カタ迷路 第1章 「五月」

作:G5


「うっ・・・ここは・・?」
拝賀五月(はいが さつき)が目覚めたのは薄暗い部屋だった。壁はコンクリートで出来ていて、通気口もなく息苦しい。唯一ある扉には鍵が掛かっていた。
「えっと・・・たしか部活の帰りに急に目まいがして・・・それから・・」
五月はこれまでの経緯を思い出していた。
五月は茶色がかったショートヘアーで、身長は平均、高校でラクロスをしており、活発な性格をしている。最近は少し胸が足りないかな、と悩んだりもしている。
(閉じ込められた?・・・)
まだ完全に目覚めてないのか、少し辺りを探っていると、壁のスピーカーから声が聞こえた。
「おはよう五月君、気分はどうかね?」
声は某白い人のような声で男なのか女なのかわからない。
「誰よあんた、わたしを閉じ込めてどうする気?」
「わたしは何もしないよ。君にはこれから迷路に挑戦してもらう。その迷路をクリア出来たなら元の場所に帰してあげよう。
言っておくが、君に拒否権はない。拒否する場合、罰を受けてもらう。」
五月は考えた後、答えた。
「いいわ、そのゲーム付き合ったげるわ。」
「いい返事です。それではその扉からスタートしてください。なお、迷路のなかはトラップだらけですのでご注意を・・・」
そこでスピーカーからの声は聞こえなくなり、代わりに鍵が開く音がした。
「やってやるわよ。」
そう意気込んで五月はドアを開けた。


迷路は普通のゲームなどで見るレンガの作りだった。
(こんなもの、いったいどこに作ったのかしら・・・)
五月はしばらく迷路をさまよっていた。迷路の抜け方としては一般的な手をつくやり方を試したが、なぜか進んでる気がしない。
ひとまず歩いていれば何か見つかるだろうと考え、今に至る。
今の五月の装備は高校の制服にラクロスのラケット、それと学生用かばんというごく普通の高校生の服である。
「トラップってのが気になるけど、進むしかないわよね」
しばらく進むと、道に大きな穴が開いていた。
「ん? なにかしら・・・?」
中をのぞいた五月は唖然とした。穴の中には数体の石像が粘液まみれであったからだ。
その石像は生きているようで、ある石像は手を上にのばし、助けをこうような姿で。
またある石像は粘液で溺れてもがく姿だった。
「こんなところに石像なんて・・・まさかっ!これがトラップ!?」
もしこの石像がもとは人間で、私のように連れてこられたのなら・・・次にこうなるのはわたし・・・」
五月は少し震えたがすぐに顔を上げ、叫んだ。
「おもしろいじゃん、絶対この迷路を抜けてあのスピーカーの声の主に一発ぶちこんでやる。」
とりあえず、罠などがどこにあるのか、いろいろ調べなくてはならない。こういうときは情報が大事だということを五月は知っていた。
五月はかばんから紙とペンを取り出して、いままで歩いてきた道を書き込み、今見つけたトラップをそれに書き込んだ。
(とりあえず、地図はこれでよし・・・あとは・・・)
情報がほしい、とりあえずこの周辺の情報が、そう思った五月は周辺を探って見ることにした。
わかったのはここが地下で、上に昇ることで前に進めるということ。そしてこの階には落とし穴以外のトラップはないということ。
「とりあえず、この階で安全な場所は確認した・・・あとは」
先に進むだけ、しかしこのまま進んでいいのか、五月は迷ったが、どの道進まなければ出られないのだし上の階へ進むことにした。


仮に前の階を1階とするとここは2階にあたるが、下とはまた違っていた。
壁はレンガからコンクリートに代わり、壁から土管のようなものが伸びていて、なにか不気味だ。
とりあえずこの階の地図を作ろうと足を動かそうとするが力が入らない。
何事かと足元をみると青い半透明のゲル状の物体が足に纏わりついている。
「なっ・・・なによ、これ・・」
驚く五月に構わず半透明の物体は体を昇ってくる。
よく見ると壁の土管からそいつらは出てきた。
そいつらはスライムだった。
そいつらは五月の体に纏わりついてどんどん五月の体を飲み込んでいく。
「いや、こないで・・」
いやがる五月をしり目にスライムはもう胸のあたりまで迫ってきていた。
すると五月の足元から変化が生じた。
「なに、なんなの!?・・・いや、足が!!」
五月の体は足元から石になっていた。パキパキと音を立てて石化は五月を蝕んでいく。
「あ・・・あ・・」
とうとうスライムは五月の顔にまで迫った。口が覆われ、声が出ない。
視界がゲルで覆われ、意識が遠のく一瞬、五月は他の犠牲者が出ないようバッグを階段に投げ込み、
物言わぬ石像へと姿を変えた。


拝賀五月・・・記録:2階入り口付近
          スライムにより石化

つづく


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