鬼神楽 メデューサ編

作:狂男爵、偽


うららかな昼下がりののどかな田舎の大きな神社。
せまる闇に気づかず、少女達は久しぶりの平和を満喫していた。
「はぁー、平和ねぇー。」
気の抜けた声をだして巫女が本堂でゴロンと大の字になった。
普段は凛々しい顔もだらしなく緩み、綺麗に整えられた黒髪もだらしなく広がっている。
「おねぇちゃん、そんなことしてたらまたお母さんに怒られるよ。」
見た目より幼さを感じる声で注意するもう一人の巫女の声にも力がない。一応本堂の埃を払っているのだが、
結構おざなりにも見える。
「あんたが言わなきゃ大丈夫よー。」
気の抜けた返事に妹は丸みを帯びた幼げな顔を疲労に染めてはぁーとため息をついた。
「いまのお姉ちゃんをみたら、木島さんも帰ってこなくなるかもねー。」
「はいはい、大丈夫、大丈夫。」
手のひらをひらひろと振って寝転がった巫女は返事をした。
一応彼女のために言い訳をしておくと、少し前に結構大きな妖怪達との戦いがあって、
彼女たちは仲間とともに町中を駆け抜けながら、激戦を経て尊い犠牲を払って、
からくも勝利を得た。埃を払う巫女の意欲が控えめなのはそれと無関係ではない。
「もうすぐ父さん達が新しい神様を連れてくるんだから、あんたももっとがんばんなさいよ。」
「そういうことを言うんだったら、手伝ってよ、お姉ちゃん!!」
ついに怒り出した妹に、やれやれとつぶやいて寝転がっていた巫女が立ち上がろうとすると、
玄関から呼び鈴が鳴った。
「お客様?おかしいなぁ…なんか父さん達が人払いの結界を張ってたはずなんだけど。」
正確には退魔の結界だったのだが、二人が興味を持たないように巧妙に誤魔化されていた。
「不届きものね、ここはおねえちゃんに任しておきなさい。」
掃除をせずにすむと知って姉のかんなは俄然やる気を出して玄関に向かう、妹の
はぁというあきれを込めたため息を吐いた。
「どちらさまですか、」
表面は丁寧だが、本当に不届きものならよほどの素人でないかぎり気付く
殺気があった。
「あっあのっ、鬼退治をした有名な巫女姉妹の方はご在宅ですか?」
気の弱そうな娘の必死な返事に、かんなは一瞬とまどったが、
「お姉ちゃんを、お姉ちゃんを助けてください」という彼女の必死の
訴えに思わずガラガラと戸を開けた。
かすかに何かが焦げたにおいがしたが、
巧妙な偽装が仇となってかんなは気がつかなかった。

「おい、ずいぶん話が違うぞ。」
愚痴りながら、学生服の青年は油断なく鉄の棍棒を構えた。
事前の話だと、ここは平均的な一戸建てで行方不明の娘さんの話を
聞く際、両親がとりみだしたら場馴れしている木島が納めろという話だった。
「あーら、暴れるしか能がないあなた向きじゃない。」
獣耳の娘を背後にかばってスーツを着た美女が微笑みながら、徒手を構えて、
正面の牛頭の人間達を見つめる。
呼び鈴を押しただけで玄関の扉をぶち壊して現れた。
牛男達(夫妻???)の肩越しに、怯えて抱き合う中年の男女の石像が見える。
「俺の用事は済んでるみたいじゃないか、帰っていいか?」
木島の半ば本気の問いかけに、獣耳の娘が袖を引きながら訴える。
「ミコ!!あいつは確かにそう言ったって。」
「だからって、次の犠牲者があいつらって決まったわけじゃないだろ?」
「だからそれを確認しにきたんでしょ。」
二人がナツ様に振り返ったのを隙と見て取ったのか、ミノタウロス(仮名)の片割れを雄たけびを上げつつ、
両腕を振り上げて飛び掛ってきた。

「姉が帰ってこないんです、警察にも相談したんですけど相手にされなくて。」
居間で座った少女は出されたお茶に手もつけず、涙ながらに言った。
「でも、オカルト部の活動中にだからって、私たちが役に立つかどうかわからないじゃ…。」
「お姉ちゃん!!!」
もっと不吉な考えが浮かんだのか、かんなの言葉を聞いて青ざめた少女に気遣ってうづきが
途中で遮る。
「お姉ちゃん……。」
呟いて黙り込みうつむいてしまったため、緑がかった前髪に目が隠れてしまったため表情は見えないが、
少女はかすかに震えていた。
「あ……、とにかく調べてみるわ、だからお姉さんのことは私達に任せてちょうだい、ねっ、うづき。」
「はぁー……まぁ、とりあえず、現場に行こう、なにかわかるかもしれない。」
気まずそうに、かんなが長い黒髪を振り乱して妹の方を向いて告げると、
うづきはため息をついて、返事をした。
「ありがとうございます、お願いします。」
姉妹のやりとりを聞いて顔を上げた少女の笑みに、なぜかうづきは不吉なものを感じたが、
一瞬だったので特に深刻には捉えなかった。

「もうこれでおしまいなんだろな!」
木島は蹴り倒したミノタウロスの胸を貫いた棒を抜く。
「さあ、どうでしょうね。」
中に取り込んだ別のミノタウロスが消し炭と化したので、狐火の渦を解きながら
葉子は答えた。
「こっち。」そんな二人のやりとりを横目にナツはすたすたと中に入ってゆく。
木島と葉子はナツ様を前後に挟んで廊下を進んでいた。
「葉子、ここみたい。」
ナツが指でさした扉には、犠牲者とは別の名前が刻まれていた。
スーツ姿の美女が扉を開ける。中には
石の涙を浮かべ、短い髪を振り乱して灰色に冷たく凍り付いていて、懇願の表情は
今にも叫びが聞こえそうなの石像。
部屋の中にいたのは、写真で見た犠牲者の少女を幼くした感じの石化した少女だった。
「解けろ、」事前に許可を貰っていたので、ナツは躊躇なく石像の元の近づいて、
塩をかけた。
「いやぁぁぁぁっ……あっ……あれ、わたし…いったい…。」
ひとしきり叫んだ少女は目の前の男女に尋ねた。
「あんたはいったいなにを聞かれたんだ。」
短く髪を切りそろえた精悍な青年の唐突な質問に戸惑う少女。
背後で葉子が頭を抑えて唸る。
「答えて!!時間が無い!!!」
ナツ様が重ねて問うと、少女はえっとといいながら、
足元の月刊巫女さん(年間購読三万円で四千八百円お得、しかも
特典として退魔グッズが付きます)を拾ってページを開いた。
そこには、見慣れた長い黒髪の巫女とよく似た印象のお下げの巫女の特集が乗っていた。

「へぇー、なんかいそうね、あんたのお姉さんって結構やるのね。」
うれしそうなかんなの言葉とうづきのため息を聞きながら、少女は苦笑で返した。
うっすらと暗く深い森の奥の少し木々の合間にできた広間。かすかに漂う瘴気に
うづきは顔をしかめながらかんなに囁く。
「お姉ちゃん……、本当に大丈夫?黙って出てきてお父さんたち心配しないかな?」
「ちゃちゃっと片付けちゃえば大丈夫!大丈夫!さあうづきぱぁーとやっちゃって。」
かんなの返事にうづきはため息をついて、あたりの瘴気をさぐるために式神を召喚する。
符を構えてうづきは"おいでポチ"とつぶやく。
すると、うづきの控えめな千早の胸元から沸いた、小さな小動物に似た姿をした普段は愛らしい鎌いたちが、
獰猛な表情をしてものすごい勢いで、依頼者の少女に襲い掛かった。
「だめぇー、ポチ!!」
あたりにうづきの叫びが響く。

「お姉ちゃんのこと知ってるって言ってたから、つい家にあげちゃって。」
肩の辺りで切りそろえて茶色に染めた少女は、苦しげに答えた。
すでに家は制服姿の警官と巫女装束の女性が調査と邪気払いをしているため、
彼らは庭の中で簡易テントにいた。少女達の両親はすでに石化を解かれて、
病院に向かっている。
「それで、かんなちゃん達の事を聞かれたのね。」
「うん、有名な巫女さんの力があれば大丈夫って言ってたの。」
その言葉を聞いて、美女の傍らの短髪の青年は鋭い一瞥を少女に投げてから、
獣耳の少女に詰め寄った。
「今すぐ俺をあいつらのところに飛ばせ、あいつらじゃメデューサは荷が重過ぎる。」
うなずき、懐から何か出そうとする獣耳の少女の前に美女葉子が割って入った。
「待った、その前にこの子に謝りなさい、身内を助けたいって気持ちはあんたが
わからないわけ無いでしょ?」
「ああ、わかっている、すまなかったな。」
ぶっきらぼうな言葉に篭ったやさしい想いに気づいた少女は、泣きそうな顔を
笑みに変えてぺこりと頭を下げた。
「いえ……、こちらこそ迷惑かけちゃったみたいで……、
すみません。」
少し赤くなって頭を下げるどもりながら答える娘の頭をなでで、木島は葉子達に向き直る。
「よく出来ました、これはお姉さんからのご褒美。」
「石化よけの符か、ありがたい。」
数枚の札をうけとりながら青年が答えると、葉子は苦笑しながら説明する。
「でもメデューサの石化の邪眼クラスだと、使うひとの霊力が消耗していると防ぎきれないから、
注意してね。」
「じゃあ、飛ばす、葉子いい?」
「ええ、ナツ様お願いします。」
するとナツ様はとある羽を青年に投げつけて飛んでけーと叫んだ。
目を閉じた青年はすごい勢いで空の彼方へ消えた。簡易テントの脇に控えていた、
スーツ姿の刑事達が、それぞれ各方面に携帯で連絡を入れ始めた。
「ナツ様、最近夜更かししてらしていらっしゃいましたが、まさか?」
「勇者頼もしい、葉子でもとても敵わない。」
苦笑する葉子にナツ様は尊大に答えた。

「シャー……。」
うづきのとっさの霊力でポチは狙いをそらされて、少女の頬をかすって背後の草むらにぽとりと落ちた。
結果的に少女を傷つけたうづきは、いつもは手元に戻ってくるはずのポチに凄い違和感を覚えながらも少女の方へ、
視線を戻しながら顔をまともに見れずに必死に頭を謝った。
「あの…すみません、すみません、いつもはいいこなのに本当にごめんなさい。」
「う……づ………き……。」
背後の姉の弱弱しい呟きについうづきは振り返った。
「お姉ちゃんもほらあや…まッッ…。」
驚くうづき。引き締まった手足は生気がうしなわれ冷たい光沢に覆われ、つややかな黒髪は半ば冷たい灰色に染まって、真っ白な千尋と
鮮やかな赤い袴は色彩が失われうっすらと灰色に染まっていた。表情から凛々しさは失われ苦しげに死人のごとく白くに染まり、かすかに
苦痛が見て取れた。
「だめ……よ………ふり……か………え………ちゃ…。」
霊力のかすかな光で石化をくいとめながら、かんなは必死に目を背後の少女からそらそうとしていた。
「気を使わなくても大丈夫だよ、うづきは持って帰らないから、もう少し楽しんでから石にするつもり。」
背後の恐ろしい気配に凍り付いているうづきの傍らを、そっと通り過ぎた少女がかんなの正面に回って、
キスさえ出来そうな程、近寄ってささやきながらかんなに邪眼の光をまともにあびせる。
「くぅぅぅッ…ぅぅ………。」
うめきながら必死に目を閉じようとうするかんなのからだが、冷たい感覚に嬲られて指先ひとつ動けないまま
冷たい灰色に身体が犯されてゆく。千尋や袴はすでに石の彫刻と化していて、驚きで不自然に固まった引き締まった手足は
すでに灰色に染まっていてかすかに震えていて、凛々しい顔は半ば色彩が失われて冷たい光沢に覆われて、
精巧な人形といわれれば信じてしまいそうな様子だった。
「お姉ちゃんっ。」
わけのわからない状況ながら歴戦の勇士でもあるうづきは、懐から拳銃をすばやく抜き放って、
二発少女の頭に向けて撃った。
キン!キン!
だが、少女の数本の髪が銃弾を跳ね返しながら、すばやくうづきの手元に伸びた。
「くっ!!!」うめきながら後ろに跳び退ろうとして足が動かないことに気づいた。
「えっ!なに…これ?」
見下ろした足は足袋事石と化していた。呆然となるうづきの拳銃を構えた手に伸びた髪が、
蛇に変化して噛み付いた。
「きゃぁぁぁぁ。」
突き刺さる苦痛にうづきは大きな悲鳴を上げた。
「う……づ………き!!」
冷たい灰色に染まり半ば虚ろな瞳以外、ほとんど石の巫女像と化したかんなは、妹の危機に目の色が表情を取り戻しながら
冷たい感覚に覆われて感覚の失われた体に霊力を巡らせて、何か言いたげに凍りついた石の唇で必死に妹に呼びかける。
「喜んでもらってうれしいな。」
ほほのかすり傷を撫でながら少女が振り向いて、蛇と化した髪が苦痛に悶えるうづきに迫る。
ピキピキと音を立てながら蛇髪に噛み付かれた手から丸みのある肘へと、つめたい石化の侵食と
苦痛が徐々にうづきの身体へ這い上がってゆく。
「ああ、いやぁ、いやぁ。」
蛇に噛み付かれた手が拳銃を構えたまま石の彫刻と化したため、うづきは体を犯す苦痛に苦しみながら
迫る蛇髪を振り払うことも出来ず怯えることしか出来ない。
かんなから振り向いた妖女の薄く閉じた表情がニタリと残酷な笑みを浮かべる。
「あぁぁぁ、あぁぁぁ。」
手加減された冷たい視線に犯されてうづきの心が絶望に染まる。
途端、足元が石と化したため動けないほっそりとしたうづきの足が冷たい光沢に覆われ、
うづきの手を苦痛とともに冷たい彫刻へと変える蛇髪の石化毒が肘から千尋の袖を
石に変えながら千尋のささやかな膨らみにせまり、うづきの恐怖に染まった目が徐々に
冷たい灰色に染まろうとしていた。
「う……づ………に………ん…て……す……る、のよおおおおお!!」
妖女の視線からはずれたため、霊力が回復したかんなはほとんど石像と化していた身体をが叫びとともに霊力を搾り出して
全身を淡い光に包んで、石化が解いて気合で手に持った霊刀の鞘を払った。
「うぁぁぁぁ。」
叫びながら手に持った霊験あらたかな霊刀を大上段に振り上げて切りかかる。
冷笑を浮かべた少女がうづきから離れるとかんなの刀がうづきに噛み付いた蛇髪を
切り裂いた。そしてかんなの霊力に誘発されてうづきの霊力も回復して
全身の冷たい感覚が払われる。だが、手元の苦痛はのこり手は構えた拳銃事
美しい石の彫刻のままだった。
「お…ねぇ…ちゃん。」
蛇髪から開放されたうづきはかんなにもたれかかる。
「大丈夫?うづき。」
「なんとか、大丈夫。」
姉に顔をしかめながらも笑みで返事をしながら、淡い光を放つ霊力でうづきは手の石化毒の浄化をはかる。
「ふふふ、さすが本物の巫女さんね、すごいじゃない。」
木々の間に出来た影から妖女が寄り添いにらみつける巫女姉妹に冷たい視線で縛りながら語りかける。
「ちょっと大丈夫じゃないみたいだね。」
「木島……。」
思わずこぼれた呟きに自身は気づかず、妹はなにも言わず身動きできないまま妖女の蛇髪がざわざわと迫るのを、
見つめていた。
そのとき青く晴れた空から何かが高速で飛んでくるのが見えた。
「間に合ったみたいだな。」
気だるげな叫びとともに、空から落ちてきた男が蛇髪を鉄棒で一閃しながら妖女の前に立ちはだかった。
「遅いわよ!!馬鹿!!」
「木島さん!!来てくれたんですね!!」
それぞれ歓喜の声で絶望から姉妹が抜け出す様子に、妖女は不快を浮かべる。
「おとこは趣味じゃないからすぐこわすのよね。」
あざけりを浮かべながら、妖女は大きく目を開いて落ちてきた学生服姿の短髪の青年をにらみつける。
「奇遇だな、俺もそうなのさ。」
とっさに目を閉じた姉妹を背後にかばって、木島は呪いの篭った石化視線にかすかに顔を歪めながら鉄棒をおおきく振りかぶって
妖女を殴りつけた。
「キシャァァァ。」
視線が効かないとは思っていなかった妖女は、まともに胴にうけて背後の大木にたたきつけられた。
更に踏み込もうとすると木島の黒いシューズがかすかに灰色に染まって動けずに、木島は立ち尽くす。
「小細工は所詮小細工ね。」
あざけりながら高速で妖女が迫る。
「木島さんっ!!」
だが、とっさに石化毒を浄化したうづきの術の白い輝きが木島の呪縛をとく。
「それはあんたのことでしょ!!」
目を閉じながら木島の隣に踏み込んだかんなは、心眼で視た妖女へ向けて霊刀を一閃する。
「小娘ぇー。」
霊力のため獲物の数倍ある居合いが蛇髪を何本が刻んで、妖女がひるむ。
「あんたの小細工もたいしたこと無いな。」
その隙にかんなの前に回った木島が鉄棒を構えて、迫る妖女に逆に踏み込んでまっすぐ突いた。
ふたたび吹っ飛ばされる妖女。
「これで終わりだぁぁ。」
叫びながら、木島は倒れた妖女の元にひとッ飛びでたどり着くと、鉄棒の先を妖女のむねに
振り下ろす。
「それはどうかなぁ。」
あざけりと共に、妖女の目がこれまでにないほど激しく赤く輝いた。
「くぁぁぁぁ。」
鉄棒の先が妖女の元に届く寸前で止まり、木島の体がピキピキと音を立てて石の塊と化してゆく。
「ああぁぁ!!……ぁ!!」
「きゃぁぁ……っっ!!」
様子を伺っていた巫女姉妹も妖女の眼光をあびて、悲鳴を挙げる間もなくかんなは構えた霊刀ごと驚いた表情で、
うづきは両手に構えていた符を落として怯えてすくんだ姿で姉妹並んで石の巫女像と化した。
「ふふふ、そこでじっくり見ててね、かんなさん達がどろどろに犯されていくのを!!」
蛇髪をざわざわと蠢かせながら、妖女が起き上がろうとした瞬間。
「ぐるるるぅぅぅぅぅぅぅ。」
唸りとともに木島の石像の表面が割れて内側から巨大な鬼が現れて、
暴風のように一瞬で妖女の上半身を凪いだ。
「ぎゃぁぁぁぁ!!!!」
とっさに正体を現して蛇鱗で覆われた両腕で防ぐが、暴風のごとく、
鬼の巨大なこぶしが何度も何度も、メデューサに叩きつけられる。
「このまま…で…は……、滅ぼ…されて……、仕方…ない。」
悔しげに冷たい巫女像を見つめてから、メデューサはゴーレムとつぶやいた。
「ゴ。」
唸りとともに土の腕が生えて、鬼を殴り飛ばすとメデューサを抱きしめてそのまま溶けるように、
大地に消えた。
「グルルルル。」
吹っ飛ばされて大地に座り込んだままその様子を見ていた鬼は、唸りながら湯気を上げて文字通り
解けてゆく。
「今回は……ま…も……た……。」
湯気が消えると、着ていた服がぼろぼろになって半裸の木島が倒れていた。

つづく。


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