに運んだのはいいが・・・」
「あの・・・お姉ちゃん?」
「ん・・なんだ?シア。」
フィアッカにシアと呼ばれた、フィアッカ同様の金色の髪を後ろで束ねた月人の少女。彼女はフィアッカの2つ下の妹でこのターミナルの管理者であるシンシア・マルグリットだった。
「どうしてお姉ちゃんがここに居るのよーっ!!」
シンシアは叫んだ。
「別にいいだろう。姉が妹に会いに来るぐらい。」
「それはうれしいけど、そう言う問題じゃないの!」
なおもシンシアはまくし立てる。
「ここはいくらお姉ちゃんとはいえ、簡単に入れるような場所じゃないでしょ!?
どうやってここに来たのよ!?」
ここ、ターミナルは空間跳躍技術(いわゆるテレポーテーション)の中核を担う施設である。
ターミナルには他のすべての時空とは別の空間にあるため、通常なら出入りなど出来るはずも無いのだが・・・
「しらん、気づいたらここに居たんだ。」
しれっと言うフィアッカ。
「そして何時の間にかこんなものがポケットに。」
「デバイスーっ!?」
フィアッカが服の中から取り出したのは小さな円盤状の機械。このターミナルに来るために必要な装置であるデバイスだった。
「な・・なんでそんなところにデバイスがー???」
「ふむ・・作者の陰謀だな・・・」
うろたえる妹と無駄に冷静な姉だった。
「まあそんなことはどうでもいい。」
ついでに姉は切り替えも早かった。
「シア、しばらくここを使わせてもらいたいんだがいいか?」
「はぁ〜・・・、一体何に?」
ため息をつきながら答えるシンシア。彼女はもう何かをあきらめたようだった。
「まあ、“アレ”のことなんだが・・・」
「やっぱり“アレ”・・・か・・」
フィアッカとシンシアは同時に“アレ”の方を向いた。
そこにあったのは2つの石像だった。
月の王女、フィーナ・ファム・アーシュライトの石像。
そして司祭のエステル・フリージアの石像だった。
石化している彼女達は相も変わらず同じポースのまま微動だにしていなかったが、ただ一点大きく全開と異なっているところがあった。それは・・
「ねえ、お姉ちゃん。」
「なんだ、シア?」
「どうしてフィーナさんたち裸なの?」



「いや話せば長くなるんだが・・・」
フィアッカが事の次第について語りだした。
「まず<中略>というわけでフィーナとエステルが石化したとこまでは話したな。」
「うん・・まあ・・・」
「それで、二人の石像の隠し場所として、時間の流れと隔絶されているここが良いと、私は考えたんだ。」
「まあ確かにね・・・」
ここ、ターミナルは他のすべての時空とは別の空間にあると同時に、時間の進行がない。
そのためここでいくら時を過ごそうと元の世界で時が過ぎる事は無いのだ。
「それでここに跳躍する時に・・・その・・だな・・・。」
どうやら空間跳躍するときに不都合があったらしい。
空間跳躍の際に最も重要な事はイメージ、そして縁だ。空間跳躍の手順としては、自分がまったく別の場所にいることをイメージする。そしてその場所に縁をたどって跳躍するのだ。
ターミナルには常にシンシアが居るので姉妹であるフィアッカとの間の縁については申し分ないだろう。とすればあとはイメージに問題があったのか?
「ああ、私と・・あとフィーナとエステルの石像がここに跳ぶイメージをしたときに変な雑念が頭に中に入って来てな・・・。その雑念の中ではなぜかフィーナとエステルが裸で固まっていたんだ。そしてそんな雑念のせいでフィーナとエステルは服だけ元の世界に残して体だけターミナルに跳んできてしまったんだ・・・」
「ま・・まさかその雑念って・・・」
コクリとフィアッカが頷きながら言う。
「作者の趣味的雑念だな。」
「うん、作者は地割れに落っこちて死ぬといいよ♪」
ニコッと満面の笑みでシンシアが言った。



それからしばらくして・・・
「そうだ、とりあえずはシアで実験してみよう。」
「え?」
フィアッカがいきなりそんなことを言いだした。
シンシアは今、フィーナとエステルの石像を綺麗に拭き、台座の上に並べている最中だったが突然の姉の発言に思わず硬直してしまった。
「やっぱりどういう作用で石化させるのか分からないと戻し方も分からないからな。シア、ちょっと実験台になってくれ。」
「えええええっ!?」
つまりフィアッカはシンシアに石化してみてくれといっているのだ。
「駄目か・・?」
「駄目に決まってるでしょ!」
「そうか・・・」
キッとフィアッカをにらむシンシアに対し、フィアッカは悲しそうな顔で答えた。
「シアは私を信用してくれないのか・・・」
「えっ・・!」
フィアッカの意気消沈した様子に取り乱すシンシア。
「私なら石化の作用の仕方さえ分かれば絶対に皆を元に戻す方法を見つけ出せるのに・・・
シアは私を信じてはくれないのだな・・・」
「そ・・そんなこと無いよ、お姉ちゃん!お姉ちゃんのためなら石にだってなんだって・・・」
シンシアは慌てながら言うが・・・
「よし、さすがは私の妹だ。」
フィアッカはけろっとした顔でそう答えた。
「え・・・?」
「とりあえず・・・脱ぐか・・」
「え・・・?」
「ほれほれ、脱げ!シア!」
「え・・・ってちょ・・やめ・・いやああああああ」
ぽーい、ぽーいと脱がされた服が辺りに散らばっていく。
フィアッカの手によってその身包みをすべてはがされてしまったシンシアは半分涙目状態だった。
「ってまあ冗談だけどな。」
「脱がす前に行ってよ!」
シンシアはその柔らかな、ふっくらした胸を両手で隠しながら、真っ赤になった顔でフィアッカを睨んだ。
「そもそも実験するのに脱ぐ必要ないじゃない!」
「それはまあ・・・読者サービスだ。」
「本音は?」
「作者の趣味。」
「作者は隕石に頭ぶつけて死ねええええええええええっ!」



その後
フィアッカは元の世界にこのロストテクノロジーに関する資料を探してくると言い、ターミナルを後にしていた。
「全くお姉ちゃんは・・・」
未だに全裸状態のシンシアは、フィアッカから渡された「Medusa」を手にしていた。
「とりあえずこれは危険なものみたいだから仕舞っときましょうか。」
そう言って歩き出すシンシア。だが
ズルッ
「あれ?」
先ほど脱がされた自分の服を踏ん付けてしまったらしい。足が服に捕られ、シンシアの体が前に傾く。
「あ・・・しまった!
そしてシンシアが持っていた「Medusa」がその手から滑り落ちる。
ガシャーンとケースの割れる音。それと同時に本能のままに動き出す「Medusa」。
「あいたたたた・・」
と転んだ体勢から起き上がろうとするシンシアの目の前にはすでに自立行動を開始してしまっていた「Medusa」が浮かんでいた。
「えーっと・・・これもしかしてヤバ・・・」
シンシアが言い終わる前に、カアアアアッと「Medusa」が光を放ち始めた。
「うそっ・・・あ・・・・」
発せられた光がシンシアの全身に降り注ぐ。
光を浴びたシンシアの体が一瞬で硬直し、そのまま体中の色が抜け落ちていくようにシンシアの体は灰色へと変化していった。その金色の髪も、艶の良い肌の色も、胸の先端の桃色も、一様に同じ色に染まっていく。やがて、全身から元の温かみのある色が失われ、無機的な灰色に染まった時。
シンシアは、完全な石像になってしまった。
石像となったシンシアの表情は、フィーナやエステル同様驚きに満ち溢れており、転んだ体勢から起き上がっている最中に石化してしまったため、シンシアは膝立ちの状態で固まっていた。そしてその両手は所在無さ気に宙で静止しており、シンシアの形のよい乳房は余すことなくさらけ出されるようになっていた。
シンシアを石化した「Medusa」は、そんなシンシアの石像の周囲をまるで自分が作り上げた美術品を鑑賞するかのように周り始めた。
シンシアの周囲を浮遊する「Medusa」。当然のことながら石像となったシンシアはそれに反応する事は無かった。
石化した状態のままピクリとも動く事は無い。
やがて「Medusa」はシンシアの石像に満足したかのようシンシアから離れていき、次に定めたターゲットのところへ行く為にターミナルから姿を消した。そう、フィアッカを追って・・・・
そして、ターミナルに残された石像は3体になった。フィーナ、エステル、そしてシンシアの石像だ。
ターミナルは今や彼女達を展示する美術館のような存在になってしまっていた。
満天の星々の光に照らされながら佇む石像たちは、どこまでも神秘的に見えた。



丁度そのころ
「むむっ!」
ピキィーーンと何かを、元の世界に戻っていたフィアッカは感じた。
「シア・・・まさか・・・」
妹を思う姉の力と言ったところだろうか、フィアッカは妹の異変をしっかりと感じ取っていた。
「フィーナやエステルの石像に欲情してひとり○ッチを始めたな。全くしかたないやつだ。」
はっはっはと笑うフィアッカ。
その内容は完全に的外れであったのだが。



<次回予告>
ついに魔の手は朝霧家にまで及ぶ。
そこに居合わせたのはミア、麻衣、さやか、菜月、翠。
事件に巻き込まれた5人の少女達は一人・・・また一人と石像へと姿を変えて行く・・・果たして生き残る事はできるのか?
「ほら・・麻衣ちゃんこんなに固くなって・・・」
「はあ・・・ん・・・」
そしてまさかの18禁展開突入か!?
「次回:俺の妹がこんなにかわいい!」
乞うご期待!




・・・・・・・・・・・・・・・ダウトです(* ´∀`)

つづく


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