水の魔女

作:永遠の憂鬱


赤い長髪の少女が立っている。彼女が来ているのは一般的な制服だ。しきりに時計を気にしている所を見ると、人待ちのようである。
「おはよ〜」
と、待ち人が現れたようだ。同じ制服を着た、水色の髪のショートカットの少女。手を振りながら走ってくる様は、どこか危なっかしい。
「おはよ〜・・・って、早く行かないと遅刻するよ」
「う、うん」
そんなやりとりがあって、2人は学校への道を急ぐ。
「まったく、毎日毎日あと10分早く出なさい、って言ってるのに」
赤い髪の少女がこぼすと、水色の髪の少女は
「え、そ、その・・・ちゃんと15分早く出たんだよ、『トリーシャ』」
と、少しだけうつむいて言う。
「・・・じゃあ、来る途中で寄り道はしてないの?『ミスティ』?」
赤い髪の少女・・・『トリーシャ』は、少し強い口調で聞く。と、水色の髪の少女『ミスティ』は申し訳なさそうに
「えっ・・・と・・・その・・・かわいい子猫ちゃんが・・・」
と、つぶやく。
トリーシャは頭に手を当て、ため息をするが、すぐに前を見て、
「ほら、もっと早く。今日遅刻したら1週間全部遅刻になっちゃうんでしょ。そしたら課題よ?」
と、ミスティを急がせる。

2人はフィーレル学園に通う8年生(中学2年生)である。
『トリーシャ』と呼ばれた少女は、身長が160cmぐらいだろうか。艶やかな赤い髪は腰までの長さがある。
そして引き締まった顔はさながら『お姉さん』と言う感じか。
身体は細めだが、しかし決して弱々しさを感じさせない。
『ミスティ』と呼ばれた少女は、身長はトリーシャより少し低い程度である。
が、顔は同年代の少女と比べても幼げに見え、実際より小さく感じる。
しかし、身体は出るところは出ていて、柔らかそうで、しかし太ってはいない。家系だろう。
彼女自身は、少し大きすぎなんじゃ・・・と、コンプレックスを持っている。
胸はCカップの下着を付けているが、これもそろそろ買い換えなければならない状態である。
しかし、アンバランスにはまったく感じず、男子には非情に人気がある。
普通、男子に人気のある女性は、同じ女性によく妬まれ、イジメにあいやすいが・・・

「ひゃう!?」
奇声と同時にミスティは前のめりになり、バンザイの格好のまま、思いっきり顔面から地面に接触。
「ちょ、ちょっと、大丈夫?」
涙目になりながらも、トリーシャに立たせてもらい、肩を借りて歩く。また遅刻確定だ。
もう200mほどの場所にある校門を見ながら、無情にもベルが鳴った。
さて、彼女達がいる場所はどこだろうか?
正解:通学路。晴れ続きで水たまりもなければ、特に凹凸もないただの道

ミスティは、何もないところで転び、溝があればどんな小さな溝でも墜ちる、正真正銘の『天然』なのである。

ミスティの家は外見はいたって普通だが、地下室などが多く、中は非常に広い。
「ううぅ・・・ただいま〜・・・」
一人暮らしのミスティは、この世の終わりでもあるかのような声でつぶやき、入る。
無論あの後、1週間全部遅刻の課題に、さらに前期に続き、後期も50回以上の遅刻をしたため、追加で課題を出されてしまった。
合計プリント 4×5教科=20枚、レポート 5つ、反省文 5+20=25枚
期限は月曜日まで、つまり土日返上で全部終わらせなければならない。本当に終わるのか?これ?
「しくしくしく・・・」
泣きながら机に向かい、プリントから取りかかる。

二時間後・・・
「えっ!? 無重力!!?」
と、意味不明な言葉と共に机から顔を上げる。
「あ・・・夢か・・・あ・・・課題・・・」
寝ていたらしい。辞書を引いている時だったらしく、辞書によだれの跡がついて破れてしまい、使えなくなっていた。
「ああ・・・イラストが可愛くて、お気に入りだったのに・・・」
と、辞書を閉じる。辞書の名前は『モエタ○』・・・そんなもので勉強するな。

ミスティは部屋を出て、地下の書庫へ行く。古びた本棚で、その本も古い。
色々な本があるのだが、図書館のように規則的に並んでいるわけではなく、しかも埃を被っているため、1冊1冊題目が見えるように払わなければならず、目当ての本を見つけるのは大変である。
『薬草学』『毒の本』『毒から薬へ〜初級精製〜』『彼女達は何物なのか・・・』『インプの子、フレンディーのお話』
専門書から何やら妖しい本、さらには絵本なども混じっている。
「あれ、なんだろ、これ?」
ふと、彼女が指の腹でこすった部分の題目が、古い本なのに輝きを持つ本があった。
『catch the lover in forever』
彼女がまだ習っていない異国の言葉で、しかも文法もおかしいので、それが何を意味するのかはわからなかったが、何故か彼女の興味を引いた。
その本を読み始める。読めないのだが頭に入る。内容は『あの人を、自分の『物』に』と言うものの短編集のようなものだろうか。
何かに操られるように、ミスティは読み進めていった。

ぴんぽ〜ん
誰かがインターホンを鳴らす。気が付いたら夜が明けてしまったようだ。慌てて1階まで駆け上がり、ドアを見ると、トリーシャが立っていた。
「プリントは私の方が終わったから、レポートと反省文、一緒にやろう?」
招き入れて、自分がまだ昨日の格好のままでいたことに気が付く。
「えっと・・・あ、ごめん、課題やってたら途中で寝ちゃって・・・シャワーだけ浴びて着替えてくるから、客間で待ってて〜」
そう言って、ミスティはバスルームへと走っていった。
トリーシャは仕方なく、ミスティが来るまでテレビを見ながら待つことにした。

サアアアァァァァ・・・・
シャワーを浴びている少女は、ポーッとしていたが、何かを振り払うようにかぶりを振った。
(あんな本、読んじゃったから、だよ。トリーシャが、『欲しい』、なんて・・・)
彼女を招き入れた瞬間、感じたことだが、もちろん自分にはそんな趣味はない。
うまく気持ちを落ち着けて、バスルームを出ようとしたが、
『欲しいんでしょ?』
『自分の物にしたいんでしょ?』
どこからか、声が聞こえてくる。聞こえるたびに、赤い髪の少女を、自分の手の中にしたくなる。
「あ、あ・・・」
『あの子もキミのこと、嫌いじゃ無いと思うけどナー』
『本当にイラナイの? あの子の何もかも全部、欲しくない?』
『ホラ、正直にサ・・・あの子はキミの家の中、誰の手も届かない所』
『欲しい物、いっぱいあるんでしょ? いいんだよ、全部持ってっちゃえ』
『キミは魔女。 人のような我慢なんか、することは無いんだ』
「あ・・・魔女・・・うん・・・」
その声が自分の物であると気が付いたとき、彼女はそれを受け入れた。

テレビを見てくつろいでるトリーシャに、ミスティは声をかける。
「遅くなってごめんね」
「あ、うん。勝手にテレビ借りちゃったけ・・・ど!?」
そこまで言って、トリーシャは驚く。当たり前だ。ミスティはバスタオル1枚だったのだ。
「ちょっと着替え忘れちゃって・・・こんな格好だけど・・・ね」
「な、なら早く着替えてよ。びっくりしたじゃない」
そう言って彼女は目をそらす。そんな彼女の顔を覗き込むように、ミスティは前屈みになってきた。
「え、な、何・・・?」
そのままゆっくりと顔が近づいてくる。完全に混乱して、まったく動けないまま、

ちゅ・・・

ほんの一瞬、唇と唇が触れ合った。
それだけで、トリーシャは電撃が流れたかのようになった後、崩れるように倒れてしまった。
その上に、バスタオルを脱ぎ捨て全裸になったミスティが、覆い被さるようになり、手際よくトリーシャを脱がしていく。
当のトリーシャは、頭が霞がかったようにぼやけており、顔は上気し、荒い息をしている。
服を脱がせ、下着姿にすると、ミスティはぎこちなく、右手はトリーシャの未成熟な胸を、左手は彼女の秘密の場所をまさぐりはじめる。
「ん・・・んあ・・・あ・・・」
その行為に、少しだけ腕を動かし、身体を守るようにすると、ミスティはまた口づけをする。
「んん!? ・・・ん・・・」
一度激しく反り返り、その後彼女は何も考えれなくなった。
「トリーシャ・・・かわいい・・・やっぱり欲しい・・・」
そんなことをつぶやきながら、ミスティはトリーシャの身体を、自分のように・・・あるいは、自分の『物』のように・・・やさしく愛撫していく。
「あ、ああっ!? ・・・あ・・・」
トリーシャの嬌声がだんだんと大きくなってきて、絶頂が近いのがわかる。
「トリーシャ・・・私のなんだからね・・・私と、ずっと・・・」
そう言って口づけをする。前のようなただ触れあうキスではなく、舌を絡めるディープキス・・・
ちゅ・・・ちゅぱ・・・くちゅ・・・ちゅぅぅ・・・
「ん・・・ふぅ・・・ん・・・」
トリーシャは、激しい快楽の中で、しかし動きは段々とコマ送りのようになっていく。
やがて、動かなくなった手足の表面に、白い靄がかかる。よくみれば、それが霜であることがわかるだろう。
手足が凍ってからは、それはスローモーションのように、しかし1分足らずで彼女の首から下を同じようにした。
そして、唇に冷たさを感じたミスティが唇を離すと、そこには氷に浸食された烈火の少女がいた。

地下室の最奥、常に氷点下の場所へ、トリーシャだった物を運ぶ。
ゆっくりと扉を閉じると、階段を上がっていく。
いや、飛んでいく。
まだ、彼女の「コレクション」のNo.1が出来ただけなのだから・・・


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