空の台座の謎

作:haru


 都心から数分の所にある中央公園。東京ドームが10個以上入る程、
広大な敷地を持つこの公園では、昼間は近くの会社のサラリーマンやOLが、
お弁当を広げてくつろいでいたり、世間話に花を咲かせたりして、昼の時間を過ごしていた。

しかし、その賑やかな所でただひとり、ベンチに座り腕を組みながら
考え込む一人の青年がいた。

 彼は普段、大手新聞社に勤める記者で、これまで多くの事件等をたずさわってきたが、
今日は珍しく休みが取れたので、どうしても謎に思う疑問を解く為にこの公園に訪れた。
そしてベンチを立ち、疑問に思う所へ行く事にした。

 公園内をしばらく歩き、彼が訪れたのは、敷地内にある「オブジェストリート」という
600m程の森の中にある周回路で、所々に裸やメイド服姿の女性の石像やブロンズ像等が飾られているのだが、
彼が疑問に思っているのは、よく見ると台座だけのがいくつかあるのと、
来る度に違う姿のオブジェになってたりと、どこか謎の多い所だと彼は前々から感付いていた。

(こりゃ、一回調べないとな・・ もしかしたら裏でも・・)

一体のブロンズ像の前で、彼は右手で自分の顎をさわりながら考えていた。
おそらく新聞記者の血が騒いだのだろう

 真夜中になり時計が10時を指した頃、彼はオブジェストリートの森の中にいた。
丁度近くに台座があり、彼はそこに隠れ、反対側にある空の台座を見ていた。
しばらく経ち、時計はまもなく12時になろうとしていた時、小さくコツコツと音がしてきた。
それに気付いた彼は、台座の後ろに隠れ顔を少し出し、見てみると、
そこには一人の女性がやってきた。

(こんな夜中に何しにきたんだ?)と彼が疑問に思っていると
女性は台座の陰に隠れ、しばらくしてその女性は、裸の姿で現れ台座の上に上った。
突然の出来事に、さすがの彼も脳幹がパンク寸前になっていたが
なんとか冷静を取り戻し見ると、その女性はグラビアモデルがするようなポーズをした
すると女性の足の先から徐々に固まりだしていき、じわりじわりと進んでいき、
下半身からお腹、胸と進み、そして全身が固まり女性はオブジェと化した。
あまりの信じられない光景に彼は口を大きく開け、しばらく唖然としていると
その横の、昼間見た時はブロンズ像だったのが、一瞬で全身が元に戻り台座から飛び下り、
その女性は台座に隠れ、服を着て公園を後にした。
さらに信じられない光景を目にした彼には、もう考える余力はなかった。
とりあえず台座の後ろを見ると、フタがあり、そこに服を入れるのかと分かったくらいにして
彼は公園を後にした。

 午前8時、今日は出社で彼は新聞社へ向かっていた。
寝不足気味で、目の下はパンダみたいになっていた。地下鉄の出口を抜け
新聞社へ向かう道の途中、ふと一枚のポスターに目がいった。

「美しい姿で彫像や黄金像になって、飾られてみませんか?
女性限定でプロポーションに自信のある方、公園や美術館で
オブジェになって美しい姿を見せてみてはいかがでしょうか?
飾られてみたい方、募集中 ※オーディション有
基本は週間ですが1日でもできます 日給1万〜
もちろん終わったら元に戻しますので安心して下さい
主な場所 ケロロ彫像館 中央公園等
・090ー・・」

前々から疑問に思っていた事が、意外な所で発見した彼は右手でおでこを叩き
(くあ〜っ 灯台もと暗しとは、こういう事かー!!)と悔しがりながら思った。

お昼になり、彼は再び中央公園のオブジェストリートを訪れた。
昨夜見たオブジェを見たいからだ
そして昨日見た所へ行くと、深夜では分からなかったが、そこには
太陽に照らされながら、キラキラと輝く裸婦の黄金像が建ち
その横には、昨日とは違う女性の大理石像が建っていた。


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