女の子を人形にしてみた

作:はまぐり


「なんで、なんで動かないのよぉ…」
先ほどから何とか身をよじらそうとしていた少女が、遂に悲痛な声をあげた。
目の前で姿勢正しく立っている少女は、一見すると身体的拘束など受けていないように思える。
しかし、身体を動かそうとしている少女の必死な表情とは裏腹に、その身体はまるで時間を奪われたかのようにピタリと動きを止めていた。

「それを知る必要なんてないさ、今から奈々さんは俺の人形になるんだからさ」

奈々の前髪をやさしく整えてやりながら俺はそう語りかけてやる。
ツンと高い鼻に長めのまつ毛、くりんとした大きな目を持つ奈々は、このままでも本物の人形に見まがうほどに愛らしい。
黒くさらりとしたストレートに触れれば、かすかにシャンプーの香りが鼻をかすめた。彼女自身のミルクのような甘い香りとあいまって、それは俺の興奮を知らず知らずのうちに高めていく。
憧れのクラスメートである岩下奈々、彼女を俺だけの物にできるのだ。これが落ち着いていられようか。

「人形?なによそれ、全然意味が分からない」

かなりの恐怖を感じているのだろう、声を震わせながらそれでも奈々は俺をキッと睨みつけてきた。
しかし黒目がちな目は涙で潤ませ、奈々は未だにこの見えぬ拘束から逃れようとしている。
どんなに暴れたって無駄だ、俺の術に抜かりはない。
詳しい経緯は割愛するが、怪しげな通販で購入したサプリメントのおかげで俺は魔法のような力を手に入れることが出来たのだ。
その力にかかっては、奈々のような少女などただの玩具も同然である。

彼女の質問には答えず、俺は奈々の額にピタリと指を当てた。そうして指先に集まった高濃度の魔力を、一度に奈々の頭の中へと流し込む。
その瞬間、ビクンとまるで電流を流したかのように奈々の身体が大きく震えた。
「ちょ…あ!あうぅ!!!ひぃ…」
驚いたように目を見開き、酸欠の金魚のように口をパクパクとさせながら奈々がうめいた。
見開かれた目の奥で、大きめの瞳がひくひくと危うげに伸縮している。

「奈々、お前は俺のなんだ?」

ピン、と身体を大きく反らせながらカクカクと痙攣している奈々に俺は静かに問いかける。
今、奈々は俺の魔力によって頭の中を書きかえられているのだ。

「あ…人ぎょ…違っ!私は、んあぅ!!」

人形、と言いかけて奈々は悲鳴を上げた。本能的に恐怖を感じるのだろう、彼女の意識は必死で抵抗している。
書き換えられてゆく思考に拒否するかのようにいやいやと首を振るが、勿論そんなもの何の役にも立たない。
泣こうが叫ぼうが、彼女の意識は俺の思うがままに捻じ曲げられるのだ。
俺の魔法は彼女の頭の中と同時に、身体へも容赦なく変化を与えていく。
ひくひくと震える彼女の身体から硬質な音が聞こえるのがその証拠である。奈々の身体が人形へと作りかえられているのだ。

「か、身体が…いやぁ!!!!」

その違和感に気付いたのか、視線を落とした奈々が自身の身体の変化に悲鳴をあげた。
スカートから伸びる足は既にマネキン人形のそれとなっており、ツヤツヤとした人間の皮膚とは違う光沢を放っている。
見た目はあまり変わりは無いが、既に首から下の身体は人間とは異なる素材に変わり、関節は球体関節へと変化しているのが分かった。

「こんなの違う、私じゃない!!」
「当たり前だろ。ほら、自分が何なのか言ってみろよ」
「うぅ…私は人間…ちが…人形、違うの!いやぁ、私はぁ…!!!」

書き換えに必死に抗おうとする彼女をあざ笑うかのように魔力を強めると、奈々の痙攣がひと際大きいものとなる。

「あがっ…!!!うぁあ、嫌なのぉ!!!……うあ、私は…人形…?人形…です…」

必死に叫んでいた彼女だが、最後の魔力の波を受けると同時に大きく身体を震わし静かになった。

「ん?聞こえんな、もう一度言ってごらん?」
「はい、私はあなた様の人形です」

今度ははっきりと、しかし抑揚のない声で奈々は断言した。
書き換えが完璧に終わったのだ。今の彼女には既に自我も意思も存在していない。
既に痙攣も止め、恐怖に彩られた目も光を失い虚ろなものとなっている。
わずかに開かれた口からは、一筋の唾液がつぅっと垂れていく。

「上出来だ、じゃあ最後の仕上げをしてやるよ」
そう呟いて彼女の目の前で手を振ると、奈々は糸が切れたかのようにかくりと頭を垂らした。
その拍子に、目に溜まっていた涙が数滴ぽたりと音を立てて零れ落ちる。
「これでお前は俺のものだ」
顎を持ち上げて前を向かせ、俺は奈々に話しかけてやる。その愛らしい顔も、既に人形へと作りかえられていた。
先ほどまではあんなにウルウルとしていた目は、今は茫洋としたドールアイとなっている。
力なく立ちすくんでいる奈々は、いまや完全な人形となって俺を見つめていた。
彼女は俺の部屋にずっと飾ってやろう。たまにはメイド人形やセックス人形にして動かして遊ぶのも楽しいかもしれない。

「これからよろしくな、奈々」
その理不尽な言葉を理解することもなく、可愛いお人形さんは静かに俺の腕へとおさまるのだった。


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