とある学校のプールで

作:Shadow Man


 名門で知られるとある学園。ここの水泳部もまた名門と呼ばれるに相応しい実力校であり、そしてスパルタで有名である。
そして今日は水泳部の月に一度のタイムトライアルの日…

「あ〜あ、またテストの日が来ちゃったよ…」
暗い表情を見せたのは水泳部の中でも泳ぎの速さで一二を争うシャニー。
「何言ってるのよ。こういうときこそ本気で泳げるじゃない。」
「まったく、フィルはいつも呑気よねえ〜。」
そういわれたフィルもまたシャニーに並ぶスピードの持ち主である。

「あ、セシリア先生が来たっ。整列、礼!」
キャプテンであるリリーナの掛け声で部員が横一列に並び、先生に礼をした。
そして部員一同が顔を上げたとき、全員が揃って嫌な感じを覚えた。
「ねえ、今日の先生、なんだか怖くない?」
「うん…なんていうかものすごくピリピリした感じ。」
そう部員たちがナイショ話をしているとセシリアは敏感に反応した。
「そこ!何をおしゃべりしているの!!あなたたち、テストを受ける前に罰ゲームを受けたいの?」
『いえ、す、すいません!!』
2人はすぐに謝った。この部のルールでテストで決められたタイム以内に泳げなかった部員は罰ゲームを受けるのである。

やがてテストが始まったが、相変わらずセシリアは不機嫌なままであった。
最初に一番遅い部員から泳いだ。一応遅い部員は遅いなりにタイムを設定しているのだが、それでも今日は格別に厳しく、
ドロシーは最初の犠牲者としてプールサイドで腹筋100回の罰を受けた。
「やっぱり今日の先生、おかしいよ。何かいやなことでもあったのかなあ?」
「それだけど、実はね…」
「え、先生、振られたんだ!」
「本当?やっぱりね。」
そんな部員たちの声がセシリアに届かないはずがなかった。
「クラリーネさん、何を話しているのかしら?」
噂話の張本人は名指しされて思わず直立してしまう。
「どうもあなたは特別メニューを受けたいようね。」
「いえ、そんな、めっそうもありません。」
と、クラリーネは言葉遣いまで固くなった。
「まあいいわ、とにかくクラリーネさん、次はあなたの番ね。」
セシリアはそう言ってクラリーネを泳がせた。どんなムチャクチャなタイムを言われるかと内心恐れていた彼女だったが、
意外にもセシリアが設定したタイムは平凡なものであった。
『なーんだ、楽勝じゃない。』
そう思ったクラリーネは悠々と泳ぎ、もう少しでゴールというところまで来た。
しかしそこで突然彼女は足を動かすことが出来なくなった。
足が吊ったのかと思った彼女だったが、そのうち水面の下の身体が動かせなくなった。
『か、身体が動かない…』
まるで全身が麻痺したかのような感覚を覚えて彼女はパニックになった。だが、それを見ていた他の部員たちはもっと怯えていた。
「どうしたの?クラリーネさん、ちょっとゼリーに捕まったくらいでもう泳ぐのやめちゃうのかしら?」
と、セシリアが冷たく言い放つ。先にセシリアはゴール前に『水で膨れるゼリー』を投げ入れていた。
さらにそのゼリーはまるで生きているようにクラリーネを飲み込んでいった。
『じょ、冗談じゃないわよ…こんなもの…』
必死に抜け出そうともがいたクラリーネだったが、どんなに足掻いてもゼリーから逃れられなかった。
やがて首から上の部分もゼリーに飲み込まれるようになり、僅かな呼吸の隙間だけを残してクラリーネは全ての自由を奪われた。

水中で動けないクラリーネを見て、セシリアは軽く笑いながら水中からゼリーを引き上げた。
すると時間が経つとともにゼリーは萎んでいき、そしてゼリーは最後には蒸発したが、
その後にはクロールの格好のままプールサイドに横たわって動けないクラリーネの身体だけが残った。
そんな彼女の姿を見て部員たちはみな青ざめた。だが、セシリアは構わずさらに次のテストを続けさせた。
「お願いです、先生。こんなことは止めてください!」
キャプテンのリリーナが突然立ち上がって意見した。しかしセシリアはそれに応えず、リリーナにテストを受けるように命じた。
リリーナは拒否したが、セシリアは彼女をプールに落とすとタイムも計らずに罰ゲームを言い渡した。
「リリーナ、あなたは潜水1時間の罰ね。」
そう言うとセシリアもプールに入り、リリーナの頭を押さえつけた。リリーナも抵抗したが力の差は歴然であった。
『く、苦しい…』
「1時間も水中で耐えるのは大変だから、手伝ってあげるわね。」
そう言って今度はリリーナの背中に針のようなものを刺した。するとリリーナの身体が灰色に変色し始める。
だが、水中で必死にもがいているリリーナには自分の身に何が起きているか理解できなかった。
その間にも身体の変色はどんどん広がっていき、彼女は最後まで自分の変質に気づかないまま水着を除いて全身が石の塊になった。
そしてセシリアは石になっていないリリーナの水着の部分をつまみあげたが、石になった体の重みで水着が破れてしまった。
「あら、水着が脱げてしまったようね。でも罰ゲームは罰ゲームだから、1時間はそのままそこにいてもらうわよ。」
こうしてリリーナはプールの底で裸のまま横たわる格好で放置された。
その姿を見て部員は完全に色を失い、逃げ出すものも出てきた。
だが、セシリアはそれを許すはずもなく、捕まえてはリリーナ同様に石にして水中に放り込んだ。

そのとき、
「先生、私がテストを受けます!」
とシャニーが叫んだ。そして隣にいたフィルにウインクをした。
それを聞いたセシリアは不気味なほどに嬉しそうな表情を露わにして言った。
「いい子だね、シャニー。あなたには特別の舞台を用意してあげるわ。ちょっとプールに入って待っててね。」
そして何やら物をとりに反対側のプールサイドに移動した。
それを見てシャニーの意思を察したフィルは残った部員たちを逃がした。セシリアがそれに気づいたときには、すでに殆どが更衣室まで逃げていた。
セシリアは怒りで顔を真っ赤にし、壁になって立ちふさがっていたフィルを捕まえるとプールまで投げ飛ばした。
「全くあなたたちは…もう許しません!!」
そして今度は持ってきた『増えるしびれクラゲ』をプールにばら撒いた。
シャニーはフィルを助けるためにプールの中心近くまで泳いでおり、クラゲはその周囲を覆うように水で膨れていった。
「さあ、無事にプールサイドに上がることが出来るかしら?」
セシリアは意地悪そうに笑った。
周りをしびれクラゲに囲まれたシャニーはとにかく一点突破を目指して一番クラゲの薄いところに向かって泳ぎだした。
フィルもそれについていこうとしたが、投げ飛ばされたときのショックで一瞬眩暈を起こして止まってしまった。
そんなことは知らず、がむしゃらにシャニーは泳いだ。
『あと少しでプールサイド!』
シャニーの目が一瞬輝いた。しかし後一歩というところでシャニーの足をクラゲの触手が捕えた。
あっという間にシャニーにたくさんのクラゲが絡みついた。
「や、やめてー!!」
シャニーは叫んだが、お構いなしにクラゲは彼女を体内に取り込んだ。


フィルが意識を取り戻したとき、彼女の目に映ったのは透明なクラゲの傘の中で自由を奪われて目は完全に虚ろなシャニーの姿だった。
「シャニー!!」
シャニーを助けに思わずフィルはクラゲに向かって突進した。しびれクラゲはフィルを捕えようと無数の触手を伸ばしたが、
フィルはそれを器用にかわすとクラゲを一発殴り、シャニーを吐き出させる。しかし完全に全身が麻痺していたシャニーはまるで人形のように動かなかった。
そんな彼女を抱きかかえて今度はフィルが脱出を図ったが、今度はさっきのように自在に動いて避ける事も敵わなかった。
「シャニー、ごめん!」
万事休したフィルはシャニーをまるで丸太を扱うように振り回した。当然しびれクラゲの触手がシャニーに絡みつくが、
もう全身麻痺した彼女には何の影響もなかった。

だが、その必死の作戦も大きな落とし穴があった。
シャニーに何匹ものクラゲの触手が絡みついたため、フィルはどんどん振り回すのが大変になってきた。
さらにフィル自身もそう持久力があるタイプではなかったので、とうとう力尽きてしまった。
その隙を突いて一番大きいしびれクラゲがフィルの身体を触手で捕えた。
「ああっ…!」
フィルが喘ぎ声をあげる。しびれクラゲの触手がフィルの性感帯に触れたのだった。
さらに触手はフィルの身体に巻きつき、彼女の身体を刺激し続けた。フィルはもはやなす術もなく触手に弄ばれ続けた。
『はぁっ、もう…ああっ!やめ…』
セシリアはそれを見てただ笑っているだけであった。


しばらく後、逃げ出した部員が一人の女性を連れて戻ってきた。しかしセシリアはそこにはいなかった。
『クッ…この私を拉致監禁して、しかも私に化けて水泳部の部員たちにこんな酷いことをするなんて…!』
その女性こそが本物のセシリアだったのである。
プールには固められた部員たちがそのままの形で残されていた。セシリアは固められずに逃げ残ったキャスとララムに部員の回収を命じて立ち去った。
2人はそれぞれ固められた部員たちをプールサイドに運び始めた。そして、水底で石化ていたリリーナを持ち上げたとき、
キャスの手が思わず石になったリリーナの乳首に触れてしまった。
『アッ!』
キャスは小さく叫ぶとその手を離した。幸い水中だったのでリリーナには傷ひとつつかなかった。
「どうしたのよ?」
ララムは訝しげに尋ねた。
「べ、別になんでもないわよ。それよりもララム、こっちはいいからシャニー先輩とフィル先輩を運んであげて。」
「なんで2人も一度に運ぶのよ〜。」
「独りずつ運べばいいじゃない。さあ、さっさとやる!」
「どうしたのよキャス。何かムキになってない?」
「なんでもいいじゃない!」
キャスの発言を疑問に思ったララムだが、あまり怒らせるのもどうかと思い、シャニーのほうへ向かった。

シャニーとフィルを悶えさせたクラゲはすでに活動を止めていて、絡み付いていた触手も簡単に外れた。
2人はまるでマネキンのように笑顔のままピクリとも動かず、ララムはちょっと心配したが、
僅かに呼吸しているのを確認し、プールサイドまでビート板のようにシャニーとフィルを運んだ。
思いの外早く終わったのでララムはキャスのほうを振り返ると、水着を脱いで裸になって石になったリリーナを運ぶキャスがいた。
「キャス…何をやってるの?」
目が合ったララムは思わず言葉が出たが、内心見てはいけないものを見た気がした。
キャスもまさかララムがそんなに早く片付けると思ってなく、あまりの恥ずかしさに硬直してしまった。

それからしばらくしてセシリアが薬や魔法の杖などを持って戻ってきた。だが、プールサイドには固まったままの部員がいるだけで
キャスとララムの姿は見えなかった。
「まったく、あの子たちったらどこへ行ったのかしら…仕事放ったらかしで。」
そう言いながら固まった部員たちを戻し始めた。元の身体に戻った部員たちはセシリアの姿に怯えていたが、
そのたびに彼女は事情を説明していった。
そして最後にセシリアはプールの中に残っていたリリーナを引き上げようとした。だが、その石の塊がやけに重いと思った彼女は
他の部員たちと一緒に石を持ち上げた。

その石像を見た部員たちは一様に言葉を失った。
もがくような姿で固まったリリーナを抱くようにキャスも同じように裸で石になっており、
さらにその2人を包むような感じでララムも石化していた。
しかもリリーナとキャストララムの唇は1点で重なっていた。

ララムはリリーナを石にした針を握ったままだった……

THE END


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