とある学校の美術室で

作:Shadow Man


《ガラガラガッシャン!》
夕刻、生徒たちもみんな帰った後の美術室に陶器が壊れるような音が響いた。
「あーあ、やっちゃった。」
「いーけないんだ、いけないんだ。」
「せーんせいに言っちゃお〜」
三人の少女に囲まれて一人の少女が泣いていた。そしてその周りには彫像の破片が散らばっていた。
「だって、だって、みんなが押したんじゃない…」
「だめよマリア、最後に像を押して倒したのはあなたなんだから。警察が来てもあなたの指紋しかついてないわよ。」
「そうよ、責任取りなさいよ!」
「このまま逃げ出したりしたらみんなに言いふらしてやるんだから。」
三人に責められたマリアはもうしゃがみこんで満足に喋ることも出来なかったが、必死に声を振り絞って言った。
「…ひくっ…じゃあ、私、どうしたらいいのよ…」
「そうね。」
と三人のリーダーのユミナはマリアを見下していった。
「まずはこの壊れた像を綺麗に跡形もなく掃除することね。」
「ウッ…うん、わかった…」
「もちろん、あなた一人でやるのよ。」
そういったのはユミナのお供の一人レナだった。
マリアは泣きながらも一人で壊れた像の破片をかき集めて、ゴミ袋に入れてゴミ捨て場まで捨てに行った。
帰ってきたとき、まだ三人組は部屋に残っていた。
「じゃあマリア、今日のところはこのくらいで許してあげる。でもね、まだ後ひとつやらなきゃいけないことがあるの。
だから、明日は朝早くまたここに来てくれるかしら?」
「…ウン…」
「返事はちゃんと大きな声で!先生にそういわれなかった?」
そう言ったのはもう一人のお供のエリスだった。
「ハイ!」
マリアは精一杯の声を絞り上げた。
「いい子ね、マリア。じゃあ、また明日ね…」
そういうとユミナたちは含み笑いを浮かべながら帰っていった。

そして翌日、まだ誰も登校していない学校の美術室にマリアとユミナたちがいた。
「ちゃんと来たわね。えらい!でも、まだやること残っているからね。」
前日同様ユミナたちは意地の悪い笑顔を見せていた。
「…何をすればよいのでしょうか?」
「じゃあマリア、あなたには壊れた像の代わりをやってもらうわ。」
「…はい……え?!」
「判らなかったかしら?あなたは今日からこの美術室の像になってもらうのよ。」
「ちょ…ちょっと、冗談でしょ?」
マリアの顔には明らかに焦りの色が見て取れた。彼女にとって苛められることは日常茶飯事であったが、こんなことを言われるとは想像もつかなかった。
「この私が冗談を言うとでも?でも大丈夫よ、永遠にというつもりはないから。お父様に頼んで新しいものを作ってもらってるからそれが出来るまでよ。
それに、ちゃんと下校するときには帰っていいから。もちろん、今日みたいに毎日朝早く登校してもらうけどね。」
それでもマリアは当然受け入れることは出来なかった。一歩、二歩と後ずさりしたが、そこにはレナとエリスが立ちふさがっていた。
「どこに行くのかなあ、マリアちゃん。」
「おとなしく約束を守ってもらうわよ。」
退路を断たれてしまってはマリアはどうすることも出来なかった。
「じゃあ、早速服を脱いでね。」
「えっ…!」
「えっ…じゃないわよ!あなたが壊したのは天使の像なんだから、ちゃんとその通り再現しないとだめでしょ。」
かくしてマリアはしぶしぶ下着を含めてすべての服を脱いだ。

「準備はOKね。エリス、レナ、あなたたちの方はどう?」
「こちらもOKです、ユミナさん。」
「私も出来たわ。」
2人はいつの間にか人が一人乗れるくらいの台を作っていた。そしてその上には魔法陣らしきものが書かれていた。
「マリア、この上に乗りなさい!」
同じ女の子の前とはいえ、裸で台の上に上がるというのは恥ずかしかったが、今のマリアには反発する自由さえもなかった。
そして台の上で壊れた天使像と同じポーズをさせられたマリアは、ユミナ手作りの天使の羽と天使の輪(のようなもの)をつけられた。
「それではこれよりマリアを天使像にするわよ。」
『はい!』
エリスとレナは張り切って返事した。逆にマリアはこれから何をされるのか不安であった。
『ドロドロネチャネチャカチカチペタペタ〜マリアちゃん、天使像になあれ〜』
お気楽な呪文とは裏腹にマリアの足元には大きな異変が起きていた。
「あ、足が動かない…」
「当然よ、これからあなたは美術室の彫像になるんだから。それと、天使らしく幸せそうな顔をしてちょうだい。怯えた顔の天使なんて嫌でしょ?」
マリアは今、自分に起きていることが十分に理解できていなかった。そしてとにかく言われたとおりにするしかないと必死で笑顔を取り繕った。
「まだ笑顔が硬いわよ!もっと自然に!」
イライラしてきたユミナは美術室の大きな筆でマリアの脇をくすぐった。
「キャハハ…やめて…」
首から下が殆ど彫像のように堅くなるまでそれは続けられ、マリアは恍惚の表情を浮かべたまま彫像となった。

やがて生徒たちが登校してきたのでユミナたちは元々天使の像のあったところにマリアの彫像を置くと、そのまま自分のクラスに戻り授業を受けた。
そして昼休み…
「え、それって本当?」
「マジかよ!信じらんねえな。」
「ちょっと、私の言うことが信じられないって言うの?」
どうやらユミナがクラスのほかの生徒を引き連れて美術室に来たようだ。
ガラガラっと音を立てて扉が開くと、興味津々なクラスメイトが揃って入ってきた。
「どう?よく出来てるでしょ?」
「本当だ。これ本当にマリアかよ?」
「すっげー。マジで天使みたいだな。」
クラスメイトの誰もが彫像姿のマリアを見て驚かない者はいなかった。
まだ殆ど胸の膨らみもない子供の体型ではあったが(だからこそ天使像として相応しかったのだが)、十分に男子たちを興奮させることが出来た。
「なあ、触ってみてもいいか?」
ふと、男子の一人が呟いた。
「いいけど、壊しちゃダメよ。これは壊したら代わりがきかないんだから。」
ユミナの許可が下りるや否や、男子たちはどっとマリアの彫像に群がった。そのせいで女子が弾き飛ばされ、泣き出す子もいたがそれも喧騒にかき消された。
「ねえエリス、マリアって意識あるのよね。」
「この本が正しかったら間違いないですわ。」
エリスの言うとおり、マリアは彫像になった後もずっと意識が残っていた。
午前中は美術室に来た生徒にも気にかけられずにいてある意味放置プレイだったのだが、今突然男子たちの注目の的となったのである。
この突然の事態にマリアは一気に恥ずかしさを覚え、泣き出したかった。だが、彫像となった彼女は相変わらず恍惚の表情のままであった。
結局、昼休み中男子は彫像を触るだけでなく、体を舐めるものもいれば、落書きをしたりするものもいた。
昼休みが終わるとさんざんに弄ばれたマリアはまた放置されるのだった。

そしてまた放課後…
掃除当番の男子たちに綺麗に拭かれたマリアの彫像を前にユミナとレナ、エリスが揃っていた。
「じゃあ、元に戻してあげるわね。」
『カチカチフニャフニャマリアちゃん、元にもーどれ。』
しかし何も起こらなかった。
「あれ?変だなあ。」
「そうだね。」
「クスクス…呪文が違うのかなあ?」
そういいつつ三人とも顔は笑っていた。みんなマリアをまだこのままにする気だったのである。
その後もユミナたちはわざと適当な呪文を唱えて時間を稼ぎ、下校時刻になったのをいいことにマリアをそのままにして帰宅した。
マリアは一人誰もいない暗い美術室で笑顔の彫像のまま泣いていた。

そしてまた同じような1日が過ぎ、放課後にユミナたちはマリアを戻す…いや、苛めるためにまた美術室へと向かった。
だがそこにマリアの彫像はなかった。
「あれ?マリアがいない。」
「ちょっと、どうなっているのよ!もしかして誰かもって帰った?」
「それはそれで面白いかも…」
三人とも半分心配しつつ、彼女が誰かに嬲られている姿を想像してドキドキしていた。

「そうか、君たちが犯人か。悪ふざけはいけないな。」
その声に三人ともビクついた。驚いて振り向くと人間の姿に戻ったマリアと美術教師のミシェイルが立っていた。
「俺の黒魔道書を盗んだばかりか、こういうことに使うとは…お前たちにはお仕置きをしないといけないな。」
ただでさえどすの利いた先生の声は三人にとって恐怖以外の何物でもなかった。
「い…いいの?この私に酷いことしたらお父様が許さないわよ。」
ユミナは強弁してみせたが、ミシェイルはそんな脅しに屈する男ではなかった。
「全然反省する気はないようだな。ならばお前たちにはマリアが受けた苦しみと屈辱をそのままくれてやろう。」
『ドロドロネチャネチャカチカチペタペタ〜お前たち3人、泥人形になれ!』
ミシェイルが呪文を唱えるとユミナたちは逃げる暇もなく足元から泥に固められていった。
「や、やめて…」
「ご、ごめんなさい…ゆるして…」
「私は悪くない…悪くないわよ〜」
まもなく三人は全身泥まみれのような姿になった。
「さて、マリア。こいつらに好きなだけ仕返しをしていいぞ。」
ミシェイルはマリアに語りかけた。しかしマリアは首を横に振った。
「あんな寂しくて恥ずかしいことはもう嫌よ。ユミナたちだってちょっと黒魔術を試したくてやっただけかもしれないし…」
「お前は優しいな、マリア。だけどちゃんと罰は受けないとこいつ等の為にもならないぞ。」
そういうとミシェイルは泥人形に近寄り、服の部分を剥がした。
「これがせめてもの情けだ。お前たちがやったことがどれだけ酷いことか反省するんだな。」
そういうと裸にされたユミナ・レナ・エリスの泥人形を壊さないように慎重に、しかし手馴れた手つきでくっつけた。
ちょうど三人は背中合わせに手と手、足と足を絡めるように立たされ、さらに崩れないようにミシェイルは魔法で泥を乾かして固めた。
結局ユミナたちはマリア同様クラスメイトに恥ずかしい姿をさらす結果となった。そしてやはり男子たちに触られ、舐められ、おもちゃにされるのだった。

そして1日たち、ミシェイルは3人を元の姿に戻した。
「どうだ、自分たちのやったことを反省したか?」
「…ウン……とでも言うと思った?あんたなんか、この学校にいられないようにしてやるんだから、覚えておきなさい!」
ユミナは裸であることも忘れて気丈に言い放ってすぐに逃げようとしたが、ミシェイルはそれを鼻で笑うと
『スラスラグチョグチョ…この悪い子を閉じ込めろ!』
と早口で呪文を唱えた。するとユミナの頭の上から今度はスライムが染み出るように現れ、あっという間に逃げようとした彼女を掴まえた。
「うわっ!そこは…やめて…キャッ…」
スライムはユミナの体を刺激しつつ自由を奪っていった。
「どうだ、これでも反省するつもりはないか?」
「ハァ…だれが…イヤッ!言うこときくもんですか!」
ユミナは他人に命令されるのが絶対に許せない性格で、結局スライムに全身を包まれても彼女は謝ることがなかった。
その後、スライムの中でもがき続けたユミナは何度となく気を失ってはミシェイルの電気ショックに叩き起こされ、最終的に精も根も尽きて折れた。
「わ…わたしが…ハァ…悪かった…もう…もうしません。」
綺麗に整えられていたユミナの髪はもう完全に乱れきっていた。
ミシェイルもこれ以上ユミナが抵抗しないのを確認してエリスとレナに服を渡すとユミナを連れて帰るように言った。
だが、ユミナはそれを拒否した。
「いえ、ミシェイル先生、また私を固めたりスライムに包んだりしてください!」
その後、美術室には少女の叫び声とも喘ぎ声ともつかない音が響いたという。

おしまい


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