作:Shadow Man
さて、倉庫に逃げ込んだ夏子と京子は怯えながら時間が経つのを待っていた。
誰も探しに来なかったが、それが逆に小さな物音でも彼女たちを驚かせる。
隠れ始めて2〜3時間たった頃だろうか、少し緊張の糸が緩んだ京子の背中に突然虫が飛び込む。
「キャッ!」
できるだけ声を殺して京子が叫ぶ。むしろ夏子の方がそれに驚いて飛び上がり、壁に激突してしまう。
その拍子で棚の上に置いてあった瓶が夏子の上に落下し、彼女の頭で割れて中の液体が夏子に降りかかる。
「ひゃあぁぁっ!」
夏子の方は声も殺さずに叫び声をあげる。それを聞いた京子は夏子の方に駆け寄ろうとして自分も足を滑らせて転び、
こぼれた液体でウェアを濡らす。
二人は大きな音を立てたことで気づかれるのを恐れたが、運よく誰にも気づかれなかったようで再び静けさが戻る。
気持ちが落ち着いたところで、着ていたウェアが濡れていたことが気になった二人は服を脱ぎ、下着姿になる。
「全く、何でこんな目に逢うのよーー。今日は運勢最悪〜」
濡れたウェアを適当なところに干しながら夏子が呟く。京子も同じように肯いた。
そのとき、どこかでカチッという物音がした。二人は大して気にも留めていなかったが、やがてギュイーンという
大きな機械の音とともに倉庫の中で風が吹き荒れる。
「な、何?!」
突然の嵐に京子が驚く。そして出所を探しに暗い倉庫の中を風に逆らって進む。
しばらくして彼女は大きな送風機のスイッチがONになっているのを見つけ、それを止めた。
「さっきのドタバタでスイッチが入ったのかしら、ねえ夏子?」
だが、同じ倉庫にいるはずの夏子の返事がない。何度も京子は呼びかけるがやはり何の答えもなかった。
京子は心配になって元の場所に戻る。薄明かりでよく見えなかったが夏子らしき人影が立っているのを見て少し安心する。
「どうしたのよ夏子、返事もしないでおどろか……ぁ」
夏子の肩に手をおいたとたん、京子が異変に気づいて声なき声をあげる。夏子の体がカチカチに硬くなっていたのである。
それと時を同じくして倉庫の外で人の声がした。京子は夏子をそのままに咄嗟に隠れる。
――――30分ほど前に戻る
「さて、じゃあこれから始めようか。」
食事も終わったところで、キャプテンが立ち上がってタオルから元に戻った1年生を含めた他の部員に説明を始めた。
「えーと、1年生の皆さんに説明します。罰ゲームから逃げ出した京子と夏子を今からみんなで探します。
もし、9時までに見つからなかったらもう一度1年生に罰ゲームを受けさせてもらいます。
先輩たちも協力してあげるから、みんな頑張って手分けして探してね〜」
そして1年生はめいめいに京子たちを探し始めた。
「さて、やっぱりここが怪しいかな?」
倉庫の外に来ていたのはキャプテンと1年の聖子だった。キャプテンは倉庫の扉を見て人の手の跡がついているのを見ると
確信に満ちた表情で倉庫の扉を開く。
「さあ、隠れても無駄よ!大人しく降参しなさい!!」
倉庫中に響く大声でキャプテンが叫ぶ。それに対して京子はただただ怯えて震えているだけであった。
そしてキャプテンの後に続いて中に入った聖子は、暗がりに人影を見つけてギョッとした。
恐る恐るその人影に近づいた聖子は間近で見て2度ビックリし、触れて腰を抜かさんばかりに3たび驚いた。
「きゃ、きゃ、キャプテン……人が、人が固まってる……」
聖子は慌てふためきながらキャプテンに駆け寄る。キャプテンはその人影を見つけるとくすくす笑った。
「今年の1年生はなかなか凄いわね。私たちが固めるより先に自分で固まっちゃうなんて。
聖子ちゃん、安心して。彼女は糊で固まってるだけなの。動けないし喋れないけどちゃんと息もしてるわ。」
キャプテンは固まった夏子を抱えて倉庫の外に持ち運ぶ。月明かりに照らされた夏子は下着姿でモデル立ちした状態で固まっていた。
「いいポーズね。彼女、モデルになる素質があるんじゃない?」
冗談めかしてキャプテンが言う。聖子はただ呆然として何も言えなかった。
「聖子ちゃん、彼女を大広間まで持って行ってちょうだい。それとウェアが2人分あるから
まだこの辺りにもう一人潜んでいるようね。皆を呼んできて。」
「は、はい。」
まだ非力な聖子にはマネキンのように固まっているとはいえ、人並の重さがあった夏子は重荷であり、
聖子は夏子を引きずるように運んでいくしかなかった。
「さあ、残っているのは京子ちゃんね。早く出てこないと罰ゲームが重くなるよ〜〜」
キャプテンは半分冗談で脅しをかけるが、京子は震えて生きた心地がしない。
しびれを切らしたキャプテンが倉庫の中を探し始めると、京子はさらにパニックに陥る。
『捕まったらダメだ。捕まったらダメだ……』
目を白黒させながら京子は心の中で必死に逃げる方法を考える。
そこでキャプテンが逆方向を向いている隙を見つけて一気に逃げ出す作戦に出た。
キャプテンの方も追い詰められた鼠が噛み付いてくることまでは予想していたが、探している方向が全く逆だというのは想定外だった。
しかもキャプテンが気がついたときは既に京子はトップスピードに近い状態だった。
「!?しまった!」
キャプテンはタックルしに行くが、僅かのところでかわす京子。倉庫から脱出した京子はそのまま走り去った。
京子はわき目も振らずひたすら走った。そして1分ほど走ったところで突然曲がり角から出てきた人間と鉢合わせになる。
「いたたた……」
「あう〜……」
先に起きた京子が相手を見るとなんと真由だった。
「真由、生きていたの?!大丈夫だった?」
京子は真由の肩を持って抱き起こすようにして質問する。
「え?あ?!京子?どこ行ってたのよ。」
「えーと、って、そんなことはどうでもいいから真由、匿って!」
誰も追いかけてはきてなかったが京子は恐怖でとにかく逃げることしか考えていなかった。
「いいけど……さっきどうして嘘をついたの?」
「あの時はごめん!謝るから許して!!後で何でもしてあげる。」
「本当?じゃあ匿ってあげる。」
真由はあっけらかんと言う。そして旅館の地下室の入り口を教えて京子をそこに案内した。
「ありがとう、真由、恩に着るわ。」
「いいのよ、京子。気にしないで。」
真由は笑って答えた。
地下室に隠れた京子は暗い部屋の中で一息ついた。
「はあ〜今度こそ安心よね。」
そして腰を下ろしたところで彼女は嫌な感覚をおぼえた。暗くてよく見えないが感じとしては粘土を触っているようだった。
「まさか、これは……!」
京子の予感は的中したが、既に手遅れだった。京子は座ったままの状態でどんどんめり込んでいってしまう。
「だ、誰かー助けてーー!」
必死に叫ぶ京子の声を聞いて地下室の扉が開く。しかし入ってきたのは真由だけではなく満と舞の姿もあった。
「真由さん、協力ありがとう。」
「おかげで京子ちゃんを捕まえられたわ。」
そのとき初めて京子は自分が嵌められたことに気がついた。だが、最早なす術もなく体の半分以上が埋まっていた。
「おねがい、許して!このままじゃ息ができなくなっちゃう!!」
「ごめんなさいね、京子。これも先輩からの命令なの。
それに何でもしてくれると言ってくれたよね。だったらあなたも罰ゲームを受けてよ。」
真由は騙された不満をぶつけるように京子に言う。
そして満と舞は懐中電灯で地下室を照らす。このとき京子の体は首から下が床の下に消えていた。
「そろそろいい頃合ね。」
「ええ。真由さん、シャベルを用意して。」
「はい。」
真由は満と舞にシャベルを渡す。そして京子の体を掘り起こしにかかる。
――10分ほどして京子の体は掘り出された。
京子は座って地面に手をついた状態のままで固まっていた。
「さすがは一瞬のうちに人間を固める粘土というだけのことはあるわね。ちょっと埋まっただけなのにもうカチンコチン。」
「そうね。ちょっと掘り返すのが面倒だったけど。」
「あら、掘り出す方がお宝を発掘する感動があっていいじゃない。」
「まったく舞ってば……」
満は呆れながら京子を台車に乗せる。
夏子と京子が捕まったと聞いて全員大広間に集まった。そして下着をつけただけで固められた姿を
1,2年生の全部員の見ている前で晒される。
京子と夏子はともに意識が残ったままだったので、恥ずかしさで顔だけでなく体も赤くなっていた。
「さあ、今合宿のメインイベント、逃げ出した1年への罰ゲームをはじめま〜す!」
キャプテンが全員に聞こえるように大声で叫ぶ。その後ろには透明な巨大アクリルケースが置いてあった。
そして他の1年生の手によって二人はアクリルケースの中に収納させられ、蓋をされる。
「準備はOKかな?じゃあ、スイッチを入れま〜す。」
そう言って手元のスイッチをポチっと押す。するとケースの底から水が噴き出す。最初はちょろちょろと出てきただけだったが、
徐々に水勢が強くなり、京子と夏子の体を濡らしていく。
「京子ちゃん、夏子ちゃん、あなたたちはお風呂に入ってないし、汚れが取れていないからまず体を綺麗にしてあげるわ。
でもこれは罰ゲームだから、ただ洗うだけじゃないけどね。」
キャプテンの言葉に不安になる京子と夏子だが、体が動かせなくてはどうにもならない。
二人は徐々に強くなる水の勢いに身を任せるしかなく、時々水が性感帯に当たるとその度に体中に電気が走り、
体が火照って赤くなる。
10分ほど洗浄したところでキャプテンは一旦スイッチを止めた。
「京子ちゃん、夏子ちゃん、動けるようになった?」
だが二人からは何の返事もなく、またケースに入れられたときからポーズにも変化はなかった。
「どうやらまだのようね。じゃあもっと強く洗いましょうかしら。」
そして改めてスイッチを入れる。今度は下からだけではなく横からも水が噴き出し、水の勢いも前よりも強くなった。
二人は体を固定されたままの容赦ない水責めに晒されることとなった。
「うわぁ……」
「すごい……」
「何だか食器洗浄機みたい。」
1年生が口々に溜め息を漏らしながら喋る。
「いい勘してるじゃない。これは元々食器洗浄機用に作られたんだけど、ちょっと大きすぎて使えなかったのよね。
で、こうやって毎年1年生の罰ゲームに使っているわけ。」
キャプテンが解説する。そのそばでは激しい水責めに京子と夏子は苦しんでいた。
徐々に体を固めていた成分は流れ落ち始めていたが、その一方で彼女たちの下着は水責めに耐えられず少しずつ破れ始めていく。
しかも下や左右から襲ってくる水流は彼女たちの弱点を刺激するのに十分すぎるものであった。
二人は体の自由が戻ってきたものの激しい水圧で押さえつけられて結局動くことが出来ず、
また次々と体の各所を刺激されて喘ぎ声をあげるしか出来なかった。しかしその声は激流の音にかき消されてしまう。
やがて京子と夏子は絶頂に達して気を失った。
激流による洗浄はそのまま15分ほど続いた。最後のほうになると水滴でアクリル板の中は全く見えず、中で何が起きているのか
誰にも判らなかった。また、中にいる二人も自分がどうなっているのか理解できないほど激流に弄ばれていた。
そしてキャプテンはスイッチを止めて二人の反応を聞く。だが、今度は二人は気絶していて答えることができない。
そこで2年生たちが蓋を開けて京子と夏子を救出する。全身真っ裸でびしょ濡れになった二人はまるで人形のように運び出されたが、
今度はカチカチのマネキン状態ではなく柔らかいビニール人形のようだった。
「さて、これで罰ゲームは終了〜。みんなお疲れさん。
1年生の皆さんは先輩の言うことはちゃんと聞くようにね〜」
それを聞いた1年生は『はい』と言う外なかった。
「で、この二人どうしようか?」
キャプテンはその場に残った真由に訊ねる。気絶した京子と夏子は既に濡れた体を拭かれてタオルを巻かれていた。
「ええと……できたらこの2人を運びやすくしていただけませんか。」
真由の答えにキャプテンは少し意外な顔をしたが、すぐに当を得たようで隣の部屋に走っていって何やら薬の様なものを持ってくる。
そして気絶している二人にその薬を飲ませる。
「キャプテン、それは?」
今度は真由が尋ねる。
「真由ちゃん、今飲ましたのは相手を綿布団のようにふわふわとさせる薬なの。
これで持ち運びも楽だし、今晩の布団はこれで決まりね。」
キャプテンは真由に目配せをしながらさらに続けた。
「それと今晩は私も同じ布団でお願いね。」
その夜、真由の部屋で何があったかは誰も語ろうとしなかった……
――終わり