ロハンさんの怒り

作:haru


 夏休みも終わり、初秋を感じ始めていた10月のある日
シラカバ小学校のとあるクラスに、一人の男の子がいる。
彼の名は、主人公のみきお(大森幹雄)といい、よく、些細な事で
くよくよする小学4年生である。
そして、みきおの左隣には友達で、黄色い皮膚でいつも首に
スカーフを巻いている、みきお位の背丈の恐竜がいて、
彼の名は、ドッポ(青山ドッポ)という。

今日もいつもと同じ、クラスメイトのケケ坊や委員長のトオル等、
見慣れた顔達がいたが、一つだけ空いている机があった。
どうやら、はなこ(番場はなこ)が欠席のようだった。

 はなこは、宝塚に憧れてて、髪型はいつも宝塚の男役のような形で、
自分で「綺羅ひとみ」という芸名をつけてる程、好きなのだ。
そのはなこが、珍しく学校を休んでいた。

 授業が終わり、ホームルームの時に先生が、誘拐事件に気を付けるようにと話し、
下校時間になり、みきおとドッポは、学校を後にした。
通学路を一緒に帰る二人だが、どこかみきおの顔には、不安の色が出ていた。

(はなこ、誘拐されたのかな・・・? 今頃連れられて・・・)

などと、みきおの頭の中は、はなこに対する被害妄想が出ていて、
心なしか、うつむき加減で、歩いてるようになっていたが、
ドッポが、そっとみきおの肩を叩き、

「悪い事なんて、しょせんは、宇宙の小さなシミにしか過ぎないよ」

と、みきおをそっと励ましてくれた。

しばらくして、二人は無事、家に帰ってきた。ちなみに二人は、
家が隣同士に住んでいるのだ。
みきおは、自分の部屋に入り、ランドセルをイスの背もたれに掛け、
ふと本棚に目をやると、

「そういえば、ドッポに本を借りてたんだった!」

と、気がつき、本棚から1冊の本を取り出し、隣のドッポの家へ向かった。
インターホーンを押し、玄関から現れたのは、ドッポではなかった。
出てきたのは、白と赤のしま模様のはんてんを着て、ドッポよりも
濃い黄色の皮膚で、頭には毛が生えてて、半目開きの恐竜だった。
彼は、ドッポのひいおじいちゃんで、名前はロハンという。

「本を返しに来たのか・・ 今ドッポは出かけておる、
まぁ すぐかえって来るから、あがりなさい」

そういうとロハンは、みきおを家に入れさせてくれた。
2階に上がり、ロハンの部屋の前に来ると、ロハンがお茶を入れてくるので、
先に入りなさいといい、下に行ってしまった。
みきおは、おそるおそるドアを開けると、急に驚き言葉を失ってしまった。
そこには、座布団の上に少し崩した正座で座り、さっきまで話しを
していたかのように石像と化した、はなこがいた。
突然の発見に、みきおはすくみ上り、少しパニックになってしまったが、
お茶を持ってきたロハンがやってくると、みきおはロハンに、
はなこを石にした事について話すと、ロハンは冷静に

「あ〜 あの子はな、昨日家に来た時、ドッポと3人で雑談をしてたんじゃが
ずっと宝塚について話してたんじゃ。
けど、いつまでたってもやめなくてな。だから
わしらドゴ族に伝わる呪文で、静かにさせんたんじゃ。
安心せい、夜には元に戻るわい。」

それを聞いて、みきおは一安心した。とりあえず誘拐ではなかった
安心もあったんだろう。
そしてロハンさんは、みきおに座布団を渡し、一緒にお茶を飲み、
一段落をすると、ロハンは、みきおに一つの言葉を教えてくれた。

「そういえば、わしらドゴ族の言葉でこういうのがある。
『災いなるかな 一つの物にこだわりすぎる者よ』」

そして翌日、シラカバ小学校のいつものクラスにみきおがやってきた。
いつもの様に、ドッポやケケ坊、トオルもいる、ただ昨日と違うのは、
昨日空いてた席に、はなこがいる事だった。


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