作:幻影
もしもあの人の人格が違っていたら、運命は変わっていたかもしれない。
世の中の美女たちを、完全に手中に収めることも・・・
花山クライン。
グレイシティでボランティアなどの活躍に力を注いでいる青年実業家である。
警察や市民に笑顔や寄付金を送る彼。
しかしこれは彼の表の顔。
実は彼にはもうひとつ別の顔があった。
最近、グレイシティで多発している美女誘拐事件。
彼はその犯人という裏の顔を持っていた。
今回彼が眼をつけた獲物は、短いスカートをはいて帽子をかぶった、白銀の長い髪の少女、小森アイミ。
彼女に接触する直前、クラインは奇妙な生き物を発見、捕獲していた。アイミと同居している小悪魔、デモである。
白い霧に紛れて逃げ惑う彼女を追い詰めたクライン。焦る彼女に不気味な笑いを浮かべる。
そのとき、クラインの前に1人の女性が現れた。
特殊な繊維の服に身を包み、背には装備の詰め込まれたボックスを設置している。
グレイシティの黒い影を暴く稲光、スパークガールである。
クラインは彼女に視線を向けて不気味に呟く。
「今日はついてる。1度に獲物が2人とは・・・」
「アンタは女の敵!スパークガールが成敗してくれる!」
スパークガールが構え、臨戦態勢に入っている。
「勇ましい女だ。だが、私には到底勝てないぞ。」
クラインが不敵に笑う。
「アンタ、何様よ!」
スパークガールがビルから飛び降り、クラインに向かっていく。
(こうなったら応援しちゃう!がんばれ、スパークガール!)
不安を抱えながら、アイミはスパークガールに全てを託した。
次々と繰り出されるスパークガールの攻撃。だが、横なぎの蹴りが頬をかすめるだけで、クラインにことごとくかわされていく。
(もう、どうしたのよ!全然攻撃が当たってないじゃない!)
アイミが胸中で不安の声を漏らす。
「ア・・アイミ・・・」
そのとき、クラインに捕まっているデモが、意識がもうろうとしながらもアイミに声をかける。
「今の・・うちに・・・」
(あっ!そうか!)
デモに促され、アイミはスパークガールと争うクラインを横目にその場を離れようとする。
そのとき、彼女の足に何かが巻きついた。
「キャッ!」
足を縛られ、アイミは吊り上げられてしまった。
足に巻きついているのは、伸びたクラインの髪だった。
(アイミちゃん!?)
その様子が眼に入ったスパークガール。
そのスキに、クラインの右手が彼女の首を掴んだ。
「し、しまった・・うっ・・」
うめくスパークガールに、クラインの伸びた髪がまきつく。
「やっとつかまえたぞ。さて、一緒に来てもらおうか。ヒッヒッヒッヒ・・・」
舞い上がる白い霧に紛れて、クラインはアイミとスパークガールを連れて姿を消していった。
薄暗い部屋の中。
アイミとスパークガールは、ほぼ同時に意識を取り戻した。
「・・ここは・・・」
まだ意識がはっきりしないアイミが小さく呟く。
「ちょっと、何なのよ!?」
その声にアイミが見上げると、スパークガールは手足を鎖でつながれてもがいていた。
アイミも足を鎖でつながれて動けない状態にあった。
「はっ・・・」
「な、何なの・・?」
移した視線の先に、アイミとスパークガールは眼を疑った。
たくさんの女性が、一糸まとわぬ姿で身動きひとつせずにいた。
よくみると、女性たちは全て石の像だった。
「どうだい?美しいだろ?私のコレクションたち。」
その石像の群れから現れた1人の男に、アイミたちは見覚えがあった。
街中では完全な黒ずくめで分からなかったが、TVでみた青年実業家、花山クラインだった。
「悪いが、お前の小ざかしい策など、この私には通用しないぞ。」
「そ、それはっ!?」
スパークガールが驚愕し、動けない体を前のめりにする。
クラインの手に握られていたのは、彼女のヘアピースに仕掛けてあった発信機、体温を感知して作動するその装置の残骸だった。
用心深いクラインがすでに破壊してしまったようだった。
「お前のその執念は評価に値する。よって、お前から私のコレクションに加えてやろう。」
「コレクション?」
畏怖するスパークガールをよそに、クラインがアイミに視線を移す。
「お前も見ておくがいい。すばらしい儀式を。」
恐怖を心に秘めて凝視するアイミ。
クラインはかけていた眼鏡を外すと、その姿は街で現していた黒ずくめへと変わっていった。
鋭く見つめるクラインの視線が、スパークガールを動揺させる。
そんな彼の眼からまばゆい光が発し、
ドクンッ
それを見たスパークガールは心臓が強く高鳴るのを感じた。
気がつくと、彼女は妙な違和感を感じた。
「体が、動かない・・」
不審に思い顔の向きを変えると、彼女は信じられない光景に驚愕した。
特殊繊維の服がボロボロになり、さらけだされた肌にヒビが入っていた。
ピキッ ピキッ ピキッ
「な・・何なの、コレ!?」
驚愕するスパークガールの体を、ヒビがさらに浸食していく。
(体が石になってく〜!)
その姿を目の当たりにしたアイミも恐怖する。
クラインはスパークガールに、石化の光を浴びせたのだった。
パキッ
左腕、左胸、尻、そして秘所が石に変わり、服が破れてあらわになった体にヒビが入っていく。
「お前もうれしいはずだ。私のコレクション、美しいオブジェになれることを。」
クラインがスパークガールの石の胸に手を当てた。
「ちょっとアンタ、何してんのよ!」
顔を赤らめて抗議するスパークガールに耳も貸さず、クラインは後ろを振り向き、困惑するアイミに視線を送る。
「安心したまえ。お前もすぐにオブジェに変えてやるから。」
悠然と笑うクラインの横で、スパークガールの石化が進行し、体から徐々に力が抜け落ちてきていた。
(アイミちゃん・・)
パキッ ピキッ
スパークガールの頬にまで石化が及び、髪やヘアピースも崩れていき、彼女の顔からも力が抜ける。
「ゴ、ゴメン・・・タスケ・・ラレ・・ナ・・・」
アイミを救えなかった彼女の悲しむ姿に、アイミは悲痛な面持ちになる。
「ヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッ・・・」
クラインが不気味な哄笑を上げてスパークガールを見つめる。
ピキッ パキッ
唇まで石に変わり、声を出すことさえできなくなったスパークガールの眼から涙があふれる。
その涙が石の頬を流れた瞬間、
フッ
彼女の瞳に亀裂が入った。
「スパークガールゥゥーーー!!!」
アイミの叫び声が部屋中にこだました。
スパークガールは虚ろな表情の、全てをさらけ出したオブジェへと変わった。
悲しみの暮れるアイミが彼女の変わり果てた姿を見たとき、思わず眼を疑った。
「アレ・・?ライムちゃん・・・」
アイミは彼女の姿に見覚えがあった。
最近、新しく友達になった少女、細川ライムだったのだ。
「ここは・・」
ライムは眼を開けると、何もない漆黒の空間だった。
「ヤダ!?あたし、裸!?」
彼女は自分が何も着ていない全裸だということに気がついた。
「どうなってるの、コレ!?」
不安になって辺りを見回すライム。
そんな彼女の前に、まばゆい光の球が現れ、声を発してきた。
「ここはあなたの深層意識。あなたは魔人の力で石に変えられてしまったのです。」
「えっ!?あたしが石に!?そんなおとぎ話みたいなこと・・」
かけられた声に、ライムは驚愕する。
その声に聞き覚えは全くない。
「本当です。あなたは魔人の力を得た花山クラインによってオブジェに変えられてしまったのです。この石化の力は、身に付けているものを全て破壊する特殊な力が備わっていて、あなたは全くの裸でたたずんでいるのです。」
「ウソでしょ!?これは夢よ!悪い夢!眼が覚めたら市民を守るために、あたしは戦うわ!」
ピキッ ピキッ
「イヤッ!」
突然響いた体が裂けるような音に、ライムは体を震わせて抱きしめる。
「信じたくないなら、それでもいいでしょう。ですが、石化された変化の感覚は体に染み付いてしまっています。」
ピキキッ パキッ
「イヤアァァーーー!!!」
襲いくる衝撃にライムはあえぎ、そのまま意識を失った。
「そんな・・スパークガールがライムちゃんだったなんて・・」
アイミは石化したスパークガールの正体に愕然とする。
「あたしを守るために戦って・・それなのに・・」
「ほう。こいつはお前の知り合いか?こいつも美しくなれて本望だろう。」
クラインが不敵に笑いながら、一糸まとわぬライムの石の体を抱き寄せた。
しかし、肌や胸を触られても、ライムは瞬きひとつしない。
呆然となっているアイミに、クラインが視線を向ける。
「世の中の女は私のものだ。こいつも、そしてお前も。」
するとクラインはライムから離れ、少し離れた布に手をかけた。
「見るがいい。」
クラインが布を取り上げると、その中には1人の少女がいた。
白い布だけを身に付けて、口も布で塞がれていた。
肩まで伸びた黒髪。両手は背中で縛られ、足だけが変色して亀裂が入っていた。
「この女逃げようとしたから、足だけ石にしてやった。」
奴隷のような彼女の姿を、クラインが悠然と見つめる。
彼女はもがいてモゴモゴ言っている。
「何?しゃべりたいのかい?」
クラインは少女の口を塞ぐ布を取り上げた。
少女は大きく呼吸し、悲痛な声をクラインにかけた。
「助けてください!あっ!」
ピキッ パキッ パキッ
助けを求めた彼女の体が一瞬にして石化し、唯一まとっていた布が引き裂かれる。
「ちなみに、石化の進行は私の思いのままである。」
クラインがアイミに石化の特徴を伝える。
ピキッ ピキキッ
少女の石化が進行し、首にまで及んでいた。
「お願い、助けて!何でもしますから!」
少女が必死にクラインの助けを請う。
「ホントに何でもするのか?」
「は、はい!」
「そうか・・」
少女が歓喜の声を上げ、クラインも優しく微笑む。
すると突然、クラインは少女の唇を奪った。
舌を伸ばし、彼女の口の中を舐めていく。
何の抵抗もできず、少女は昇天してしまいそうな感覚に襲われた。
アイミがこの光景に驚愕する。
クラインはしばらくして唇を離し、再び笑みを見せる。
「ならば、私のコレクションになってくれ。」
少女は抗議の声を上げたかったが、上り詰めた感覚のために声が出ない。
ピキッ パキッ
石化が微動だにしない少女の頬と唇を覆い、
カキーーーーンッ
少女は快感のままクラインのオブジェへと変わった。
「私のコレクションとなった女は私の思うがまま。こいつらも美しいオブジェに変わったことで喜んでいると思うよ。」
「許さない!!」
悠然と裸の少女を眺めるクラインに、アイミが叫んだ。
女性を弄ぶ彼の言動が、彼女の怒りに火をつけたのだ。
「アンタは人間じゃない!腐った害虫だわ!アンタはこの場でブッ潰す!!」
アイミの怒号が部屋中に響き渡る。怒りのこもった彼女の眼には、悲痛の涙が浮かんでいた。
「私をブッ潰すとは、勇ましいことだな。あの不思議な動物といい、ただ者じゃないな、お前たち。」
余裕を見せるクライン。
アイミはスカートのポケットからコンパクトを取り出した。不思議な模様が描かれた化粧道具だった。
その様子にクラインがあざけるように笑う。
「何を出したかと思えば化粧道具か。化粧直しでもするつもりか?怒りのあまり、愚かになったか?」
「愚かなのはアンタよ。」
アイミがまぶたにアイシャドウを塗ると、彼女の体が光り輝いた。
「ライムちゃんや他の女性に代わって、あたしが成敗してくれる!」
アイミが飛び上がり、足を縛っていた錠を断ち切った。
「・・あの女、まさか・・」
クラインの顔から笑みが消える。
白模様の黒の服に、1本に束ねた髪。背中に生えている悪魔の羽。
アイミは、グレイシティを騒がせている大泥棒、シャドウレディだったのだ。
「イヤ〜ン!開放感でクラクラしちゃう〜!」
シャドウレディが自分の快感に酔いしれている。
「どうでもいいが下りてくれんか・・」
「あら、ごめんなさ〜い!」
シャドウレディはなんと、クラインの頭の上に立っていたのだった。
照れながらそこから彼女が飛び下りる。
「お前があのシャドウレディか。こましゃくれた女だ。」
「おほめの言葉ありがとう。」
クラインの言葉を褒め言葉ととったシャドウレディ。
「さあ、かかってくるがいい。私をブッ潰すのだろ?」
「え〜!何言ってるの?」
クラインに対し、シャドウレディが呆れ返るような態度をとる。
「暴力なんてダサいジャン!あたしはスマートな泥棒なのよ。さっさと魔石をいただいておさらばよ。」
魔石。
魔力を秘めた魔界の宝石で、中には強力な魔人が封じ込められている。
クラインはその魔石の1つを手に入れ、石化の力を手に入れたのだった。
だが、魔石は欲望を吸収することで力を増大し、最後には魔人を復活させ、世界の破滅をもたらしてしまう。
シャドウレディは今、その魔石を回収しようとしていたのだった。
「第一、あんなクサレ外道はほっといたって地獄を見るのがお約束なの!」
「ふざけるな!」
彼女の大きな態度に、クラインはいきり立って飛びかかった。
しかし、彼女のかざした拳に逆に弾き飛ばされる。
「バカね。おとなしくしていれば、痛い目に合わずに済むのに。」
シャドウレディが振り向き、笑みを見せる。
「おのれっ!」
クラインがなおも彼女に向かって襲いかかる。
「こりないね。」
彼女は振り返り、クラインを殴り飛ばした。
顔に血が吹き出ていた彼に、シャドウレディが鋭い視線を向ける。
「これ以上はやめときな。レベルが違うのよ。」
「確かにこのままでは勝ち目はないようだ・・」
クラインが息を荒げながら笑みを見せる。
「だが、こうしたらどうかな?」
クラインの行動にシャドウレディがはっとする。
彼はオブジェにされたライムに肩を寄せた。
「その場から動くな!少しでも動けば、この女を壊す!壊れてしまったら生き返ることもできんぞ。」
「卑怯な・・」
シャドウレディが苛立ちながらも、その場で動きが止まる。
「見捨てるわけがないだろう?お前の大事なお友達なんだから。」
シャドウレディは、アイミはライムを失いたくなかった。
デモと出会い、マジックシャドウの力を手にしてから、初めてできた同年代の友達だった。
自分を助けるために戦ってくれたその親友の危機を、彼女は見過ごすことができなかった。
その様子に、クラインがうっすらと笑みを漏らす。
「さあ、変身を解いてもらおうか。」
クラインの指示に、シャドウレディが戸惑う。
「早くしろ!友達がどうなってもいいのか!?」
ライムのあごに手をかけ、罵倒するクライン。
シャドウレディは困惑しながらも、自らアイシャドウを拭った。
彼女の体が光り輝き、再び元の少女に戻った。
その瞬間、クラインの伸びた髪がアイミの体を縛った。その拍子でマジックシャドウのコンパクトを床に落としてしまう。
「ハハハハハ!全く愚かな女だよ!この私がせっかく手に入れたコレクションを壊すはずがないだろう。」
哄笑するクラインが、床に落ちたマジックシャドウのコンパクトを拾い上げる。
「しまった・・うくっ・・」
巻き付く髪に、アイミがうめき声を漏らす。
「油断したよ。私がここまで追い詰められるとは。先にお前をオブジェに変えておくべきだった。だが、これで終わりだ。」
アイミを見つめるクラインの視線に、彼女は威圧される。
そして眼から石化の閃光が放たれる。
ドクンッ
アイミの胸が強く高鳴った。
そして彼女のシャツが弾けるように裂け、胸があらわになる。
パキッ ピキキッ
さらけだされた素肌は石に変わり、ヒビが入っていた。
「お前は最高のオブジェとなるだろう。その敬意を評して、私の寝室に置いてやろう。もちろん、お前の友達と一緒に。」
巻きつけていた髪をほどき、クラインが不敵に笑う。
「こんなことって・・あたしまで石に・・」
胸の周辺がクラインの石化が覆い、アイミが顔を赤らめる。
「そうだ。さっきの礼をしなければな。」
顔から血を吹き出しているクラインが、右手でアイミの頬を叩いた。左頬、そして右頬と。
「これでも私は律儀だが、あまり大きな口を叩かないほうがいいな。」
クラインがアイミを叩いた右手を引っ込めた。
赤面している彼女の頬が赤みを帯びる。
パキッ ピキッ
アイミの下半身にも石化が及び、スカートが破れて、クラインの前で秘所をさらけ出す。
彼女の中で、かつてない恐怖と犠牲となった女性たちを救えなかった無力さに顔を曇らせる。
「そう暗い顔をしないでほしい。私がお前を心地よくしてやろう。最も美しいオブジェに、私の最高のコレクションとするために。」
するとクラインは、体を石にされて身動きがとれないアイミに口付けを交わした。
抵抗の意思を見せ顔を揺らすが、動けない石の体のため振りほどくことができない。
アイミの中で、アイミとして今まで感じなかった高揚感が込み上がってきた。
相手は敵なのに。自分を石化してコレクションに加えようとしている男なのに。
心の中に満ちる気分と、それを認めたくないという気持ちが交錯し、アイミは眼から涙を浮かべた。
「どうだい?気持ちよくなってきただろう。この石化の美しさにもいい気分になれるよ。」
唇を離したクラインが、悠然とアイミに語りかける。しかし、動揺が激しくなっているアイミの声は、すでに言葉になっていなかった。
刺激にあえぎながらアイミが視線を移すと、クラインが石化して感覚がなくなっている自分の胸に手を当てている。
その姿が、彼女の心の動揺をさらに強める。
「やめて・・あたし、あたし・・・」
アイミがクラインに抗おうとするが、混乱の絶頂に立たされた彼女は話を続けることができない。
ピキッ ピキキッ
石化がアイミの手足の先まで覆いつくし、頬にまで及び始めた。
クラインは寄り添っていたアイミから離れ、彼女が石化する様を見届ける。
彼女の眼から涙があふれていた。
自分の体を弄ばれた悲痛。上り詰めていく快感の歓喜。そしてライムや他の女性たちを助けられなかった無力さ。
次々と流れる涙が、ヒビの入っていく石の頬を伝う。
「さあ、最高のオブジェの誕生だ。ヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ・・・」
クラインが不気味な哄笑を上げて、アイミの変わりゆく姿を見つめる。
ピキッ パキッ
声が言葉にならないまま、唇も石に変わったアイミが、ライムに視線を向けて胸中で叫ぶ。
(ゴメンね、ライムちゃん・・あたし、何もできなかったよ・・・ホント・・ゴメ・・ン・・ネ・・・)
ライムを見つめるアイミは次第に意識が薄らぎ、
フッ
涙を流していた瞳も石化し、アイミは完全なオブジェへと変わった。
そしてクラインは、自分の寝室に一糸まとわぬ姿のアイミとライムを運び込んだ。
2人の少女は虚ろな表情のまま、胸も素肌も全てさらけ出して立ち尽くしている。
「今日は本当にいい日だ。1度に2人の女を手に入れられた。しかも、あのシャドウレディとその友人。少し手間をかけたが、それだけに価値は高いな。」
クラインが全裸の2人の姿に満足し、うっすらと笑みを見せる。
今までにないくらいに満ちた欲望のまま、彼は寝室を出て行った。
しばらくして、グレイシティ警察に所属する青年刑事がクラインの屋敷を訪ねてきた。この家に美女連続誘拐事件の重大な手がかりがあると言って。
しかし、決定的な証拠に欠けていたため、刑事はクラインに少し話したあと、彼の家を立ち去った。
彼こそがこの事件の犯人であり、その刑事の幼馴染みである少女、ライムを石化してコレクションしたなどとは思ってもいなかった。
グレイシティから突然、シャドウレディは現れなくなり、代わりに美女誘拐事件の多発が目立つようになった。
彼女もクラインの手中にあることにも、その犯人が健全な青年実業家であることにも、人々は疑うことはなかった。
「さあ、次の獲物は誰かな?ヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒッヒ・・・」
クラインの野望は留まることを知らない。