女神の水晶

作:おおばかなこ


ー聖ヨハネ女学院ー
全寮制、お嬢様学校

高等部のまりあ
ある日彼女は、ルームメイトとささいなことでけんかをしてしまった。
そのため、少々ムシャクシャした気分で庭を歩いていた。
ムシャクシャしていたので、彼女は時々足元の石を蹴っていた。そうして歩いているうちに森へとたどりついたので、こんどは石を拾って木にぶつけた。
それを何度か繰り返しているうち、突然「痛い」という声がした。
まりあがそちらへかけよると金髪の女性がいた。
学院の敷地に金髪の女性がいることは特に驚くことではない。
外国人によって創設され、洋風のこの学院には外国人の生徒が何人かいる。
しかし「この人に石をぶつけてしまった」ということにまりあはあわてた。
「ごめんなさい。こんなところに人がいるなんて思っていなかったんです。」と女性に謝った。
しかし、女性は「石は当たっていないわ。ただ、木の気持ちになったら痛いだろうなって思っただけよ」と言った。
これを聞いたまりあはさらにムシャクシャした気分になったので「あなた、人をバカにしているんですか。なんなら、本当に石をぶつけてあげましょうか。」と言い石を拾った。
すると女性は「もっとスッとする方法があるわ。ついていらしゃい。」と言い歩き出した。
「待って・・・」と言いながらまりあがついていくと、洞窟にたどり着いた。
「こんなところに洞窟が・・・」とまりあが言うと女性は「ここは私の隠れ家よ。」と中に入りランプに火を入れた。
まりあが後に続いて洞窟に入るとランプに照らされて鉱石が光っていた。
「うわ〜きれい。鉱石を集めているんですか。」とまりあは鉱石を眺めていたが、奇妙なっものが目にはいった。
それは、占い師が使うような大きさの水晶玉だったが、中にまりあと同じ年頃の女性が一糸まとわぬ姿で入っているものだった。
同じものが六つあり、女性は皆ゆったりと夢を見ているようだった。
「キャッ、何あの水晶・・・」とまりあが言うと女性は「あれは私の故郷で採れるものよ。水晶に不純物が混じってあんなふうになるのよ。『女神の水晶』っていわれていて、七つそろうと願いがかなうっていわれるわ。私は六つだからあと一つよ。」と言って先へと再び歩き出したのでまりあは後を追いかけた。

やがて2人は地下の湖に着いた。
「さあ、あの明るいところへおもいっきりこれを投げ込んでみて」と女性はまりあに小さな水晶を渡した。
湖は月を映したように明るい部分があった。
まりあが女性に言われたとおり水晶を投げ込むと、湖は渦を巻き始めた。
すると女性は「女神の水晶、本当はこうして造るの。」とまりあを湖へ突き落とした。
まりあは、とたんに渦にまきこまれた。
渦はまりあを巻き込むと速さを増した。
そしてしばらくそのまままわり続けたが、やがて、中心からまりあが中に入った球体が現れた。
その中のまりあは一糸まとわぬ姿でゆったりと夢を見ているようである。
球体はそのままクルクル回りながら縮んでいき、他の水晶と同じ大きさになるとゆっくり降りてきた。
女性はそれを受け止めると「これで七つ揃ったわ。水晶を採りにこの世界へ来ていたけど、自分の世界へ帰れるわ。」と言い他の六つの水晶と共に箱へしまうと「ああ、だけど、この学院は外とは切り離されているから異界の道が開きやすいからこれからも石化する子が出そうね。皆さんきをつけて。では、ごきげんよう。」そう言っていずこともなくさっていった。
     ー  完 ー


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