おもかげ〜Love is heart〜 vol.6.「壊れゆく心」

作:幻影


(まさか、女性を誘拐してた犯人が、ハルカが親しんでた先輩だったなんて・・・)
 影の少女は千影だった。その事実に七瀬も戸惑った。
「七瀬、くるみは何とか無事だよ。といっても、七瀬と同じように石にされちゃってるけど。」
(知ってるよ。)
 悲しく微笑んだつもりの七瀬だが、石化した彼女の表情は変わらない。
(私の眼の前でくるみは石にされたんだから。私を助けようとしたんだけど・・何にもできなかった・・・)
 ハルカは七瀬の言葉に返事ができなかった。
 どう答えてもくるみたちを傷つけてしまうと感じてしまったからである。
「くるみさんも七瀬さんも、私の石化を受けて永遠の美を手に入れたのよ。でも、くるみさんは私を傷つけたから、ここには連れてこなかったけどね。」
 千影が声をかけ、ハルカに近づいていく。ハルカもとっさに振り返る。
「章の周りにいる女は全て私のもの。章を奪おうとする女は全員許さない。」
 千影はハルカの腕をつかみ、引き込んで抱き寄せた。
「ち、千影さん!?」
 ハルカが声を荒げるが、千影は抱く腕を緩めようとしない。
「でもハルカさん、あなただけは許してあげるわ。あなたは私のことを心から信じてくれた。」
「千影さん・・・!」
「だから、あなたは私が、人として気持ちよくさせてあげるわ。」
 千影が微笑をもらすと、周囲の黒い霧が渦巻いて晴れていく。
 そして石化された女性たち、七瀬も消えていく。
「七瀬!」
 ハルカが叫ぶのも空しく、七瀬たちや暗闇の世界は消えていった。
 そしてその場所は、とある寝室だった。
「ここは・・・」
 そこは千影の寝室だった。さわやかな装いを施してある部屋で、机やベットが置かれていた。
「そう。ここは私の寝室。あなたをここに入れたのは、私の優しさからよ。」
 千影は必死に離れようとするハルカを強く抱きしめながら微笑む。
「大丈夫よ。私たちがここに移動しただけ。七瀬さんたちはあの世界にちゃんといるわ。」
 千影はハルカを引き込み、ベットに倒れ込む。同時にハルカは思わず脱力してしまう。
「それじゃ、始めましょうか。心地よい愛の堪能を。」
 千影はハルカを押し倒し、彼女の上に乗りかかる。そしてハルカの着ている制服のボタンに手をかける。
 ハルカの中にさらなる動揺が広がる。顔を赤らめ、ボタンを外そうとする千影の手を取る。
「いや、やめて、千影さん・・!」
「抵抗するなら、力を奪って石化させるわよ。」
 千影のその言葉に、ハルカの手から力が抜ける。
 ここで抵抗の意を示しても、石化をかけられれば身動きは取れなくなる。意識も感覚も残る中、千影の抱擁に抵抗することさえできなくなってしまう。
 結果、彼女の抱擁を受けるしかない。抵抗する手段を見失って、ハルカは唖然となっていた。
「そう・・ハルカさんは生身のほうがいいわけね。私もできればあなたをオブジェにはしたくないと思っていたから。」
 脱力してベットに寝そべるハルカを、千影が満面の笑みを浮かべて見つめる。
「じゃ、まずあなたの来てる制服を脱ぎましょうか。」
 千影は再び、ハルカの着ている制服のボタンに手をかけた。

 美女誘拐事件の犯人、影の少女を追う章。かなりの時間を費やしても、その犯人の手がかりさえ見つけられなかった。
 そんな中、章は千影のことを思い出していた。かつて付き合っていた女性とあまりにも酷似している彼女に、章は忘れかけていた親しみを感じていた。
(どうしてなんだ?あの千影さんと、あの千影が同じに思えてくる・・・)
 困惑を振り切ろうとしながら、章はひとまず自宅に戻ってきた。彼は今、はっきりさせたい気分だった。
 石化されたくるみのいるリビングを通り過ぎ、まっすぐ自室に駆け込んでいく。そしていつも机にしまっている写真を取り出した。章と千影の思い出を映し出した2人の写真である。
(やっぱり同じだ・・・)
 これは偶然か。それとも同一人物なのか。
 写真に写る千影と、ハルカの先輩である千影。2人の女性に、章は同じ面影を感じていた。
 章はそのまま部屋を出て、すがるようにくるみの石の体に触れてきた。
(どうしたの?)
 くるみが章に心の声をかける。章は顔を上げ、くるみに語りかける。
「いや・・また、昔のことを思い出してね・・・」
(章さんもいろいろあるのね・・・でも、ハルカのことを忘れちゃダメだよ。)
 うつろい迷っていた章に励ましの言葉をかけるくるみ。章は呆然となりながらも顔を上げる。
(たとえその人を強く想っていたとしても、過去は帰ってこない。時間は戻ってはこないんだよ!)
 必死に呼びかけるくるみ。それでも章の迷いが完全に晴れたとはいえなかった。
(あれ?章さん・・・)
 そのとき、くるみは章がテーブルに置いた写真に眼を留めた。章と千影を映した写真である。
「ああ、これか・・・昔の写真さ。」
 章は再びその写真を手に取った。
「すごい偶然だよ。ハルカの大学の先輩と瓜二つ。しかも同じ“千影”なんだから。」
 苦笑を浮かべる章。
(この人、千影さんだよ・・)
「え?」
 くるみの言葉に章が唖然となる。
(私もときどき会うから分かるわ。髪が長いけど、間違いなく千影さんだよ。)
 くるみに指摘され、章は再び写真の中の千影を見る。そしてハルカの先輩の千影を思い返す。
 あまりにも酷似している2人。同一人物と思うのが自然である。
 しかし章は千影を崖から突き落としたという罪の意識から、その事実を引き離そうとしてしまっていた。1番に気付くはずの彼が、その事実を外してしまっていた。
(どうして・・・オレは・・・)
 苦悩する章。困惑が強く深まっていく。
(オレは忘れたいと思っていた。千影を死に追いやったオレの罪を。けど、忘れようとすればするほど、逆に強く心に刻み付けられていく。)
 写真を握る手に力が入る。その拍子で写真がくしゃくしゃになる。
(どうして、強い想いはこうも心を離れないんだ・・こんな辛い気分は、早く忘れたいのに・・・!)
 章の眼から涙がこぼれる。打ちひしがれた彼の心を表現して、涙の雫が床に落ちる。
 そんな中、章の脳裏にハルカの顔が浮かび上がる。
 千影と決別した後、付き合い抱擁した彼女。付き合ううちに、ハルカは章の心のよりどころになっていた。
 戻らない千影との思い出を求めるより、ハルカとの想いを受け止めて今をすごすことを強く願っていた。
(ハルカ・・・オレは・・・)
 ハルカを強く想い始める章。その直後、彼はとっさに外のほうに振り向く。
「い、いけない!・・ハルカが、ハルカが危ない!」
 章は叫ぶように言い放ち、部屋を、家を飛び出した。
(あっ!章さん!)
 くるみが心の中で叫ぶ。しかし石化した体を動かすことができず、章の走り去る姿を見送るしかなかった。
 夜の道を必死に駆け抜ける章。彼は今までにない危機を感じていた。

 抵抗する意思さえ失くしたハルカ。千影によって制服をはじめとした衣服を全て脱がされて全裸にされていた。
 顔を赤らめて恥らう彼女を、妖しい笑みを浮かべて千影が見下ろしていた。
「なかなかきれいな体をしてるわね。オブジェに変えてもいいとは思うけどね。」
「千影・・さん・・・」
 ハルカが弱々しく呟く。もはや千影の意思に促されるがままだった。
「さぁ、始めようか。あなたはどんな反応を示してくれるのかな?」
 微笑をもらして、千影はハルカの胸に手を当てた。手の感触がハルカに伝わる。
「やめて・・千影さん・・・!」
 ハルカがさらに顔を赤らめる。しかし千影は笑みを強めるだけだった。
 滑らかな手つきでハルカの胸を撫でていく。
「ん・・・んく・・・」
 その接触にハルカがうめく。章との抱擁で感じられるものと同じ快感が押し寄せてきた。
「けっこう慣れてるものね。もしかして、章とやってるのかな?」
 千影がからかうようにハルカに問いかける。しかしハルカはうっすらと千影を見つめるだけだった。
「さて、味のほうはどうかしら?」
 千影がハルカに寄り添い、その胸の谷間に顔をうずめる。そしてその肌に舌を入れる。
「あ・・ぁあぁ・・・あはぁ・・・」
 快感に襲われ、ハルカがあえぎ声を上げる。その反応に、千影は喜びを感じながらさらに彼女の肌を舐めていく。
 そしてそこからハルカの乳房を口に入れる千影。ハルカの肌の感触をその舌で堪能する。
 ハルカの吐息が荒くなる。快楽の海に沈みながら、千影の行為を受け入れていった。
「や、やめて、千影さん・・・千影さんは、こんなことする人じゃないわ・・」
「これが本当の私よ。」
 ハルカの弱々しい問いかけに、千影が妖しい笑みを見せて答える。
「普段あなたたちに見せているのは表の私。本当の私は、想っている人はどうしても大切にしたいと思う一途な少女なのよ。」
 押し付けるようにさらにハルカの胸を揉み解していく千影。愛の抱擁に慣れきったことが、今のハルカを辛く感じさせていた。
(どうして・・・こんなにも感じちゃうの・・・嫌なことばかりなのに・・こんなにいい気分になっちゃうなんて・・・)
「ああ・・・あはぁ・・ぁぁ・・・!」
 押し寄せる刺激に、ハルカのあえぐ声が大きくなる。強まる快楽に顔を歪める。
「イヤッ!ダメ、千影さん!・・もう、ガマンできない・・・!」
 ハルカの歪んだ顔から力が抜ける。千影が視線を移すと、ハルカの秘所から愛液があふれ出ていた。
「へぇ、慣れてるとけっこう早くきてしまうものなのね。」
 千影がハルカの秘所に手を伸ばす。愛液がその指に付き、ベットのシーツに滴り落ちる。 
 そしてその愛液をゆっくりと舐めて口に含む。そして恥らっているハルカの顔に視線を戻し、満面の笑みを浮かべる。
「いいわね、あなたの味は。」
 完全に弄ばれていることに、ハルカは後ろめたい気分を感じていた。今まで信頼していた先輩に裏切られた感覚が、彼女をそう思わせていた。
「生身の柔肌はいいわね。石化をかければ簡単に触れられるんだけど、石の感触が混じってしまうから。」
 千影が愛液のこぼれる口を手で拭う。
 彼女のかける石化は、対象の人の体の質を、人から石に変えていくものである。石化途中の段階では、人と石の感触が混じり合っている。
 そして石化されていく人は、人のぬくもりと滑らかさが残っているにも関わらず、石になったように自由に動かすことができない。
 千影はこの石化の力とその特徴を利用して、女性の体に触れてその感触と快感を楽しんでいるのである。
「私がどうやって石化の力を手に入れたのか、あなたには教えておくわ。」
 千影が困惑しているハルカの頬に優しく手を当てて語りかける。
「もちろん私はただの人間よ。でも私は強く願ったわ。章を守りたいと。そしたら、私に力がみなぎってきたのよ。石化や、人間を超えた身体能力をね。」
「えっ・・・!?」
「それが神さまが願いを聞き入れたものなのか、それとも悪魔の誘惑なのか、私には今でも分からない。でもこの力が私の心を満たし、章を幸せへと導いてくれるのよ。」
「違う・・・ちが・・う・・・」
 ハルカが必死に声を振り絞るが、その声は弱々しく、千影の心には届かなかった。
「章を誘惑しようとする女は誰だろうと許さない。みんなこの力でオブジェに変えてやるわ。」
「千影・・・さん・・・」
「でもハルカさん、あなたは私を心から信じてくれたから許すわ。あなたはいい後輩でいてほしいわ。それに、オブジェになった人たちも、永遠の美を手に入れられて幸せなはずだから。」
 千影も着ている制服を脱ぎ始めた。彼女自身も快楽を感じていて、たまらない解放感を求めていた。
「ハルカさん、あなたに私の全てを見せてあげる。章に対する想いも全て、隠さずに見せてあげる。」
 全ての衣服を脱ぎ捨て、ベットの横の床に置く。自らの裸をハルカにさらけ出す千影。
「私の願いは、人を超えた力を私にもたらしたのよ。強くなった私が、あなたを導いてあげる。」
 千影は身をかがめ、愛液あふれるハルカの秘所に顔を近づけた。そして舌を入れ、愛液をすくい取るように舐め始めた。
「イヤアッ!」
 ハルカの絶叫が部屋に響き渡る。その叫びを気に留めず、千影はさらに舐め続ける。
「ダメだよ、千影さん!こんなところ舐めちゃ・・!」
「ここが心の味を大きく引き出している場所なのよ。あなたならこれも気持ちよくなれるはずよ。」
 しばらく舐めた後、千影は顔を離した。舌から愛液が滴りこぼれていた。
「たまらない・・・ハルカさん、たまらないわ・・・」
 快感に顔を歪め、千影はハルカの顔に手をかけて、自分の胸の谷間にうずめた。
「ハ、ハルカさん、感じて・・・もっと感じて・・・」
 自分の体とハルカの頭を揺らしながら、快感に溺れる千影。彼女の秘所からも愛液があふれ出ていた。
「さぁ、今度はあなたが私を味わう番よ。しっかり感じ取ってね。」
 そして千影は、呆然となっているハルカの顔を、自分の股間に押し当てた。
「ぅ・・・ぅぷ・・・!」
 千影の愛液がハルカの口の中に押し込まれる。その吐息に刺激を感じて千影もあえぐ。
「そ、そうよ・・もっと吸って・・・もっと感じて・・・!」
 快楽に溺れて叫ぶ2人。もはや彼女たちの快感は止まらない。
 しばらくして千影はハルカの顔を上げる。愛液が顔中に張り付いているハルカは、放心したように呆然としていた。
「さて、そろそろ最高の気分にさせてあげるわ。」
 千影が再び妖しい笑みを浮かべると、右手人差し指と中指をハルカの秘所に差し込んだ。
「ああ・・・ぁあああぁぁぁ・・!!」
 ハルカに押し寄せる刺激が最高のものになった。耐え切れず絶叫するハルカ。
 眼を見開き、小刻みに震えだす。その視線はどこに向いているのか定まっていない。
「さあ、もっと感じなさい!この最高の気分を!」
 千影も興奮して叫ぶ。石化していく女性の肌とは違った感触に歓喜を抱いていた。
 完全に崩壊してしまったハルカの心。体は人間のままであったが、その心は石のようにひび割れていた。

つづく


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