人形姫

作:おおばかなこ


ー聖ヨハネ女学院ー
全寮制、お嬢様学校

この学院は洋風の造りになっているが、その一角に少々似つかわしくない市松人形が置かれている。
この人形にもいくつかの伝説があるが、その中でも最も有名なものは・・・
はるか昔、この学院に入学するため寮に入ったが入学式の一日前に急死してしまった子がいる。
その子が持ってきた人形が代わりに置かれた。
そのため、その子の魂が入っていて夜前を通ると話しかけてくる。
・・・というものだった。

中等部二年の奈美
彼女は女王様だった。
家来を持ち下僕(要するにいじめられっ子)をこき使っていた。

そんな奈美はある時、下僕の孝子に命令を出した。
「人形の伝説が本当か調べて来い。」と・・・。
さらに、「出来ればここへもってこい。」とも付け足した。
そして「それが出来たらもう命令はしない。」とも言った。

もし聞かなければどんな仕打ちをされるかわからない。
孝子は渋々人形を取りにいった。
すると伝説どうり人形が話しかけてきた。
「私は教室でみんなと過ごしたいの。あなたの体をちょうだい。」と心の中に話しかけてきたのだ。
孝子は驚いたが大きくため息をついた後「いいわ、あげる。あなたを連れて行けばもう命令はしないって奈美さんは言ったけど、どうせまた命令するに決まっているもの。このまま踏みつけにされているくらいなら人形になってしまったほうがましよ。」と答えた。
すると人形は少しの沈黙の後「じゃあ、私をこのまま連れてって。そうすれば約束どうり命令されなくなるわ。」といった。
「?」と思いながらも孝子は奈美の元へ人形をもっていった。
孝子が奈美に人形を渡すと人形の目が光った。
奈美は「ひっ」と短く叫んだ。
しかし、孝子には見えなかったので「奈美さん?」と声をかけた。
すると奈美は「人形の目が光ったように思ったけど、気のせいだったみたい。さあ、後は元に戻してくるわ。」と自ら人形を元の場所に戻しにいった。
そして「約束よ、もう命令しないわ。さあ、部屋へ戻りましょう。」と部屋へ戻っていった。

翌日、教室に現れた奈美は孝子に「おはよう」とあいさつをした。
そんな奈美を見て家来の一人真樹が「どうしたんですか・・・。孝子なんかにあいさつして・・・。」と言った。
これにたいして奈美は「もう家来だの何だののランク付けは終わりにしましょう。」と答えた。
これ以来、奈美は女王様ではなくなった。
孝子とは友だちになった。
その代わりぶりに元家来達はしばしいぶかしげだったが、孝子は一人納得していた。


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