固めデカ 〜氷の価値〜

作:HIRO


「あつぃ〜……」
突然ですが私、凍華は今にも死にそうです
「熱くて熱くて死にそうですわ……」
雪女である私にはこの暑さは酷なモノで……ほっといたら溶けそうですわ
「だからといって冷蔵庫に入るヤツがいるか! ああ、もう私が食べようとしていたアイスクリームがッ!」
「うるさいですよ石華さん、そんなに怒ると余計に熱くなりますわ」
「誰の姓だ! 誰の」
ああ、全くうるさいですね……そんなにこの前の事が頭に来てるんでしょうか?
「くるわ! 全くお前と言い、あの女と言い私は玩具ではないだぞ!?」
「じゃあ作品」
「もっと酷いわ!」
全く最近の若者はきれやすくて困りますわ……
「……それよりもだ、事件だよ事件」
「事件? ……ああもしかして「また」なんですか?」
「ああ、また起こったのよ……「凍結」事件が……」
凍結事件……ここ最近起こっている私達の頭を悩ませている事件であります
内容は、この近くに通っている小学生……しかも女性が次々に文字通り「凍結」されるという事件なのです
ともかく犯人に至る証拠が少なくその上連続で起こってるモノだから私達もこんな暑い中出動しなければならないのです……
「……気が乗りませんけど、事件なら仕方ありません」
ホントに私にとっては良い迷惑な事件だとため息をついた
「協力しましょう……どうせ「凍結」は私の専門ですしね……」
「そう言うことだあと……」

「いい加減冷蔵庫からでろ! 私が今日買ってきたジュースがぬるくなる……!」

〜路上〜
「被害者は相沢 由香(あいざわ ゆか)この近くの極氷小学校5年よ」
と石華が指さした先には被害者……いやだったモノと言うべきかしら?
青白くすっかり冷え切り、所々に霜が降りているソレはとても昨日まで生きていたとは思えないそんな代物
恐らく一瞬で凍らせられたんだろう……振り向いた姿勢のまま顔に少し驚愕の表情のまま少女は固められていた
「第一発見者は同級生の氷雨 綾子(ひさめ あやこ)、犯行時刻は午後4〜6時……ちょうど下校途中で被害に遭った模様」
彼女の背負っている本来は赤色の筈のランドセル(今は凍結していて青白くなっているが)が彼女が下校中だと言うことを強く物語っていた
「近所の住人の話だとその時間帯は怪しい人影は見なかった言っております……と、今解っているのはそこだけ」
石華はそう私に言った
「フィオナちゃんの方はどう?」
「……やっぱり見つかりません」
と私の可愛い恋人(?)であるフィオナちゃんは狼耳をしゅんとたたませて困った表情をしていた
フィオナの鼻は狼人特有の優れた鼻を持ち、どんな臭いも――例え魔力の残り香さえもその鼻でかぎ分けることが出来る
「犯人の隠蔽工作が完璧か、はたまた犯人の魔力が低いんでしょうが……ほとんど嗅ぐことが出来ないんです」
と、シュンとした表情のまま言われるとこちらも困るわ
主に仕事的な話で
「そんなに落ち込まない、ほら仕事終わったらアレしましょう、アレ」
と私はフィオナちゃんの短めの青髪に手をやってさすってやった
「え!? 本当に、本当ですか!」
「(……ああ、やっぱ可愛いわ)、ええ私は嘘は付きませんわ」
「なら早速聞き込み開始です!」
そうフィオナちゃんは張り切って行きましたわ
よほどさっきのが嬉しかったんでしょうね、全く本当に可愛い子ですわ……凍らせて飾りたいぐらい
「よだれたれてるぞ、よだれ」
「……は! 学校側の対応はどうでしたか?」
「(うまく誤魔化しやがって……)著しく現状維持だと、一応警備員やら巡回警官なんかを増やすって事は言ったけど」
「……焼け石に水ですね」
「ああ……いっそ休学にしてくれた方が楽なのに」
「出来ないでしょうね、色々とあちらにも訳がありそうですし」
「大体他人を氷漬けにするのが何が嬉しいのやら……まあ、凍結好きなお前なら解り……」
ギロ
思わずその言葉を聞いて私は石華を睨みつける
「な、なんだよ」
「あんなのと一緒にしないでくれます? この事件の犯人には愛がありません! 凍結に対する愛が」
「あ、愛!?」
「そうです! 凍結に対する愛が絶対的に足りない!
まず第一に! この被害者は凍結の魅力である「つらら」が残っていない! 「つらら」が残っていない凍結なんて
イチゴの乗っていないケーキと同じくらいの価値よ!
第二に! 被害者の顔に凍結することの「恐怖」が全くない! ただ固まらせるだけなら石化やブロンズ化でも可能よ!
でも凍結には段々冷たくなることで、被害者は寒さに対する事で「恐怖」し、それが凍結の魅力を高める物なのよ!
そして最後にこの犯人は凍結後の事全く考えてない! こんな熱空の元に放置していたらせっかく凍結した被害者の氷が溶けるわ!
被害者の氷が溶けるって事はソレすなわち凍結した作品のクオリティーが下がる事に繋がって来るわ!」
その後もたっぷり30分ぐらい凍結に関する魅力を語ってやりました
「は、はぁ……」
「と・も・か・く、私はこの事件の犯人は余り好きに慣れそうにありません!」
「……そう言えば遅いな、フィオナのやつ」
「話を誤魔化さない! ……でも遅いのは確かね、少し探してみようかしら」

〜数分後〜
私の愛しのフィオナちゃんは案外、直ぐに見つかりました
「な、なあ……」
しかしそれがさっきまでのかわいらしい姿のフィオナちゃんでは無く
小さく身を屈め、何かに話しかけている状態のままそのみを無粋な凍結によって変えられたその姿に私は
「石華ちゃん、特別取調室の準備を」
悲しみを覚えました
「あ、ああ……犯人解ったのかよ」
「フィオナちゃんのおかげで何とか」
哀れみを覚えました
「後、私は犯人を好きに慣れないと言いましたけど前言撤回です」
そして、犯人に対する憎しみと怒りを覚えました

「……大嫌いです、殺したいぐらい」

〜特別取調室〜
「刑事さん、犯人解ったの?」
と先日の事件の第一発見者、氷雨 綾子は私に対して問いかけて来ました
青い色をした長髪に、白色のワンピースを着ており、背中には下校中に呼ばれてのか赤いランドセルを背負った状態でした
「ええ……すごく意外、でも考えてみれば当然よ」
私は目の前の少女を冷たい目で見ながら言った
「下校途中に狙うことが可能で怪しまれない、なおかつ私の愛しいフィオナちゃんが油断しないで話せるような人物」
ニコニコと愛想笑いを浮かべているこのガキに私は思いっきり言ってやった
「あんたよ、そこの糞ガキ」
「……ガキじゃないよ」
と彼女は何か呟きながら、低く小さい声で私に言った
「私はガキなんかじゃない! 天才・氷雨 綾子様よ!」
そう言って突然彼女は立ち上がりそして
「あなたみたいに私を子供扱いする人はみんな凍っちゃえ! コールド・ブレス!」
ブワッ
私の周りを冷気の固まりが包み込もうとしていました
なるほどコレなら普通の人やフィオナちゃんを一瞬で凍らせたの納得できます
「ハハハハ、あんたも私の……え!?」
でも、雪女の私にそんなのは効きません
「それじゃあこちらの番ね」
フゥ
お返しにと一息、私は彼女の足下に息を吹きかけます
ピキ、ピキ
「ヒッ、アッ……ちょ……」
たったそれだけで彼女の足は白く冷たい、別の物に変わりました
彼女は一生懸命動かそうと努力してますけど、無理なものは無理なものでいくらやっても彼女の足は彼女の意志の通りには動いてくれませんでした
このままでも良さそうですが、お仕置きはまだまだこれからです
「次は……こうです」
パチン、と私は指を鳴らすと、彼女の周りを冷気が取り囲みます
「な、なにこれ……!? さ、寒い……」
彼女は体をガタガタ震わせ、腕をくみ寒さから逃れようとします
すでに彼女の吐息は白く冷たい物に変わっており、その身は徐々にですが白く冷たく染まっております
「嫌……助けて、寒い……」
彼女は今更ながら私に助けを懇願してきました
「助かりたい?」
「は、はい……」
「駄目よ、あなたは私の愛しいフィオナちゃんをあんな品の欠片もない凍結を施した……あなたはその罰を受けるべきなのよ」
「そ、そんなひ、酷すぎます……」
「……酷くないわ、死なないだけマシだと思いなさい」
そうこうしている内に私の出した冷気は確実に彼女の体温を奪っているようで吐く息は段々散漫になり、震えて居る身体徐々に動きが無くなってい来てるのが目に見えて解る
「た、助けて……さ……」
そして程なくして
「さ……む……い……」
彼女は体の全機能を文字通り凍結させた
彼女のその体は余すこともなく凍結しており青白く冷たい凍りに覆われておりうでや口から垂れ下がったつららがその残酷で美しい芸術をより高めている
光をともしていないその瞳は寒さによる恐怖を余すことなく貼り付け、涙は冷気により凍り付いていた
「ああ、美しい……やっぱり凍結はこうでなければね……」

その後、被害者は全員無事解凍されそれぞれの親元に帰された
もちろん愛しのフィオナちゃんも元に戻り私は大満足
事件はこうして解決しました

え? あの子がどうなって?

この世には聞かない方が良いことがたくさんある物ですよ?

続く


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