白い館の誘惑2

作:牧師


 屋根を薄っすらと雪が覆う肌寒い三月の夜に街を風の様に駆け抜ける小さな人影。
百四十センチ程の小さな身体を真っ白な服で包み、頭の両側に髪を束ねた、いわゆるツインテールを風に靡かせ、
ビルの屋上から屋上へと軽やかに飛び回っていた。
「ふふ〜ん、大漁大漁っ。これだけあればたくさんの困ってる人を喜ばせてあげられるよね」
 少女が背負ったリュックには、悪徳金融業者の金庫から奪った札束が詰め込まれていた。

 数日後。

 繁華街の片隅に在る白い大きなビル。
地下一階の店に続く階段を進むと、白い館と書かれた大きな看板が掛けられている。
 その日、その店の一室である物のオークションが行われていた。

「さあ、次の蝋人形は二体セットでの出品となります」
 この店のオーナーの鏡花が指示をすると室内に十四、五歳位と思われる二体の少女の蝋人形が運び込まれた。
一人は少し幼い印象を受ける少女で、恍惚とした表情でもう一人の少女をみつめた顔を忠実に再現してあった。
振り乱されたり肌に張り付いた髪の毛の一本一本や、白魚の様な指先、スレンダーな胸に薄っすらと浮き出たアバラ、
足の裏のしわに至るまで細かい所にも一切の妥協無く作り上げられていた。
 もう一人の少女は少し大人びた顔はしている物の、まだ完全には幼さは抜け切っていなかった。
幼い顔の少女の腰に手を回し、もう一方の手をまるで何かを握っていたような形をさせて少女の秘所の前に添えていた。

「作品名は、目覚めたばかりの甘い関係。百合少女達です。処理済の為、価格は二千万円からスタートします」
 鏡花が入札を開始を宣言すると、中央にある電光掲示板の表示金額が凄まじい勢いで跳ね上がって行く。
競り合いは三十分程続き、二億六千四百万円で落札された。
 その後も十人程の少女の蝋人形がオークションに掛けられ、それぞれ高額で落とされていった。
この蝋人形が何であるのか、オークションに参加した者達は当然理解していた。

 鏡花の言う処理済みとは、淫獣の力で蝋人形に変えた少女達に触れる事で、間接的に淫獣に精気を奪われ、
蝋人形に変えられない様に、淫獣の力を押さえ込む事である。
 オークションに出される時、この処理がされているかどうかで、価格に十倍以上の差が生じる。

 淫獣とは、淫は陰に通じ、陰は闇と同意、この世ならざる闇より産み落とされ生態は殆どが謎に包まれる獣。
様々な生き物の姿を模し、その殆どが、人間など精神的に進化した生物を特殊な能力で快楽に誘い精気を奪う事、
吸精した対象を石等に(結果的に)変える能力を持つ事、高い再生能力と催淫能力を持つ事位しか伝えられてはいない。

「今回は処理済の娘達ばかりだからいい値がついたわ、お金は金庫室に運ばないといけないわね…」
 鏡花は部下を連れて更に地下にある金庫室に、今回のオークションで得た十億を超える札束を運ばせようとしていた。
事務室の奥にある隠し階段を降り、廊下を進んだ所で、金庫室の前の小さな人影の存在に気がついた。
「あらあら、かわいい子猫ちゃんね。どうやってここに潜り込んだのかしら?」
 鏡花に気がついた人影はドアから離れ、二メートル程の距離を取って立ち止まり、鈴の音の様な声で話しかけてきた。
「私は怪盗シルク。悪い人から奪ったお金を、貧しい人や困った人に返してあげる正義の泥棒よ!!」
 シルクと名乗った少女は鏡花を指差し、それだけを言い放った。

「泥棒ね…、あなた知ってる?お金って十両盗むと死刑になるのよ。今の価値で言うと50万円位だったかしら?」
 シルクのリュックの中には、たった今金庫から奪った数百万を超える札束が詰まっている。
リュックの膨らみ具合を見て鏡花はその事を見抜き、怪しい笑みを浮かべてシルクに話しかけていた。
「そ…そんな昔の事なんか知らないもんっ!!どうせこのお金だって違法行為で人を苦しめて稼いだお金なんでしょ?」
「別に違法行為なんてしていないわ、盗んだ訳でも違法な金利で稼いだ訳でも無いわ」
 確かに人を蝋人形に変える事も、元は人間だった蝋人形をオークションで売り捌く事も確かに法律に違反してはいない。
「そんな事、信じられる訳無いじゃない!!」
 シルクはピンポン球の様な物を腰から取り出し、それを床に叩き付けた。
ピンポン球の様な物が床で弾け、あたり一面を白い煙が覆い、その為に数センチ先すら見えない状態になった。
『私は特殊なマスクをしてるから見えるんだけどね…。この隙に逃げ…え?』
 煙に紛れてシルクが鏡花の横をすり抜けようとした時、まるで金縛りにあったように体が動かなくなる。
辺りを覆っていた煙が晴れると、走り抜けようとした姿のままで動かないシルクと、一枚の札を持った鏡花の姿があった。
「祓い衆謹製呪縛の札、コレは淫獣だけじゃなく人間にも使えるのよ」
『祓い衆?淫獣?この人何を言って…、あ…なんだか眠気が…』
 鏡花の言っている事を、シルクが理解しようとするより、睡魔がシルクを夢の中へ誘う方がはやかった。
 鏡花は部下にオークションで得た金を金庫に納める用に命じると、眠ったシルクを抱え、どこかへ連れ去った。

 一時間後、シルクは妙に違和感のある肌寒さで目を覚ました。
シルクが薄っすらと眼を開けると、石造りの床や見慣れない器具が並べられたテーブルが目に入った。
『ここ…何処?それに胸や股間がなんだかやけにスースーす…、ちょっ…』
 シルクはその時ようやく自分が裸にされた上に、手足をロープで縛られ、X型の壁に貼り付けられている事に気がついた。
「ようやくお目覚め?貴方が処女じゃなかったら寝ている間にコレを大事な場所に突っ込んでも良かったのよ」
 そういうと鏡花は台の上から太い蝋製のディルドーを右手に取り、左手の指先でシルクのワレメをそっと一撫でした。
「今まで純潔を護って来たご褒美に、最高の快楽を教えてあげるわ…」
 鏡花はシルクに優しく口付けすると、テーブルの上から三十センチ程の長さの鳥の羽を手に取り首筋を撫で始めた。
まるで舌を這わせるかのように、丁寧に脇腹や臍の周りに羽根を滑らせ、腰まで這わせた後は何度もそれを繰り返した。
『やぁっ…、これくすぐったい…?ううん、違う、なんだか体が熱くて…きもちいいっ』
 初めは羽根の動きから逃れようと抵抗していたシルクだったが、やがて鏡花に身を任せ、齎される快楽を楽しんでいた。
まだ誰の進入も許していない秘所の奥からは、トロトロと銀色の蜜を滲ませ、白磁の様な肌を桜色に変えていった。

 全身を羽根で愛撫する鏡花は、唯一、シルクの小柄な身体に似合わない大きな胸だけには羽根を這わさずにいた。
瞳を潤ませ、熱い息を吐くシルクはその事が気になっていた。
「どうして?私の胸…、気にならないの?」
 鏡花はシルクに優しくキスをすると、ゆっくりと耳元に口を近づけた。
「嫌いなんでしょ?男の子からじろじろ見られたり、他の女の子から羨ましがられたりするその大きな胸」
 ツインテールの一房を指で優しく梳きながら、鏡花はシルクに語りかけていた。
シルクは周りの友達が今まで誰も気がつかなかった悩みに、鏡花が僅かな時間で気付いてくれた事が嬉しかった。
「あの…、胸も触って下さい。お姉さんになら私、触って貰いたいです…」
 顔を真っ赤にしてそう呟いたシルクに鏡花はもう一度キスをすると、優しい微笑を浮かべてシルクの頬を撫でた。
「鏡花。私の名前は鏡花よ。それじゃあ胸も気持ち良くしてあげるわ」
 そういうと鏡花は、羽根をシルクの豊かな胸の周りから少しずつ撫で初めた。
齎される快楽の為にシルクの乳首は硬くなってピンと立ち、大きな胸は羽根が這わされる度にプルプルと揺れていた。

「そろそろコレを味あわせてあげる。少し熱いけど直ぐに気持ちよくなるわ」
 鏡花は赤い大きな蝋燭を手に取ると、その先端に火をつけ、融け落ちる蝋をシルクの肩や胸、臍の周りに垂らし始めた。
「熱いっ!!鏡花さん何をして…熱いっっ…、あっ…あれ?蝋が落ちた所がなんだかジンジンして気持ち良くって…」
 鏡花はシルクの反応を楽しみながら、シルクの二の腕やフトモモ、胸の谷間に赤い雫を垂らし続けた。
シルクの大きな胸を熱い蝋が落とされ、赤い蝋がすっぽりと包み込む頃には、シルクは幾度も軽い絶頂に達していた。
その為にシルクは上下の口から涎を垂らしていたが、手足を拘束しされている為に、それを拭う事もできなかった。
「そろそろいいかしら?とっても敏感になってるかわいい肉豆を熱い蝋でコーティングしてあげるわ」
 鏡花はシルクの下腹部に蝋燭を移動させると、陰核の僅か数センチ上から溶けた蝋を滴らせた。
「き…鏡花さん!!いやぁぁっ!!頭が真っ白にっ、なにコレ?何か来る!!あ…、ひゃああああああん」
 初めて齎される頭の中を白く染上げる程の絶頂に、シルクは身体を弓の様にしならせ、愛液を辺りに飛び散らしていた。
やがて激しい絶頂の波が過ぎると、身体をぐったりさせ、シルクはそのまま夢の中へと落ちていった。

 一時間後、シルクはベッドの上で目を覚ました。
 全身を飾っていた赤い蝋は綺麗に剥ぎ取られ、汗や愛液で汚れていた身体は、布で拭われていた。
着せられている服は白い館に忍び込んだ時の物だったが、洗濯までしてくれているようだった。
「気がついたわね、はい荷物、体が動くならもう帰って良いわ」
 鏡花に手渡されたリュックの重さにシルクは驚いた。
金庫から奪った数百万にも及ぶ札束が、そのまま入ったままにされていたからだ。
「こういうことはもうやめた方がいいわ、こんな事をしても貴方の為にも、盗んだ金を渡される人の為にもならないわ」
 そういうと鏡花は無言でリュックを抱えるシルクを出口まで案内し、微笑みながら呟いた。
「また気持ち良くなりたいなら、いつでもここにいらっしゃい」

 一週間後、白い館のロビーにシルクの姿があった。
ただし、服は泥棒をしていた時と違い、飾り気の無い白い服ではなく、ピンクを基調としたワンピースを着ていた。
「あの…、わたし、鏡花さんに一言もお礼を言ってなくて…それで…」
 部屋の奥から鏡花が出てくると、シルクは真っ赤にした顔を俯かせて、小さな声で呟いていた。
鏡花は、それがシルクの本当の目的ではない事にも気がついていた。
「いいのよ、そんなこと。せっかく来たんだからお茶くらい飲んで行きなさい」
 微笑む鏡花を、シルクは何かを期待するような眼差しでみつめながら、白い館内にある鏡花の私室へとついていった。

 部屋に着いたシルクと鏡花は、初めは紅茶を飲みながら、鏡花がシルクの悩み事などを聞いていたが、
やがて鏡花に誘われ、シルクは鏡花のベットの上で、鏡花と身体を重ねていた。
「んっ…、どう?ここを舐められるのは初めてでしょ?」
 シルクのピンク色の襞を、鏡花は丁寧に一枚ずつ舌で舐め上げ、膣内に舌を挿入し、内部にたまった蜜を啜り上げる。
鏡花がチュルチュルと愛液を啜る度に、シルクは身体を震わせ、軽い絶頂に達していた。

 身体を重ねはじめて三十分程経った時、鏡花はシルクの耳元で囁いた。
「このまま貴方を永遠に気持ち良くしてあげられる方法があるわ。シルク、貴方蝋人形にならない?」
 今まで鏡花の愛撫で齎された快楽の為、シルクはまるで夢の中でその言葉を聞いているようだった。
「貴方はオークションに出さずにずっと私の側に置いてあげるわ、蝋人形になるのが嫌ならこのまま帰ってもいい、
でも、そのときはもう二度と此処に来てはいけないわ」
 シルクは一瞬だけ、帰るという選択を頭の隅に浮かべた、しかしそれは鏡花に二度と会えないという事だった。
出会って僅か一週間しか経っていなかったが、シルクは鏡花の事を心の底から慕っていた。
 それだけに、鏡花に二度と会えないという事は、シルクには堪えられない事だった。
「あの…、鏡花さん、私…、蝋人形になっても良いです、だからずっと側に…」
 鏡花はシルクにキスをすると、室内にある机の引き出しから蝋製のディルドーを取り出し、ベッドに戻ってきた。
「いい子ね、これで貴方の純潔を捧げると、貴方の身体は少しずつ蝋へと変わってゆくわ」
 別に処女でなくとも、蝋製のディルドーを膣内に挿入すれば、齎される快楽と共に蝋人形に変わるのだが、
あえて鏡花はシルクにそう伝えた。
 鏡花はシルクの甘酸っぱい匂いの愛液の滴るピンク色の膣口に、真っ白い蝋のディルドーを宛がうと、
ズブズブと膣内に挿入し始めた。
 少しディルドーを押し込んだ所で処女膜がディルドーの進入を拒んだが、鏡花はそのまま一気に奥まで貫いた。

「鏡花さん!!これ、すごすぎ…、ひゃあぁぁああぁん!!イッちゃいますぅぅぅぅっ」
 ディルドーを最深部に挿入された瞬間、シルクは脳裏を真っ白に塗り潰され、目の前にノイズが走ったかと思うと、
襲い来る快楽で身体を震わせながら、終わりの無い絶頂の濁流に飲み込まれていた。
 シルクの体は子宮や膣内から真っ白い蝋に変わり、そのまま下腹部やフトモモに染み込む様に蝋化は広がっていく。
腰周りが蝋に変わった為、シルクは体の向きを変える事も出来ず、絶頂を迎える度に、プルプルと体を震わせていた。
 鏡花は蝋に変わり行くシルクの下腹部からヘソまでを、指先でナメクジが這う程の速さでゆっくりと撫で、
瞳を潤ませて快楽に溺れたシルクの顔を、愛しそうにみつめていた。

 鏡花はシルクの豊かな胸が蝋に変わる時、丁寧に手で張りのある美しい形を整え、真っ白い蝋に変わった後、
一人、その形の美しさに魅入っていた。
「あぁ…、あぁん…っ…」
 シルクの顔まで蝋化が進んだ時、鏡花はシルクの頬を優しく撫で、頬や額に張り付いた髪の毛を一本一本剥がしていた。
細い指先は、シーツを掴んだままの形、唇は小さく開いたまま、瞳も半分開いたまま、白い蝋へと変わっていた。
そしてシルクの瞳や髪の毛の一本も残らず完全に蝋に変わり果てた後、ようやくシルクの秘所からディルドーを引き抜いた。
ディルドーが引き抜かれた後も、シルクの小さなアソコは、大きく口を開けたままになっていた。
「素敵よ…、直ぐに淫獣を完全に封じて、完璧な処理をしてあげるわ…」

 鏡花の持っていた蝋製のディルドーの正体は白蝋蟲型の淫獣だった。
白蝋蟲型の淫獣は、触れる者を快楽に導き、精気を吸い上げて蝋に変える事が出来た。

 数時間後、鏡花は処理の完了したシルクを、鏡花の私室から繋がる隠し部屋に運び込んだ。
そこには様々な姿で蝋人形に変えられた、数十体の少女達が並んでる。
 数百年前に滅んだとある国の姫や、鏡花に魅入られた美しい街娘が等しく快楽に溺れた表情で蝋人形に変わっていた。
「シルク、今日から貴方の居場所は此処よ、私の身が朽ちるまで永遠に…」
鏡花はシルクの頬を撫で、優しく口付けをすると、そのまま暫く、蝋になったシルクの身体に舌を這わせていた。

 数ヵ月後、白い館で恒例となったオークションが開催されていた。
平凡な日常に満足できずに、興味本位で白い館に踏み込んだ新妻、好奇心から白い館に訪れた少女、
他のSMクラブに出入りしていたが、白い館に手を出した為に蝋人形に変えられたS嬢…。
 数人の女性達がオークションで競売に掛けられていたが、その中にシルクの姿は無かった。


戻る