温泉土産

作:疾風


 寒空の下,あちこちで湯気がもうもうと立ち昇る温泉地。
「パパー,ママー,早く早くー!」
「こらこら,ちゃんと前を見ないと危ないぞ」
「そうよ,焦らなくても温泉は逃げないわよ」
その一角を,三人の親子が歩いている。

「じゃあ,私たちは女湯に行くから」
「ああ,後でな」
そう言うと,母親と娘は二人で歩いていく。
「じゃあ俺も行くとするか」
そう言いながら男湯へ行こうとした父親が,ふいに足を止める。
「へえ,こんなところに売店あるんだ」
父親の視界には,古びた売店が写っていた。

「うーん,やっぱりこんなもんか」
売店に入った父親だったが,並んでいるのは温泉饅頭や温泉卵等,この辺ならどの土産物屋でも置いているようなものばかりだった。
「あれ,何でここには何も無いんだ?」
売店の奥にあるテーブル,そこには土産物が一つも置いていない。
「ふふふ,そこにはもうすぐ入荷するものがあるんじゃよ」
突然,背後から声が耳に入る。
振り向くと,老婆が一人立っていた。
「す,すいません。お店の方ですか」
「ああ,そうじゃよ。ここにはもうすぐ新しい土産を並べるんじゃ。温泉から出てきたら又立ち寄るといいよ」
「そうですか,じゃあ又後で来ます」

「ママ,お湯が溢れてるよ」
少女は温泉を見て言った。
「そうね,でも新しいお湯がどんどん入ってくるから大丈夫よ」
母親の指す先には,温泉に流れ込む無色透明の湯があった。
「ほら,入るよ」
「ママ,待ってー」

温泉に浸かっている女達の多くは中年や老人だが,美しい女も少なくなく入浴している
「いいお湯だね」「これならまた明日から頑張れるね」
中高生位の,控えめなプロポーションの可愛らしい少女達。
「ふーっ,いい気持ち,疲れが取れるわ」
二十代位の,均整の取れたスタイルの綺麗な女性。
「ええと,次に入る温泉は」
体からフェロモンを醸し出す,大きな乳房の妖艶な熟女。 

(ヒゥゥー)
突然,湯気がその白さを増す。
「ママ,何でお湯が無くならないの?」
「うん,それはね…」
母の話し声が不自然に途切れた。
いや,母親だけではない。周囲に気を回すと,女達は一人残らず沈黙している。
そればかりではない。女達は皆,視線が定まらず,瞳は虚ろなものになっている。
温泉は,先程とはうって変わり静寂に包まれた。

(ドプン)
突然,温泉に流れ込んでくる湯が変わった。
新たに流れ込んできたそれは,今までのものより粘りがあり,なにより白く濁っていた。
(ドロドロ)
温泉に流入した新たな湯は,まるで意思を持ってるように動き始めた。

「ああっ」
突然,女の一人が声を上がる。
見ると,先程の熟女が白濁した湯に足先から首までの全身を包まれ,上気した表情で喘いでいる。
よく見ると,白濁した湯は熟女の体を舐め回すように蠢いている。
そう,白濁した湯はまるでプログラムされたかのように熟女の体を嬲っているのだ。
「きゃっ」
「ううっ」
温泉のあちこちで嬌声が上がる。
中高生位の可愛らしい少女達が,体中を責める白濁した湯になす術無く喘いでいる。
二十代位の綺麗な女性が,快楽に身を任せ,虚ろな瞳のままだらしなく口を開けている。
そして
「ひゃん」
「ああっ」
母親と少女の声が温泉に響く。
見ると,二人は既に悦楽に溺れていた。
母親は娘のことなど忘れてしまったかのように,白濁した湯から与えられる快楽を貪っている。
少女は性的経験など皆無のはずなのに,まるで経験豊富な娼婦のように淫らな表情を浮かべている。
広い温泉の中,白濁した湯は狙い済ましたかのように美しい女にのみ取り付き,その女体を嬲り続けている。

(ブクン)
嬲られていた女達の体が,突然沈み始めた。
いや,その表現は正しくない。
女達の体が縮み始めたのだ。
頭と体は縮小を始め,両手足はそれに加え体に飲み込まれるように短くなっていく。

(プクン)
縮小が止まると,女達の体が浮かび始める。
女達の体は,片手で持ち運べる位に縮小し,手足が完全に消え去り,頭と体のみが残っている。
それは,まるで未完成の人形のようであった。
そんな中,縮小せずに残った部位が二箇所。
それは花弁と菊門であった。
手足が無くなり花弁と菊門が残った女達。
それは,人形型のオナホールと呼ばれるものだった。
最後の女が浮かび上がると,白濁した湯は突然動きを止め,周囲に拡散し始めた。
周囲の湯に混じっていく湯は,徐々にその白さを失い他の湯との見分けが付かなくなっていく。

(ポチャン)
(ポチャン)
女達の体が,溢れる湯と共に温泉から零れ落ちていく。
(ジャー)
女達は湯と共に流され,次々と廃湯溝に落ち,流されていった。
「あれ,他に誰かいませんでしたか」
温泉に,女達の声が戻ってきた。
「あらやだ,呆けるにはまだ早いわよ」
「そうよ,さっきから出てった人はいないわよ」
残された女達は,己が身の幸運を知らない。

売店の奥で,老婆がテーブルの上に新たな土産を並べている
よく見ると,それは先程女湯から流された女達だった。
「こんにちは。さっきお邪魔したものですが」
「おお,いいところに来たな。丁度新しい土産が入ったぞ」
「えっ,これですか」
父親は顔をしかめた。
「そうじゃよ」
「でも,これって」
「なんじゃい,いい大人が性具の一つや二つで恥ずかしがるな」
「は,はあ」
「どうじゃい,どれか買わんか。安くしとくぞ」
「そうですね,じゃあこれとそれを下さい」
そう言って父親が選んだ物は,先程まで一緒だった妻と娘だった。
「ほほう,その二つかい」
「はい,お願いします」

「良かったねえ,お父さんに買ってもらえて。離れ離れにならずに済むよ」
売店を出て帰路に着く父親を,老婆は目を細めながら見送りながら呟いた。

(ギュッ,ギュッ)
「ううっ,凄いなこのオナホール。俺のにピッタリ合うぞ」
父親が,かつて妻だったオナホールの花弁に己の分身を挿入しながら言う。
(ビュビュッ!)
「ああ,気持ちいい」
妻だったオナホールは口から父親の精液を吐き出し,全身が精液でコーティングされた。
「次はこっちを使うか」
父親は,妻だったオナホールを置くと,今度は娘だったオナホールを手に取った。
「この家,こんなに広かったかな」
父親はそう言いながら,娘だったオナホールの花弁を己の分身にあてがった。
(ブチッ!)
「うおっ,処女膜までついてるのか。こりゃ凄い」
(グッ,グッ)
「うおおっ,きついな」
人として家を出た母娘は,温泉土産として家に帰ってきた。
だが,父親がそれを思い出すことは永遠にないだろう。
(ビュッ!ビュッ!)


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