魔法少女ルカ 第十五話「リベンジの魔法少女(起)」」

作:シャドウ


『マスター、起きてください』

「え……メルクリィ?」


岳美は思わず目を覚ました。

その声はいつものように腕からではなく、真上から聞こえてきた……。


魔法少女ルカ 第十五話「リベンジの魔法少女(起)」


『マスター、お目覚めですか?』

「メルクリィ……一体どうなっている? 私は……シスターに固められたはずじゃ……」

『マスター、質問に答える前に一つ提案が』

「なんだ?」

『今のマスターは全裸です』

「ひゃうっ!!」


さっさと変身して服を着るタケミ。

しかし彼女もあんな可愛い声が出るんだな。


「で、質問の答えは?」

『マスター、ここがどこだか分かりますか?』

「夢空間だ。メルクリィが目の前に姿を見せているからな」


メルクリィの夢空間での姿は、ロボットっぽい外見ではない。

目に有名なスカウターをはめていて、髪が緑になっている以外は極めて普通の女性だ。


『夢空間ですが、これは私の作り出したものではありません』

「え?」

『ここは夢試練空間。マスターの敗れた相手との戦い方が分かるようになる特殊空間です』

「夢試練空間……」

『……試練が来たようですよ、マスター』


そこに現れたものを表現するとすれば、ファンタジーで言うところの「ケトラード」。

「ケトラード」は「クラーケン」と対を成すモンスターと言えばお分かりだろうか。

つまり、「大イカ」なのだ。ちなみに「クラーケン」は「大ダコ」。


「いやに大きいな……。あのワクスの弱点がこのイカと共通なのか?」

『……間違いなく』

「よし、やってやる!」


両手の籠手で、ケトラードの足を引き裂くタケミ。

しかし、一瞬にしてケトラードの足は再生する!


「……イカの天麩羅がいくつ出来るんだろう?」

『余計な事言ってると、いつまでもここから出られませんよ。ちなみに天麩羅だと200人分』

「……答えてるじゃないか……」


いくら引き裂いても、復活するケトラードの足。

タケミはだんだんおかしいと思いはじめた。


「足を抜いていけば、弱くなるイカもいたような気がするんだけどな……」

『そのイカとは種類が全然別です。真面目にやってください』

「す、すまん。烏賊が好きだとつい……」


ケトラードは何本も何本も足を引き裂かれたので、ついに怒ってタケミに墨を吹いた!


「うわっ!」

『マスター!』


墨で真っ黒のタケミはしばらく動けませんでした。

この墨、粘着固めと同種でこの空間なら10秒で解除されるが、
普通ならあっという間におしまいの墨だと言うことをここで注釈しておく。


「くそう……どうすればいい……」


粘着墨固めから解除されたタケミは、ケトラードから距離をとって攻略法を考えていました。


「待てよ……あいつが烏賊なら……弱点はそこだぁ!」


タケミが弱点と言ったのは、ケトラードの頭。

そこに突貫して見事打ち抜き、ケトラードは崩れ落ちた。


「そうか……奴も烏賊と同じなのか……!?」


タケミの言った奴とは、ワクスのこと。

ワクスは上半身と下半身が分かれても、生きていた。

普通の人間なら死んでいてもおかしくはない。

だがワクスは魔族だ。上半身のどこかに心臓部があって、

そこを潰さない限りは生きていると言う事だろうか……。


「奴の上半身を叩く……!」


その言葉と同時に、夢試練空間は消えた。

出てきた場所は、弦撫学園の教会近く……。


「もう……負けない……。」


あの時と同じように、扉を開けるタケミ。

誰の姿も無いが……蝋の臭いと悲鳴がする。


「いやぁぁぁっ! 気、気持ちいいっ!!」


教会の懺悔室から普通なら聞こえないはずの悲鳴が聞こえてくる。

懺悔室の扉が開き、中から蝋で固められた女生徒が出てきた。

やがて、その隣からワクスも現れる。


「これで199人か。ずいぶん固めたわね。悲鳴も十分楽しめたわ」

「だが、それでおしまいだ。今度は叩き潰す」


ワクスはタケミの姿を見て驚いた。と、同時に微笑んだ。


「まさか、またあなたに出会えるなんてね。固められる準備は出来た?」

「……そちらこそ、倒される準備は出来たか?」


言うが早いか、タケミはまたもや先制攻撃!


「芸の無い……」


ワクスは蝋の壁を作り、タケミの進路を妨害するが……


「はっ!!」


ジャンプして回避!


「くっ! この!」


今度は蝋でスピア(槍)を作り出し、突き刺して固めてしまおうとするワクスだが……。


「そんな物!」


タケミの拳でスピアは折れる!


「このぉっ!!」


その折れたスピアで、ワクスの心臓を突き刺すタケミ! しかし……。


「ち、血が出ない!?」

「フフフ。心臓に刃物を刺しても無駄よ。さて、今度はこちらの番かしら」


教会の壁全体が蝋と化していく……そして、ワクスは壁に触ると……


「さぁ、お楽しみの時間ね。」


壁の中に入ってしまった! 服は……全部脱いだらしい。


「くっ……! どこから……どこから来る……!?」

『マスター! 後ろです!』

「うっ!!」


後ろから体を伸ばしてワクスは、タケミを壁際まで引っ張る!


「さぁ、もう一度、固まってもらいましょうか!」

「ま、負けるかぁ……!」


タケミは最後の抵抗で、ワクスの頭を掴む!


「や、やめ……!」

「せいやぁぁぁっ!!」


ザシュッ!


切り裂く音がし、ワクスの頭から、大量の血が零れ落ちる……


「き……消える……消えてしまうっ! 私という存在が……すべて消えてしまう……!」

「頭が本体で、体は蝋か……本当に烏賊のようだったんだな……」

「き、消えたくない! ……まだ、消えたく……な……」


ワクスは最後に涙を浮かべ、光の粒となって消え去った。


「……哀れなシスターに、せめて普通の人間に生まれ変われるように祈っておくか……」

『マスター、神頼みはマスターが一番嫌がることでは?』

「……たまには神様も信じたくなるものさ。気休めで……」


タケミの祈る姿はまさに聖母と思わしき姿だった……。

続く


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