魔法少女まじかるルピナ 第一話 正義の戦士誕生

作:牧師


「貴方のお友達は、こんなに美しい石の彫像になったわ」
女は目の前の石像の顔をなでながら、後ろで怯えている少女に話かけた。
「ま・・・、舞」
先ほどまで一緒にお喋りしていたはずの、石像へと変わり果てた友人の名前を
力なく呟いた。
「そんなにがっかりする事も無いわよ、貴方も今すぐ石に変えてあげるんだから」
女は少女に向き直ると、ブツブツと何かの呪文を唱え始めた。
「いや・・・。誰か助けて!!」
女から遠ざかるように、走り出した少女の背中に光の弾が放たれる。
「友達を置いて逃げるなんて、少し薄情なんじゃない?」
少女は光の弾が当たった背中から、ゆっくりと灰色の石に変化していく。
「あ・・・」
少女は声を出そうとしたが、体に力が入らず、声を出す事は出来なかった。
「あらあら、何か言いたかったかしら?でも、ごめんなさい。体の自由は魔法で
 奪わせて貰ってるわ」
少女に近づくと、女はおもむろに唇を奪う。舌を絡め、吸い付き、激しいキスをする
やがて満足したように口は離すと、少女に話しかけた。
「今の貴方の気持ちは怒り?恐怖?快楽?はぁん、その感情が私の力になるの」
女は激しいキスで放心してる少女を、楽しそうに見つめた。
「そろそろ石の彫像に変わってもらうとするわ、安心しなさい。石になったまま
 貴方は永遠に快楽を味わうのよ、今のキスなんて比べ物にならないほどの」
少女の背中から広がった石化は、胸も、足も、手も服ごと灰色に染め上げて行く。
石になった部分から、信じられない快感が少女にもたらされていた。
『何、この気持ちよさ?頭の中が白く染め上げられていく、もう何も考えられ無い』
少女の心が、快楽の波に押し流されようとしていた頃、石化は首筋まで及び、
残った少女の顔も灰色の石へと変えていった。
「ふふ、美しい石像になったわ。そして私の力になるのよ」
女の満足そうな声があたりに響いた。周りには無数の女性の石像が並んでいた。

「妖精さん?」
ルピナは目の前を飛んでいる、小さな人形のような女の子を見て呟いた。
「私が見えるの?やっと見つけた」
ルピナの呟きを聞いて、その小さな少女は嬉しそうに飛んできた。
「私の名前はプリム。お願いがあるの、少し話を聞いて貰えない。えっと名前は?」
プリムに名前を尋ねられたので、ルピナは名乗る事にした。
「ルピナ。私は愛沢ルピナ。お話って何?」
周りに人がいたら危ない人と思われただろう。
ルピナが何も無い空間に向かって、ブツブツと独り言を言ってるようにしか見えない。
「力を貸して欲しいの。このままだと、この町に住んでる人も危ないの」
町の危険と言われてルピナは驚いたが、冷静に今置かれている状況に気が付いた。
「とりあえず、お話はお家に帰ってから聞くことにするね」

「と言う訳で、ルピナに魔法を使って、魔族達を倒して欲しいの」
プリムの話によると、魔界からゲートが開き、人間界に何人かの魔人が送り込まれた
と言う事らしい。
その波動を感じた神界から、プリムが人間界に送られてきたらしい。
プリムの姿が見るには、純粋な心の持ち主で、魔法を与えられても悪用しない
優しい心が必要なのだそうだ。
「でもどうして神界から直接、魔族を神様が倒しにこないの?」
わざわざ人間を選ぶところが理解できなかった。
「だから、魔界が手を出してきたのが神界じゃなく、人間界だからなの、
 直接、神界に攻めてきたわけじゃないから、神界の戦士は手を出せないの」
この辺りは神界と魔界の、暗黙の了解らしい。全面戦争はやりたくないらしかった。
「この指輪をつけて呪文を唱えると、魔法を使えるようになるわ」
ルピナに手渡されたのは、緑の宝石の付いた一つの指輪だった。
「これブカブカだよ、あっ」
ルピナが右手の薬指に指輪を通すと、ぴったりのサイズに大きさが変化した。
「呪文はなんて言えばいいの?」
「【神の衣、聖なる力、魔を断つ剣をこの手に。】だよ。さあ唱えてみて」
プリムはルピナにゆっくりと呪文を教えた。
「えっと、神の衣、聖なる力、魔を断つ剣をこの手に!!」
呪文を唱えると、指輪から放たれた眩い光がルピナを包んだ。
「今の光は・・・。あれ?視線が高くなってる。あ・・・私、大人になってる」
変身前は十歳だったルピナだが、鏡に映った変身後の姿は、高校生位には見えた。
「変身してる間だけ、一時的に大人になってるだけだよ。変身を解くと元に戻るよ」
ルピナが鏡に映った自分の姿を、くるくると回りながら、楽しそうに眺めていた。
「フリルの付いたワンピース。かわいい衣装なんだ、テレビで見た魔法少女みたい」
ルピナの衣装は、スカート部分にフリルの付いた、ピンクのワンピースだった。
ショートカットだった髪も、腰まで長く伸びていた。
「あれ?何か聞こえてきた・・・。何この声?」
不意にルピナの頭の中に、女性の苦しむような声が響いた。
「ルピナ!!それは襲われた人の助けを求める声だよ。近くに魔族が居るんだ」
プリムが窓に向かって飛んでいくと、ルピナはプリムの後ろ姿を見ながら聞いた。
「どうやってそこまで行くの?歩いて行けばいいのかな?」
「大丈夫、ルピナは飛ぼうと思えば飛べるから、それに今は神の力を借りてるから
 私と同じように、純粋な心の持ち主か、魔族にしかルピナの姿は見えないよ」
つまり空を飛んでも、下着を見られることを気にしなくていいと言う事らしい。
「わかったわ、こうね」
ルピナが飛ぶ姿をイメージすると、体が宙に浮き、自由に動く事が出来た。
「その調子、ルピナ、助けを求める方向はわかる?」
ルピナが声を頭に響く声を聞く事に集中すると、それが北東の方向だとわかった。
「あっちの方向!!」
プリムはルピナの指差す方向に飛び始めた、その後をルピナも飛んで行った。

「空間のひずみがある。ここに潜んでるんだ」
プリムが見つめる先には、古く寂れた小さな神社があった。
神聖な場所の神社に魔族が居るのは、皮肉と言うか、大胆と言うか。
「ひずみに侵入するよ、準備はいい?」
準備はいいと言われても、ルピナには何を準備すればいいのか分からなかった。
「それじゃいくよ」
プリムがひずみに吸い込まれるように消えて行き、ルピナもその後に続いた。
「これがひずみの中の世界?あ、お屋敷がある」
ルピナたちの目の前に大きな洋館が姿を現した。魔族が作り出している物に
間違いなかった。
「あそこから声が聞える。一階の右から二番目の部屋」
ルピナ達が声のする部屋の窓にたどり着くと、そこにはたくさんの女性の石像と
一人の捕らえられている女の子が居た。
「ふふっ、一人で捕まるなんて、貴方は運が良いわね。いつもと違って
 たっぷりと気持ち良くさせてあげるわ」
魔族の女が捕らえられた女の子に近づいていく。
飛び出して助けに行こうとするルピナを、プラムは引き止めた。
「どうして止めるのプラム?あの女の人を助けないと」
「あの女がどんな魔法を使うのか、見てから行かないと危険だよ
 女の子は後で助ければいいから」
プラムは冷静にルピナに説明した。
「あああぁぁっ」
魔族の女から放たれた光が女の子を直撃し、部屋から女の子の声が響く。
足元からゆっくりと灰色の石に変わっていく。
「体が動かない気分はどうかしら?さあ服を脱がしてあげるわ」
魔族は女の子の上着のボタンを一つ一つ外して行き、ブラのホックを外して
胸をあらわにさせる。
「あらあら、かわいらしい胸ね、大きくなるように私が揉んであげるわ」
魔族の女は女の子の胸を右手の手の平で揉み解す、胸を揉みながら唇を奪い、
舌を差し入れ、激しいキスをする。
「さっきの光が魔法みたいだね。おそらく動きを止めて、気持ち良くさせてから
 石化させるんだ。快楽を力にするタイプみたいだから何とかなりそう」
魔族は人間の感情を力にする。手に入れやすい快楽を力にするのは弱いタイプで
痛み、苦しみを力にするタイプが強力な魔族らしい。
「気持ち良い事や楽しい事は我慢しにくいから。痛みや苦しみみたいに
 反射的に耐える感情は強力だけど、力になりにくいらしいから」
プリムが説明すると、ルピナはもう我慢の限界に達し、飛び出していった。
「そこまでです、女の子達にかけた術を解いて開放しなさい」
ルピナが窓から飛び込むと、魔族の女はさらに激しく女の子を責めた。
胸を揉んでない左手を秘所に潜り込ませ、中指で陰核を弾く様に転がす。
それに反応して、女の子の秘所から銀色の雫が、トロトロと流れ出る、
流れ出る銀色の雫を、指ですくい上げるては秘所に塗り込み、
さらに激しく陰核を指で攻め上げる。
右手も胸を激しく揉みしごく、さらに中指と人指し指で乳首を摘み、
引っ張り上げては、また胸を撫で回す。
「や・・・やめなさい!!」
ルピナが真っ赤になって叫ぶと、ようやく魔族の女はキスを止めて唇を離した。
「かわいい子猫ちゃんね。何処から入り込んだのかしら?まあいいわ」
魔族の女が女の子から手を離す。服や下着を半分脱がされた状態のまま
女の子は足元からパキパキと音を立てて、完全に石像に変わってしまった。
「この娘で楽しめなかった分は、貴方でたっぷりと味わってあ・げ・る」
魔族の女はルピナを見て、妖しい笑みを浮かべた。
「こんなに酷い事するなんて、貴方を許さない!!」
ルピナは戦った経験は無いが、指輪の力で戦い方を少しだけ理解していた。
「えっと、マジカルアロー」
掛け声と共に現われた五本の魔法の矢が、魔族の女に向かって放たれる。
「魔法ですって!!」
魔族の女は、ルピナが魔法を使ったことに驚きを隠せなかった。
反応が遅れ、三本の矢が魔族の女を直撃した。
「やるじゃないの、私は魔族のミューレ。貴方の名前を聞かせて貰えるかしら?」
ミューレが名乗ったので、ルピナも名乗る事にした、少し考えてこう言った。
「私の名前は、まじかるルピナ。貴方達魔族を倒す、正義の戦士です」
ルピナが名乗ると、ミューレは妖しい笑みを浮かべながら、石像の少女に近づく。
「ルピナちゃんね。貴方もこの女の子のように、気持ちよく石にしてあげるわ」
ミューレは女の子の石像に近づくと、再び唇を重ねた。
石像が少し光かり、ミューレがたった今受けた傷が、見る間に消えていく。
「傷が消えていく」
ルピナは続けて攻撃をしたかったが、石像にされた女の子に当たりそうな為
手出しが出来なかった。
「今度はこちらの番かしら?それ、石におなり!!」
女の子が受けたのと同じ光の弾を、ミューレはルピナに向かって放った。
「きゃっ」
ルピナは光の弾を寸前でかわすと、ミューレに魔法の槍を放った。
「うっ。こんなに強力な魔法が使えるなんて・・・。油断したわ。
 でも、まだ負けたわけじゃないわよ」
右胸に魔法の槍を深々と突き刺されながらも、ミューレはルピナに光の弾を放つ。
「きゃあああっ」
ルピナは光の弾の直撃を食らい、悲鳴を上げた。
「ふふふ、油断して当たったわね。かわいらしい悲鳴だこと。・・・悲鳴?」
光の弾の魔法を受けると、悲鳴を上げる事も、体を動かす事も出来ないはずだった。
「あれ?なんとも無い」
ルピナが恐る恐る目を開けると、何処も石になっていなかった。
「ルピナ、神の衣のおかげだよ。魔法の槍でダメージを受けてる事も大きいけど」
プリムの声が聞こえた。窓際から声を送ってくれてるようだ。
「これで終わりです。覚悟して下さい。マジカルブレード!!」
ルピナの前に出現した眩い光の三日月型の刃が、ミューレに向かい襲い掛かる。
「こんな所でわたしが・・・。ぐわぁぁああ!!」
ミューレは弾け飛ぶ様にかき消され、石にされていた女の子達も元に戻った。
「やったねルピナ。女の子達の記憶は消しておくね。騒ぎになると困るから」
プリムがそばに飛んできて、嬉しそうに話しかけた。
「ありがとうプリム。あれ?地震かな?」
ルピナの言う通り地面が揺れていた。
「いけない、ミューレの作ったひずみが消えようとしてるんだよ」
周りの女の子達が次々に消えていく。
「女の人達が消えちゃった!!どうしよう」
ルピナがあわてると、プリムは優しく説明してくれた。
「空間の連鎖が切れたから、さらわれた所に戻っていくんだよ。
 大丈夫、もう彼女達の記憶は消してあるから」
プリムの仕事は意外に早かった。ルピナはプリムに微笑むと、空中に舞い上がる。
「私達も帰ろうか」
ルピナが飛び始めるとプリムも後に続いた。ルピナは女の子達を助けた事で、
とても嬉しい気分になっていた。

こうしてルピナの魔族との戦いが始まった。


次回予告

「大変大変。お友達のゆかりちゃんがさらわれちゃった!!」
「ゆかりちゃん?ルピナ、その名前どこかで聞いた気がするんだけど」
「ゆかりちゃんはとても優しくて、私と仲の良いお友達なの。絶対助けないと。
 さらわれた場所は、もしかしてあの美術館かな?プリム行くよ!!」

次回、魔法少女まじかるルピナ、黄金の戦慄!!
「ルピナ、ゆかりちゃんて、もしかして人違い?」

つづく


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