作:幻影
警備員から逃れて、健人としずくはとある部屋の前で大きく息をついていた。
この部屋はブロンズが預かった娘、あおいの寝室に当たる。今はブロンズと別れ、使用人に連れられてここで休んでいるはずである。
「こ、ここが、あおいちゃんの部屋なわけ・・?」
「あ、ああ・・もう寝てるかな・・?」
何とか呼吸を整え、健人がゆっくりとドアを開けて、部屋の様子をうかがう。長いピンク色の髪をした少女がベットの上からこちらを見ていた。
「け、健人・・?」
困惑した少女に、健人は苦笑を見せる。
「や、やぁ、あおいちゃん、まだ起きてたんだ。」
戸惑うあおいと健人に、しずくが顔を出して割り込んできた。
「君があおいちゃんだね。」
「お姉ちゃん、誰・・・?」
見知らぬ人の登場に、あおいの困惑はさらに広がる。しずくは気を引き締めて、あおいに声をかける。
「私は執事のテリーさんに頼まれて、ここに来たの。君の父さんから連れ出してほしいって。」
しずくの言葉にあおいはうつむく。
「テリーさんが・・?」
「だから、一緒にここを出よう。私たちと。」
手を差し伸べるしずく。しかしあおいは彼女の手をかたくなに拒んだ。
「私、ここから出て行けないよ・・」
「えっ?どうして!?」
しずくが疑問の声を上げる。あおいは鎮痛な面持ちで答える。
「お父さんはひとりぼっちだった私をいろいろ助けてくれた。ちょっとしたわがままでも、お父さんは断らずに聞いてくれたのよ。」
「で、でもそれは君の力を利用したいからなのよ。お父さんは君の力を使って、自分の欲望を満たしてるのよ。」
しずくの説得にも動こうとしないあおいに、健人は苛立った様子で割り込んだ。
「ああっ!じれったい!こういうときは多少強引にでも連れてくのがいいんだよ!」
そういって健人は部屋に入り、戸惑うあおいを抱えて、驚くしずくを通り過ぎて部屋を出ようとする。そんな彼の腕を掴むしずく。
「そんな無理やりに連れてったって、何にもならないよ!それこそただの誘拐犯だよ。」
悲痛な眼差しで抗議するしずく。しかし健人は真剣な眼で、
「オレだってこんなやり方はしたくなかった。自分の足で歩き出してほしかったさ。だけど、ときには誰かに無理やりにでも導いてやったほうがいいことだってある。そこから自分で歩き始めても、遅くはないと思うけど。」
健人の言葉に納得するしずく。
何もしなければ、何も変わらない。強引にでも一歩を踏み出さなければ、何も変えられないのである。
健人の心がけを理解したしずくは、思わず笑みを浮かべていた。
「ごめん、健人。そうだよね・・誰かに導かれてでも、何か行動しないと何も変わらないよね。でもいいの、あおいちゃん?こんな強引で・・」
再び悲痛な表情に変わるしずくが困惑するあおいに声をかける。あおいは少し怯えているようで、あまり声をかけられないでいる。
「テリーさんが私がここを出て行くことを望んでいるなら、それに従いたい。テリーさんはお父さんと同じで、いつも私を助けてくれたから。でも、1度お父さんに会ってから決めたい。」
「でも、それじゃ・・・」
あおいの決意をしずくは止めた。
あおいとブロンズを会わせ、その事のいきさつを話せば、ブロンズは必ず妨害を行い、テリーの願いを踏みにじることになりかねなくなる。
「分かったよ、あおいちゃん。とりあえずお父さんに会ってみるか。」
「ちょっと、健人!」
健人の無責任な言葉にしずくが声を荒げる。すると健人は笑みを浮かべて、
「この子が、自分の意思で決めたことだ。だったら邪魔したら悪いだろ。何かあったら、オレが何とかしてやるからさ。」
健人のぶっきらぼうな言葉に、しずくは不機嫌そうに歩き出した。
「早くしないと、また警備の人が来るわよ。」
振り向いたしずくの声に、健人は頷いてあおいに視線を向けた。
「行こうか、あおいちゃん。」
「うん。」
「もう!いったい何がどうなってるんだぁ!?」
慌しく駆けていく警備員の様子に、早人は戸惑いながら廊下を駆けていく。
彼は追われているわけではなかったが、しずくのことが気がかりになっていた。
トイレから戻った彼は彼女を見失い、踊り舞う人々をかき分けて彼女を探し回っていた。
そしていくつかの曲がり角を曲がろうとしたそのとき、
「うわっ!」
「イタッ!」
曲がり角で早人は正面衝突をしてしまい、しりもちをつく。
「イタタタ・・・あっ!しずく!」
早人が頭を押さえて顔を上げると、しずくも同じように頭を押さえていた。
「は、早人!?」
「しずく、どうなってるんだよ、コリャ!?何だかここ、慌しくなってきちまったみたいだぞ!」
声を荒げる早人が、しずくの後ろで立ち止まっている青年と少女を眼に止める。
「だ、誰だよ、アンタ!?・・その子、あおいちゃんじゃないか!」
早人が驚きの声を上げて困惑しているあおいを指差す。少し間を置いて、健人が口を開く。
「オレは健人。椎名健人(しいなけんと)だ。あおいちゃんのボディガードを任されてたんだ。さっきまでな。」
「さっきまで?」
疑問符を浮かべる早人に、健人が笑みを見せて話を続ける。
「さっき辞めてきた。前払いで金貰っておいてよかったよ。危うくタダ働きするところだったぞ。」
気さくな笑いを見せる健人に、早人も心を許すようになってきた。
「悪知恵が働くなぁ、アンタ。気が合いそうだ。オレは藤木早人、よろしくな。あと、こいつは・・」
「もう知ってるよ、健人。」
早人に指を指されたしずくが笑顔で答え、早人が思わずきょとんとなる。
「早人、この人が、私をブラッドにしたんだよ。」
笑顔を浮かべるしずく。そんな彼女を、健人は素直に喜べなかった。
彼女をブラッドにしたとき、健人はためらった。しかし、彼女がそれを強く望んだので、健人は彼女の血を吸った。
再会を果たした今でも、そのことを後悔していた。
「とにかく今は、ミスターブロンズのところに行くぞ。あおいちゃんが会いたがってるから。」
「け、けど、それじゃこっちの依頼は・・!?」
あおいに視線を向ける健人に、早人は慌てた様子で抗議する。
「あおいちゃんの決めたようにしてくれって。テリーさんの依頼はこうでしょ?」
しずくに言いとがめられて、早人は腑に落ちないながらも返す言葉が出なくなってしまった。
「決まりだな。よしっ!行くとしよう、あおいちゃん!」
健人の気さくな声に、あおいの顔にも笑顔が浮かび上がった。
上の階へと連なっているブロンズの部屋。そのドアの前では、2人の長身の黒ずくめのボディガードが立ちはだかっていた。
近くの廊下に隠れて、健人が部屋のドアのあたりを見回す。
「しっかりガードしちゃってるよ。」
「悪いけど、強行突入させてもらうぞ。」
早人がそわそわした様子を見せ、健人が不敵な笑みを浮かべて、廊下を飛び出した。
その姿に気がついて、ボディガードが身構えるが、健人は素早く打撃をあびせて気絶させる。
倒れた2人の男の前で健人がしずくたちに向かって手招きをする。それに誘われてしずくたちもドアの前まで駆けつける。
「ここにいるのか、ブロンズが?」
早人の疑問に健人は頷いた。ドアノブに手をかけて、健人は未だに戸惑っているあおいに振り向く。
「君のお父さんはここだ。ちゃんと話し合うんだ。」
健人に励まされて、あおいは小さく頷いた。それを確認して、健人はゆっくりとドアを開けた。
一瞬とはいえ部屋の前で騒げば、気づかない人はいないだろう。それを覚悟して、健人は部屋をのぞき込んだ。しずくも部屋の中に顔を出し、早人はあおいに手をかけて周囲を警戒する。
部屋の中は明かりがついてなく暗かった。しかしブラッドである健人としずくの眼は、わずかだがその光景を映し出していた。
何体もの女性の像が並べられていた。
「ここは・・ブロンズのコレクションルームだな。」
「聞いたことあるわ。彼は様々な美女や美少女の像を集めてるって。でも、これって・・・」
しずくは部屋にあるブロンズ像に違和感を感じていた。健人にもそれを察知していた。
「こいつは本物の人間だ。しかもブラッドの力で、ブロンズ像に変えられてる。」
「何だって!?」
健人たちの話を聞いていた早人が声を荒げる。その拍子で、あおいが再び怯えて体を揮わせる。
「私の力を察知するなんてね。君たちはブラッドだね?」
突然部屋の暗闇から発した声に、健人としずくが身構える。部屋の奥から1人の男が姿を現した。
「あ、アンタは・・!?」
「お父さん・・」
「ミスター・ブロンズ・・・」
健人と早人が動揺の声を上げ、あおいがさらに困惑する。ミスター・ブロンズが悠然と健人たちの前に姿を現した。あおいがいることに動揺することもなく。
「そういうアンタもブラッドなんだろ、ミスター・ブロンズさん?」
健人が不敵な笑みを見せる。しかしブロンズは態度を崩さない。
「そのとおりだよ。同じブラッド同士、話さなくても気配で分かってたと思うが。君は裏切り者のブラッドであることは察しがついていたよ。ブラッドをはじめとした悪魔種族、ディアスは、欲望や飢えに忠実だからね。しかし君はそれが感じられない。まるで人間のようだ。」
あごに手を当てて笑うブロンズ。そんな彼を鋭く見返す健人。
「言いたいことは分かってる。腑抜けとか落ちこぼれとか言うんだろ?確かにブラッドとしたらそうだな。だけど、オレはそのほうがいいと思ってる。しずくと出会ってから、なおさらそう思うようになったよ。」
「健人・・・」
健人の言葉に安堵するしずく。しかし素直には喜べなかった。
健人に血を吸われたその日は、しずくの弟の行方が分からなくなった日でもある。その悲しい思い出が、彼女の中に込み上げてきていた。
「この体は紛れもないブラッドだ。だけどオレは人と一緒にすごしていく。あの悲しい顔は、もう見たくない・・・」
鎮痛な面持ちの健人に、昔のしずくの悲しい顔がよみがえる。
弟を失い、途方に暮れながら辛くなっている彼女を、力を求めて必死にすがり付いてくる彼女を、健人は放っておくことができなかった。
「そうかい?君もその力を使えば、私のように美を追求することもできるのに・・・」
ブロンズのこの言葉に、健人に苛立ちが芽生える。
「・・・そんなものは・・いらない・・!」
「お父さん・・・」
そのとき、戸惑いを隠せないまま、あおいが父であるブロンズに声をかけてきた。ブロンズがあおいに向き直って笑みを見せる。
「あおい、私はいつも君の力を頼りにしてきたね。とっても感謝しているよ。さぁ、これからも私のために、その力を貸してくれるね?」
「お父さん・・・?」
妖しく笑うブロンズに、あおいは困惑しながらも覚悟を決めた。
「私、ここを出て行きたいと思うの。」
「何?」
「お父さんにはいろいろ助けてもらったし、わがままも聞いてくれた。とても感謝してるよ。でも、このままこんな生活を続けてたら、これから自分でがんばれなくなる気がするの。健人のがんばりを見てたら、私もがんばらないとって思えたの。」
「あおいちゃん・・・」
あおいの言葉に健人の心が揺れる。自分の姿を見て、彼女がここまで共感していたことに心を打たれたのである。
「そうかい。だけど、私は君をここから出すわけにはいかないよ。」
「えっ・・!?」
ブロンズの返答に、あおいが戸惑いの言葉を漏らず。
「予知能力をはじめとした君の力は、美女、美少女を狙う私にとってもはや必要不可欠な存在なんだよ。だから、勝手にここを出て行かれるわけにはいかないんだよ。」
動揺するあおいに向けて、ブロンズが右手を伸ばした。
「このまま手放すくらいなら、いっそのこと。」
ブロンズが右手を握り締めると、カプセルが半分ずつ姿を現した。カプセルはあおいをはさむ形で迫ってくる。
「あおいちゃん!」
首を振って困惑しているあおいを、しずくが飛び込んで突き飛ばす。その勢いで健人に寄りかかるあおいと、彼女の代わりにカプセルに閉じ込められるしずく。
「しずく!」
健人が血相を変えて、しずくに近づく。彼女を閉じ込めているカプセルを必死に叩くが、亀裂さえ生じない。
「標的が変わってしまったが、まぁいい。とりあえず侵入者のお嬢さんを固めることにしよう。」
「何っ!?」
ブロンズの言葉に、健人が声を荒げて振り向く。
その直後、カプセルから透明な液体が流れ落ち、しずくが激しい激痛に襲われてうめき始めた。
「アハアァァァ・・・うくぅ・・・!?」
「しずく!」
健人と早人がしずくのただならぬ様子に声を荒げる。
液体の流れるカプセルの中で、しずくは苦悶の表情を浮かべてふらついている。
「ど、どうして、お姉ちゃん・・・!?」
ひどく動揺した様子で、あおいがしずくに問いかける。するとしずくは何とか笑みを作って答える。
「せっかくあおいちゃんが、自分の道を決めたんだから、こんなところで立ち止まらせるわけにいかないもの・・・」
「しずく!おい・・・!」
悶え苦しむしずくの姿に見かねて、健人が体を震わせる。
ブロンズの力によって生み出されたカプセルの液体で、しずくは息の詰まるような激痛に襲われていた。自分の体に何かがまとわりついているのか、それとも体自体が変化しているのか。その疑問は、体中にほとばしる苦痛にさえぎられる。
「健人・・・」
体に力が入らなくなったしずくが、おぼろげに健人に呟く。
「しずく、しっかりしろ!オレたち、また会えたんだからさ!」
困惑しながらも、笑顔を作ろうとする健人としずく。すでにしずくは、完全に力が抜けてだらりとしていた。
「健人、私、信じてるよ・・・また、一緒にすごせるって・・・」
物悲しく笑うしずくの眼から光が消えた。同時に、カプセルから黒煙が噴き出し、棒立ちの彼女を包み込んだ。
「しずく!・・ぐふっ!」
叫ぶ健人が、カプセルが消えてあふれ出た黒煙に咳き込んで後退する。霧散していく黒煙の中から、深緑に変色したしずくが呆然と立ち尽くしていた。
「しずく・・・」
健人は変わり果てたしずくを見て、打ちひしがれる思いを感じた。心の奥から怒りが湧き上がり、健人は哄笑を上げているブロンズに振り返って、戸惑っているあおいに声をかけた。
「あおいちゃん、今でもお父さんのことが好きかい・・?」
「う、うん・・・」
あおいは戸惑いながら答える。
「だったら、これ以上お父さんに悪いことをさせちゃいけないよな・・・」
あおいの答えを聞かずに、健人はブロンズの前まで足を進めた。
「これでまた、私のブロンズコレクションが増えたよ。私の領域に足を踏み入れた罰だ。ここで永久にいてもらうから。」
悠然とした態度をとるブロンズに、健人が鋭い視線を向ける。
「アンタを殺すぞ、ミスター・ブロンズ。でなければしずくは元に戻らないからな。」
健人から紅いオーラが放出された。彼の中に秘めていたブラッドの力が、しずくを固められた怒りによって解放されたのだった。
紅い光が収束され、剣へと形を変えた。
「この力・・・君はSブラッドだね?」
ブロンズの問いに健人は頷いた。
「オレは死にかけたときに、ブラッドを超えたSブラッドの力を覚醒させた。しかし、死にかけた衝撃で、オレの髪は真っ白になり、ブラッドの力の制御が利かなくなるときがある。けど今は、無性にこの力を使いたい。貴様を倒して、しずくを助けるために。」
健人は素早くブロンズに飛びかかり、剣を振り下ろす。しかしブロンズも深緑色をした剣を出現させてこれを受け止める。
剣が弾かれた直後、剣人は一瞬でブロンズの背後に回りこんだ。
Sブラッドは、時間の流れさえも自由に渡ることが可能であり、ブラッドとして使っていた力の代償である血の消費が極力減少している。その一瞬に、剣人はその力を使って、ブロンズの懐に回りこんだのである。
「速い!」
ブロンズが振り返る前に、健人が剣を突き立てた。剣を振り下ろそうとしたブロンズの体を、健人の紅い剣が貫いた。
鮮血の噴き出すブロンズに刺さった剣に、健人はさらに力を注いで、思念を送り込んだ。ブロンズの血を吸い取り、力の媒体を奪い取るという思念を。
うめくブロンズの血が、浸透していくように剣に吸い込まれていく。血液を失って昏倒するブロンズが、眼を見開いたまま紅い炎に包まれた。ブラッドによって絶たれた命は、紅蓮の炎に包まれて焼失するのである。
消えていくブロンズを見下ろして、健人は剣を消した。血で塗れた手を握り締めて、健人はあおいに振り返った。悲しみのこもった眼差しで。
「あおいちゃん、すまない・・・」
悲痛の思いの健人の前で、あおいはひどく怯えていた。今まで自分の面倒を見てくれた父が死んだからか、健人の恐ろしいまでの力を目の当たりにしたからなのか。
彼女は体を震わせて涙を浮かべていた。健人はこれ以上、声をかけることができなかった。
ブロンズの死によって、深緑色に染め上げられて固められていた美女たちが元に戻った。しずくも脱力してそのままその場に倒れこんだ。
「し、しずく!」
早人がしずくに駆け寄り、体を支える。彼女は眼を閉じて大きく息をついた。
健人も彼女が元に戻ったことに気付き、彼女のもとへ駆け寄った。
「しずく、大丈夫か・・・?」
動揺を隠せないまま、健人がしずくに声をかける。しずくは作り笑顔を見せて答える。
「健人、私は平気だよ・・健人こそ、そんな顔してどうしたのよ?・・・健人は気さくな顔をしているのが1番いいよ・・・」
力なく呟くように語りかけるしずく。健人がそんな彼女の頬に触れる。
そのとき、健人は意識が揺れ動くような感覚に襲われた。理性を保つことができず、視界がぼやけてきた。
眼の焦点の合わないまま、健人は何かに取り付かれたかのように、もうひとつの手をしずくの頬に差し出す。両手で頬を触れられ、しずくに動揺が広まる。
「け、健人・・・?」
しずくに呼びかけられ、健人は我に返った。両手を引いて、戸惑いの様子を見せる。
「しずく・・・オレ、何かしたか・・・?」
動揺する健人に、同じく困惑していたしずくは言葉を返すことができなかった。
「お、おい!警備の連中がこっちに来たぞ!」
早人に呼びかけられ、健人としずくが同時に振り向く。廊下から続々と警備員たちが駆け込んできていた。
「とにかく、今はここから出よう!」
健人の指示に促され、しずくと早人はあおいを抱えて、警備の包囲網を突破して、豪邸を抜け出して夜の街へと飛び出した。