永遠に朽ちることのない少女

作:G5


今日という日を私は一生分かけて呪いたい。そう思う。いや思った。思っていた。
なぜなら私、木野風 神流(きのかぜ かんな)は見知らぬ男たちに見知らぬ廃屋を連れて来られ、見知らぬ薬飲まされてしまったのだから。
おかげで今も頭は朦朧とするし、身体はしびれたように動けないし、手は後ろで手錠で組まされてるから自分で動けないときた。
「あなたたち、私をどうするつもりなの?」
一番近くにいた男を問いただす。
「・・・うるさい、賞品が喋るな・・・」
一言で黙らされてしまった、こえぇぇよなんだよあいつ。人のことモノでも見るような感じでさ!
文句をぶつぶつと唱えていると急に視線が上に上がった。
見ると私の組まされた手を抱えて宙づり状態でぶら下げられているようだ。
「おい、そろそろはじめるぞ・・・」
すると私を持ち上げた男がそのままの体勢で奥の方へ運びやがる。
おいこら、もっとちゃんと持ちなさいよ! 意外とこの体制結構怖いんだからね!
そうこうしてる間に円形の舞台のような場所につれて行かされた私はその中央にまた寝かされる。
いったいどうするつも・・・ふがっ!?
男が急にまた変な味のする液体を私の口にむりくり飲ませようとしてくる。
・・・少し器官にはいった・・・うっ・・・
だがその気持ち悪さもつかの間、私の中で起こった異変がその不快な気分を一掃した。
「!!? ぅあぁ…あぁっぁああああああああああああっ!!!」
突然胸の奥の方からじわりじわりと針で刺されるような痛みが押し寄せる。
さっきまでの不快感なんかとは比べ物にならないほどの痛みだった。
それは例えようもない、飲んだことはないが青酸カリとかトリカブトとか世間一般にいう毒物を飲んだらこんな感じなのだろうかとふと思った。
「あぁぁあああ・・・かっあぁ! ・・・・・・げほっ!」
胸の奥の方が冷たい何かに浸食、いや冷たい何かにとって代わられていくような、まるで自分の身体が別のものに作りかえられていくようなそんな感じだ。
男たちは私のそんな様子をにやけるでもなく、ただ淡々と私の様子を観察している。
ひとつ文句を言ってやりたいが今の私にはそんな余裕はない。
ただ身体が氷のように冷たくなっていくのに耐えることが今の私の限界である。
やがて痛みが胸の辺りから腰、お尻、太ももと、首筋と広がってくると、もう声を出してわめくことも出来ない状況だった。
それを確認したのか男たちはなにやら慌ただしく移動し、やがて仰向けに倒れている私の頭上から先の細いノズルのついたホースが出てきた。
私がそれがなにか考える前に、いやもう考えるほどの思考する余裕はないな。とにかくその前に私はそれがなんなのか知ることになった。
ノズルが近づくと私の足元から水色の液体が水滴のようにジワリジワリと落ちてくる。
それがわたしの皮膚に触れた瞬間、私は声にならない悲鳴を上げた。
「!!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
まだ私が声の出せる状況ならその悲鳴と一緒に意識がなくなって楽になれたかもしれない。だが声が出なかったせいか私の意識はまだこの地獄に付き合わなければならないようだ。
液体が当たった部分から今私の身体の中で起きていることを察した。
触れた部分は透明度100%の氷に変わっていた。
おそらく身体の中では半分以上がもうすでに透明な姿になっていることだろう。
この皮の下にあるのは肉なんかではなく、床がきれいに見えるくらい澄んだ氷なんだろうな、と想像するが、正直まだ信じられない。
だがそれさえも上のノズルは一瞬で打ち消す。
痛みが引いたところにまた液体をかけられて再び激痛に身をじらす。

何時間経っただろうか、私の意識はまだ健在だった。
もう頭の中まで氷になったことは分かる。さっきまでの激痛が引いているのだから。
私の身体は頭を残して氷に変わっていた。
だが私の身体は溶けることなくその姿勢を維持している。
後ろ手で組まされて、身体を痛みでのけぞらせてまるで頭と足でブリッジしているようなそんな姿勢。
服は下着さえも奪われてほぼ裸。情けか手術用の布を被せられているが余計に恥ずかしい。
私の意識が残っているのはきっと最初の薬かその後飲まされた薬のせいだろう。
すでに首も動かず、この皮膚の下には冷たい氷があるだけの私というマスクを頭上の液体は剥がしていく。
ノズルは狭い口を取りかえられ、少し大きくなっていた。
あそこから液体が落ちてきたら私は一瞬で氷になるんじゃないかな・・・
とうとう私もこの世とおさらばか・・・享年16歳、まだまだやりたいこともあったんだけどなぁ・・・
でも今となってはどうでもいい、もう感じなくなったがあの激痛がまだ私の身体を縛り付ける。
早くこの地獄から解放してくれるのなら私は喜んで最後の雫を受けよう。
ほら、はやく・・・はやく私をらくにして・・・
神流が最後に見た光景はノズルの先から落ちる雫に写った自分の虚ろな瞳だった。
男たちは出来上がった賞品を待機させていたトラックに運びこんでネームプレートをかけて扉を閉めた。
プレートに書かれていたのは
『〜永遠に朽ちることのない少女〜 価格:1億〜』
と記されいた。
そしてトラックや他の車に乗り込むと夜の闇に消えて行った。
行先は地下の競売場かはたやどこかの金持ちの家か、冷たくなった少女には関係ないことだった・・・


戻る