火の魔女

作:永遠の憂鬱


少女は眠っていた。
だが、そこは彼女の部屋ではない。周りは一面岩肌に囲まれた洞窟の、大広間的な場所である。壁際には松明があるがすでに燃え尽きており、、灯りとなっている炎は「そこ」で燃え続けているだけである。
そこで少女は眠っていた。
揺らめく炎が照らす少女の姿は全裸だった。平らな寝台の上で眠っているのだが、腕と脚と首をそれぞれ拘束されており、上から見ると十字架にはりつけられたキリストのようである。
16歳ぐらいであろう少女の容姿は、肩まであるだろう茶色の髪で、背は165cmほど、スタイルもかなりいいほうだろう。
面倒見のよい、やさしいお姉さんタイプであろうことも、寝顔から見て取れる。
そして、眠っている少女の横で、もう1人少女が、台にのってさらに背伸びをしながら、何やら大きな瓶を火にかけて中をかき混ぜている。
いや、女の子と読んだほうが適切かもしれない。見た目からだと10歳ぐらいに見える。正面からみると、瓶からひょっこり顔を出しているように見える背丈は140cmに満たないぐらいで、足元の台を取り除くと頭も見えなくなるだろう。
まぜる棒に引っ張られているような姿はとても不安定で、台から落ちそうで危なっかしい。
瓶をかき混ぜることに集中した顔は、しかしどこかイタズラをしている子供っぽく、燃えるような赤い髪がさらに活発さを際立たせる。
もちろん少女達にも名前がある。瓶を混ぜている「魔女」の名前は「ドローレ」である。
眠っている少女は・・・いや、やめよう。すぐに名前を知る必要はなくなる。「少女」と呼ぶことにしよう。

少女が目を覚まし、ようやく動きが現れる。
「ん・・・」
ぼ〜っとした頭で、起き上がろうとして・・・できなかった。もちろん拘束されているのだから当然である。
「えっ・・・いっ、きゃっ、えっ」
起き上がれず、自分の姿を見て・・・全裸で動けなくされてることに気がつき、一気に目を覚ます。
が、もちろん状況を把握できるわけがなく、混乱するだけである。何故? どうして? 確かに自分の部屋で、パジャマを着て、布団をかけて眠ったはずなのに?
「目覚めはどう? 私の可愛い子猫ちゃん?」
混乱しきっている少女に、ドローレはまるでキザな男が言うような歯の浮く台詞をかける。
顔をこちらに向けることもままならない少女の横に移動して、状況を理解できていない少女の顔をやさしく捉え、
「えっ? んん、んんん〜!?」
そのまま唇を重ねる。見ず知らずの女の子に、いきなり唇を奪われる。少女の混乱はさらに加速する。
ゆっくりと唇の味を堪能した後、ドローレは少女を拘束している寝台についているハンドルを、鼻歌までまじえながら回す。すると、ゆっくりと寝台が起き上がってくる。
「えっ何? えっ、痛、痛い、痛いって!」
ゆっくりと少女の視線が高くなり、やがてまっすぐ立ったような視線になる。だが、拘束はそのままなので、そこに体重がかかってしまう。
起き上がりきって、動きが止まってやっと少し楽になると、目の前に大きな瓶があることに気が付いた。
中には金属のように鈍色をした、ドロっとした液体をたたえていて、棒のようなものが突き刺さったままだ。
と、ドローレが水をすくって飲むくらいの大きさのひしゃくを持って少女の横に現れた。ぴょん、と子供が跳ねるようにして台に飛び乗ると、瓶の中を引っ掻き回して様子を見る。
「な、何を・・・する気、なの?」
少女からの問いに、ゆっくりとひしゃくを持ち上げながら、答える。
「え? 何をするかって? それはね・・・『これ』をお姉ちゃんに〜・・・」
目線のすぐ横、肩の上に、あの液体の入ったひしゃくを突き出され・・・金属の溶ける温度をふと思い出してしまい、少女は叫んだ。
「え、いや、やめてやめてやめてイヤアア!!」
涙まで流して首を振り、しかしまったく動くことができない少女に、ドローレは『それ』をかける。
「いや、いやぁ・・・」
ドロリと、しかし想像していた身を焼く熱さは感じない。表現するなら暖かい水銀をかけられたような、そんな感じ。
だが、もちろんいい気分ではない。奇妙な感覚に震える少女に、ドローレは2杯、3杯と、液体を、全身にまんべんなくかけていく。
「熱くは無いよ。魔法を施して作った特殊な金属だから」
首より下の全身にかけ終わり、震える少女の前で・・・ドローレは着ていたローブを脱ぎ、全裸になる。
そして、全身が鈍色の金属液にまみれた少女に抱きつくように、
「え、え?」
「さぁ、お姉ちゃん・・・何も考えないで、楽しもう?」
そして、少女の身体を愛撫しはじめる。
「えっ、や、あっ、あっ、やめ・・・」
(なんで・・・? 感じる・・・)
ねっとりとした液体まみれた体を、女の子の、しかしたくみな愛撫によって少女はだんだん声を高くなっていく。
しかし、
「あっ、はぁ、あっ・・・えっ? いや、何、これ? 何なの?」
ゆっくりと何かが自分の身体に染み込んでいく感覚、と同時に、身体がだんだん無くなっていくように、感覚がなくなっていく。
「いや、いや、いやああ!!」
馴染んでいく。無くなっていく。そんな感覚に支配され、少女は悲鳴をあげた。
そんな少女に、ドローレはまた唇を重ねる。舌をもぐりこませ、レロレロと・・・魔力を込めて。
たちまち少女の瞳から理性が消えていく。そして、頭からトドメと言わんばかりに液体をかけられる。
「私の魔法は火・・・『熱』と『侵食』。お姉ちゃんは全部『これ』に侵されて・・・全部、私のになるんだよ」
誰が聞くわけでもない説明をしたのち、また愛撫をはじめる。
金属と同化しているにもかかわらず、感覚は残り・・・『魅了』を受けた少女はもはや嬌声を上げ続けているだけである。
「あぁぁぁ! ぁあっ! やあああぁぁぁっ!!!」
少女の秘部へと伸びていた指を激しく動かす。一気に少女は昇りつめ・・・そして、絶頂とともにすべてを『侵食』され、動かなくなった。すべてをドローレに奪われた少女は、そのままドローレの所有物となったのだ。
ドローレは一度少女から離れた。そっと手をかけその感触で、さらに魔力を流して完全に金属へと同化していることを確認する。
そして、もう一度、今度はやさしく抱きついた。
「みんな、みんな私のだからね。お姉ちゃんも、学校のお友達も、先生も、近所のおばさんも、おじさんも、みんなみんな・・・」

だが、彼女が満たされることは永遠に無いだろう。
なぜなら、少女『たち』はみな、彼女にすべてを奪われた、何も無い『彫像』なのだから・・・


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