石化野球拳

作:サコ


プロローグ

「それでは第一回、石化野球拳を行います!!!!」
 場内の歓声と共にレフリーがリングの中央に立った。
「その前に、私の名は、石 化太郎(せき かたろう)いいます。石化能力を持つ悪魔でございます」
 背中に蝙蝠の翼を生やした化太郎は軽く挨拶をした。そして、指を鳴らすと、二つの黒い球体が現れる。互いに向き合うように浮かぶ球体が割れると、二人の少女が落ちてきた。
「いたっ…」
「うぐっ…」
 尻餅をつく夏服のセーラー服を着た少女と、半袖のブラウスを着た少女が、不思議そうに辺りを見渡している。
「今回の挑戦者の登場です」
 その言葉に少女たちが反応する。
「ちょっと、挑戦者って何よ!」
「ここはどこ〜」
 気の強そうなセーラー服を着た少女が、化太郎を睨みつける。
「ここはですね〜地下の闇競技場ですよ」
「って、私の質問無視しないでよ!」
 そういって、突っかかろうとする彼女を、化太郎は動きを封じ込めた。
「あが…」
 金縛りにでもあったみたいに、口をパクパクしながら動きが止まる。
「ねぇ〜、どうしてここにいるの?」
 ブラウスを着た小柄な少女が首を傾げる。
「ええとね、説明する前に、君たちの紹介をさせてもらうよ」
 そう言われ、少女は頷く。
「まず、こちらの気の強そうな、セーラー服を着た少女。彼女は飯島香我美(いいじまかがみ)といいます。16歳です」
 香我美は未だに動きを封じられたままで、ずっと化太郎を睨んでいた。夏服のセーラー服からは、小麦色した腕が覗き、スポーツをしているのかスマートなニーソックスを履いた足が紺色のスカートから覗く。
「そして、こちらの小柄な少女。彼女は日暮亜優(ひぐらしあゆ)と言います。ロリっ子ですが、これでも18歳なのです!!!」
「亜優だよ〜〜」
 半袖のブラウスから覗く腕は日焼けをあまりしていないせいか、白い綺麗な肌をしていた。栗色のショートカットをした亜優が観客に手を振っている。よっぽど嬉しいのか、観客たちから、口笛や「亜優ちゃん!!!」というラブコールが放たれている。
「うんうん、人気ですね〜」
 化太郎は指を鳴らすと、香我美の動きを解いた。
「はぁ…はぁ…」
 いつの間にか半泣き状態になり、肩で大きく息をしていた。
「私に歯向かうことは出来ませんからね」
 にぱっと微笑む。その笑みからは、何かを企んでいることがすぐに分かった。
「おっと、本命を忘れるところでした。それでは、二人でじゃんけんをしてもらいます!」
 いきなり、じゃんけんをすることになり、亜優と香我美はお互いに見つめ合った。
「ただのじゃんけんではないですよ、野球拳です!」
 その言葉を聞き、香我美が化太郎へと殺意の視線を向けた。
「野球拳ってなに〜?」
 亜優が疑問をなげ掛ける。
「あんた、18にもなって野球拳も知らないの!?」
「う〜ん」
 溜息を吐いて香我美が亜優を見る。
「じゃんけんに負けると、服を脱ぐのよ」
「そうなんだ」
 驚くこともなく、ポケポケとした雰囲気を出して答える。
「しかも、ただの野球拳ではないですよ」
 化太郎はハンカチを取り出すと宙へと投げた。瞬間、赤い瞳が光りだす。
「石化ビーム」
 ピキッ…パキッ…
 ハンカチは鼠色へと変わると、石化して地面に当って砕け散った。
「何これ!」
「おお〜〜すごい」
 驚く香我美に対して、亜優は手を叩いて感心している。
「このように、あなたたちの着ているものも石にしちゃいます」
 さすがに二人の声が消える。亜優も香我美も真剣な表情へとなった。お互いに着ているのは夏服のセーラー服と半袖のブラウスに、紺色のスカートだ。下着も靴や靴下も入れて、6回は勝たないと負けることになる。枚数的にはほぼ同じのように見えた。
「…負けたくないわね」
 香我美はやる気を出すと、亜優へと闘争心を向けた。対する彼女は笑みを浮かべて何を出そうかと、腕を組んでいた。
「それでは、一回目! アウト、セーフ…」
「「じゃんけんぽん」」
 定番のセリフを言う前に亜優と香我美が手を出した。


 どこかの地下にある闇遊技場。一ヶ月に一回行われる多彩なゲームに今回、野球拳が加わった。参加者は、地上で捕まえてきた少女たち。悪魔たちの娯楽の一環として、今日も二人の少女たちが恥を掛けた闘いを繰り広げる。


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