続・とある温泉の真実

作:永遠の憂鬱


都会からほどなく外れた場所に入浴目的で宿泊としては機能していない温泉がある。
その温泉の売り文句は『女性限定温泉、日常に退屈しているあなた、新しい温泉に入ってみませんか?刺激ある温泉に入浴1000円にて』
今回はあれから少し時間の経ったお話。

「まったく・・・どっかの馬鹿がヘマをするから、こっちまで面倒なことをしなきゃならないじゃない」
「ぐしゃ」
館長室から紙を握りつぶす音とここの館長のいらいらした声が聞こえる。
その紙にはこう書かれていた。
『先日、○○温泉にて偽装温泉だと言う事が発覚したため、付近の温泉の泉質検査を行います。日時○月○日○曜日 その間、営業は停止するように』
チラシの来た日から7日後の検査。
さらに検査結果が出るまで早く見積もっても10日ほど営業停止しなければならない。
また、検査員が来る前に、普通の温泉の混ぜてある異次元よりつながった『魔界』の源泉『夢幻湯』からの供給を止め、ゲートを閉じなければならない。

『コンコン』「あの〜」
ドアの向こうからノックの音と少女の声が聞こえる。
正体をうっかり見られないために、館長室は普通の人間が認識できないように魔術をかけてある。
それを見つけれるのは、彼女の使い魔『ハール』だけである。
少女はゆっくりとドアを開け、中に入った。
身長は170cmぐらいでやや高く、体つきもほっそりとしたモデル風だ。
「事情はわかってるわね・・・何か提案でもある?」
「はい、そのことですが・・・検査期間の間、改装工事をしてみませんか? やっぱりサウナは欲しいですよ」
少女の提案は確かで、若い女性には温泉よりサウナの方が魅力なのはわかる。
「サウナ? う〜ん・・・でも蒸気じゃ陶酔効果の効率悪いのよね・・・かと言って、源泉そのままを使うと私たちですら酔っちゃうし・・・」
効果を打ち消しあってしまうため、温泉自体に石化効果を与えることはできない。
かと言って蒸気から逃れればすぐに回復されてしまう。
しかし、少女の口からは
「魔道通販で『抗魔術マスク』を売ってましたから、それで大丈夫です♪」
という言葉が出る。

『魔道通販』

実際には魔界で作成される道具を販売してる。
異次元ゲートで直送なので、たとえ別の次元へでも、
『できたてほやほや、産地直送』届く。
う〜ん・・・まぁ試してみる価値はありますかね・・・
「わかりました、早速工事に取り掛かりましょう」
こうして『500年来』よりはじめてこの旅館にサウナを作ることになった。

時間は飛んで2週間後・・・
「・・・工事に泉質検査より長い時間取っちゃったわね・・・」
と言いつつ、右手の新しく書かれたチラシを見る。
今までのチラシに『身体を美しく磨くサウナ1時間500円』を追加したものだ。

PT6:00
4人の女性・・・というには幼すぎるだろう、ランドセルを背負った少女達がたずねてきた。
「あの〜、サウナできたって言うので、ちょっとためしに来たんですけど・・・」
好奇心旺盛で多感な年頃だろう、少女たちはそれぞれ財布から500円を取り出した。
「は〜い、4名さまですね。では私がご案内しま〜す」
言ったのはハールだ。それに釣られて少女たちも行く。

「こちらでは引き立ての温泉の蒸気を使うために、サウナは常時始動してるわけではありません。みなさんが入ったのを確認してから、私がスイッチを入れます♪ その間ちょっと寒いかもしれませんが、我慢してくださいね〜」
脱衣所でバスタオル1枚になったハールが説明する。
同じようにバスタオル1枚の状態の少女たちがうなずき、サウナ室に入る。
そして、少女達が全員入ったのを見てから、スイッチを入れた。

強烈な蒸気である。悪魔ですら酔わせるのだから、人間ならすぐに虜になる。
すぐにサウナ室からは自慰すらまだであろう、未知の感覚に酔っている少女たちの甘い喘ぎ声が聞こえる。
ハールは通販より購入していた、まるでガスマスクのような大げさなマスクを付ける。
そして、ドリンクの素・・・生命を石へと変える甘い毒、それを薄めずに紙コップへと注ぎ、サウナ室へ入った。

どうしていいかわからない甘い衝動に少女たちは襲われていた。
もだえている間にだろう、すでにバスタオルは落ちてしまって、少女たちは幼い裸体をさらしていた。
ハールはゆっくりと、夢のように、しかし少女たちに聞こえるように話しかける。
「はい、立ち上がって、私の顔を見て・・・」
少女たちは言われたとおりに行動している。
顔にガスマスクが付いているが、それを「変だ」と認識できるまで理性が残っている少女はいない。
全員がうっとりとした表情でハールを見る。
すると、その半開きの口に『毒』を流し込んだ。
原液のままつかったためだろう、その少女は1口飲んだあとはもう動かず、と思ったときにはすでに1体の石像となっていた。
しかし他の少女は何も見えていないように、虚空を見つめている。
いや、仮に横で起こった惨劇を見ていたとしても何も感じることは無かったであろう。
そして、ハールは次の少女へと歩んでいく・・・

「よし、大成功♪ マスクもちゃんと機能したね」
蒸気の供給を止めて、ハールはそう言った。
そして、主人のいる部屋へと移動する呪文を唱える。
もちろん少女たちを・・・いや、だったものをその範囲に入れてだ。
そうしてそのサウナ室には人影は無くなった・・・


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