ある店主の一日

作:haru


 「女つーのはこういうタートルネックのセーターに弱いのさ・・」

 そう心の中でつぶやきながら外に出て散歩をする一人の若い男がいた
彼はここで全国から闇ルートで送られてくる少女やお姉さん系の石像や彫刻を扱っているブラックマーケットの店主なのだ
とはいえ秘密の店なので普段は骨董店の肩書で生活をしている
なぜこのお店で店主しているかというと、幼い頃から石化に萌える性癖を持っていて多くの石像に囲まれるのが夢だったからという
理由で単身、北の町からやってきたのだ。
お店の方はネットによる注文が多く、お店に人が来るのはほとんどない。でも彼は毎日石像に囲まれて暮らしているのでそれなりに楽しいと思う
 そんな彼も時々散歩はする、いつものようにジーパンとタートルネックのセーター、そしてMフレームのサングラスをして町中を闊歩するのである。

「今日は土曜日か・・ 久々に母校の大学にいって何やってるかみてこよう」

久々にやってきたキャンパス・・  彼が4年間通った大学である
ここの大学は他の大学と違い「ASFR学部」というの特殊な学科があり、かれもここの学部の出身である。

「またキューティーハニーをやってるな・・ 僕はこれを17回も見たからな・・」

学生組合の掲示板を見てつぶやく彼・・

「研究室に行って今、何をやってるか見てこよう」

けど彼は掲示板を見のがしていた、今やっている研究は自分の意志で人体を一時的に石化したり鉄化し、また元に戻るという事を研究している
これが成功すると暴漢等に襲われた時に自己防衛ができるのだが、その実験に多くの女子研究員が関わっているので彼も見ずにいられなかったのだろう。 しかし今日は土曜なので誰もいないのだ

「チェッ 女子は誰もいないや」

「チャリがあればどこでも行けるんだけどな・・ 歩いて彫像館の展示でものぞこうか」

夕暮れ時になり彼も店へと帰っていく、途中で買ってきたコロッケとメンチカツを左手に帰ると、かつての大学の先輩とすれ違った。両隣りに彼女らしき女性と連れながら

「先輩、女性を二人も連れてってる・・ どこでゲットしたんだ?」

振り向き様に先輩の後ろ姿を見送ったが、彼にとっては不思議な光景でもあった。

「実家じゃどうしてるかな・・ 店へ帰ったら少し手紙でも書くか・・」

 店に戻った時にはすでに日は沈み、入口の看板を「CLOSED」にひっくり返し灯りをつける・・
店にはもちろん彼しかいない、いるのはたくさんの彫像だけ・・
いつものようにロッキングチェアに座り、自分の時間を感じながら一言、

「僕は土曜の午後が大きらいさ・・」


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