永遠の物語から外れた物語。

作:hirateuchi


この作品は、本作のストーリーを少々捻じ曲げて展開されています。
この作品にしかでてこない固有名詞も多々存在しますので、この作品を見る前には、本作を一度プレイされることもお勧めします。




〜『レグルスの丘 地下』〜
―――――――――――――――――――――――


キィィィィィィ・・・・・・ンッ・・・―――
「ワイール!クレーメルケイジにレム、入ったヨ!」
ピョンと、軽く跳びながらメルディは喜び。
「ふぅ・・・やぁっとおわったな・・・。」
ニィッと、リッドは皆へと微笑みかけた。
「まったく、どうしておまえはああも突っ込むんだ、そもそもいつもおまえは・・・」
「ま、まあまぁ、無事だったんだからいいじゃない・・・ねっ?」
難しい言葉をつらつらと並べるキールを、ファラは困りながらなだめている。

―――ここはレグルスの丘の地下、リバヴィウス鉱の含まれた岩でできた洞窟。
奥地には、純度の高いリバヴィウス鉱と共に光の大晶霊、レムが眠っていた。
4人は、このレムと契約を交わすためにここへ赴き、そして先ほどレムに自分達の力を示し、契約を済ませたところだ。
そして―――
「よっしゃ!これで、晶霊砲が動かせるな!」
・・・レムが守っていた奥で、「星雲石」、別名「リバヴィウス鉱」を手に入れた。
これはオルバース海面―――インフェリアとセレスティアの間にある。双方の世界をつないでいる空間。
そこの一角に現れた黒い球体を引っぺがすために作られた超大型の晶霊砲を撃つために必要な素材である。
この晶霊砲は、小型ではあるがリッドたちの仲間、いや「自称・キャプテン」のチャットの先祖、アイフリードの遺産のバンエルティア(訳すと「富」)号にも搭載されている。

―――ちなみに、残りのメンバー二人はそのバンエルティア号でお留守番。
「オゥ!坊主!アレ、焼けたぞ!」
「だぁかぁら!僕は性別的に言うと坊主じゃないですってば!
 と、いうか・・・僕の崇高なバンエルティア号の甲板で火なんてたかないでくださいよ!」

―――ちなみに、出番はここだけ。

「ぇ!?もうちょっと話に絡ませてもらえないんですか!?ぇ、ちょ、ちょっとぉぉ・・・・・・」
「おぅ!アレ、うめぇぞ坊主!」

―――
――


「?・・・誰か何かいったカ?」
「「「なにも?」」」
意気揚々と地上への帰路に歩く4人、その足が、エメラルドグリーンに輝く洞窟に差し掛かってからしばらく・・・


―――――――ビュゴァッ!
・・・その雰囲気をメルディの首からさがっていたクレーメルケイジから放たれたまばゆい光と巻き起こる風が取り払っていった。
「な、なにカ!?」「なによこれぇ〜!?」
メルディ達は、何とかその場で耐え切った・・・が・・・
「ぐっ・・・どわぁぁぁぁ・・・・・・・!?・・・・!?」「メ、メルディィィ・・・・・・・!・・・!!・・・」
突然の出来事に対処できなかったリッド、キールは闇の中で鈍い音を立てながら吹き飛ばされていった・・・

その間にも、光はどんどん膨らんで、中から、青い光が何か形を成して出てきたかと思うと・・・
「―――ぁ・・・あぁ・・・あ゛ああ゛・・・」
そこには、氷の大晶霊「セルシウス」が苦悶の表情で青い光・・・いや、冷気を体中から迸らせていた。
「セルシウス!どうしたか!?」
突然場の空気が凍るように冷たくなる。それに驚きながらも、心配そうにセルシウスへをメルディが声をかけた。
「抑え・・・キれナ・・・逃げ・・・テ・・・・!!」
搾り出すかのように出される声。直後、―何か黒い霧がセルシウスへと纏わりつき、セルシウスから放たれている冷気が、膨らんだ、かと思うと・・・
「!――メルディ!避けて!」
ファラが、メルディへと体を当て、メルディを壁へと突き飛ばし―――
「ァ・・アブソ・・・リュート!」
セルシウスが叫んだ・・・刹那―――
―――ギシッ・・・ビキィッ―――
メルディがいた場所、即ち、今はファラがいる場所から直径1メートルの空間が一瞬にして凍りついた。
「!―――ファ、ファラァ!」
メルディが叫んだ。その目に映っていたのは、
水晶のように透き通った氷の塊にメルディを突き飛ばした格好のまま封入されたファラの姿だった・・・

「−−−フ・・・フフフ・・・可ワイイじゃない・・・コノママ・・・永遠に愛でてアゲたいくらイ・・フフ・・・」
なにか一線を越えたのか、セルシウスの瞳に光はなく、黒いオーラが彼女の周りで渦巻いていた。
「ナニ言ってるか、セルシウス!すぐにやめるヨ!こんなこと!」
「・・・ヤめル?コンナに綺麗なノに?・・・フフフフ・・・ァハハハハハ!」

―――壊れている・・・メルディはセルシウスの狂的な笑い声に恐怖を覚えた、と同時に、地下に入ってすぐあとのことを思い出した。

「―――リバヴィウス鉱は、晶霊の力を増幅させたり逆に抑制する力があるんです。
  今いる場所・・・緑に輝くリバヴィウスは、晶霊の力を増幅させる力がありますが、
    闇色に染まったりバヴィウス鉱は、その逆の働きをします、気をつけて。」
・・・そう、水の大晶霊、ウィンディーネに言われていた。恐らくセルシウスは、力が膨れ上がりすぎて、制御ができなくなったのだろう。

「・・・なら・・・ワィトゥンイム・・・ウンディーネ!シルフ!セルシウスを止めるネ!」
ザザ・・・ザ・・・
「わかりました・・・しかし、私達の力も強まってます・・・。術の行使にはお気をつけて・・・。」
ビュゴ―――。
「エー・・・なんで僕があんなセルシウスの相手をしなきゃならないのさ・・・・・・まっ・・・久しぶりの外だし、暴れさせてもらうよ!」
メルディは、ケイジから水の大晶霊「ウンディーネ」そして、風の大晶霊「シルフ」を呼び出した。
「アら・・・ウンディーネに・・・シルフ?ィィわ・・・貴方タチも可愛ガッテあげル!」
――――――ブワァァッ!
セルシウスが言った瞬間、セルシウスから放たれる冷気が一気に膨張したっ・・・!
「!来ます!―――洗礼の矛槍』!」
「いくぞ!『シルフィードアロー』!」
ウンディーネから槍のように水が、シルフからはカマイタチを纏った矢が、放たれた。
「−−−フふふ・・・そんナので私を止めラレると思ってるノ?・・・フリーズ・ランサー!」
セルシウスが、右手をかざすと、無数の氷柱が広範囲にわたって繰り出される。
−−−ヒュッ!ガガガガガッ!ガガ!ド、ドスッ!
氷柱は、水の槍を崩し消し、矢を弾くと、残りの氷柱は、狙い澄ましたかのようにウンディーネの肩を掠め、そして体の中心を貫いた−−−!
「ぁぅっ!−−−ァ・・・ク・・・・」
ウンディーネが苦悶の表情になると同時、氷柱が刺さった部分から、氷がウンディーネの体を侵食し始めた。
「!イヤ、イヤァァァ!?・・!・・・!」
ウンディーネがそれに気づいて叫んで直ぐ、顔まで氷が到達して、ウンディーネは困惑の表情のままにその場に崩れた。
「フフフ・・・ミィンな、凍らせてカラじっクり、愛デテあゲる・・・ネぇ?しルフ?」
「う、うっさい!お前をぶったおして、二人とも元に、戻させてもらうからな!」
ゴォォッ!−−−その直後、シルフの周りを風が強く渦巻いていた。
「天空の風よ!下り来たりて、龍とならん・・・!『サイクロン』!」
−−−ゴォォッ!
シルフの掛け声とともに、渦巻く無数のカマイタチが生まれ、意思を持ったかのようにセルシウスへと襲い掛かった!
「そうでナくちゃ・・・・・・っフフ・・・っ・・・ブリz−−−」
渦巻く風は、セルシウスを巻き込み、更に風力を強めていく・・・・と・・・
「!ちょ・・・シルフ!強い・・・・・・ゃあああぁぁぁっ!」
何とか取っ掛かりにしがみついていたメルディまでも、サイクロンの中へと巻き込んでしまった・・・
「狽竄ホっ!洞窟のせいで晶術の力が上がるんだった・・・!って・・・強すぎ・・・ウワァァァァ!?」
―――ゴァァァァァァッ!
周辺のものをすべて巻き込んでから数分後、やっと風はおさまり・・・
白い靄の中から出てきたのは・・・

「―――今のはチョット、危なかったけど・・・二人から飛び込ン来てクレテ、手間が省ケたわ・・・・・・フフッ、かわイイ・・・ジャなイ?」
妖艶な笑みを浮かべるセルシウスと・・・・・・物言わぬ、少年少女の氷像だった・・・
メルディは、風に服を大きくたなびかせ苦悶の表情を浮かべながらも、必死に体勢をとろうとしているその、一瞬を、氷点下の中で動きを止められていた。服はカマイタチに引き裂かれたのか、所々裂けていた。
一方シルフは、渦巻く風の中でもセルシウスを捉えていたのか、背から矢をとり、弓を引いて今、セルシウスへと放つまいとしている格好のまま、凛とした表情で固まっていた・・・
「サテ・・・コレカラ如何シマしょうか・・・外ニ出て・・・フフっ・・・!」
ガラ―――
セルシウスが氷像を見ながら悦に入っていると、遠くから、物が動く音、そして人の、話し声が聞こえてきた・・・
「・・・なんだ、こんな壁、さっきはなかったぞ?」
「――おそらく、ケイジの輝きと何か関係があるんだろう。ぶち抜くぞ、リッド!」
「ああ、わかった!」

二人は一呼吸置いて、合図もせずに。

「「紅蓮剣!」」

ドッ―――ゴァァッ!
キールのファイヤーボールにリッドの虎牙破斬に合わせて放った協力技は、凍りついた部屋の入り口の氷壁を吹き飛ばした。
そして二人の目の前に飛び込んできた視界では、氷像が数体、乱雑に置かれた中に一人、セルシウスがこちらを見ながらくすくすと笑っていた。
「なっ−−−なんじゃこりゃあ!?」
「!セルシウス!どうしたんだ、これは!」

「ドウシタって?私がヤったのヨ・・・ドォ?可愛イでしょう?」
「可愛いって・・・リッド、セルシウスの様子が変だ・・・」
「言わなくたって見りゃあわかるよ!」

――ジャッ!
 キールが話し終わる前に、リッドは剣をセルシウスへと向けていた。
「――ファラやメルディを凍らせたのはお前・・・ってことは、容赦はしないぜ・・・!」
ギ・・・ッ!リッドが先の戦闘でも見せなかった表情をし、威圧感をセルシウスへと向ける。が、それを嘲笑うかのような表情で、セルシウスはけろりとしている。

「い、今すぐ二人(とついでにシルフも)を元に戻せ・・・!でないと、実力行使に走ることになる!」
対してキールは、セルシウスの威圧感に押されて及び腰ながらも、杖を構え、詠唱の体勢に入る。

「――遠慮させてもらウわ。・・・あなたたちも、一緒に―――」


―――ドァァァァァッ!

「「!?」」「うわぁぁっ!?」

刹那、キールのケイジから炎が一気に爆ぜ、魔人のような形を宙へと作り出し、具現化した!

「――こんのやろぅぉ!セルシウス!こんなちゃちな魔力の揺らぎで、なぁに気い狂わしてんだぁ!?」
――自分の周囲の氷だけを溶かしながら出現したのは炎の大晶霊「イフリート」。セルシウスとは相反の属性に当たる。それゆえ―――

「・・・。」
―――正気は保っていなくとも、本能的に厭な顔をするセルシウス。いかにも興醒め・・・といっているようだ。

「・・・。」
―――あからさまな顔をされて少々凹むイフリート。が、ここはそんなことをしている状況ではなく。
「――とーにーかーくーだ!いつものお前に戻れ!こっちの調子が狂ってしょうがない!」
そういいながら、両手を胸の前にかざし・・・
―――ゴゴゴゴゴゴ・・・・・。
炎を高圧縮で掻き集め始めた・・・!

「―――やべぇ!キール!バリアーd・・・・」
リッドが視線をキールへと向ければ・・・
「・・・。(きゅう。)」
爆発の衝撃で気絶しているキールが目に写った。
「――ぁぁ・・・くそっ!」
―――ガシッ!リッドはキールをずりずりと引きずりながらファラとメルディの氷像の付近へと向かい・・・
「――ハァァァァ・・・・!」
――精神の集中。―――直後!
「―――エクスプロードォ!」「極光壁ィィィ!」

――――――――ズッグァァァァォォォ―――――――――

辺りのリヴァヴィウス鋼の作用で、極端に威力が向上したエクスプロードが、洞窟内だけでは収まらず、出口からも一瞬、爆炎と衝撃波を吐き出した。






―――その後、彼らの姿を見たものは誰もいなかっ―――


「―――じゃねぇだろ!」
「・・・どうしたか?リッド?」
首をかしげるメルディ。ぜぇと肩で息をし、うな垂れて俯くリッド。

――ぱちぱち。 炎のついた木が爆ぜる。
リッドたち4人は、レグルスの丘のキャンプ地点で休憩を取っていた。

あの爆風の中でどう助かったかと言えば、直前にリッドが極光術 ―極光壁― を放ったが故であろう。
すべての力を遮断する光の壁が、4人をあの衝撃と熱から護ったのであった。

大晶霊達はというと、イフリートが放ったエクスプロードによって、一帯の魔力を渇望させてしまい。
具現化が自然と解かれ、クレーメルケイジへと収まったのであった。

―――近づけられたキールとメルディのケイジの中では、セルシウスとイフリートが、他の大晶霊から説教を受けているようにも見えた。

「――まぁ・・・結局元通りなんだし・・・うん!よかったよかっt――」
「じゃねぇよ!」「じゃぁない!」
「あ、あれ・・・・?あははははは・・・・」
「あ!メルディもクリィムスゥプ飲むね!」

ズ・・・ファラが飲み込んだクリームスープは、芯まで冷えた体をじんわりと解きほぐすように体に染みていった。




――その時、二つの世界を分ける「オルバース海面」存在する黒点に、小さな闇がレグルスの丘から飛んでいったという話が、ミンツ大学の観測陣から報告されたと言う。


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