カタメルロワイヤル第12話「風花」(前編)

作:七月


左右を氷壁に囲まれた狭い一本道を東風屋早苗は走っていた。
「待ちなさいですのー!」
「いやですー!」
そのあとを一人の少女が追っている。
黄色い短めの髪に、黒いカチューシャを挿した少女。北条沙都子だった。
沙都子は先ほどから早苗を追っているのだが、早苗は予想以上にすばしっこくて仕留められないでいた。
(くそ・・・あんな動きにくそうな服着てすばしっこいですの・・・)
沙都子は息を切らしながら思う。
(でもこの先は・・・)
沙都子はニヤリとその頬を吊り上げた。
この一歩道の先はY字型に二手に分かれている。このまま早苗が右に曲がればそこは沙都子が大量の罠を仕掛けたトラップゾーンだった。
そこに追い込めば沙都子の勝利は目に見えたも同然だ。
やがてしばらく走ると目の前に分かれ道が見えてきた。
(来ましたわ!)
地獄への招待状を送りつけてさしあげましょう。
沙都子は早苗に向けて言った。
「そこの緑髪の巫女さーん。左の道はトラップも何も無くて完全に安全ですわよー。」
「えっ?」
早苗が走りながら沙都子の方に首を向けた。
「本当ですかー?」
早苗の質問に対し、沙都子は
「私は!絶対に!嘘をつきません!わ!」
早苗が目をぱちくりとさせて沙都子を見ていた。
(よし!)
まさか敵からの情報を鵜呑みにするような人はいないだろう。
しかもこんなにあからさまに安全だ!と言っているのだ。左の道に嫌疑感を示し、右に道に進もうとするのが普通だ。
例に漏れず早苗ももちろん右に進・・・
「そうですか!ありがとうございます!」
早苗は左へ、てててててっ。
「ドチクショーですわーーーっ!!」



ブワァッ
「キャッ!」
レイミの頭上を白く太い腕が通過していった。
そのすぐ後にレイミのすぐ横を巨大な毛むくじゃらの塊が通り抜けて行った。
バキバキと氷の地面を踏み鳴らしながら猛走するスノーゴン。
リディアが駆る、この一体の怪物はレイミにとってかなりの強敵となっていた。
まずはその人の数倍はあろうかという巨大な図体。
さらにはレイミの放つ矢を物ともしない毛深く重厚な皮膚。
そしてなにより・・・
「速い・・・」
その巨躯に見合わぬ俊敏な動きだ。
さすがに小回りは効かないようだが、その凄まじい速さでの突進は脅威というほか無かった。
まるで大型トラックが全速で突っ込んでくるようなものだ。かすっただけでもただではすまないだろう。
「さて、どうしよう・・・」
レイミは考える。
大量の毛で覆われている全身にレイミの放つ矢は防がれてしまうだろう。
とすると狙える場所は限られてくる。
目、口、耳や鼻の穴など、毛に覆われてはいない部分。そして・・・
レイミはスノーゴンを見た。スノーゴンは丁度Uターンし、向きを変え、こちらに向けて再度突進してきているところだ。
そして、その背中には緑色の服に身を包んだ少女が乗っている。
「直接搭乗者を狙う。」
レイミは、リディアに狙いを定め、走り出した。



私、ティアナ・ランスターは今戦闘の真最中だ。
「そこっ!」
「おっと。」
ガン、ガンと私の放った銃弾が氷の柱に穴を穿った。
魅音は私の銃弾を回避すると同時に氷柱の影に隠れこんだ。
「ちっ・・」
私も魅音から身を隠すために近くの氷柱の影に隠れた。
今、私たちが戦っているところには無数の氷柱や小さめの氷山が乱立していた。まるで氷の迷路に迷い込んだようだ。
障害物が多く死角が多分にある為、先ほどからお互いに身を隠しつつ、相手の位置を探るという行動の繰り返しだ。
(早く切り抜けて、フィーナたちを助けに行かないといけないのに・・・・)
フィーナたちの相手はあの咲夜だ。何か奇妙な力を使えるようで、私としてはそんな咲夜の相手をしなければならないフィーナたちの身が気がかりだ。
ついつい焦りの気持ちがわいてくるが、今は絶えなければならない。
焦って変に行動してしまえば相手の思う壺だ。
(落ち着いて、冷静に。)
私はそう自分に言い聞かせながら、魅音の動向を探った。
(魅音自身が見えないのなら、見えるところを探せばいい。)
私は辺りを見回した。
すると、
(いた・・・。)
氷の柱に映る緑色の髪。純度の高く、澄んだ氷柱はそれ自体が鏡のように周りの景色を映していたのだ。
そして、私は魅音の映っている角度から、魅音の大体の場所を割り出した。
幸い魅音は私に場所がばれている事に気がついてはいないようだ。
(いける!)
と私は思った。だが次の瞬間。
「!?」
私はとっさに回避行動をとった。
遅れてガァン!と一際大きな銃声が木霊した。
そしてたった今、私の頭があった位置に氷柱に深い銃痕が残されている。
「あっちゃー。外れたか。」
「そんな・・・」
私の後方。そこでは魅音が再び氷柱の影に隠れこむ様子が見えた。
私はさっき魅音の位置を確認した場所を見た。すると・・・
(いない・・・)
先ほどまで魅音が映っていた氷柱には何も映ってはいなかった。
(さっきまでは確かにいたはず・・・)
なのに今突然私は後ろから襲われた。
一体どういうことなのか?まさか、魅音も咲夜と同じくおかしな能力でも使えるというのか?
(気を引き締めないといけないわね・・・)
私は、今の現象の答えを模索しつつ、再び周囲の警戒に当たった。



ザフッ
刃が肉を絶つ音が聞こえた。
フィーナと咲夜が交差した瞬間、フィーナの肩口を刃が切り裂いて行った。
「くっ・・・」
肩に走る冷たい感覚に顔をしかめるフィーナ。
切り裂かれた場所には薄い氷の膜が張り付いていた。
「一体なんです・・・それは?」
咲夜が振り返りながらフィーナに言った。
その咲夜の左腕はパキパキと青白く凍結していた。
「今の一撃で終わらせるつもりだったのですが・・・」
フィーナの凍結は咲夜が切り裂いた場所のみに留まっており進行する様子は無い。それなりに深く切り裂いたはずなのだが。
「それにその姿は・・・」
咲夜は先ほどとは違う、純白のドレスに身を包んだフィーナを見た。
交差する瞬間フィーナの体が光り、光が止むと今の衣装を身に付けていたのだ。
「なるほど・・・もしかして固め効果を緩和するという道具なのでしょうか。」
「・・・・」
フィーナは無言で咲夜に目を向けた。
「肯定と捕らえさせていただきます。でも・・・」
この少女が一撃で固められなかった理由はそれだけではない。と咲夜は思った。
なぜなら咲夜は肩口など狙わなかった。咲夜が狙ったのは左胸、丁度心臓の辺りだ。
なのに、結果として咲夜はフィーナの肩を切り裂いただけに終わっている。さらには反撃まで喰らい、フィーナに左腕を切られてしまった。
フィーナが咲夜の攻撃をよけたのは偶然か、それとも・・・
「ねえ咲夜さん。」
フィーナが咲夜に話しかける。
「少し話しを聞いていただけるかしら?」
「・・・なんでしょう?」
「あなたの能力の事なんですけど。」
(やはり・・・・)
咲夜は確信した。
この少女は私の能力に気づいている。
だからこそ微妙にこちらの攻撃の位置をずらし、さらには反撃などという行為が取れたのだろう。
「どうして使えるのかは分からない。でもどんなものを使っているかは分かったわ。あなたの能力は・・・」
ゆっくりとフィーナが告げる
「“時間停止”ね。」



時間停止。
文字通り、世界に流れ続ける時間を停止する能力だ。
厳密には咲夜が本来扱える能力はもっと幅広いものであったが、この世界で咲夜が使えるようになった能力はこの一つだけであった。しかもそれでさえ制限付だ。
だが、それで十分だった。
全てが止まった灰色の世界。
そこに相手を閉じ込めてしまえば、相手になす術はないのだから。
(まあ例外はいましたけどね・・)
それがハルヒという少女だ。
彼女に始めた会った時。咲夜はすでに能力を使えたにもかかわらず敗北した。
とは言っても能力を使っても負けたという訳ではない。しかし、戦い始めてすぐに能力を使っても負けるという予感が咲夜を支配した。ハルヒの秘めたポテンシャルはそれほどだったのだ。
おそらく一度でも能力を使えば簡単にハルヒに攻略されてしまっただろう。
だからこそ咲夜は今日という日。ハルヒが咲夜の策略を打ち砕き、一瞬の隙を見せるまで決してこの能力は使わなかったのだ。
そして何とかハルヒがいなくなった後。咲夜のこの能力は無敵を誇るはずだった。
事実、みゆきやヤミは咲夜の世界の中では何一つ身動きできずに固められる事となった。
そう、最早咲夜に敵など無いはずだったのだ。
だが
(なかなかうまくいかないものね。)
咲夜は目の前にいる少女を見る。
純白のウェディングドレスに身を包む少女。
確か月の王女のフィーナ・ファム・アーシュライトと言ったか。
咲夜の能力はこの少女にあっという間に見抜かれてしまっていた。
「一応・・・そう思った理由を聞いておきましょうか。」
咲夜が告げると、フィーナが答えた。
「まず・・みゆきさんの時かしらね。あなたの手から一瞬でナイフが消えてみゆきさんの胸に刺さっていた時。この時まずあなたの能力は“瞬間移動”だと分かったわ。あとはそれが“物質転送”か“時間停止”のどちらによるものかだけど・・・」
そして、とフィーナは続ける。
「ヤミさんの時。あなたはヤミさんの前に現れてヤミさんを刺していたわよね。これはあくまで可能性の話だけど、もしあなたの“瞬間移動”が“物質転送”による物だとしたら、“物質転送”によって直接ヤミさんの内部に直接ナイフを突き立てるほうが合理的。わざわざ移動した後に刺す理由は無いわ。
だから思ったの。やらないんじゃ無くてできない。時間停止中は物質に深く干渉できない“時間停止”があなたの能力なんじゃないか・・・と。」
(なるほど・・・)
フィーナの話を聞いた咲夜は表情こそ冷静であったが、内心穏やかではいられなかった。
たった2回能力を使っただけでここまで当てられてしまった。
(というか、そんな細かい事まで良く冷静に見ていられた物だわ。)
大抵咲夜の能力をはじめてみた人は、頭がパニックになって咲夜の事など考える余裕なんて無いのがほとんどだ。
(やっかいな人・・・)
咲夜は心のそこからそう思った。
「その通りよ。私の能力は時間停止。」
そういいながら咲夜は服の中から一つの道具を取り出した。
それはひとつのペンダントだった。
そのペンダントには少し大きめの宝石がはめ込まれている。
「レアアイテムの一つ。“魔石”よ。この道具は私たち本来の力をほんの少しだけ取り戻させてくれるの。」
「なるほどね・・。それであなただけが能力を使えたのね。」
ええ、とフィーナの言葉に咲夜は頷いた。
「で・・・それが分かったからどうするというの。」
咲夜は無事な右手でナイフを構える。
「原理が分かったからといって私の能力にどう対抗する気?
こちらもあなたに能力がばれていると知った以上、もう油断はしないわ。」
「・・・・。」
フィーナは無言で剣を構えた。
咲夜の雰囲気が変わったのだ。以前までの余裕を持った態度ではない。正真正銘、相手を狩るためのモードだ。
咲夜は言う。
「人間とは時の流れに流されなければ生きられない無力な存在。
その流れを操れる私にあなたが勝てる道理は無い!」
咲夜が、動いた。



「はあ・・はあ・・・よ・・ようやく追い詰めましたわ・・・」
「え?何がですか?」
(チクショーですの!あのあと何週も何週も走らせやがってですのー!)
沙都子は息を切らしながら、平然とした顔で目の前に立っている早苗に言った。
あのあと様々なところを駆け回り、ようやく沙都子の仕掛けた大量のトラップが眠っている広場に早苗を追い込んだのだ。
「ほーっほっほ!ここに迷い込んだが最後、あなたは生きて帰れませんわ!」
「?」
と首をかしげる早苗。
そんな早苗が一歩前に踏み出すと
クイッ
「え?」
何か糸のようなものが足に引っかかるような感触。そして、
ヒュン
「きゃあっ!」
早苗の右側から一本の矢が早苗めがけて飛んできた。
早苗はとっさに一歩下がってそれをかわすが、
カチッ
今度は何かスイッチを踏んだような感触。そして、
バァン
「うわわっ!」
早苗の前方の地面から銃弾が発射された。
早苗はとっさに回避をとるが、銃弾は早苗の髪をかすめていった。
「危なかったです。でもこっちなら・・・」
早苗は今まで走ってきた方に足を踏み出そうとした。
しかし、
ザシュ
「ひややぁ!?」
急に地面から刃が飛び出してきた。
間一髪避ける事ができたが、どうやら今まで走ってきた道にもトラップはあったらしい。
早苗を中心に追いやり、狼狽する様を楽しむ為にわざと発動させなかったのだろう。
「ほーっほっほ!どうですの。この私のトラップゾーンは。一歩進めば罠。一歩戻っても罠。あなたはもう動く事すらままなりませんわ!」
「ど・・・どうしましょう・・・。」
早苗は自分の後方を見やった。沙都子がいる方とは反対に一本道があったが、そこまでたどり着くにもおそらく数々の罠を超えていかなければならないだろう。
現状に困惑している早苗を尻目に、沙都子は壁にもたれ掛かり
「さあ、無様に自滅していく様をゆったり見させていただきますわ。」
小悪魔のような笑みを浮かべていた。



「てやあっ!」
地面を蹴って大きく跳躍。レイミはスノーゴンの頭上を取ると同時にすばやく弓を引いた。
「そこっ!」
放たれた矢はスノーゴンの背中に乗る少女。リディアに向かって進んでいく。
コースは完璧。矢は吸い込まれるようにリディアへ接近して行った。
今まさに自分が射抜かれようとしている。その状況を理解したリディアの表情に恐怖の色が浮かぶ。
だが、そんなリディアの危機を察知したようにスノーゴンが動いた。空気大きく吸い込み、やがてその大きな口から巨大な音と共に開放する。
グオオオオオオオオオオオッ
「きゃっ!」
スノーゴンの咆哮だ。
すさまじい空気の圧と、音の振動。レイミの矢は空中で力を失い落下して行った。
さらには咆哮の直撃を受けたレイミ自身もだ。
ドサッ、と地面に落ちるレイミ。
「くっ・・・」
体勢を立て直し、起き上がったレイミはスノーゴンが再び空気を大きく吸い込んでいるのを見た。
また咆哮が来るのか?と思ったが何か違う気がする。なぜならその口元から白い霧のようなものが漏れて・・・
「まずいっ!」
とっさに回避行動に移るレイミ。
そのレイミに対してスノーゴンから勢いよく冷凍ガスが吐きだされた。
白く輝くガスが雪崩のような勢いで押し寄せてくる。
「きゃあっ!」
冷凍ガスは一瞬でレイミの体を包み込んで行った。



「これは・・どういうことかしらねっ!」
私は氷柱の影から飛び出すとすぐさま別の氷柱の影に飛び込んだ。
だが、そこにも容赦なく銃弾が襲い掛かってくる。
やはり何かおかしい。と私は思った。
先ほどから魅音がいたと思った方向とはまったく別の方向から狙撃され続けている。
おかげで防戦一方だ。
「このままじゃジリ貧ね・・・」
少し危険を伴うかもしれないが、こうなったらこちらからも動くしかない。
私は銃撃を回避しつつ、少しずつ銃弾が飛んで来る方角へと進み始めた。
そして
「みえた!」
氷に映る魅音。
私はそこへと一気に駆け出した。
「ちっ!」
果たして魅音はそこにいた。
「見つけたわよ。」
銃を構えよとする魅音に体当たりを食らわせると、私はそのまま右足で魅音の左腕を、左手で魅音の右手を壁に押し付け固定し、右手に構えた銃を魅音の喉元に押し付けた。
「全くなんだか良く分からない戦い方して・・・」
「ぐっ・・・」
後はこのトリガーを引けば私の勝ちだ。だが、何かが引っかかる。
(なんだろう・・・)
そう思った私はとあるものが目に入った。
魅音が作ったであろう銃痕だ。
アレだけたくさん撃ってきたのだ。そんなものたくさんあってしかるべきなのだが・・・
(違うっ!?)
気づいた。
魅音が持っていたのは二丁拳銃だ。だが、無数の銃痕の中に不自然に深い。明らかに威力が違う銃によって穿たれたものが混ざっているのが分かった。
この威力、貫通力はライフルかそれに近い系統のもの。
わざわざここにライフルを隠しておいて持ち替えていたのか?いや、そんなことしてどうなる。
私の目が驚愕に見開いた瞬間、魅音の顔に笑みが浮かんだのが見えた。
そして、私の右側に人影が姿を現した。
「お待たせしました、お姉。」
そこにいたのは魅音と瓜二つの少女。その手には、長めのライフルが一丁握られていた。



早苗は相変わらずその場から動く事ができなかった。
そんな早苗に沙都子は飽き飽きしているようで
「早く動いてくださらない?動かないのなら・・・」
沙都子が銃を取り出した。
「動いてもらうだけですわ。」
「!?」
沙都子の銃が火を噴いた。



「く・・・」
レイミはかろうじて無事だった。だが、やはり回避が遅れたせいで、右足の膝から下は完全に凍り付いてしまっていた。
動けない事は無い。だが、そもそも弓が全く聞かないこの相手にどう対抗すればいいのか分からない。
やがてゆっくりとスノーゴンの巨体がレイミへと近づいていく。
もちろん止めを刺すために・・・



私の目の前には魅音と瓜二つの少女がいた。
「お姉。今助けますね。」
そう言ってその少女は私へと銃の照準を向けた。
「なるほど、双子さんだったの。」
「はっはー。そういうこと。おじさんの妹で詩音って言うんだ。
差し詰めおじさんたちはスリーハンドだったってわけだね。
さて・・・逃がさないよ。」
魅音は両手の銃を捨てると、力を緩めてしまった私の左手と右足を掴んだ。
「くっ!」
私はとっさに右手に握られた銃を詩音へと向けた。だが遅かった。
「残念ですね。」
引き金に添えられた詩音の人差し指がゆっくり曲げられていく。
「さよならです。」
「ばいばい〜(・3・)ノシ」
ガァン
銃声が一つ、木霊した。



「・・・・・」
目の前が真っ暗だった。
もしかして私はやられてしまったのか?
いや、違う。目の前が真っ暗なのは銃声に目を閉じてしまったからだ。
私はゆっくりと目を開ける。
氷の地面が見えた。
どうやらまだ私は大丈夫らしい。
目の前には相変わらず魅音がいた。その表情は驚きに満ち溢れていた。
「何・・・?」
私は呟きながら詩音の要る方角を見た。
「嘘・・・!?」
信じられない、光景を見た。



キャィン
と銃弾が何かにはじかれる音。
「なんですのっ!?」
沙都子は突然の出来事に困惑した。
「え・・これは!?」
早苗は目の前を見た。そこには小さな壊れた人形が一体横たわっていた。
この人形が銃弾を防いでくれたのか。
「本当、私の世界の仲間は危なっかしいったらありゃしない。」
不意に早苗の後方から声がした。
誰かが道をやってくる。その人物は早苗の良く知る人物で・・・



突然レイミの目の前でスノーゴンの動きが止まった。
「何・・?」
レイミはスノーゴンを見た。だが、スノーゴンはレイミではなくもっと遠く、レイミの後方を見据えていた。
レイミもその方向を見た。
すると、
「おーおー、でかいでかい。」
一人の少女が立っていた。
黒と白を基準とした魔女服に身を包んだ少女
「でかいってのは浪漫だな、うん。」
勝手に頷いたあとその少女は言った。
「さて、あんたが・・えーっと・・ティアナ・・?だっけ?
まあいいや、そんな感じのヤツの仲間か?」
「ええ・・まあ・・」
レイミは今一事情が分からないが頷いておいた。
「よーしよし、分かった分かった。そうだな・・・ここはこう言うと格好いいか。」
少女はレイミへと向き直る。



ティアナの目線の先。
詩音の右手が押さえられ、銃はあさっての方向を向いている。
そしてその詩音を押さえている人物。
ここに居るはずの無い人物。
茶色のセミロングの髪に、白い制服と帽子に身を包んだ少女。
「ひっさしぶりやな。ティアナ。」
「はやて・・・さん・・・」
再開できた喜びと同時に、どうして?という気持ちもわいてくる。
はやてさんはあの時私たちを逃がす為にアリスたちと・・・
困惑している私にはやてさんは優しい顔で言った。
「細かい話は後回しや。とりあえず・・・」


七色の人形遣いはあくまで冷静に敵を見据えて言った。
白黒の魔法使いは帽子の鍔をつかみ、楽しそうな顔で言った。
夜天の魔術師は部下に優しく手を差し伸べながら言った。



『手を 貸そうか。』

つづく


戻る