作:幻影
「やはりここに来たか・・」
扇の家の前で待っていたハルが、やってきた伊奈に声をかける。伊奈は相変わらず気の抜けた面持ちを見せていた。
「何や?わいは扇と千尋ちゃんに会いに来ただけや。」
弁解する伊奈だが、ハルは道を開けようとしない。
「2人には会わせない。お前に会う資格はない。」
「おいおい・・・」
「アイツを固める結果に陥れたASEに組したお前に、アイツの仲間でいる資格などない!」
憤りをあらわにして、ハルが伊奈に対して身構える。
「場所を変えようか。お前も、ここで戦いを起こしたくはないだろう。」
ハルのこの言葉に、伊奈は何も言わずに頷いた。2人は戦いの舞台となる場所へと移動を始めた。
互いのスキャップ、クラウンとアリスを呼び出したますみとルイ。2人は互いのスキャップの動きをうかがいながら、打つ手を巡らせていた。
(ルイさんはトランプメンバー。絶対に甘く見ちゃいけない。でも、あたし、戦えるのかな・・ユキちゃんのお姉さんと・・・)
ますみは未だに迷いを振り切れずにいた。迷いを振ったつもりにはなっていたが、思うようにいかない。
「それじゃ、あたしから行くよ。アリス!」
先手を打ったのはルイだった。彼女の呼びかけで、黄金の女神が跳躍し、空高く舞い上がった。
「アリス、黄金の閃光!」
両手を掲げたアリスが、身構えるクラウンに向けて黄金の光を放つ。クラウンはこれを跳躍してかわすが、彼の眼前にアリスが飛び込んでくる。
(速い!)
2人の戦いを見据えている幻が、アリスの動きを見てうめく。
「遅いよ、遅いよ。こんなんじゃ追いつかれちゃうよ。」
ルイが気さくな言葉を呟く。その先で、アリスが打撃を繰り出し、クラウンが後退しつつ何とかかわしていた。
(全然速いよ。このままじゃいつか追いつかれちゃう。何とかしないとクラウンが・・)
ますみは胸中で焦りを浮かべていた。しかし今のアリスの動きが全力でないことを、幻は気付いていた。
ルイとアリスが全力を出せば、おそらく簡単にクラウンを捕まえ、金の像に変えることが可能のはず。しかしなぜそれをしないのか、彼は疑問に思っていた。
その間にも、アリスの猛攻でクラウンが突き飛ばされ、しりもちをつく。
「クラウン!」
叫ぶますみ。体を起こすクラウンの前に、アリスが立ちふさがって微笑みかける。
(ダメだ・・・これじゃ勝てないし、このままじゃやられる・・・!)
胸中で攻撃を受けることを覚悟するクラウン。しかしアリスはこれ以上の攻撃をしてこない。
(・・どうしたんだ・・・!?)
クラウンもアリスのその行為を不審に感じた。このまま攻めれば、確実に彼を倒せるはずなのに。
それに対して疑念を抱きながら、ますみがルイに振り向く。幻も同様に視線を移す。ルイは相変わらずの気さくな笑みを浮かべたままだった。
「どういうことですか?このままいけばクラウンを、あたしを倒せるのに・・・」
「確かにそうだけど、このまま簡単にやっちゃったらつまんないしね。」
戸惑いを見せながらのますみの問いかけに、ルイは淡々と答える。そしてクラウンを追い詰めていたアリスを下がらせ、再びますみを見据える。
「さぁ、もっと本気でかかってきなさいってね。」
照れ隠しな仕草を見せながら、ルイがますみとクラウンを挑発する。
(もしかして、ルイさん・・・)
(おそらくルイさん、ますみに倒されようとしている・・・本気でアイツに全てを託そうとしているのか・・・)
ますみと幻が胸中で当惑する。彼らの憶測は当たっていた。
トランプメンバーの1人として彼女と敵対し、そして倒される。これがルイの考えているシナリオだった。
(さぁ、ますみちゃん、あたしを超えていきなさい。)
ますみに全てを託し、ルイは身構え、アリスが再び大きく飛び上がった。
人のいない荒野に移動してきたハルと伊奈。やる気のない面持ちの伊奈に対し、ハルは鋭い視線を向けていた。
「警告だ。ASEを抜けろ。そうすれば扇や千尋たちに会わせることを許してやる。」
ハルがそういうと、伊奈は呆れた面持ちを見せてため息をひとつつく。
「何でお前さんに許してもらわなあかんのや?わいはわいのしたいことをしてるだけや。」
「そのやりたいことのために、お前は仲間を裏切ったんだぞ!」
憤慨したハルが意識を集中する。彼女の脳裏に親友、トモがよみがえる。
(トモ、お前のためにも、友情や絆をこんなことで引き裂きたくないよな・・・)
「ラビィ!」
彼女の呼びかけで、背後に等身大の白いウサギのぬいぐるみが姿を現す。彼女のスキャップ、ラビィを目の当たりにしても、伊奈は呆れた面持ちを崩さない。
「どうあっても堪忍してもらえんのかいな?」
「堪忍ならないな。」
彼の頼みをハルはあっさりと却下する。
「そうかい・・じゃ、しゃあないな。」
今まで憮然とした態度をしていた伊奈が、ついに真剣な眼差しをハルに向けた。そして意識を集中する。
「レベッカ。」
その左手に銃が出現する。握り締めたその銃を、ハルのスキャップ、ラビィに向ける。
「命あってのものだねっていうからな。ここでお前さんのスキャップ、倒させてもらうわ。」
「スキャップが倒されても、死ぬわけではないのだが・・」
真面目に言う伊奈に、ハルが半ば呆れた面持ちを見せる。
「そんなつまらんこと気にすんな。ほな行くで。」
言い終わった伊奈が、レベッカの引き金を引く。同時にハルが身構え、ラビィが跳躍する。
標的を外したレベッカの弾丸が、その先の岩場に命中する。その弾を受けた岩石が、一瞬にして青色へと変わっていく。
「青銅・・・これが伊奈のスキャップ効果か。」
その変化を見て、ハルが呟く。
「わいのスキャップ、レベッカに撃たれたもんは、青銅に似た金属に変わるんや。しかも切り替えなしで続けて撃てるからたいそうなもんやけど、わいとしてはあんま使わないんやけどな。」
伊奈がレベッカについて淡々と答える。
レベッカは標的を青銅のような金属に変える弾丸を放つスキャップである。スキャップ自身の力を弾丸としているため、リロードを必要とせず、気兼ねなく連射することが可能なのである。
「はよ扇たちに会わせてぇな。お前さんを固めてまうで。」
再び銃口をラビィに向ける伊奈。しかしハルは彼の言葉を鼻で笑った。
「あまり私を見くびらないほうがいいぞ。私は、扇はこの程度で弱音を口にするほど甘くはない!」
言い放ったハル。同時にラビィが伊奈に向かって駆け出す。虚を突かれたように身構えた伊奈が、ラビィに向けてレベッカを発砲させる。しかしラビィの機敏な動きにかわされていく。
「ラビィ!」
そしてラビィは長い耳から人形化の光線を放つ。伊奈はレベッカを守るように身を翻す。
しかしそれはラビィのフェイントだった。動きを見計らっていたラビィが、伊奈に詰め寄って打撃を繰り出す。
突き飛ばされた伊奈がバランスを崩し、しりもちをつく。その眼前にラビィが立ちふさがる。
「しまった・・!」
追い詰められ、愕然となる伊奈。迂闊にレベッカを構えれば、ハルとラビィは容赦なく人形化の光線を放つだろう。
絶体絶命となり、伊奈は思わず息をのんだ。
買い物から帰ってきたユキは、ますみとルイがいないことに気付き、外に飛び出していた。
「ますみ!お姉ちゃん!どこー!」
血相を変えて呼びかけながら、2人を探すユキ。しかし寮の近くや街など、思い当たる場所を探しても2人の姿は見当たらなかった。
途方に暮れるような心境で、ユキは女子寮の前まで戻ってきていた。
(いったい、どこに行っちゃったの・・・ますみ・・お姉ちゃん・・・)
眼に涙さえ浮かべて、どうしたらいいのか分からなくなるユキ。
「ますみんとお姉ちゃんを探してるのかな?」
そこへ1人の少女が声をかけてきて、ユキが顔を上げて振り向く。そこには無邪気な笑みを見せているデュールの姿があった。
「あなたは・・デュールちゃん・・・」
「あったりー。」
戸惑いを見せるユキにデュールが大きく頷く。
「でも本当に探してるのは、ますみんよりもお姉ちゃんだったりして。」
デュールの意味深とも取れるこの言葉に、ユキがさらなる困惑を見せる。
「冗談だよ、エヘへ。」
からかい半分に微笑むデュール。
「それよりも、ますみんとお姉ちゃんの居場所を教えとかないとね。」
「えっ!?2人の居場所を知ってるの!?」
デュールの言葉にユキが驚きの声を上げる。
「2人とも工場跡地にいるよ。早く行ったほうがいいんじゃないかな?」
告げるデュールの言葉を受けて、ユキはたまらず駆け出した。彼女を見送って、デュールが妖しく微笑む。
「これであの子がホントの力を発揮してくれるはず。面白くなりそうね。」
満面の笑みを浮かべて、デュールはきびすを返して歩き出す。新たな企みが動き始めようとしていた。
「それでもっと面白くなるね。ますみんも、スキャップの戦いも。」
ラビィの攻撃に追い詰められた伊奈の前に、ハルが困惑を抱えながら立ちはだかる。
「わいの負けや。さっさとレベッカ壊して、わいを固めな。」
伊奈が諦めを見せて、大の字になる。このままレベッカを人形にして踏みにじれば、彼は青銅へと変わり果てる。
しかしハルは戦意を消して、彼に背を向ける。同時にラビィがその姿を消す。
「ど、どういうつもりや?何、考えとんねん!?」
伊奈が体を起こしてハルに言い放つ。ハルは振り向かずに彼に答える。
「お前は扇の仲間だったヤツだ。それに、私にはお前を倒す理由はない。だが、またアイツを裏切るようなことをしたなら、私はお前を今度こそ倒す!」
そう言い放って、ハルは立ち去ろうとする。伊奈がレベッカを持ったまま、困惑したまま立ち上がる。
「わいはASEから仕事を受けてんのや。はよう倒さんと、後悔することになるで。」
「ならその後悔は1度きりということだな。」
さらに言い放って、ハルが伊奈から立ち去ろうとする。
「ウフフフ・・・」
そこへ妖しい笑い声が2人の耳に届く。その直後、2人の顔が恐怖の色で染まる。
「こ、この声・・まさか・・・!?」
ハルはこの声に聞き覚えがあった。あの出来事以来、忘れることはなかった。
柚木町を石化した張本人、リリス・フェレスである。
「まさか・・・こんなところで会えるとはな・・・」
振り返った先、妖しく微笑んでいるリリスと、彼女のスキャップ、メフィストを見て、ハルは恐怖しているにも関わらず、思わず笑みをこぼしていた。今まで探し求めていた大敵を前にして、不安とも歓喜とも取れる面持ちを浮かべていた。
「久しぶりと言っておこうかしら?青葉ハル。」
リリスがハルに向けて語りかける。ハルは求めていた敵を見て、体を震わせる。
「あぁ。本当に久しぶりだ。ずい分と探し回ったぞ・・・柚木町のみんなを元に戻せ!」
憤怒するハルがリリスに叫ぶ。しかしリリスは顔色を変えない。
「マスター・・・」
「何っ!?」
呟いた伊奈の言葉にハルが驚愕を見せる。
するとリリスの横にいたメフィストが、額に第3の眼を見開く、その瞳が伊奈の持っているレベッカを捉える。
「伊奈、逃げろ!」
たまらず叫んだハルだが、メフィストの石化の効果は既にレベッカに及んでいた。伊奈の左手の上で、スキャップの銃が灰色に固まる。
すかさずメフィストが駆け込み、一気に伊奈に間合いを詰めた。虚を突かれた彼の左手にある石の銃を地面に叩き落す。
手からこぼれ落ちた銃が地面に落ちて粉々になる。
「なっ・・・!」
愕然となる伊奈とハル。スキャップを破壊されたことで、彼の体が足元から青銅に変わり始めた。
「伊奈!」
ハルが固まっていく伊奈に振り向き叫ぶ。彼は恐怖で顔を強張らせていた。
「なして・・・」
伊奈が固まっていく自分に愕然となっている。
「わい、生きられへんのか・・・わい・・・」
その眼から涙があふれていた。しかし青銅への変化は、容赦なく彼を拘束していく。
その恐れの表情を留めたまま、伊奈は完全な青銅の像となってしまった。
「伊奈・・・!」
ハルが歯がゆい面持ちで、生の輝きを失った伊奈の瞳を見つめる。そして微笑を浮かべているリリスとメフィストに振り返る。
「どういうことなんだ・・・マスター・・それはASEの統治者の呼び名だ・・・まさか、お前が・・・!?」
驚愕を浮かべるハルに、リリスは肯定を意味する笑みを見せる。
「その通りよ。私がスキャップ暗殺部隊、ASEのマスター、リリス・フェレスよ。」
その言葉にハルはさらに愕然となった。ASEのマスターは彼女の追い求めていた相手、リリスだった。
ルイとアリスの攻撃に悪戦苦闘するますみとクラウン。素早い動きに翻弄され、またもや仰向けに倒れる。
痛みを覚えながら立ち上がるクラウンの前に、アリスが微笑を浮かべながら立ちはだかる。
「いい加減本気を見せてくれないと。でないとやられて固まっちゃうよ。」
ルイが呆れた面持ちを見せる。しかしそれでもますみは本気にはなれなかった。
「しょうがないねぇ。だったらこっちも手段選んでる場合じゃないね。」
ルイは視線をますみから、戦況をじっと見つめている幻に移した。すると幻が眉をひそめる。
そしてアリスが振り返って右手を伸ばす。その手のひらから金色の光が放たれ、身構えた幻に命中させる。
「幻ちゃん!」
ますみが驚愕しながら叫ぶ。鍛錬を重ねている幻でも、アリスの速い動きに体がついていけなかった。
光を浴びた下腹部から、徐々に体が金色に変わっていく幻。
「くっ!・・体が、いうことを聞かん・・・これがスキャップの力・・・固まるということなのか・・・!」
苦悶の表情を浮かべながら、必死に金化に抗おうとする幻。しかしいくら力を振り絞っても、アリスの力に対抗することができなかった。
「幻ちゃん!」
ますみがたまらず幻に駆け寄った。すがりつく彼女の前で、幻が徐々に金に変わっていく。
「ますみ・・負けるな・・・お前は・・こんなことで負けたりはしないはずだ・・・」
「幻ちゃん・・・」
涙を見せるますみに、幻が小さく微笑む。
「オレは・・お前を信じてる・・・」
ますみに励ましの言葉をかけた直後、幻の顔が金色に包まれた。金の像と化した彼を目の当たりにして、ますみは愕然となる。
悲痛さを感じる彼女に、ルイがゆっくりと歩いてくる。
「とりあえず幻ちゃんを固めさせてもらったよ。彼はあたしの思うがままといっても過言じゃないねぇ。」
戸惑いを見せるますみに、ルイは右手を伸ばす。
「さて、どうすんの?もしこれ以上やる気を出さないっていうなら、あたしは幻ちゃんを壊す。」
「えっ!?」
「それがイヤなら本気でかかってくることね。でないと大事な人がとんでもない姿になっちゃうよ。」
気のない口調で悲惨なことを告げるルイ。この忠告にますみはさらなる困惑に襲われる。
ルイさんを倒せばユキを悲しませることになる。しかしこのままでは幻を壊されてしまう。そうなればいくらスキャップの力でも元に戻すことはできない。
苦渋の選択を迫られるますみの脳裏に、幻の勇ましい声が響いてくる。
(ますみ、オレはお前の姿を真っ直ぐに見つめようと思う。お前自身も、お前の中にあるものも。)
「そう・・・あたしも、幻ちゃんを信じたい・・・」
彼を想うにつれ、彼女の心にある迷いが消えていく。
「あたしも、幻ちゃんの気持ちを真っ直ぐに受け止めたい!」
ルイとアリスを鋭く見据えるますみ。クラウンも体の奥から力が湧いてくるのを感じていた。
「ルイさん、あたし、もう迷いません!幻ちゃんのためにも、あたし自身のためにも戦う!・・覚悟は、いいですね・・・?」
息をのむ気持ちでルイに問いかけるますみ。ルイは小さく笑みを浮かべて頷いた。いつもの気さくな笑みではなく、本当に心からの感謝を込めた笑みだった。
「そっちこそ、ちゃんと覚悟は決まってるのかい?」
「はい・・今度こそルイさん、あなたを倒します・・・」
小さく頷いて、ますみはルイとアリスを見据える。クラウンも同様に身構える。
(ますみちゃん、アンタのその気持ちで、マスターを倒してちょうだいね・・・)
一途な思いとともに、全ての希望をますみに託すルイ。そしてアリスが再び跳躍を始める。
素早い動きでますみたちを翻弄し、戸惑いを見せているクラウンの眼前に現れる。右手を構えて、金色の光を灯す。
しかしますみは反射的にアリスを捉えていた。
「クラウン!」
ますみの声を受けて、クラウンがアリスに向けて両手を掲げる。しかしクラウンの石化の波動より、アリスの黄金の光のほうが速いはずだった。
だが突然、アリスが黄金の光を消した。力を消した彼女に、クラウンの力が降りかかる。
金の装飾が散りばめられているアリスの体が、徐々に灰色に変色していく。微笑を浮かべたまま、その表情が固く冷たくなる。
攻撃を仕掛けようとした体勢のまま石化したため、アリスが前のめりに倒れ込む。クラウンの横をすり抜け、地面にぶつかって粉々になる。
「ルイ、さん・・・!」
愕然となるますみが、ゆっくりとルイに振り返る。小さく笑みを見せているルイが、足元から金に変色し始めていた。
「これでいいんだ・・・これで・・・」
「ルイさん・・・!」
呟くように声をかけるルイに、たまらず声を荒げるますみ。ルイの足が金色に変わり、光沢を放つその部分は彼女の意思から切り離されて、思うように動かせなかった。
「こうして固まるのも悪くないよね・・・何にしても、これがスキャップの運命だったのかもしれないね・・・」
体の自由を失いつつある中、ルイが普段見せる気さくな笑みを浮かべる。
「ユキを頼むよ・・・ますみちゃん・・・」
ルイは意識を幻に向ける。彼にかけた金化を解く。
彼の体に付着していた金が光の粒子のように弾ける。拘束が解かれた瞬間、彼は金化に戸惑いを見せるのを抑え、すぐに同様の金化に包まれていくルイに視線を向ける。
「ルイさん・・・あなた・・・!」
幻が歯がゆい気分を感じながら、うめくようにルイに声をかける。ルイは彼に視線を向けて小さく声を返す。
「これからはアンタも・・ますみちゃんのために頑張んなよ・・・」
笑みを見せるルイが、金化に体を委ねて脱力する。
(ユキ・・・あたしはアンタを信じてる・・・)
妹への一途な思いを胸に秘めて、ルイは完全に金色に包まれた。
「ルイさん・・・」
ますみと幻が沈痛の面持ちで、金の像となったルイを見つめる。彼女の思いが今、2人に託されたのだった。
「いや・・・いやあっ!!」
そのとき、近くの木陰から悲鳴が響いてきた。ますみと幻が振り返ると、そこには愕然となっているユキの姿があった。
「そんな・・・お姉ちゃんが・・お姉ちゃんが!」
自暴自棄に陥りそうな雰囲気を放っているユキ。しかし彼女の表情が次第に憤怒の色に染まっていく。
「ユキちゃん・・・」
困惑を見せるますみがおもむろにユキに近づこうとする。しかしユキがますみに鋭い視線を向けてきた。
「許せない・・・!」
「ユキちゃん・・・!」
うめくような低い声音を上げるユキに、ますみが眼を見開く。
「よくも・・よくもお姉ちゃんを!」
「ユキちゃん!」
ますみが叫ぶが、憤っているユキには届かない。
「・・フブキ!」
涙ながらに叫ぶユキ。白く吹き荒れる風の中から、フブキが姿を現した。
Schap キャラ紹介21:桃城 デュール
名前:桃城 デュール
よみがな:ももしろ でゅーる
年齢:14
血液型:O
誕生日:3/3
Q:好きなことは?
「ペンギンとユリの花ね。」
Q:苦手なことは?
「カサカサした虫は苦手ね。アリとか。」
Q:好きな食べ物は?
「カレーパンとレモンティー。」
Q:好きな言葉は?
「平和。」
Q:好きな色は?
「苗字にもあるように桃色(ピンク)ね。」