ため息の森

作:おおばかなこ


ー聖ヨハネ女学院ー
全寮制、お嬢様学校

校則に「男女交際禁止」があるが、「お嬢様方」の中には幼い頃親同士が決めた婚約者がいるという者もいた。

高等部三年のみき
彼女もそんな一人であったが、みきは10歳以上年の離れた婚約者が嫌いだった。
学院を卒業したらすぐに結婚の予定だったので卒業の日が近づくにつれ憂鬱になっていった。
昼間クラスメイトと過ごしている間は幾分気がまぎれたが、放課後になると憂鬱でたまらない。
そのため、時々学院裏手にある森を歩いていた。
涙を流し、ため息をつきながら・・・

その日もそうだった。
しかし、「君、どうしたの?」と突然声をかけられた。
みきが驚いて声のほうを見ると、自分と同じぐらいの年頃の緑色の目をした男の子が立っていた。

「学院の敷地なのにどうして・・・」という驚きのためみきはあわてて向きを変え自分の部屋へ駆け戻った。

だが、みきは次の日、「もう一度会いたい」と思い再び森へ行ってみた。
どれくらい歩いたかわからなくなった頃、昨日の男の子がたっていた。
男の子は「やあ」とみきに声をかけたのでみきは「こんにちは」と挨拶をした。
この日はこれだけだったが、以降みきは毎日男の子に会いに行った。
彼と過ごす時間はみきにとってとても楽しい時間だった。
いつまでもそうしていたいと思うようになった。

そして、卒業の日がもう間近となったある日、みきは「このまま、この森に留まれたらいいのに・・・」といった。
男の子は「本当?」とみきに言った。
みきは「本当よ。」と答えた。
すると男の子は「じゃ」とみきの鼻先で右手の人差し指を揺らした。
みきは「何?」と言おうとしたがその体は一本の木となってしまった。
男の子は「この森にまた一本木が増えたよ。こんどは泉が欲しいな。」と言い、一本の古い木の中にとけていった。


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