Schap ACT.19 sister

作:幻影


「いよう。」
 気さくな態度を見せながら、女性がユキに声をかける。
「あ・・・あぁ・・・」
 動揺をあらわにしているユキ。しかしその表情に笑みが浮かび上がる。
「お姉ちゃん・・・お姉ちゃん!」
 ついに満面の笑顔を見せる。突如現れた女性は、ユキの姉だった。
「喜ぶのはちょっと早いよ。まずはその人の相手をしてからだね。」
 女性は気さくな態度を崩さないまま、ユキに指示を送る。そして妖しい笑みを浮かべているミリーに視線を向ける。
「ネイツの光線を受けてマネキンにならないってことは、あなたもスキャップというわけね?」
「そういうことになるね。でも、この子はあたしの妹なのよ。ちょっと相手を間違えたようね。」
 ミリーの言葉に答えながら、女性は意識を集中する。
「出てきてちょうだい、アリス。」
 彼女が呼びかけると、その前方に黄金の光が出現する。光はやがて人の形を取り、その姿を現す。
 洋風な衣服から装飾品まで、身に付けているもの全てが金色に輝いていた。
「自己紹介がまだだったね。あたしは神尾ルイ。で、あたしのスキャップは黄金の女神様、アリス。」
 ルイの紹介で、アリスがミリーとネイツに微笑を見せる。
「見ての通り、アリスのスキャップ効果は金化。まぁ、言うより見たほうが早いから、早速やるね。」
 ルイがそういうと、アリスが右手をネイツに伸ばす。その手のひらに黄金の光が集まり、マネキンに向かって放たれる。
 ネイツはこれを軽々とした身のこなしでかわす。着地する彼女に、ルイは感嘆の面持ちを見せる。
「こりゃ驚いたねぇ。アリスの攻撃は速いほうなんだけどねぇ。」
 あくまで気楽にしているルイ。しかしミリーには余裕が消えていた。
(確かに簡単によけたように思えるけど、今のは本気でやってないわ。その気になったら、かわせるかどうかも・・・)
 胸中で焦りを浮かべるミリー。少し後ずさりした後、
「今回はやめておくわ。せっかくの姉妹の時間を邪魔してはいけないからね。」
 そういってミリーはネイツとともにこの場を後にする。2人を見送ってから、ルイはひとつ吐息をついてから、アリスの姿を消す。
 依然として困惑を浮かべたままのユキとフブキ。彼女たちにルイは振り返って笑みを見せる。
「すっかり迷惑をかけちゃったね・・もしかして、怒ってる?」
 思わず苦笑いを浮かべるルイ。再会した姉の姿に、ユキは眼に涙をあふれさせていた。
「お姉ちゃん!」
 たまらずユキがルイに抱きついた。そんな妹の姿に、ルイはまたも苦笑を浮かべる。
「お姉ちゃん!どこに行ってたの!全然連絡してこないから、心配してたんだよ!」
「悪かったよ。あたしも連絡入れようと思ってたんだけど、なかなか時間が取れなくてね。」
 涙ながらに叫ぶユキに、ルイは困り果てたような顔をする。するとユキが顔を上げて笑みを見せる。
「そんなに言わなくていいよ。お姉ちゃんがこうして帰ってきたんだから。」
 喜ぶユキの頭を、ルイは優しく撫でてやる。するとユキが本当に嬉しそうな顔をして、ルイにすがりつく。
「あっ、そうだ!お姉ちゃん、私、お友達ができたんだよ。」
「そうかい、そうかい。ユキは面白いからねぇ、友達ができやすいんじゃないかって思ってたのよ。」
「これから、紹介したいんだけど・・・」
 ますみたちに会わせたいと思っていたユキだが、彼女の眼に変わり果てたカナデの姿が映る。その直後、彼女は再び沈痛の面持ちを浮かべる。
 外の世界を駆け回ることがカナデの願いだった。そしてその願いに大きく近づいていた。
 それなのに、スキャップの運命によって、彼女は白く凍り付いてしまった。
 彼女は2度と駆け回ることはない。凍てついた体のまま、永遠に拘束され続けるのである。
 悲しみに暮れるユキに、ルイが微笑んで手を差し伸べる。
「この子は外に出たがってたんでしょ?多分、幸せだと思うよ。」
「そうだよね・・・うん・・カナデちゃん、きっと幸せでいるよね・・・」
 何とか笑みを作るユキを見て、ルイは小さく頷いた。彼女たちは、カナデをあえてこの草原に置いていくことにした。
(カナデちゃん、ゴメンね・・・あなたのこと、守ってあげられなくて・・・)
 凍てついた少女に視線を向けて、ユキはこの場を後にした。

 リリスへの手がかりを追い求めるハル。しかし依然として手がかりがつかめないままだった。
 ひとまずますみのところに向かおうとした彼女は、その途中、川原の脇の道を通りがかって、ふとバイクを止めた。レオナとの戦いの最中、扇が倒れた場所である。
 悲劇の起こったこの場所を、ハルはじっと見つめていた。今は川とそよ風が緩やかに流れているだけだった。
 その悲しみを噛み締めながら、ハルはこの場を去ろうとした。その前方で、1人の男がじっと川原を見ていることに彼女は気付く。
 肩の辺りまである黒髪、瞳の色が右が紫、左が金、怠け者のように見えるような雰囲気の中背の男である。
「何や?わいの顔に何ぞ付いとるんか?」
 男がハルが見ていることに気付いて振り向き、声をかける。
「いや。お前が深く落ち込んでいるように見えたのでな。」
 ハルが不敵な笑みを見せて答える。
「わいのダチが死んだって聞いてな。弔いに来たっちゅうワケや。」
「奇遇だな。私も仲間を失ったんだ。友と呼べるほどかどうかは分からないが。」
「お前もか?名前は何て言うんや?」
「あぁ。扇だ。京極扇。」
「何やて?扇やと?」
 ハルの言葉に男が眉をひそめる。
「お前、扇を知っとんのか?」
「お前こそ、扇と知り合いだったのか?」
 互いに問いかける2人。先に答えたのは男のほうだった。
「わいは一色伊奈(いっしきいな)。扇のダチや。よろしゅうたのんまぁ。」
 伊奈と名乗った男は、ハルに近づきながら左手を差し出す。しかしハルは眉をひそめている。
「あ、すまんかった。わいや左利きなんや。堪忍してぇな。」
「そうじゃない。私は馴れ馴れしいのが嫌いなだけだ。」
 そういってハルはメットを被り、バイクに乗る。発進する前に、彼女は伊奈に声をかける。
「ついて来い。私の知り合いと、アイツの妹に会わせてやる。」
「いや、そうしたいのは山々やけど、わいにもやることがあっから。ほな。」
 ハルの誘いを断って、伊奈は彼女とすれ違い、そのまま立ち去っていった。彼女はそれを少し見送ってから、バイクを走らせた。

 ひなたを逃がしたますみは、幻とともに病院前にいた。ユキやカナデたちがどこに行ったのか予測さえつかず、右往左往して途方に暮れていた。
「ユキちゃんとカナデちゃん、いったいどこに行っちゃったんだろう・・?」
「心臓の弱いあの子のことだ。そう遠くには行ってないはずだ。」
「2人は今、街外れの草原に行ってるよ。」
 当惑しながら呟くますみと幻に、少女が声をかけてきた。ピンクの髪をした霜月学園中等部の女子、桃城デュールである。
「デュールちゃん!」
 驚きの声を出すますみ。幻が微笑むデュールに対して身構える。
「そう怖い顔しないでよ。別に戦いに来たんじゃないから。」
「何?どういうことだ?」
 幻が少し緊張を解きながら、無邪気に笑うデュールに問いかける。
「ちなみにあの女の子、トランプメンバーのダイヤにやられちゃったよ。」
「えっ!?カナデちゃんが!?・・そんな・・・!?」
 動揺を見せるますみ。デュールは笑みを消さずにさらに続ける。
「でもダイヤはユキちゃんが倒したから。あと、スペードがこの街に来てるよ。」
「スペード!?あのASEという組織のトランプメンバーか!」
 幻が問いつめると、デュールは頷いてみせる。
「残るトランプメンバーは1人。あとASEのトップのマスターがいる。がんばってね、ますみん。」
 言い終わると、デュールは突然吹き上がった桃色の霧に紛れて姿を消した。
(それともう1人、マスターに仕えている・・・)
 胸中でそう呟いて、彼女はこの場を後にした。

 一抹の不安を抱えたまま、ますみと幻は病院前で待っていた。すると気さくな様子を見せていた女性と一緒にユキが戻ってきた。
「ユキちゃん・・・」
 ますみが困惑の面持ちでユキに声をかける。するとユキは作り笑顔を見せて、その女性、ルイに視線を向ける。
「いよう。はじめましてだね。あたしはユキの姉のルイ。よろしくね。」
 ルイが気のない声で、ますみたちに挨拶をする。あまりに緊張感が感じられなかったため、ますみと幻が唖然となる。
「ユキちゃんの・・・お姉さん・・ですか・・・?」
「あら?もしかして信じてないとか。そう思っても仕方ないかな。子供みたいなのと、こんながさつなのとが姉妹だなんて。」
「いえ、そんなんじゃないんです!ただ、あまりに唐突だったもので・・・」
 ルイの言葉にますみが慌てて弁解する。しかしルイはあまり気にした様子を見せていなかった。
「とにかく、あたしはこうしてユキのところに帰ってきました。」
 ルイがますみたちに向けて、大きく一礼してみせる。とらえどころのない彼女に、ますみも幻も当惑するばかりだったが、慣れ親しんでいるためか、ユキは笑みをこぼしていた。

「それは丁度よかったわ。トランプメンバーが3人も倒されてしまったからね。」
 トランプメンバーの集まるカフェバー。そこにはASEのマスターと、1人の男がテーブル席の1つに座っていた。
「あなたの頑張り次第では、そのままトランプメンバーになれるかもしれないわ。」
 マスターが微笑を浮かべて、テーブルに置かれているコーヒーをたしなめる。
「あいにくスペードは今は出かけているんだけど・・とりあえずミリーと合流して、この子の相手をしてきて。仲間にできたらして、できなかったら倒してもいいわ。」
 そういってマスターは男に写真を手渡した。その写真にはますみが写し出されていた。

 とりあえず霜月学園の女子寮のますみとユキの部屋に連れてこられたルイ。幻はひとまず男子寮に戻り、連絡が届いたらいつでも出られるようにしてくれた。
「へぇ、これがユキとますみちゃんの部屋ってワケね。ずい分と整ってるんだねぇ。」
 ルイが部屋の装いに感嘆の言葉をもらす。
「でもこれはますみちゃんがやったんだよね?ユキは昔から整理整とんがダメなんだよねぇ。」
「えっ?え、まぁ・・・」
「お姉ちゃん!んもう・・!」
 気楽な態度のルイの言葉に、ますみはただただ頷き、ユキが抗議の声を上げる。
「あと料理のほうも。」
 しかしルイはユキの言葉を気に留めていない。
「・・・お姉ちゃん・・私、カナデちゃんのこと・・・」
 和やかになっていたところで、ユキが沈痛の面持ちを見せる。
 カナデはひなたの手にかかって、白く凍てついた氷像と化した。もう彼女を救うことはできない。どんなに強く願っても。
 それでも彼女は幸せになっていると信じることはできる。死んだわけではない。彼女はあの草原の中で自由に生きているのだ。
 そう思いたい気持ちとは裏腹に、ユキの眼からは涙があふれていた。そんな彼女に、ルイが笑みを見せて手を差し伸べる。
「カナデちゃんはユキの親友なんでしょ?だったらユキが信じてあげないと。」
「お姉ちゃん・・・ありがとう、お姉ちゃん。ますみもゴメンね。場を暗くするようなことしちゃって。」
 ルイに励まされたユキが、ますみに笑顔を見せる。ますみもそれを受けて笑顔で頷いた。
「あ、そういえば買い物がまだだったんだ。あたし、今から買いに行ってくるね。」
 突然慌しい様子を見せるますみ。
「あ、ちょっと待った。あたしも一緒に行っていいかな?」
 そこへルイが彼女を呼び止める。
「でもお姉ちゃん・・・?」
 ユキがルイに疑問符を投げかける。
「ちょっとますみちゃんと2人だけでお話がしたいのよ。」
「ええっ!?私だけ仲間はずれなの!?」
 にやけるルイにユキが抗議の声を上げる。
「大丈夫よ。アンタには全く関係のない話だから。」
 弁解するルイだが、フォローになっていない。
「それじゃ、参りますか、ますみちゃん。」
「あ、はい・・」
 すっかりその気になっているルイに、ますみは頷いて後についていくしかなかった。

 街へ買い物に出たますみとルイ。2人は途中、いろいろな雑談を交わしていた。
 ユキとの出会い、寮や学校での生活などについて、ますみはルイに話した。そしてルイも自分の知っていることを彼女に話した。
 2人は次第に意気投合していたのである。
「よかった。ユキはアンタに出会って、いろいろあって楽しくやってたワケね。」
「はい。転校してきたあたしに最初に声をかけてきたのは、ユキちゃんなんです。それで、思ってたより早く解け込めて。」
 ますみが微笑むと、ルイは大きく頷いてみせる。
「アイツと一緒だと退屈しないでしょ?慌て者でがさつで、静かになっている時間がほとんどない。」
「はぁ、全くで・・」
 気さくな笑みを見せるルイに、ますみは苦笑をもらす。
「でもホントは、すごく寂しがりやなんだよ。あたしのこと、すごく尊敬してるみたいで。今でもそれは変わってないみたいで。」
「そうなんですか?あたしの前ではあまりそういうのは見せなかったですよ。見せたのは、あたしが困っているときか、カナデちゃん・・・」
 朗らかに進んでいた談話の中、ますみがカナデのことを思い返して、沈痛の面持ちを見せる。それを察したルイは、励ましのつもりで彼女の肩に手を差し伸べる。
「そんな顔しないの。ユキやカナデちゃんに失礼ってもんよ。」
「ルイさん・・・」
 ルイの優しさにますみが笑みを作る。
「あ、ついに見つけたわ。あなたが飛鳥ますみさんね?」
 談話に夢中になって街の外に出かかったところで、ますみとルイは声をかけられて足を止める。振り返った先には、大人びた雰囲気を放つ黒髪の女性が妖しい笑みを浮かべていた。
「あなた、誰ですか?」
「スキャップ。しかもASEに所属しているみたいよ。」
 ますみの問いかけに答えたのはルイだった。するとその女性、ミリーが小さく頷く。
「で、何しに来たの?まさかあたしの眼の前で、ますみちゃんと戦うつもりかい?」
 ルイがねめつけるようにミリーに呼びかける。しかしミリーは余裕の笑みを浮かべる。
「残念だけど、今回は私1人じゃないのよ。マスターが、よき協力者を紹介してくれたの。」
 そういってミリーが視線を移す。そこには1人の男がいた。一色伊奈である。
「堪忍してな。これも仕事、ビジネスってヤツやさかい。」
 伊奈がますみとルイに向けて、気のない言動を見せる。そして左手をかざして意識を集中する。
「出て来い、レベッカ。」
 伊奈の呼びかけで、彼の左手に銃が出現する。
「銃・・スキャップ!?」
 ますみが伊奈のスキャップ、レベッカを見て驚く。
「これがわいのスキャップ、レベッカや。ま、自己紹介はその辺にして。飛鳥ますみ、一緒にASEに来てくれへんか?これがそのマスターっちゅうヤツから受けた仕事なんや。」
「ASE・・マスター・・仕事って・・!?」
「仕事は仕事や。わいかて金がなきゃ、食っていられへん。」
 愕然となっているますみに、伊奈が半ば呆れた面持ちで答える。
「できればこいつを使いとうないんや。一緒に来てくれへんか?でないとアンタを倒さなあかんようになる。」
 ますみにレベッカの銃口を向けつつ、なおも気の抜けた態度を見せる伊奈。しかし彼女に対する敵意は本物だった。
「さてどうする?今度はこっちは2人よ。」
 ミリーがルイに向けて笑みをこぼす。しかしルイも気さくな笑みを浮かべる。
「こっちだって2人なんだよ。ますみちゃんだってスキャップなんだ。甘く見ちゃダメだよ。」
 そういってルイが意識を集中する。
「出てきて、アリス。」
 彼女の呼びかけで、黄金の女神が神々しい光を宿しながら姿を現した。
 笑みを消したミリーの背後から、ネイツが飛び上がってくる。着地した途端、眼から怪光線を放つ。
 その光線を跳躍して回避するアリス。伸びた光線が、林道を通りがかっていた2人の女子のうちの1人、長い青髪の女子に命中する。
 悲鳴を上げた女子が両手を見つめると、その手が人でないものに変わっていく。乾いた土が割れるような音を立てながら。
 その変化は女子の制服の内にある体にまで及んでいた。眼にも留まらぬ速さで変化は進み、やがて彼女の瞳さえも包み込んでいった。
 これがネイツのスキャップの効果である。眼から怪光線を放ち、それを受けた人は、一瞬にしてマネキン人形と化してしまうのである。
 マネキン人形と化した女子を目の当たりにして、他の女子たちが悲鳴を上げながらいっせいに逃げ出した。
 その間も、アリスはネイツの動きや光線をかいくぐっていく。そこを伊奈が狙いを向けていた。
「このレベッカはな、撃ったヤツを金属に変えてまうんや。しかもこの弾の速さはハンパやないで。」
 淡々と告げる伊奈が、レベッカの引き金を引く。アリスに向けて金属の弾丸が発射し飛んでいく。
 しかしアリスはその弾丸もネイツの光線もかわし、右手をかざす。その手のひらから放たれた金色の光が、着地したネイツを捉える。
 鮮やかな装飾品を散らばせているマネキンの衣服や体が、光と同じ金色に変わっていく。全身が金になり、ネイツは完全に動かなくなってしまった。
「ネ、ネイツが・・・」
 ミリーが変わり果てたネイツを見て愕然となる。
「悪いけど壊させてもらうよ。仕掛けてきたのはそっちなんだからね。」
 ルイが彼女に気さくな態度で言うと、アリスが金の像となったネイツに近づき押し倒す。地面に叩きつけられた金の像は、きらびやかな音と輝きを放ちながら、粉々に砕ける。
「ネイツ!」
 ミリーがネイツの崩壊に愕然となる。その直後、彼女は両足に違和感を覚える。
 彼女の両足が乾いた土が割れるような音を立てて、マネキンへと変わっていく。そしてその変化は、愕然となっている彼女の体を一瞬にして包み込んでいく。
「堪忍してぇなぁ。あんなスキャップが相手だなんて聞いてへんよ。」
 伊奈がアリスの力を前に気が滅入っていた。金色の少女が、銃を構えたままの彼に視線を移す。
「やめろ!」
 そこへ1台のバイクが、ルイと伊奈の間に割って入る。メットを外したハルが伊奈に振り向く。
「ハ、ハルちゃん!?」
 ますみが驚きの声を上げるが、ハルは伊奈から視線を外さない。
 伊奈は動揺を浮かべながら、徐々に後ずさりを始める。そしてきびすを返してこの場から離れる。
「おいっ!」
 ハルもバイクから降りて彼を追いかける。
「ハルちゃん!」
「待った、ますみちゃん。」
 追いかけようとしたますみを呼び止めるルイ。ますみは行きかけた足を止めて彼女に振り返る。
「ル、ルイさん・・・?」
「あの兄ちゃんはハルちゃんに任せたほうがいいんじゃないかな?」
「でも、それじゃ・・」
 ルイの言葉にますみが戸惑う。アリスがますみに振り返ってくる。
「それに、アンタの相手はこのあたしだよ。」
「えっ・・・!?」
 ルイの言葉の意味が分からず、ますみが当惑する。するとルイが彼女に向けて右手を伸ばす。
「あたしは神尾ルイ。ASEのトランプメンバー、スペードだよ。」
 気さくな態度で告げるルイ。ますみは彼女の言葉に動揺を隠せなかった。

つづく

Schap キャラ紹介19:神尾 ルイ
名前:神尾 ルイ
よみがな:かみお るい

年齢:18
血液型:AB
誕生日:7/21

Q:好きなことは?
「気ままに散歩することかな?旅もいいかな。」
Q:苦手なことは?
「自己中は困るねぇ。」
Q:好きな食べ物は?
「寿司。刺身でもいいけど。」
Q:好きな言葉は?
「いよう。」
Q:好きな色は?
「銀。2番目は金。」


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