青い蛙 1

作:牧師


「目的の村までもう直ぐだな」
パ−ティのリーダーのレミが、横を歩いてるリアンに話しかけた。
「そうですね、この森を抜けたら村だと思います」
彼女達はここから遠く離れた町で、この先にある村に手紙を届ける事と調査を依頼され
ていた。
「しかしおかしな依頼ですよね?手紙の配達なら専門のギルドもあるのに、わざわざ冒
険者を探して依頼してくるなんて」
ウイザ−ドのアリシアは依頼の内容を疑問に思っている。
「アリシアは心配性だから、だいたい依頼を受けた時からそればかりじゃないですか」
「でもリアン、手紙の配達と一緒に、調査の依頼って所が気になるんですよね・・・」
「リアンもアリシアもいい加減にしろ。依頼を受けたんだから、それをかたずける。冒
 険者として当然の行動だろう。調査しないといけないから私達の出番なんだろうが。
 ルナ先に行って少し調べてみてもらえるか?何かあったら直ぐ戻ってきてくれ」
レミはシ−フのルナに斥候を頼んだ。
「了解。レミ達はここで待ってて。後、お昼の準備よろしくね」
ルナは軽く挨拶し、自慢のショ−トカットの髪を揺らしながら村に向かい走り始めた。

少しした後、村の中にはルナの姿があった。
「偵察なんて簡単簡単」
あたりを見渡してルナは呟いた。
「でも・・・ほんとにこの村だよね?」
ルナが疑問に思うのも無理は無かった。村には人影が無い。正確には人が誰も外に出て
きて居ない。
「変だな何かに襲われて荒らされた後も無いし。もう少し歩いてみようかな。あれ?今
 何か光った気が・・・」
光った方向に向かって慎重に歩いていく。たどり着いた場所は村の広場のようで、そこ
に彫像があった。光の正体は彫像に反射した陽光だったようだ。ルナはその彫像に近づ
き値踏みするように魅入っていた。
「綺麗。本物のサファイヤだよね?こんな広場に置けるような物じゃないのに・・・
 それにこの完成度。凄いな誰の作品なんだろう」
彫像は裸の若い女性だった、振り乱した長い髪、困惑したような顔、豊かな胸の膨らみ
何かを振り払おうとしたような腕の形、引き締まった臀部、何かから逃げようと走り出
そうとした足の形今にでも動きそうな女性の躍動感を余すとこなく再現していた。
「村を調べて誰もいないんだったら持って帰ろうかな。さてと、これくらいにして後は
 レミ達と一緒に戻ってからにしよう」
ルナがレミ達の待つ場所に戻ろうと振り返った時、足に何か冷たいものが張り付いたの
を感じた。
「きゃ!!冷たい!!何だ蛙か・・・」
足に張り付いたのは大きさ3センチほどの青い蛙だった。周りを見ると足元にはまだ
何匹も同じ蛙が集まっていた。足に張り付いた蛙は舌を伸ばしルナの足に吸い付いた。
「同じ吸い付かれるなら蛭よりましだしね。ほら邪魔だからどいたどいた。えっ?」
ルナが蛙を剥がそうと足を動かそうとした。しかし蛙に吸い付かれた足は金縛りにあっ
たように動かなかった。足は蛙が吸い付いた所から青い染みがゆっくりと広がり透き通
ったサファイヤに変わって行く。
「何?何なのこの蛙?い、いや・・・。もしかしてさっきのあの彫像は!!」
後ろにあるサファイヤの彫像の姿をルナは思い出した。
「さっきの女の人はこの蛙から逃げようとしてたんだ。いや!!レミ!!アリシア!!
 リアン!!誰か助けて!!」
靴の上にも肩にも左手にも、蛙は次々と容赦なく這い上がって来る。
「え?そんな・・・靴が!!服も!!」
靴や服に張り付いた蛙は舌を吸い付かせずに、背中から出た粘液を擦り付けて行く。粘
液が塗られた所はひび割れ、砂のようにサラサラと崩れていく。
足は指先に至るまで透き通ったサファイヤに変わり、足をサファイヤに変えた蛙は足を
這い上がっていく。左手に吸い付いた何匹かの蛙も指先に至るまで丁寧にサファイヤに
変えていく。
「胸に触らないでよ!!このエロ蛙!!」
ルナは胸に直接張り付いた蛙をまだ動く右手で掴んで引き剥がす、掴まれた蛙は粘液を
出して掌から抜け出すとそのまま右手に舌を吸い付かせる。蛙の出した粘液で、指に着
けた指輪だけ砂になっていく。
「あ・・・。もう手が動かない・・・」
右手に吸い付いた蛙は掴まれて怒ったのか、瞬く間に右手をサファイヤに変えてしまっ
た何匹かの蛙が再び胸に這い上がり胸に吸い付いた。
蛙は容赦なく少し小ぶりなルナの膨らみをサファイヤに変えて行く。
何匹かの蛙がルナの胎内にその体を潜り込ませて行った。
「痛い!!いや!!んっ、ああ・・・そんな所に入り込むなんて。」
そして子宮にたどり着くと白い泡の様な物を次々に産み付けていった。
「きゃあ!!冷たい!!何?何なの?お願いだからこれ以上変な事しないで」
涙を流しながら懇願するルナの願いもむなしく、胎内に潜り込んだすべての蛙の産卵が
終わる。
「いや・・・ああ!!ナカに吸い付くなんて」
蛙は出口が塞がらない様に、少しずつ胎内をサファイヤに変えながら外に出て行った。
「私まだだったのに。こんなの酷すぎるよ・・・。あ・・・」
胸や腹部に吸い付いた蛙は体内までサファイヤに変わるまで吸い付いて居るが、腕をサ
ファイヤ化させた蛙がとうとう首筋や頭の上に這い上がって来る。
「あれ・・・目の前が暗くなって・・・目が・・見・・・え」
首筋や頭の上に吸い付いた蛙がルナの顔をゆっくりとサファイヤに変えていった。蛙は
髪の毛の1本も残さずルナの体を体内までサファイヤの彫像へと変えてルナから離れて
いくルナの目から一筋の涙がサファイヤに変わった頬を伝って地面へ落ちて行った。

つづく


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