作:七月
ここは幻想郷のはるか上空、天界と呼ばれる場所だ。
今、ここには2人の人物が居た。
まずはこの天界に住む天人が一人、比那名居の娘、比那名居天子。もう一人は下界の魔法使いアリス・マーガトロイドだった。
「ほら、あなたが下界の気質をめちゃくちゃにしてくれたお礼に、こてんぱんにしに来てあげたわよ」
ア リスは目の前でにこにこと浮遊する要石に座ってアリスを見下ろしている天子に向かって言い放った。対する天子は
「今日は千客万来ね〜、にぎやかなのは良い事だわ」
「あら? お望みならすぐに静かにしてあげるわよ……私に倒されれば意識もどっかに飛んで、それはそれは静かに感じるわよ?」
「言うじゃないか、下界の魔女め。大口叩いたんだから少しは楽しませなさいよ!」
そう言って天子は要石から飛び降り、地面へと降り立つと高々とその赤く光る剣……「非想の剣」を掲げた。
「空の天気も、地の安定も、人の気質も、私の掌の上……」
そして、天子はその手に持った非想の剣を思い切り地面に突き刺した。
「緋色の空がよぶものが何だったのか……」
アリスが身構える。人形達を並べ、いつでも飛び出せるように。
「マグニチュード最大でその身に刻み込め!!」
瞬間、大地が震えた。
その振動は大地のみでなく、周りの大気までをも振動させる。
「くっ……」
地に立っていたアリスは言うまでもなく、空に浮いていたはずの人形達さえ強烈な振動に身動きが取れなくなった。
その間に天子は宙に浮かべた要石の上へと降り立ち、立ち赤い光……周囲に散らばった基質をその剣に集めていた。
「吹き飛べ……」
そして、凝縮された力が放たれる。
≪全人類の緋想天≫
ゴッ、と天界を光が包んだ。それはまるで朝焼けのような暁の光。
「ああああっ!」
その光は巨大な柱となってアリスを包み込んでいった。
「あーあ、なんだ。あっけないわね」
「く〜っ、流石に天人には勝てないわね……」
天子の勝ちで勝負が終わり、アリスは地面へとへたりこんでいた。
「さてと、負けたからにはあなたは罰を受けてもらわないと」
「罰ってなによ」
「う〜ん、こういうのよ♪」
天子はにやりと笑みを浮かべ、指でとある方向を指し示した。
アリスもその方向に顔を向ける。
すると……
「何アレ!?」
そこにあったのは無数の石像だった。
「魔理沙にパチュリー……咲夜もいるじゃない!?」
全身真っ白に染まり、全裸で石像になっていたのはアリスの顔見知りたちだった。
「ああ、あの子達は私に負けたから要石になってもらったの。もちろんあなたもこれから要石になってもらうわ」
「そんな……」
「それじゃあ……あなたも石になりなさい!」
パアッ、と緋想の剣が光り、その光がアリスを包み込んだ。
「あっ……」
一瞬で光に包まれるアリス。そして……
「うん、完成♪」
光が収まった後。そこには先ほどの格好のまま、全裸で石像にされたアリスの姿があった。
他の石像同様、真っ白な要石の像に変化してしまったアリス。
ぺたんと地面に座り込み、両手はだらしなく垂れ下がったまま固まっている。
そして、石像になりながらも天子を見上げるその顔には驚きの表情が浮かんでいた。
体の芯まで石と化してしまったアリスは最早微塵も動くことは無い。
「流石は私、いい出来だわ!」
天子は石像となったアリスの体に触れる。
「元が良いと石像になってもいい味を出すのよね」
腰、太腿、胸……顔などを順々にさすり、その冷たく固い質感を堪能した。
そして一通り触り終わると、天子はアリスの体を持ち上げ、要石の一つに載せた。
そのまま要石でアリスを他の石像が並べられている場所へと運んでいく。
「よっこらせ」
と、天子はアリスの石像を地面に下ろし、魔理沙、パチュリー、咲夜の石像の隣に並べた。
4との石像が立ち並ぶ姿はまるで美術館のヴィーナス像が立ち並ぶ姿を思い起こさせる。
「うん、数が揃うとやっぱり爽快ね……と、また誰か来たみたいね。さて、今日はあと何体増えるかしら♪」
そう言って天子は新たな来訪者を迎えにいった。
後にはただの石像たちが残される……
その夜。
「いやー、大漁ね♪」
石像たちに囲まれながら、天子が酒を飲んでいた。
天子の周りにある石像は13体。
魔理沙、パチュリー、咲夜、アリス……さらに加えて妖夢、射命丸、優曇華、小町、霊夢、早苗、空、チルノ、美鈴の9体の石像が新たに並べられていた。
どれも天子に挑み、返り討ちに会って石像にされてしまったのだ。
「今日は石像に囲まれての宴会ってわけだね〜」
というのは天界に住み着いていた萃香だ。
「裸婦像を見ながらの酒ってのもいいものでしょ?」
「まあね」
「そうね」
そう言って天子と萃香そして何故かここにいる幽々子は酒を飲み交わす。
「っていうか幽々子、あんたも石像にしたはずなんだけど……」
「あら? 霊体の私に石化なんか効くと思って?」
「まあ……いいけどね」
と、天子は少々腑に落ちない顔で酒を飲んだ。
「ねえ、ところでこの石像たちはどうするの?」
萃香が天子に聞く。
「う〜ん、まあ明日にでも下界に下ろしとくわよ。石化解除は適当にあなたたちでやっておいてよ」
「香霖堂に解除薬でも置いてあるかしら?」
「まあ明日のことでいいじゃない。今は呑もうよ!」
和気藹々と宴会は続く。
その宴会の外。石化した者たちはその喧騒の中、ただの石として佇み続けるのだった……
〜おまけ〜
翌日香霖堂にて
「え? 解除薬? そんなもの置いてないよ」
…………
…………
…………
おわり。