作:七月
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・・・・・
私の頭は冷静だった。
このわけの分からない世界に飛ばされた時は動揺したりもしたがそれもすぐに収まった。
一刻も早くこの世界に順応すること。
それが生き残るためには重要であると理解できたからだ。
やがてゲームがスタートし、校舎を出発した私はすぐに一人の少女と合流した。
そしてその少女と共に森へ向いまずはそのエリアを隈なく駆け巡った。
宝箱を見つけ次第開き、私の手元にはゲーム開始してからいくばくの時間もたたないうちにたくさんの武器やアイテムが集まった。
そしてもう一つ必要だったものは偶然見つけた一人の参加者から調達することにした。
そのコレット・ブルーネルと名乗った少女を襲い、まずは武器をうばいその後に服も脱がせた。
欲しいものは手に入ったのでこの少女は用済みになった。
自分と相方の少女の生き残る確率を少しでも上げるため、私はコレットにむかい、その時奪ったばかりの武器を振るう。
コレットは悲鳴の後に石像と化した。
両膝を地面につけ、両腕は攻撃から身を守ろうとしたのか顔の前でクロスされていた。
顔は攻撃に恐怖を示した表情で片目をつぶり、かすかな悲鳴を振り絞った口は大きく開かれていた。
そして私はコレットの石像を人目のつかなそうなところへと移動させ、そこでとある作業を開始した。
先ほど手に入れたコレットの服を起用に解き、大量の糸を作りだす。
そしてこの糸と身の回りにあるもの。
石、木、武器、それら全てを使い様々なものを作り上げ、それを自分の近辺のエリアへと配置した。
こうして出来上がったのだ。
私の領域が。
ゲーム開始からいくらも時間がたっていない頃。
ちょうどティアナとフィーナが出会ったぐらいの時間帯。
アロエは森の中をさまよっていた。
赤いツインテールの髪に大きなまるでネコミミのようなリボンをした少女だ。
11歳と言う年齢相応の幼さが残る体型でだが、その体よりも一回り大きな制服を身に着けていた。
「だれか〜いませんかぁ〜」
アロエは不安そうな声でそう言いながら森の中を進む。
(やっぱり誰かを待っていればよかったかな・・・)
アロエは出発度同時に一目散にこの森へ駆け込んでしまった。
それは、先ほど教室で見た光景。
遠坂凛と呼ばれた少女がブロンズ像へと変えられてしまった光景に恐怖を覚え、とにかくあの校舎から離れたいという気持ちによるものだった。
その結果アロエは一人で森をさまようこととなる。
「うう・・・」
アロエは寂しさと不安に押しつぶされそうだった。
11歳という幼い少女が急に見ず知らずの場所に放りこまれ、しかも危険に晒されているのだ。
アロエはとにかく誰かに会いたかった。
あった人物が味方になってくれるとは限らないがそれでも一人でいるのはいやだった。
ガサリ。
「えっ。」
そんなアロエのすぐ近くの茂みの中で何かが動いた。
「もしかして・・・」
誰かいるの?とアロエは思う。
確かに茂みでは何かが動いているようで、ガサガサと茂みは揺れている。
しかし、その大きさはどう考えても人の大きさではない。
もっと小さな、例えるならばリスなどの小動物が動いているようだった。
アロエはその正体を確かめるために茂みへと近づく。
このときアロエは逃げるべきだった。
この世界に動物なんていない。
いるのは他の参加者と怪物だけなのだ。
だが、人恋しさ支配されていたいたアロエはこの茂みに近づいてしまった。
そして、アロエが確認しようとするより早く、それは動いた。
ガンッ、と木霊する銃声。
急に襲ってきた衝撃に耐えられず、尻餅をついて倒れるアロエ。
突然のことにアロエは困惑していた。
だがすぐに自分が茂みの中にいる何かに撃たれた事、そして自分の体が石になっていくことを感じ取った。
「いや・・・」
アロエの目に大粒の涙が浮かぶ。
しかし石化の進行は止まらない。
やがて石化は胸から全身へと衣服を破壊しながら広がって行く。
「いや・・あ・・・」
やがてのどが固まり、涙のたまった目も灰色に侵され焦点を失った。
アロエは尻餅をついたまま
泣き出す寸前の表情で
完全な、石像となった。
神楽坂明日菜はひたすらに森を進む。
明日菜はツインテールに纏められた髪が特徴的な、活発そうな少女だった。
そんな明日菜の表情には焦りが見られていた。
(なんなのよ!この世界は!)
明日菜は先ほどひとつの光景を見た。
それは二つの石像。
ルイズとみくるの石像だった。
(石化なんて高等魔術がここでは当たり前なんて・・・)
明日菜は石化の恐ろしさを知っている。
実際に友人を石に変えられたこともある。
自分は魔法無効化能力によってその時は事なきを得たがこの世界ではそうは行かないだろう。
(ああもう・・・!)
苛立ちを抑えながら森を進んでいく。
幸い明日菜の武器は剣であった。
普段ハリセンを武器として使っている明日菜にとっては使いやすい武器であった。
何度も闘いに巻き込まれたおかげでそれなりに戦える自信もある。
(やってやろうじゃないの!)
明日菜はこの世界のルールを認めた。
迷いを捨て去ったものは強い。
戦闘においては一瞬の迷いも致命的な隙になってしまうから・・・
そんな明日菜だからこそ反応できたのだろう。
いきなりの銃声が明日菜を襲った。
それは明日菜の胸を的確に狙って放たれており、明日菜は間一髪でそれを剣で防いだ。
明日菜は見た。銃声のした方向、茂みの向こうに深くローブを被った人物が立っていることに。
そして明日菜の行動は早かった。
即座にその人物へと駆け出す。
その間にも無数の銃弾が襲い掛かるがそれを、木を盾にすることで避けたり、剣ではじきながら進んだ。
やがてその人物が明日菜の間合いへと入る。
「もらったわ!」
明日菜の振り下ろした剣は確かににその人物に当たった。
だが、明日菜は奇妙な手ごたえを覚える。
「硬い!?」
やがて明日菜によって切り裂かれたローブが落ちるとそこにあったのは
「石像!?」
立っていたのは人ではなかった。
石像に布をかけることで人に偽装していたのだ。
しかもこの石像は明日菜の顔見知りであった。
「そんな・・のどか・・・。」
宮崎のどか、本屋と言うあだ名の少女であったものがそこには立っていた。
のどかは全裸で、その表情は決して普段のおとなしそうな柔らかなものではなく、絶望に染められて石像となっていた。
「じゃあさっきの銃弾は!?」
明日菜は見た。
自分が切り裂き、地に落ちたローブの中から確かに銃口がこちらを・・・・
ガンッ
一瞬の静寂
そして、カランと言う明日菜の武器が地に落ちた音。
パキッ、パキッと石化した衣服が壊れていく音。
「そん・・な・・」
やがて明日菜の意識は闇へと沈んでゆく。
明日菜の意識の消失と共にその場には一つの石像が出来上がった。
明日菜は、自分が敵だと思い込んだものと同じ存在へと化してしまったのだ。
明日菜の表情は明日菜の目の前ののどかと同じく絶望に打ちひしがれていた。
ガサガサと何かが去っていく音がして、その場には二つの石像が残される。
今回は魔法無効化能力は明日菜には働かなかった。
ミュリア・ティオニセスとベルフラウは何者かと交戦していた。
ちなみに、ミュリアは桃色の長い髪にとがった耳が特徴的な、その大きな胸を強調するような露出の多い衣装に身を包んだいわゆる大人の女性。
ベルフラウは輝く金色の髪に真っ赤なベレー帽を被った、まだ幼さの残る少女だ。
この二人はミュリアが一人で森をさまよっていたベルフラウに声をかけ、共に行動するようになっていた。
そんな二人が戦っている相手は未だに正体を見せず、うまい具合に茂みから茂みへと移動している。
そして、無数の銃弾をミュリアたちに放っていた。
「まずいわね・・・」
ミュリアはひとりごちる。
先ほどから相手の姿もつかめないまま、かなりの時間が経過していた。
自分はともかくベルフラウには明らかな疲労の色が見えていた。
(こうなったら)
少し無理をしてでも早々に相手を倒さなければならない。
そう思ったミュリアは茂みに向って杖を構えた。
ミュリアの武器は杖だった。しかし、これはティアのように魔法弾を発射するようなものではなく、単純に相手を殴るためのものであった。
普段は紋章術の使い手であるミュリアにとっては使い勝手の良い武器とはいえないが、それでも今はやるしかない。
「ベルフラウ、ありったけの弾丸を撃ち込みなさい!」
「はい!」
ミュリアの支持にこたえ、ベルフラウは銃を茂みに向け的確に相手の位置へ銃弾を送り出す。
相手は起用にもそれを茂みの中でかわすが反撃する余裕はなくなったようだ。
その隙にミュリアは一気に茂みへと駆け寄る。
そして大きく杖を振りかざした。
(当たった!)
ミュリアに確かな手ごたえがあった。
やがて茂みの中から相手が飛び出した。
ミュリアとベルフラウはそれを見て驚きの表情を浮かべる。
「これは・・・!?」
飛び出してきたのは一丁の拳銃だった。
ただしそれには改造と言うにはあまりに陳腐だが、手が加えられており木の枝や、小石、布などで簡単な手足が作られていた。
やがて先ほどミュリアの一撃に耐えられなかったのか、それはばらばらに壊れ、元の拳銃とその他の材料が地面に転がった。
「なんなの・・これ・・・」
ミュリア自身の思い浮かべた疑問を解決すべく、その残骸へと近づく。
しかし彼女の疑問が解決されることはなかった。
シュン
「えっ?」
突然一本のナイフがミュリアの背後から音もなく飛んできて、背中に突き刺さった。
「な・・に・・・」
ミュリアは背後を見やる。
そこには先ほどと見たものと見たような容姿をした、木や、石などそこら中にあるようなものだけで作られた貧相な人形だった。
どうやら今まで身を潜めていたらしい。
その右手からは細い糸が伸びており、その先は自分の背中に刺さっているナイフに繋がっているようだった。
やがて、ズッとナイフが引き抜かれた。
「あ・・・」
痛みはない。だが先ほどから全く体が動かなかった。
「ミュリアさん!!」
ベルフラウが悲痛な叫び声をあげている。
「あ・・ああ・・」
だがミュリアはそれに答えることは出来なかった。
ナイフの突き刺さった場所から体が硬く、灰色に変化していく。
大きく柔らかな乳も、艶やかな唇も全てが固く、冷たく変化してゆく。
元々露出の多かった肌も、石化により衣服が砕け散った結果全てがあらわにされていた。
(ベルフラウ・・・あなただけでも・・・)
逃げなさい・・・
そんな思いを最後に浮かべ。
ミュリアは全裸の石像になった。
ベルフラウはそんな振り返りかけのまま石像になったミュリアの石像に駆け寄ってしまう。
ミュリアのベルフラウだけでも助かって欲しいという願いは叶えられることはなかった。
そもそも親しい人が突然失われたとき大抵の人はその場に呆然と立ち尽くすか、駆け寄ってその人の名前を呼ぶか、いずれかの行動をとってしまうものだ。
ベルフラウは後者であっただけ幼いながらも強い子だったといえるかもしれない。
だが、行動自体はただの無謀な行動であった。
ミュリアに駆け寄り彼女の名前を呼び続けるベルフラウに容赦なくナイフが突き刺さる。
「ミュリ・・ア・・さ・・」
やがてベルフラウの小さな体は灰色に包まれていき、
完全な石像になってしまった。
ベルフラウは裸で、振り返りかけで石像になってしまったミュリアの像にすがりつくように固まっていた。
最後までミュリアの名を呼ぼうとしたのだろう、その目と口は大きく開かれていた。
やがてナイフを装備した人形は拳銃拾い上げその場を去っていった。
残されたのは2つの石像。
ある意味ではミュリアは幸せだったのかもしれない。
石像と化した後でさえ、寄り添ってくれるものがあるのだから・・・
石像になって寄り添う二人の姿は、まるで親子のようにも見えた。
「これもハズレ・・・か・・・」
白皇学院生徒会長、桂ヒナギクは空になっていた宝箱を開けながらそうつぶやいた。
ヒナギクが探しているのは金の針である。
とは言ってもそれは自分のものではない。
ヒナギクには仲間がいた。
ティア・グランツ、ティファニア・ウエストウッドという名の二人の少女で、つい先ほど仲間になったばかりではあるが、彼女達の結束は強かった。
今、ヒナギクが探しているのはティファニアの分の金の針である。
ヒナギクとティアは自分の分は確保していたが、ティファニアはアイテムの回収に乗り遅れ、また、他人との接触も避けてきたために金の針を手に入れられていなかったのだ。
そして今、戦闘に自信のあったヒナギクとティアがそれぞれ金の針の捜索へと向い、ティファニアはヒナギク達の手に入れた貴重な荷物を持って隠れているのだった。
ヒナギクの金の針の捜索ははかどってはいなかった。
周辺の宝箱を探そうとするも、見つけた宝箱はすべて中身が空だった。
「一旦戻ろうかしら・・・」
ヒナギクには少しいやな予感が浮かんでいた。
宝箱が空だということは確実に、宝箱の中身を取った人物がいる。
下手をすると今、自分のすぐ近くに。
そして、その予感は半分当たっていた。
茂みの中で光る矢がヒナギクの背後を狙う。
ヒナギクの近くに宝箱の中身を取った人物はいなかった。
だが、敵はいた。
シュンと音もなく矢が発射された。
それはすさまじい速度でヒナギクの背後へとせまる。
だが、
カキィン
ヒナギクは恐るべき反応速度でそれを弾いた。
ヒナギクの手に握られているのは長剣だった。
元々生徒会長でありながら剣道部でも随一の実力を持つ彼女にとってこれ以上ないほど相性の良い武器だった。
ヒナギクのよって弾かれて矢は宙を舞う。
ヒナギクはその矢をつかむと
「ソレッ!」
矢が発射されて位置へと即座に投擲した。
ガキン
と鈍い音が響いく。
矢に貫かれた衝撃で茂みから飛び出したのは見るからに陳腐な出来の・・・
「人形!?」
やがてそれは音を立てて崩れながら地面へと落ちてゆく。
だがこれでは終わらない。
ヒナギクは感じた。
すぐ後ろに二つ、右上の木の中に一つ、左にも一つ、他にも・・・・
「チッ!」
ヒナギクは駆け出した。
ヒナギクは相手のことをすぐに理解した。
どうやら相手は小さな人形を複数扱ってくるようだ。
ならばこんな障害物が多く、身を潜める場所が多い森の中で戦っては完全に向こうが有利だ。
ヒナギクはそんな状況から脱するべく、森の少し開けた場所へと移動した。
(ここなら・・・)
草木の茂みからはそれなりの距離があるため、奇襲されることはなくなるだろう。
「さあ、来なさい。」
ヒナギクは剣を構える。
この場所に飛び込んできた敵を迎え撃つために。
「く・・・」
そんなヒナギクの様子に人形の操り主の少女は舌打ちをした。
彼女にはまるで隙がない。
遠くから撃ったところで無意味だろうし、不用意に姿を現せば即座に切り裂かれるだろう。
「仕方ないわね・・・」
少女はつぶやく
「一つ捨てるわ。」
突如一体の人形がヒナギクの目の前の茂みから飛び出した。
人形は銃弾を発射しながらヒナギクへとせまる。
ヒナギクはその銃弾を最小限の動きでよけながら
「ハッ!」
人形へと剣を振るった。
いともたやすく切り裂かれる人形。
ヒナギクの顔には涼しげな表情すら浮かんでいる。
だが、
「!?」
その表情は、すぐに驚愕のものへと変わる。
人形に装備させられていた銃が光だし・・・
ドズン!
突然の爆音。
ヒナギクは、光につつまれた。
ティアと、ヒナギクが帰ってこない。
ティファニア・ウエストウッドは不安に押しつぶされそうだった。
輝くような金髪、ハーフエルフである彼女の特徴の鋭い耳。
全体的にスレンダーな体つきではあるが、胸だけははち切れんばかりの大きさを誇っていた。
そんな彼女がいるのは小さな洞穴の中だ。
そこで彼女はただひたすらにティアに任されたアイテムなどの荷物の番をしながら、ティファニアの分金の針を探しに行ったティアとヒナギクの帰りを待っている。
二人とも人と接するのが苦手な私に本当によくしてくれた。
どじばっかりで足を引っ張っていた私に優しい手を差し伸べてくれた。
私は二人に本当に感謝している。
だからこそ、いくら帰りが遅いからといって二人に頼まれた荷物番の任を放棄して外に二人を探しに行くわけには行かない。
あの二人は強いのだ、ちょっとやそっとのことでどうにかなる様な二人ではない。
そう自分に言い聞かせ、ティファニアはひたすらに待ち続けていた。
だが、ティファニアはあることに気がついてしまう。
それはティファニアが持っていたアイテム。
プレイヤーサーチに表示されていた。
このアイテムはどれだけ距離が離れていようとも、特定の参加者の詳しい位置とその周辺情報を表示してくれるものである。
ティファニアはこれでティアとヒナギクの位置を調べてみたのだ。
そして気づいてしまった。
この二人の位置が、先ほどから全く移動していないということに。
ティファニアに最悪のビジョンが浮かび、いてもたってもいられずティファニアは洞穴を飛び出した。
ティファニアは、より近くにいるはずのヒナギクのほうへ向った。
森の中を大きな胸を揺らしながら猛スピードで進む。
元々森での暮らしに慣れていたティファニアは、木々の間を巧みに抜けていった。
そして、ティファニアはそれを目のあたりにしてしまう。
森の少し開けた場所、その中心に、
全裸たたずむ、ヒナギクの石像があったのだ。
その顔には普段の冷静沈着な彼女には程遠い驚愕の表情を浮かべており、何か強い衝撃を受けたのか体は少し後ろにのけ反っていた。
「ヒナギクさん!」
ティファニアは我を忘れてヒナギクの元へ全力で駆け寄った。
そしてヒナギクの体に触れる。
頬、目、胸、腰、その全ては固く、冷たくなっていた。
つい先ほどのこと、ティファニアが抱きつくと顔を真っ赤にしながら振りほどき、少し笑いながらティファニアを叱ってくれた少女。
今は抱きついたところで振りほどかれることも、真っ赤になって照れながら叱ってくれることもない。
ただ、石像としてその場にたたずんでいるだけだ。
ティファニアは石像と化したヒナギクを抱きしめながら声を挙げて泣いた。
ひたすらになき続けた。
そんな彼女の周りに人形達が集まりだす。
人形達はティファニアを石にしようと狙いを定めた。
そんな人形達に気づいたティファニアだが、もはや彼女は抵抗をしなかった。
せめて、石像になるなら・・・
仲間達と一緒が良かった。
やがてティエリアに無数の銃弾が叩き込まれた。
「あ・・・」
銃弾の当たった部分からティファニアの衣服が砕けてゆく。
そしてそこから自分の体が無機的なものへと変化してゆく。
ティファニアは、失ってゆくからだの感覚、薄れ行く意識の中で一つのものを見た。
それは人影だった。
よくは見えないが、薄暗い森に差し込んだわずかな光を反射してきらめく金色のきれいな髪が見えた。
彼女が人形の操り主だったのだろうか。
そんなことを考えながら、ティファニアの意識はとぎれ
遠くを見据えたまま、ティファニアは石像と化してしまった。
そして現在――――――
今、私の目の前には2体の石像があった。
私は息を切らしてそれに近づいてゆく。
この2体の石像はつい先ほど私が倒した参加者だ。
一人は茶色い髪に白いリボン。
白いオーバースカートを備えた制服で、胸元には赤いリボンが携えられていた少女。
もう一人は長い金色のツインテールの髪に黒いリボン。
黒いコートのような制服に、白い大き目のマントを羽織った少女。
二人ともとてつもない戦闘能力で、私の人形やトラップもかなりの数が破壊されてしまい、相方の少女の手助けで何とか倒したのだった。
「全く、ひやひやしたぜ。」
私の隣を歩く少女が言った。
「私がいなかったらお前もやばかったかもな。」
本当にそうだ。
わたしは、なんとしても守ろうと思っていた少女の手を結局借りてしまった。
ふがいない。
だがなんにせよこの二人に私は勝ったのだ。
ならばいつまでもこのことを引きずっているわけには行かない。
人形やトラップの修理など、すぐにやらねばならないことはたくさんあるのだ。
私は二つの石像へと歩み寄り、その荷物を拾った。
「高町なのは、フェイト・T・ハラウオン・・・・」
荷物に書かれていた二人の少女の名前を私はつぶやく。
なのはは右手を上に伸ばし、片目をつぶり、大きく口をあけ悲鳴を上げながら石像となっていた。
そしてフェイトは右手を前に伸ばし、なのはに向って最後の力を使って歩み寄ろうとする格好で石像となっている。
こちらも最後になのはの名前を呼ぼうとしたのだろう、その目も口も大きく開かれていた。
私はその二人の裸体に触れる。
先ほどはどんなに手ごわかった相手だろうと、石像になってしまっては二度と動き出すことはない。
「さて、この二人を例の場所へ運ぶわよ。」
私は相方の少女へ言う。
少女はめんどうくさそうな顔をしていた。
「こんな人目のつく場所だと私のトラップとかが警戒されるでしょ。ほら早く。」
少女はしぶしぶ私の言うことに従い石像を運んでくれた。
そして私は私の領域へと戻る。
そこにあるのはたくさんの武器とアイテム。
たくさんのトラップ。
たくさんの人形。
そして、10体の石像。
私は今自分のいる場所の周りに広範囲にわたってトラップや人形を配置した。
そして、何も知らずに私の領域に迷い込んでくる参加者を襲った。
ヒナギクを倒すために、銃を一つ爆発させてしまったり、ヒナギクの荷物を回収しようと近づいた時に猛スピードでその場に現れたティファニアに姿を見られたり、なのはとフェイトの二人にかなりの数の人形を破壊されてしまったり(人形に装備させた武器は無事だった)と危うい場面はあったが、人形やトラップはまだまだ機能しているし、私の領域は未だに揺らぐことはない。
私は人形の修理をしながら陳列する石像たちを眺めた。
コレット・ブルーネル
アロエ
宮崎のどか
神楽坂明日菜
ミュリア・ティオニセス
ベルフラウ
桂ヒナギク
ティファニア・ウエストウッド
高町なのは
フェイト・T・ハラウオン
全て元々は少女だったもの。
今は、ただの物言わぬ石像。
それらが今、私の目の前に並んでいる。
罪悪感はなかった。
こうしなければ自分が・・・いや、
私は隣で退屈そうにしている少女を見る。
(この人だけでも・・・・)
守らなければ。という思いが今の自分の全てだ。
そのためには向ってくるもの全てを排除する。
この石像たちのように。
人形の修理に没頭していると、ふと私はあるものを感じた。
(誰かが私の領域へ入ってきた・・・)
私の隣にいた彼女も私の表情の変化で悟ったようだ。
「忙しくなりそうだな。」
全くだ。
私は侵入者を迎え撃つ準備をしながら言った。
「来るわよ、魔理沙。」
「ああ、いくぜ、アリス。」
私はアリス・マーガトロイド。
七色の人形使い。
Another
view of Alice
Margatroid END
今回の被害者
コレット・ブルーネル:石化
アロエ:石化
宮崎のどか:石化
神楽坂明日菜:石化
ミュリア・ティオニセス:石化
ベルフラウ:石化
桂ヒナギク:石化
ティファニア・ウエストウッド:石化
高町なのは:石化
フェイト・T・ハラウオン:石化
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