作:ロス・クロス
「君を私の物にしたい。私の物となって、ずっと私に尽くしてくれないか?」
始まりは彼の一言だった・・・
暗い工場のような部屋に三つの人影があった。
一人は若いスーツを着た長身の男。もう一人は白衣を着た中年。最後の一人はセミロングの黒髪を持つ美しい女性。
「京子君、本当にいいんだね?」
京子と呼ばれた女は頷く。
「はい、会長。会長の望むままに。」
三人の前には大量の装置や機材が置かれている。しかしまだ一つも稼働してはいないようだ。
「会長、すみません。あと少しで完成にこぎつけられるのですが・・・」
「気にするな。そのために彼女にこの処理を施すのだからな。君はできるだけ早くこの研究を完全なものにしてくれればいい。」
「勿体ないお言葉。ありがたく存じます。では失礼して、機材の調整に入ります。」
「よろしく頼む。」
白衣の男は二人から離れていった。
「京子君、私は君が欲しい。いつまでも若く、美しく、瑞々しい君が。」
「会長・・・私の身体、貴方に捧げます。」
その時部屋の明かりが一斉に灯り、辺りが明るくなった。機械が起動を始め、地面が微妙に振動する。
「機械の調整にはもうしばらく掛かります。隣の部屋が休憩室となっておりますので暫くそちらでお待ちください。食べ物や飲み物もありますのでご自由に。加藤さんもごゆっくりどうぞ。ただし、食べ物は口にしないでください。飲み物もアルコールは厳禁です。」
「わかりました。心遣いに感謝します。」
二人は隣室に移動していった。白衣は機械のあちこちをいじったり、パソコンを操作したりしている。
休憩室に入った二人はソファに腰かけた。
「何か飲むかね?とは言っても確かアルコールは禁止だったね。」
「はい、そう言われております。処置時に影響が出るとかで。」
「私だけアルコールというのも悪いな。ではたまにはオレンジジュースにでもしておこうか。」
「ありがとうございます。」
グラスにジュースを注いで二人で乾杯をした。食べ物もあるのだが、京子が禁止されているのを知っていたので自分だけが食べるわけにはいかないと彼も食べなかった。静かな空気が暫く漂っていたが、突然京子が口を開いた。
「会長、何があっても私を傍に置いてくれますか?」
「勿論だ。神に誓おう。私には君以外の女性は考えられない。だが君が老いるのは見たくない。だからこの処置を君に受けてもらいたいんだ。」
見つめ合う二人。そして・・・・
数分後、先ほどの場所に三人の姿があった。どうやら機械の調整は終わったらしい。
「準備は整いました。処理を開始する前に改めて説明します。今回の処理は現在開発中の技術を完成させるまでの間、肉体の老化を防ぐために行われます。貴方の体に特殊な薬品,カーボン液とでも言っておきましょう。それを吹き付け、その後予備冷凍でゆっくり土台を凍結し、体を拘束します。ここで貴方は動くという自由を奪われます。カーボン液が掛けられたら目を絶対開けないでください。液体が目に入れば蘇生した時に失明してしまいますから。口も開けてはいけませんよ?内部に入ったら凍結はできても解除はできませんからね。その後−240℃で身体の方を凍結させます。この処置によって一時的に細胞及び生命活動を停止させ、肉体の劣化を防ぎます。まぁ簡単にいえばカーボンフリーズですね。ただし、全身一気に停止させるのではなく足元から徐々に停止させていくので、かなりの時間激痛に耐えなければなりません。勿論この技術は既に完成されており、解除も確実に行われるので安心してください。一つの処理が終わる毎にブザーが鳴ります。三つめが鳴ると最終処理の始まりです。」
「わかりました。がんばります。」
「それで、いつ始められるんだ?」
「いつでも始められます。後は会長の一声のみ・・・」
「了解した。では・・・・始めよう」
「かしこまりました。では加藤さん、服を脱いでその台に仰向けで寝てください。」
「分りました。」
指を指された先には少し窪んだ長方形のアルミの板が載っている。京子はボタンに指をかけ、赤いブレザーとタイトなスカート、カッターシャツ、メタリックグレーのストッキング、黒い下着と次々に脱いでいく。羞恥心からか顔が赤く染まる。そして全裸になった京子は先ほどの台に寝そべった。前と胸は隠したまま。
「隠すことはない。それにこれから君は暫く私に見られ続けるのだから。」
「そうですね。私は見られていてもわからないでしょうし。」
京子は隠していた腕をどけると、巨大な山の頂点が赤々とそびえ、足を少し開くと下腹部の密林も適度に備わっており、その下の花びらが丸見えになった。
「綺麗だよ、京子君。例の技術が完成したら必ず・・・」
「はい。お願いします。」
「会長、よろしいですかな?」
「ああ。やってくれ。」
「では加藤さん、いきますよ?」
白衣が台を押して装置の入口に付け、その横にあるボタンを押した。すると装置の扉が上にスライドし、中から冷気が漏れた。
「カーボンフリーズ処理を開始します。」
白衣が宣告し台側のボタンを押すと、京子を乗せた台がスライドし始めた。ゆっくりと装置に入っていく。
「京子君、必ず・・・」
「会長・・・待ってます。」
その言葉と同時に京子は装置の中に消えた。装置の奥深くまで運ばれたため、外からは彼女の裸体が確認できない。そして扉が閉まり処置開始のランプが点灯した。
「会長、処置の終了まで2時間かかります。あちらでお休みになられては?」
「いや、ここで待たせてもらえないか?」
「構いません。では何か御用があればお申し付けください。」
「ありがとう。」
白衣はまた忙しそうにパソコンを操作しはじめた。
一方機械の中の京子−
彼女はじっとカーボンフリーズされるのを待っていた。だがいつまでたっても何も始まらない。故障したのかと思っていると突然・・・
ビーーーー! ゴンッ!ウウウウウンン!!!
ブザーが鳴り、鈍い音が京子の体を揺らす。明かりが点き体全体が見渡せるようになった。体の上をアーチ型の細い機械が何度も往復し、ゴポゴポと液体が流れるような音がする。シュウ―ッという音がし、やがて冷気が満ち始めた。
(そろそろ始まるようね。)
そして遂にそれは始った。アーチ型の機械から黒っぽい霧のようなものが噴射され始めた。それは氷水のように冷たかったがまだ耐えられた。それは京子の体を足からどんどん黒く染めて行った。ムッチリとした太ももを、会長を受けいれた女の部分とその上の密林も、自慢のウエストも、Iカップの巨乳なのに重力に逆らい風船のように丸く、ハリと艶を併せ持ち、なだらかな曲線を描く乳房とその先端の真っ赤な乳首も。装置が首まで来ると京子は眼を閉じた。そして整った美しい顔とそこから伸びる黒髪も全てを黒く染め上げられた。機械はその後何度も京子の体を往復し、黒い液体を吹きかけた。京子の体から垂れた液体が台の中に溜まっていき、装置では吹き付けられなかったお尻や背中も黒い液体に漬かった。京子の体は背中側の3分の1程が黒い液体に浸されている。膝から下と二の腕から下が液体の中に埋もれている。暫くしてアーチ型の機械は液体の噴射をやめた。
一旦装置が落ち着くと、再びブザーが鳴り響く。液体がさらに温度を下げていき、ジェル状になって行く。周は台の下から噴き出す白い煙で雲っている。予備冷凍が始まったのだ。液体は温度を下げると同時に硬度を増していく。どうやら下の方にも装置がついており、そちらが液体の温度をさげているようだ。
京子は体を動かそうとしたが出来たのは腰をひねろうとすることだけで、実際はそれもままならなかった。そして予備冷凍が完了し、液体は硬い台座へと変貌した。京子にできるのは固まることだけとなった。
(予備冷凍が完了したのね・・・もうすぐフリージングが始まる。そうすれば・・・)
ビーーー!!ビーー!!ビーーー!!
気がつけばいつの間にか装置が停止しており、またブザーが鳴っていた。最終処理へと移行するようだ。
そして機械が再び作動しはじめた。
(始まる・・・)
アーチ型の機械が再び台の端に来る。そして遂にその時はやってきた。
ブシュウゥゥゥゥッ!!!
(!!!!!ギャアアアアアア!!!!!痛い!!!痛いぃ!!!!)
「ンンンン!!!!ウゥーー!!ンンッ!!」
猛烈な冷気が噴射され、激痛となって京子を襲う。京子はあまりの痛さに耐えられず、叫ぼうとしたが、口を開けることも禁止されているのでそれもできず、ただうめき声をあげるしかなかった。それでも十分な音量はあり、装置の外までその声は漏れていた。
「京子君!!!」
「会長、落ち着いてください。最終処理のフリージングが始まったんです。−240℃ですよ?痛くないわけがない。そりゃ声だって上げたくなるでしょう。ですが命に別条はないのでどうかご安心を。」
「すまない、取り乱してしまった。」
呼吸を乱しながら彼は椅子に座る。そしてそのあとは何も言わず、ただ見守っていた。
京子は相変わらず激痛にさらされていた。フリーザーは京子の体をゆっくりと這い上がっていく。冷たさでピクピク動いていた体の上をフリーザーが通ると液体が凝固して動かなくなった。感覚もなくなっていく。脚は既に固まり艶を放っている。フリーザーは京子の女の部分に差し掛かっていた。ただでさえ敏感な京子のソコはフリーザーが通り過ぎた瞬間、全身に今までで一番の激痛を与え、その動きと引き換えに、美しい輝きを与えた。冷気の波はやがて腹部を乗り越え、その豊満な乳房に到達した。ものすごい勢いで噴射される冷気が京子の温かく柔らかかった巨乳を冷たく硬いカーボンに変えていく。先端の黒く染まった乳首は隆起した状態で活動を停止した。やがて体の凍結は終了し、残すは頭部のみとなった。京子の意識はすでに朦朧としていた。装置が京子の整った顔の上を通って行く。
(か・・・会長、私・・・)
そして京子の意識も体と同じく凍結した。フリーザーはその後2・3往復してやっと止まった。
「会長、ただいま処理が完了しました。」
白衣の横で装置のランプが青く光っている。
「すぐに出してくれ。」
「承知しました。少々離れてください。」
白衣が装置のボタンを押すと、扉が開き冷気が煙となって漏れ出した。ガゴンッという音がして黒い何かが煙の中から排出されてくる。やがてそれが台に乗ったのを確認すると白衣は男を手まねきした。煙が晴れると、そこには四角い黒い板に埋め込まれ、身体を黒く染め上げられ、カーボンフリーズされた京子がいた。
「京子君・・・綺麗だよ。」
男はそう言って唇にキスをした。その唇は冷たくて苦かった。
「いかがです?この方法でも彼女を永遠にできますが・・・」
「すばらしい。だが、あの方法でなければならないのだ。絶対に。」
「そうですか。できるだけ早く完成させます。」
「よろしく頼むよ。」
「それで、これは何処に運べばよろしいので?」
「私の部屋に頼む。できる限り近くにいたい。」
「仰せのままに。明日には届くでしょう。」
「わかった。何かあればまた連絡をくれないか?」
「かしこまりました。」
「では、私は失礼する。」
「お気をつけて。」
男は部屋を出て行った。白衣も忙しそうに作業を始めた。
翌日・・・
「もう少し右、少し行きすぎだ。あと3センチ左、よしそこだ。」
男の部屋に京子が届けられ、壁に掛けられた。
誰もいなくなった部屋で男は誓う。壁飾りとなった女に。
「待っていてくれ、京子君。必ず、必ず君を・・・」