作:疾風
冬空の下,女子大生位の三人組が歩いている。
ポニーテール,ショートカット,セミロングと髪型以外は皆同じ位の体格である。
彼女達の足が突然止まる。
彼女達の視線は,目の前にある大きな建物に注がれていた。
「あれ,こんなところに温泉なんてあったっけ?」
「どうだっけ,でも丁度良くない?寒いし時間もあるし,入ってかない?」
「そうだね,暖まっていこー」
彼女達はそう言うと,建物に入っていった。
「あー,暖かい」
「うん。すごく気持ちいい」
「しばらく入ってたいね」
三人はワイワイ話しながら入浴している。
周りには娘の体を洗っている母や一人で入っているロングヘアーの少女がいるが,皆静かである。
いや,よく見ると彼女達はさっきからずっと動いていない。
突然三人組の話し声が消える。
三人組は話し合う姿勢のまま,その動きを止めていた。
突然戸が開く。
「うわー,湯気が凄いよ」
「早く入ろう」
姉妹なのだろう。顔の似てる二人の少女達が入ってきた。
夜,男が建物の中を歩いている。
目をつぶり頭を洗う少女。温泉に入り大の字になって,大きな胸が丸見えの女。脱衣所で体を拭いている二人組みの中学生。
多くの女がいるが,皆全裸のまま硬直したように全く動かない。
よく見ると彼女達の体には,いやそれだけでは無い。あちこちの壁や床にも文字が書かれていた。
『石像』『彫刻』『水晶』『宝石』,中には『蝋人形』というものもある。
男は突然壁を向いている『彫像』に手をかけ,180度回転させた。
よく見えなかった『彫像』の正面が見られるようになった。
男が先程の三人組がいるところへ来た。
三人の体には,それぞれ『金像』『銀像』『銅像』という文字が書かれていた。
「金銀銅と,いい具合に三つ出来たな」
男はそれだけ言うと
「さて,残った壁や床の文字は消しとかないとな」
そう言いながら別のところへ歩いていった。
数時間後,男が建物から出てきた。
「最後の仕上げだ」
男はそう言うと,建物の壁に書いてあった『女性専用温泉』の文字を消し,新たに『美術館』と書いた。
「いよいよ明日が美術館のオープンだな。足りない美術品は後から足していけばいいか」
男はそう言うと,大きな看板を『美術館』に取り付ける。
(触れて楽しむ美術館)
(美術品の販売いたします)
看板にはそう書いてあった。