堕ちる幸せ

作:モンジ


ふと、目が覚めると辺りは真っ暗だった。
半分靄がかかった頭で、なんでこうなったのか考えてみる。
確か、友達と話しこんで帰るのが遅くなって、門限ぎりぎりだったから近道を通ろうと走ってたら、目の前に変な男の人が……

そういえば、ここどこだろ

そう口に出そうとしたところで、ふと妙なことに気がついた。
体がやけに軽い。そして動かそうと思っても体が動かない。
幸い眼だけは動かせるから、目だけで自分の体を見てみる。

わぁー、小さな桃が二つ……

真っ裸だった。
普通、裸だったらもっと慌てるはずなんだけど、頭がぼうっとして、そんあことはどうでもよくなってた。
我ながら未発達な体を見て思わず溜息がでそうになる。
もう18歳になるっていうのに、身長は中学生並み。
胸の形にはそれなりに自信があるけど、大きさもまあ、普通ぐらい。
幼児体型と女らしい体系の丁度中間っていう半端な体付き。
友達の妙に成熟した体に憧れては、日々牛乳を飲んだり、沢山寝たりと無駄な努力をしてたりする。
それに加えて、短めの髪と幼い顔付きのせいで皆からは完璧ペットか、妹みたいな扱いを受けてる。
ちょくちょく、中学生がなんでこんなところにいるんだ?ってからかわれるし……思い出すと軽く腹立ってきた。
そうやって無駄なことを考えながら、意識をはっきりさせていくと、なんだか首のあたりに巻き付いてる感覚がした。
首輪?
眼だけで首の下を見ようと頑張っていたところで、突然光が現われた。
暗闇に慣れていた私は、思わず顔を背けようとしたけど、体が動かずしばらく眩しさに苦しむことになった。
誰かが歩いてくる音が聞こえてくる。それも複数だ。
丁度私の後ろくらいから、声が聞こえてきた。
若い男の声だ。

「意識はあるのか?」
「さあな、まあどちらにしろ動けないし、声も出せない」
「まあ、すぐに加工するからなぁ」
「あのおっさんもとんだ変態だよな。こんなちっこいのがいいだなんてよ」
「飾るのならこれがいいんだってよ。良い女は生身で抱きたいらしい」
「けっ、スケベオヤジめ」

ちっこくで悪うございましたね。
それはいいとして、訳が分からない。
加工? 飾る?
目で見える範囲では、ここにいるのは私ぐらいだ。
大きさは数メートル四方の何も置かれていない部屋。
そこの真ん中あたりに私は立たされている。
つまり私を加工して、飾るということ?
何を、どうやって……

「愚痴ってないで、とっとと始めるか」
「そうだな。あのオヤジ、妙にウザいし」

そう言って男達は、私を持ち上げた。
って、脇をつかむなあ! 脇とか横腹とか弱いのに!!
くすぐったくて体を動かしたいけど、まったくぴくりとも動いてくれない。
あああ、こそばゆいよぉ。


*    *    *    *

くすぐったさに悶えている間に、なにやら妙な所についた。
大きな穴がいくつも空いてあって、その周りに何人かの男がいる。
まるでどこかの研究所みたいだ。
その内の穴の一つに、私は持ってこられた。
私を連れてきた、というより持ってきた男達が何やら、話をしてる。
でも、何を話しているのか、まったく聞こえなかった。
と、その片割れがやってくる。
そして、なにやらカプセルみたいなものを口の中に捻じ込んで、無理やり飲ませてきた。
まったく、乱暴な……
そうして、私の体を穴のヘリに持ってきて、そのままトンって押して……
え?
ちょ、まって! 落ちる落ちる! 死んじゃう!!
いやあああああああああ!!

必死に声を上げようとしても、舌も喉も口も動いてくれない。
ただ突っ立って、ぽかんと無表情のまま私はどんどん落ちていく。
ああ、短い人生だったなぁ。
なんて諦めたところで、ネチョリと、変な感触が全身を包んだ。
何、これ?
ネトネトと、まるで粘液みたい、というかスライム?
感触としてはベトベトしてネチョネチョしてひんやりとしている。
正直、あんまり気持のいいものじゃないかも……
って、あっ!
ね、粘液が、動いてる!
いやぁ! 入ってくる!! スライムが私の中に入ってくるぅ!
ま、前だけじゃなくてお尻も!?
うぇぇ、く、口にも入ってきたあ……
っ! え? なんで? 体が、体が疼いて、熱い……
口から入ってきたスライムが体に入っていく感覚が気持ちイイ……
お尻にどんどん殺到していくスライムの勢いが、私を狂わせる……
ああ、大事なところがだんだん熱くなって……
あれ? 体中が侵されいるのに、私それが気持ちイイって思ってる?
あっ、うあぁ。駄目、気持ちイイ……
このままじゃ、私……私っ!



*  *  *  *  *



「そろそろいいんじゃないか?」
「ああ、そうだな。おーい、引き上げてくれ」

ガラガラと音をたてて、鎖が巻き取られていく。
先ほどの少女の首輪に付けられていた鎖だ。
それが巻き取られていくにつれて、スライムの培養槽から一つの人影が浮かんできた。
あの少女だ。
その幼く、可愛らしい顔は茫然と無表情を作ったままで、表面にスライムがずるりとからみついている。
細い手足は気をつけの姿勢のままで動かず、その小柄で未発達な身体は動くことはない。
少女は、スライムに固められていた。
薄緑の濁った色に変色した彼女は、体に大量のスライムをまとわりつかせ、虚ろな目を宙に向けていた。
少女を侵していたスライムは彼女に同化したまま固まり、少女を全くの別の物に変えてしまった。
ふと見れば、薄緑色の彫像にも見えるだろう。

「死んでんのか?」
「いんや。動けず、外からの刺激にも反応しないだけで生きてはいるよ」
「死んでるのと変わらないだろ、それ」
「生きてるのさ。スライムの群れに落とす前に飲ませた薬のせいでな」
「えげつねぇなぁ」
「今頃、体中をスライムが這いまわり、穴という穴を犯されている感覚に身悶えてるのさ」
「そのくせ動けず、声も出せず……ねぇ。想像するだけで寒気がするよ」
「ずっと快感だけを感じれるんだ。そういう意味では幸せだろうさ」

男達の声が響く。
ふと、片方の男が少女の像を見た。
固まった少女から、喘ぐような声が、絞り出されたような、そんな幻聴が聞こえた様な気がした。


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