図書室にて

作:おおばかなこ


ー聖ヨハネ女学院ー 
全寮制、お嬢様学校

この学院の図書室の一角にとても古い本があった。
その本はなんでも、昔、外国より寄贈されたとかで普段はケースに入れて展示されていた。
(もちろん鍵が掛かっている)

幼稚園のくみ・・・
この子はしょっちゅう図書室に来ていた。
幼稚園は他の学部よりも終了が早いため一番乗りのときもあった。
その日もそうだった。
しかも、どういう訳か・・・展示されている本のケースの鍵が開いていた。
ケースが開けっ放しになっていたのである。
くみは好奇心で中の本を手にとってみた。

それは、とても綺麗な本だった。
表紙には一人の少女が本を手にしている絵が描かれていた。
よくみると、絵の少女は自分が今見ている本を手にしている。
そして、絵の中の少女が手にした本には、やはり一人の少女が同じ本を手にした絵が描かれている。
まるで、合わせ鏡のように同じ絵が続いているのだ。

くみは回りに誰もいないことを確認すると、本を抱え鏡の前へ行き表紙の少女と同じポーズをしてみた。
とたんに本が光りだした。
光が収まるとくみの姿は消えていた。
代わりに本の表紙の少女が一人増えていた。

少しすると、初等部の生徒が何人かやってきた。
鏡の前に置かれた本をみつけ
「どうしてこんな所にあるのかしら・・・。でも、ちょっとみちゃおう。」
「うわ〜表紙の子、ここの制服きてる〜。」
と騒いでいた。
くみが
「たすけて・・・。」
と言っても本の絵の言葉は誰も聞こえなかった。

やがて司書教員がやって来たので初等部の生徒達は本を渡した。
本は再びケースに収められ、鍵がかけられた。

後日談

フェスティバルでにぎわう学園を後にした魔法使いの女性と人間になったアンティークドールは、古いレンガ造りの骨董店にたどり着いた。

中に入ると魔法使いの女性は「あなたは人間世界のことを少し教えましょうね。」と人間になったアンティークドールに言い、人形になった真知子には「あなたにはドレスを着せましょうね。そして、ウィンドウに並べましょう。」と言った。

そして真知子はドレスを着せられてウィンドウにかざられた。


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