魔法少女まじかるルピナ 第二話 黄金の戦慄

作:牧師


「んくっ、んくっ」
老年の男が少女の口に、濃い紫の妖しい液体を流し込む。
「ひゃひゃひゃ、これでおぬしの体も、こやつらのようになるのじゃ」
後ろに並ぶ全裸の黄金像に視線を向けると、老人は楽しそうに言った。
「私があんなに・・・。」
少女の視線は黄金像の一点に集中していた。
それは88センチ(Fカップ)はある、大きな胸だった。
「ああっ、熱い!!あっ・・・。」
少女の胸は熱を帯びたかと思うと、風船が膨らむかのように大きくなっていく。
「あはっ」
コンプレックスだった小さな胸が、豊満な胸に変わって行き少女は喜んだ。
「ふむ、ではお嬢さん方もどうかな?」
老人は同じように、次々と少女達の口に紫色の液体を流し込む。誰も抵抗しない。
「凄い、これ私の胸?」
「これならあの子にも負けないわ、嬉しい」
「おじいさんありがとう」
何故か感謝され、魔族の老人は今ひとつ調子が出ない。
「この世界の者の考えは分からんものじゃ・・・。さて、ここからが本番じゃて」
小さく呟くと少女達に向かって呪文を唱えた。少女達の体が一瞬で動きを止める。
そして、少女達の意思に関係なく、老人の望むポーズを取らされていく。
「体が勝手に・・・。」
「おじいさん何をしたの?」
胸を大きくして貰った恩がある手前、少女達はあまり強く問いただす事が出来ない。
「一つおぬし達に質問がある、・・・」
老人は少女達にある質問を始めた、短い会話をした後、少女達はこう口にした。
「き・・・ん?」
その瞬間、彼女達の体はパキンと音を立て、全身残らず黄金に変わる。
老人は黄金像になった少女達を満足そうに眺めた。

ルピナは、社会見学に隣町の美術館を訪れていた。
「この絵凄くきれい」
そこには大きな花畑を題材にした油絵が飾ってあった。
「ルピナちゃんもこの絵が好きなの?ゆかりもこの絵凄く好きだよ」
隣のクラスのゆかりがルピナに話しかけてきた。去年まで一緒のクラスだったので
二人はとても仲良しだった。
「こんな花畑に行ってみたいよね」
「うんうん、ゆかりも行って見たい」
二人は一緒に美術館の中を見学した。
水墨画、彫刻、現代アートと色々置いてあるのがこの美術館の特徴だった。
「あそこは何があるのかな?」
ゆかりは片隅にある少し薄暗い入り口に気が付き、誘われるように足を踏み込んだ。
「あれ?ゆかりちゃん何処?」
お手洗いから戻ってきたルピナが辺りを見渡しても、近くにゆかりの姿は無かった。

「先生、ゆかりちゃんが居ません」
バスの中で隣の席に座っていた子が、ゆかりがバスに乗って居ない事に気が付いた。
「大変、先生が探してくるわ」
クラスの担任の香澄はバスから降りると、他の先生達に話しかける。
他のクラスでも何人か戻ってきていないらしい。
「とにかく私達で探しましょう、揃ってるクラスだけ学校に戻してください」
ジャージ姿の男の先生が、てきぱきと指示を出す。
「ゆかりちゃん・・・」
運良く全員揃っていたルピナのクラスのバスは、学校に向かい走り始める。
ルピナはゆかりが心配でたまらなかった。

「ゆかりちゃん今日は学校に来てないよ」
社会見学の翌日、隣のクラスを尋ねたルピナに、ゆかりのクラスの子はそう言った。
「来てないんだ・・・。もしかして他のクラスの子も?」
昨日、集合時間に居なかった子供が全員、学校を休んでいるらしかった。
「先生に聞いてみる」
ルピナはゆかりの担任の香澄に、昨日ゆかりが見つかったのか聞くことにした。
「誰にも言っちゃダメよ。昨日、先生たちが探したけどゆかりちゃんは居なかったの
 ううん、ゆかりちゃんだけじゃなく、他のクラスの子も全員」
深刻な話のはずなのに、香澄の表情は深刻そうには見えなかった。
「警察にも届けたんだけど、もしかしたら神隠しかもしれないから、仕方が無いよね」
香澄の話を聞いてルピナが職員室を出ると、プリムが話しかけてきた。
「ルピナ急いで屋上まで来て」
念話で言われ、ルピナは屋上に向かった。立ち入り禁止の屋上の鍵は開いていた。
「どうしたのプリム?急に屋上に来てなんて」
ルピナが来た事を確認すると、プリムはゆっくりと話し始めた。
「この街の周辺では、昔から神隠しや行方不明が多かったって話があるらしいの
 それを利用して、魔族達がある呪いを掛けてるみたい」
「呪いって?」
プリムの話が良く理解できなかった。
「行方不明は神隠しにあったのなら仕方が無い、って思わせる呪い。
 分かり安く言うと、誰かが居なくなっても、気にならない呪いを掛けて来てるみたい」
つまり昔からある言い伝えを利用して、行方不明に神隠しと言う理由付けをして、
人が居なくなった時に、捜索を諦める気にさせる呪いらしい。
「そんな、それじゃゆかりちゃんは・・・」
「大丈夫、怪しいのはあの美術館なんだから。今回は魔族を探さなくても良いし」
プリムの言う通り、あの美術館に魔族がひずみを作ってるに違いがなかった。
「神の衣、聖なる力、魔を断つ剣をこの手に!!」
ルピナが呪文を唱えると、指輪から放たれた眩い光がルピナを包んだ。
「変身完了。プリム、美術館に急ごう」
プリムとルピナは隣街の美術館を目掛けて飛び立った。

「ふむ、こんな所かの」
魔族はゆかり達に濃い紫の液体を飲ませ、胸が大きくなるを楽しげに見つめていた。
「ゆかりの胸が大きくなっていく・・・。」
ゆかり達の小さな胸が見る間に膨らみ、小さな体に不釣合いなほど大きくなって行く。
「お嬢ちゃん達には、まだ早すぎたかの?まあ良い」
魔族が呪文を唱えると、ゆかりたちの体は自らの意思に関係なくポーズを取り始める。
「あ・・・いや」
ゆかり達は膝で立て、両手で大きくなった胸を抱え上げるようなポーズにされた。
そして魔族の眼が光ると、怪しく語りかけて来た。
「お嬢ちゃん達に質問がある。体が何で出来ているか言って貰えるかの?」
魔族の言っている意味が分からず、ゆかりたちは誰も答えない。
「わからぬなら教えてやる、お嬢ちゃんたちの体は黄金で出来てるのじゃよ」
魔族が言うとゆかりたちは頭がぼおっとして、思わず答えてしまった。
「きんで・・・、出来てる・・・」
そう呟いたとたん、ゆかりたちの体は、一瞬のうちに黄金像に変わってしまう。
「なかなか良い出来じゃな。このつるつるした手触りが最高なのじゃ」
黄金に変わったゆかりたちの胸を撫で回しながら、魔族は悦に浸っていた。

「今何をしたの?」
ルピナがひずみにたどり着いた時、ゆかり達が黄金像に変えられる所だった。
「言霊使いみたいだね。あの魔族が魔力を込めた質問をするの、それに答えると
 ゆかりちゃん達みたいに、黄金に変えられてしまうの」
金で出来ていると答えさせられると金に、石で出来ていると答えさせられると
体が石になるらしい。
「質問に答えなければ問題ないから」
それを聞くとルピナは飛び出していった。
「そこまでです、女の子達にかけた術を解いて開放しなさい」
ルピナが老年の魔族に向かって言い放つ。魔族はルピナの胸を見て溜息をついた。
「お嬢ちゃんもこの薬を飲みなさるか?彼女達のようになれるぞ」
魔族の手には濃い紫色の液体があった。
ルピナはゆかりの体を見てその異変に気が付いた。
ゆかりは小さな体に不釣合いな程大きくされた胸を、両手で持ち上げる格好で、
黄金像にされていた。
「胸が大きくなってる・・・。私には必要ないわ!!」
顔を真っ赤にしてルピナは魔族に言い放つ。
「やれやれ、ではその小さな胸のまま、黄金の彫像に変えてやるとするかの」
「小さくて悪かったですね!!マジカルアロー!!」
ルピナの放った魔法の矢は魔族を直撃したはずだった。
しかし魔族に殆どダメージは見られない。
「魔法を使えるのか?だが魔族ではないな。わしは魔族のフリオ、おぬしの名は?」
フリオに尋ねられ、ルピナは答えた。
「私の名前は、まじかるルピナ。貴方達魔族を倒す、正義の戦士です」
「ルピナとやら、おぬしに質問がある、おぬしの体は何で出来ているかな?」
フリオの眼が光る、ルピナに言霊を仕掛けてきた。
「くっ。そんな事は自分で考えたらどうです?マジカルジャベリン!!」
フリオの言霊を跳ね除け、ルピナは魔法の槍を何本も出現させフリオに放つ。
「ぐはっ。人の話は聞けと言われた事は無いのかの・・・。あと少しか・・・」
フリオはルピナの注意を会話で引いて、黄金像に近づいて傷を治そうとする。
「大きなお世話です!!マジカルブレード」
ルピナの放った三日月型の光りの刃がフリオを両断する。
フリオは切られた所から砂のように崩れ落ちた。
「これで事件解決だね。黄金像にされていたゆかりちゃんも元に・・・」
黄金像にされていたゆかり達の体が輝くと、一部を除いて元の姿に戻った。

「おはよう、ゆかりちゃん」
事件解決から数日後、学校に向かう途中で、ルピナは偶然ゆかりに出会った。
「んっ、ルピナちゃんおはよう」
にこやかに挨拶したゆかりの胸は、フリオに大きくされたままの状態だった。
「ルピナ、やっぱり戻ってなかったんだね」
「みたいだねプリム。ゆかりちゃん達大変みたい」
さらわれた女の子達は、大きくされた胸を男の子達に触られたりと大変だった。

後日、美術館は何処から話を聞いたのか、一部の女性に大人気の場所となった。


次回予告

「プリム、また女の人たちがさらわれたよ」
「今回の敵は少し手ごわいかも・・・」
「どうしたのプリム?あれ?さらわれた女の人達は一体何してるの?」
「ルピナも大人になったら分かるよ」
「変身したら分かるのかな?えい!!」

次回 魔法少女まじかるルピナ 快楽の宝石箱
「変身しても解らないと思うけど、あまり早いうちに覚えないでね・・・」

つづく


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