魔法少女まじかるルピナ 第四話 妖艶な人形師

作:牧師


「ふふっ、逃げたければ逃げていいのよ」
女は笑いながら香澄に話しかけた。
「か、体が動かない」
しかし香澄の体は自分の意思では、指一本動かす事が出来ない。
「か、香澄先生」
ジャージ姿の男が香澄の横にいるが、やはり動けないようだ。
「今は彼女と私が話してるのよ、少し黙っててもらえないかしら?」
女が言った瞬間、男は完全に動けなくなった。
「岩倉先生」
ジャージ男の名前を香澄が呼びかけたが、男から返事は無かった。
「大丈夫よ、心配しなくてもちゃんと生きてるから」
女は香澄に近づくと妖しく微笑みながら話し続けた。
「貴方を人形にしてあげるわ、この柔らかい肌がセルロイドの様になるのよ」
女は香澄の胸を揉み扱きながら、怯える表情を楽しんでいた。
「いや、助け・・・」
香澄は悲鳴を上げようとしたが、口も動かなくなっていく。
「さあ、人形になりなさい」
女が言うと香澄の体が薄っすらとひかり、体が二十センチ程の人形になった。
「ふふっ、かわいいわよ、人形にされた気分はどうかしら?」
女は小さくならなかった服の中から、人形になった香澄を取り出し弄んだ。
『え、この人、急に大きく、あ、岩倉先生も、もしかして私が小さく・・・』
「人形になっても意識はあるから楽しいでしょう」
「貴方もついでに人形にしてあげるわ」
女は岩倉に視線を向けると、その体を人形に変えた。
「二人仲良く人形にしてあげたわ。確か人間は子供が出来るのよね?」
魔族は闇から生まれ出るので、人間のような出産が信じられなかった。
「人形のままでも子供が生まれるように、魔法をかけてあげる」
香澄たちの人形が淡く光る。満足そうに微笑むと女は人形になった香澄と岩倉を
近づけていった。

「どっちがいいかな?」
デパートのおもちゃ売り場でルピナは悩んでいた。
「ウサギさんか猫さんか」
ルピナの見ているのは、白いウサギのぬいぐるみと白い猫のぬいぐるみだった。
「ルピナって部屋にも、人形とかぬいぐるみとかたくさんあるよね」
プリムはルピナの部屋に飾られた大量のぬいぐるみと人形を思い出しながら言った。
「好きなんだから良いの、お母さんが買ってくれるって言ってるし」
買い物に付いて来たルピナの目的は両親にはばれていたが買ってくれる事になった。
「猫さんに決めた、お母さんこれ」
白い猫のぬいぐるみを抱えたルピナに、母親はにこやかに微笑んだ。

家に帰ったルピナは、新しく仲間に加わった白い猫のぬいぐるみを部屋に飾った。
「他のぬいぐるみもあの店で買ってもらったの?」
プリムは大量のぬいぐるみを見渡しながら言った。これだけ買えば上得意だろう。
「ううん、半分くらいかな?後は町のおもちゃ屋さん、今は閉まっちゃったけど」
デパートなどに押され、町にあったおもちゃ屋さんは潰れていた。
「優しいおじいさんのお店だったんだけどね」

「おはよう、ゆかりちゃん」
次の日、ルピナは学校に向かう途中、偶然ゆかりに会った。
「おはよう、ルピナちゃん」
挨拶をしたゆかりの顔が少し曇ってる気がして、ルピナは尋ねる事にした。
「どうしたのゆかりちゃん?何か悩み事?」
また胸の事かなとルピナは思ったが、ゆかりの答えは違った。
「うん、先週から香澄先生が学校に来ないの」
ゆかりの担任の香澄は先週半ばから学校に来ていなかった。
「そうなんだ・・・」
ルピナはいやな予感がした。

「プリム、香澄先生が学校に来てないのって、やっぱり魔族かな?」
家に帰ったルピナは直ぐにプリムに相談した。
「可能性は高いと思うよ。ルピナ、変身して」
「わかった、神の衣、聖なる力、魔を断つ剣をこの手に!!」
呪文を唱えると、指輪から放たれた眩い光がルピナを包んだ。
「変身完了。香澄先生の声は、あ、聞こえてきた」
ルピナが意識を集中させると、香澄の声が聞こえてきた。
「こっちの方向だ、あれ?ここは・・・」
ルピナが昔ぬいぐるみを買って貰っていた、潰れたおもちゃ屋さんだった。
「ここによどみを作ったんだ」
ルピナとプリムはいつも通り、気配を消してよどみに侵入した。

「さあ、あなた達も人形にしてあげるわ」
女は怯えた表情の女の子達にそう言い放つと、手の平を向け光の糸を伸ばし
女の子達の指や脊髄に潜り込ませて行く。
「ああ、いや、何をするんですか」
女の子達は何が起きているのか理解が出来ず、激しく怯えていた。
「小さな人形はあの人達で飽きたから、貴方達はマネキンにしてあげるわ」
女が言うと、女の子達の体は薄っすらと光り、指先から濃い肌色へと変化していく。
ゆっくりと二の腕、肩を侵食し全身を濃い肌色のマネキン人形へと変化させた。
『いや、体が動かない』
『私どうなってるの?誰か助けて』
マネキンにされた女の子達は心で助けを求めていた。

「あれが魔族の魔法かな?マネキンに変えるんだ」
ルピナはおかしいと思った、部屋には今の女の子のマネキンしか見当たらないからだ。
「そこで見てないで出てきなさい。気が付いてないと思ってるのかしら?」
魔族の女は、姿と気配を消しているルピナに向かい話しかけてきた。
「ばれてる!!どうして?」
今までの魔族には見つからなかったのに、この魔族には気付かれてしまった。
「この部屋に入った時から気が付いていたわ」
ルピナは覚悟を決めて、魔族の前に飛び出した。
「私の名前は、まじかるルピナ。貴方達魔族を倒す、正義の戦士です。
 女の子達にかけた術を解いて開放しなさい」
魔族に向かいいつもの台詞を言い放った。
「ルピナちゃんね。私はミュー。貴方に面白い物を見せてあげるわ」
ミューが手を伸ばしたのは、人形にされた香澄と岩倉だった。
『香澄先生!!この魔族が誘拐してたんだ。面白い物って何をする気』
ルピナは心の中で香澄たちの心配をした。
「人間って面白いわよね、こうすると子供が出来るんでしょ?」
ミューは人形になった岩倉の陰茎を香澄の膣に挿入した。
「なっ!!」
言葉を失うルピナに構わず、ミューは人形を動かした。
「人形になっても、ちゃんと射精が出来る様にしておいたわ。イキなさい」
少ししてミューが二人の人形を離すと、香澄の股から岩倉の陰茎へと
粘り気のある液体が糸を引いていた。
「これで子供が出来るのよ。人間って面白い生き物だわ」
ミューが楽しそうに言うと、ルピナは顔を真っ赤にして言い放った。
「女の人の一生に関わる問題を何だと思ってるんですか!!許せない。
 マジカルアロー!!」
ルピナがミューに魔法を放つが、見当違いの方向に流れていく。
「残念ね、ここに来た時に気が付いてるのよ。何もしないと思うの?」
ミューの指から光の糸が、ルピナの背中へと続いていた。
「人形にしてあげるわ。そのうち男の人を捕まえて人形に変えたら、
 貴方も子供を産ませてあげる」
ルピナの体が薄っすらと光り、服ごと二十センチほどの人形に変わって行く。
「ルピナーーーー!!」
プリムは叫んだがルピナは目の前で人形に変えられてしまった。
「服のまま人形になるのも珍しいわ、さあ、服を脱がせてあげるわ」
ミューが人形になったルピナに近づいた時、ゆがみの中に新たな人影が現われた。
「わたくしがお相手いたしますわ」
ルピナとミューの間に少女が立ちはだかる。
長い金色の髪、頭には小さな王冠を被り、真っ赤なドレスに豪華な金の糸で
見事な刺繍がしてあった。大きな瞳と豊かな胸が特徴的だ。
「よどみに迷い込んだのかしら?慌てなくても、人形にしてあげるわ」
ミューが糸を伸ばそうとした瞬間、少女は呪文を唱え始める。
「マジカルブラスター!!」
少女の手の平から眩しい光りの帯が放たれ、ミューの片手を消し飛ばした。
「きゃあぁぁ、こんな強力な魔法が使えるなんて、貴方何者・・・」
ミューが無くなった右手を押さえるように聞くと、少女は笑みながら答えた。
「直ぐ消滅する貴方には必要の無い事ですわ。それではお別れです」
少女はにっこり微笑むと、両手に高出力の光りの弾を出現させた。
「そんな高レベルの呪文!!貴方・・・」
ミューが全てしゃべり終わる前に、少女は魔法を放った。
「マジカルノヴァ!!」
放たれた光りが辺りを包んでいく。ミューは抗う事すら出来ずに消滅した。
「魔族は退治しました。ルピナちゃん達に掛けられた魔法も解けるはず」
人形にされたルピナに微笑み、少女は去っていった。
「あの子、誰?ルピナの正体にも気が付いてたし・・・」
プリムが考えていると、ルピナに掛けられた魔法が解け、元の姿に戻っていった。

「今回も後遺症が残ったね・・・」
人形にされた人は元に戻ったが、香澄と岩倉の記憶は全部消すわけにはいかなかった。
「うん、来月結婚するんだって」
あの事件で子供が出来たらしく、以前から付き合いのあった二人は結婚を決めた。
元々、結婚は岩倉の方がやや乗り気でなかったらしく、香澄は喜んでいたりした。
「後、あの子は誰なんだろう?」
ルピナとプリムは謎の少女の存在も気にしていた。


次回予告

「初めて二人で出撃だね」
「私が居れば百人力ですわ」
「私だって強いんだから」
「あれ?今回は敵も?もしかして一人じゃないの?」
「そうだね、こんなに一人でたくさんの魔法は使えないと思うよ」

次回 魔法少女まじかるルピナ 幻獣への誘い
「二人がかりなんて卑怯よ」
「ルピナ、今回はこっちも二人だって」

つづく


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