過去は繰り返すモノ

作:G5


 ―― 南の森 ――

 「よし、こっちの森に行こう!」
 そしてそのまま森に入ろうとすると、
 「ちょっと待ちな、そこの二人」
 後ろから声を掛けられて振り向くと、二人組の冒険者らしき人たちが立っていた。
 耳としっぽから、彼女達と同じイヌイ族だというのは分かった。
 「この森は危ないから道を迂回して帰った方がいいわよ」
 フードを被った方の女性に指摘され、しぶしぶ岐路に付く姉妹。
 「・・・これでよかったんだよな」
 「えぇ、これであの子たちはちゃんとした時間の流れに乗ることが出来た。あとは・・・」
 フードの女性は森を見てため息をつく。
 「この忌まわしい森の主を退治すればそれで私達の仕事は終わりよ」
 この冒険者たちはギルドには属していない。
 正確にはこの時間のギルドには。
 彼女達を派遣したのは国家直属の特殊なギルド。
 アーガイム。
 このギルドは過去の魔物関連の事件の整合性を取るために存在し、過去に冒険者を送ってその時空のねじれを治すのが仕事である。
 このギルドは一般には知られていなく、あくまで極秘裏に仕事を終わらせるため、一般の人々は時空が改変されていることなど知る由もない。
 そして少女達は魔物うごめく森の中に踏み込んでいく。
 
 森の中は深々と木々が生い茂り、木々の中をザワザワとうごめく影が不気味さを際立たせる。
 時間も深夜ということもあり、夜行性の魔物たちが活性化していた。
 「こんな忌々しいところ・・・さっさと片付けるわよ」
 「まぁ焦らないで、ここの主は生半可な力じゃ勝てないわよ」
 「分かってるけど、それでも・・・」
 彼女達には何か特別な思い入れでもあるのだろう。
 真剣な面持ちで歩く彼女達は、やがて大樹のある広い所に出ていた。
 「ここね、あの樹の裏が奴の住処です」
 「よし、一気に焼いてしまおう」
 「任せて」
 フードの少女は怪しげな呪文を唱えてもう一人はその少女を守るように周りの気配に集中する。
 「炎霊滅鬼衝(ルーン・フレイア)!」
 少女が呪文を唱え終わると空中に巨大な炎の槍を出現させて大樹目掛けて打ちぬく。
 轟々と燃え上がる大樹だが周りの木々のは燃えうつる気配はなく、高密度のエネルギーだということがうかがえる。
 「これで奴をおびき出して、そこを貴方が仕留める。いいわね」
 「分かった」
 もう一人の少女は手に余るほどの大きな斧を構えて神経を研ぎ澄まさせる。
 夜の静寂の中、轟々と燃える大樹以外の音は聞こえない。
 フードの少女は大呪文の影響か少し疲れて少女の後ろで構えている。
 「おかしい、奴が出て来ないなんて。一体どこに―――」
 フードの少女の声が不自然に途切れ、おかしいと思って振り返るとそこには身の丈10メートルはあるであろう大蛇がそこにいた。
 そこにいたはずの少女の姿と引き換えに。
 「・・・またか」
 少女の持つ斧に力がこもる。
 「またお前が、私から妹を奪っていくのかぁ!!」
 少女は一気に纏っていた魔力を解放して魔術を解放する。
 「霊王結魔弾(ヴィスファランク)!」
 少女の斧に青色に輝く魔力が集中し、魔力独特の輝きを見せる。
 本来これは拳に乗せて戦う技だが、彼女は独自に開発した特殊な戦斧を使うことでこれを可能とした。
 その一撃は龍さえも深手を追わせるという。
 その一撃を宿して大蛇に飛びかかる少女。
 大蛇の腹目掛けて振り下ろされた一撃は、大蛇を真っ二つに裂くと思われた。しかし、
 「!?」
 大蛇の腹に浮かんだそれを見て寸前で刃の魔力を霧散させる少女。
 そのまま振り下ろされた刃は大蛇の皮を傷つけることは出来ず、そのまま弾かれてしまった。
 「くっ!!」
 大蛇が盾にしたのは先に飲み込んだフードの少女。
 その影を刃の当たる部分に持ってきたため、少女は攻撃を止めてしまった。
 「・・・ルカァァ!!」
 飲み込まれた少女の名前を叫びながら再び闘志をあらわにする少女。ルー。
 この二人は先ほどの幼い少女達と同じ名前を持っていた。
 だが―――
 「えっ?」
 後ろから出てきたもう一匹の大蛇の存在には気がつかなかった。
 大蛇はルーを頭から飲み込んでそのまま自分の腹の中に収める。
 そう、大蛇は2匹いたのだ。
 少女達には大蛇は一匹という情報しかなかった。
 なぜなら彼女達は一匹の大蛇に襲われたのだから。
 
 少女達はあの時、お使いの帰りにこの森を通り、そしてこの大蛇に食べられた。
 大蛇は少女達をまず大人しそうに後ろを歩いていたルカを飲み込んでそれに恐怖しているルーを続いて飲み込んだ。
 飲み込まれた少女達はヘビのお腹の中でゆっくりと精気を吸い取られて、抜け殻となった身体は翡翠に輝くエメラルド色の鉱石へと変わっていた。
 やがて全ての精気を吸い取った大蛇は自分たちの寝床の大樹の下に少女達のなれの果てを吐き出して眠りに付いた。
 少女達が目覚めたのはそれから何十年たってからか。
 少女達が気がついたのは街のギルドのベッドの上だった。
 彼女達はその身体が宝石になったまま、長い時を過ごし、やがて大蛇を退治しにやってきた冒険者によって救われたのであった。
 そのギルドこそ先に紹介した国家直属の特殊なギルド。
 アーガイムである。
 彼女達は身寄りがすでになかったためギルドで育ち、そして、過去の彼女達を助けるべくこの時代にやってきた。
 だが彼女達は負けた。
 やがて彼女達は昔と同じように翡翠色に輝く宝石となって、助けに来た仲間か冒険者が来るまで長い時を過ごすことになる。
 それでも少女達は過去の自分たちを救うことは出来た。
 自分たちではないにしても、母親との幸せな人生が彼女達には待っている。
 それだけが彼女達の唯一の救いなのかもしれない・・・

終わり


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