新魔戦記20XX 第一話 人の作りし希望

作:牧師


200X年、人間界に対し、魔界の住人で、魔族と呼ばれる異形の者が静かに侵攻を開始した。

これに対抗し、神界と呼ばれる世界からは無数の魔法の指輪と僅かな宝珠、
妖精界と呼ばれる世界から、妖精界に伝わる魔法の指輪を携えた一人の妖精が人間界に送り込まれた。

神界と妖精界の力を借り、純粋な心の持ち主の変身した魔法少女達や魔法剣士の活躍で、
魔族は本格的な侵攻を諦めざるを得ない状況に陥った。

数年後、魔界から逃亡した下級魔族や、無数に送り込まれた物型魔族による被害が急増する。
力を持たない人達は何も知らないまま、魔族に襲われて精気を吸われ、体を石に変えられていった。

この事を受けて、神界は再び魔法の指輪を送り込み始める。
以後、泥沼とも言える魔族と魔法少女達の戦いが続いて行く。

20XX年、魔界と呼ばれる世界である異変が起きた。
今までの魔族と異なる【新種】の魔族が誕生したのだ。

主人格の【新種】魔族の下、組織的に動き、精気を吸い、魔界の一地域を制圧するまでに至った。

勢力を伸ばした【新種】が更なる獲物を求め選んだ世界、それが人間界だった。

だが、今度は人間側もただ狩られるだけの羊を演じる事は無かった。


街外れの半壊した大型電気店の跡地。
此処にひずみの入り口がある事が調査により判明した。
甲高いブレーキ音を響かせて、数台の装甲車など特殊な車両が次々に停止する。
まるで壊れんばかりの勢いで車のドアを開け、五台の装甲車から四十人程の女性が飛び出した。
大隊長の神崎雅(かんざきみやび)がひずみの入り口前に立ち、隊員の行動を見守っている。
「A小隊、B小隊、ひずみに突入する準備をしろ。C小隊とD小隊は此処で待機」
特殊素材で出来たネイビーカラーのボディアーマーとプロテクターに身を包んだ女性隊員達が、
それぞれ、手に特殊弾の装填された小銃を構え、ひずみの前に整列する。
「入手した情報に寄れば、ひずみにいるのは中級魔族一体、下級魔族五体の計六体。
 殆どが下級魔族とはいえ手強いのは間違いない。特に中級魔族の遠隔魔法に気をつけろ」
フルフェィスのヘルメットに隠れている為、隊員の表情は伺う事は出来ないが、
唇がカサカサに乾く程、緊張している事に間違いはなかった。
先日、別の地区でひずみに突入した隊員十名が全員、物言わぬ石像に変えられ、回収されたからだ。
「我々がやらなければ、人には他に魔族と戦う手段は無い。各員、全力で取り組め、以上。突入しろ!!」
A小隊十名、B小隊十名の女性隊員達が次々にひずみに突入する。

そこで隊員達が見た物は、洋風の巨大な屋敷だった。
「こんな物がひずみにはあるのか、各小隊、隊列を崩すな。慎重に建物内部に侵入しろ」
隊員は慎重に扉に取り付き、再び隊列を整えた。
ハンドシグナルを送り、タイミングを合わせ、各小隊が勢い良く玄関の扉を開け、屋敷内部に侵入した。

玄関を開けると豪華な内装のホールが広がっていた。
左右の壁面に螺旋状の木の階段、天井には無数の蝋燭で照らされ、眩い光を放つシャンデリア。
壁に飾られた美しい風景画、手に槍やランスを持った白銀で出来た中世の鎧、台座に飾られた花瓶。
そして、ホール中に無数に立ち並ぶそれに、隊員達は気がついた。
「なっ・・・、この宝石像!!この女の子達皆・・・。許せない、必ず魔族を倒してみせるわ」
隊員が見た物は、裸にされ、ルビーやエメラルドなどの宝石像に変えられただけでなく、
まるで彫像の様な扱いでホールに飾られた、変わり果てた少女達の姿だった。
彼女達は快楽、悲しみ、絶望・・・、様々な表情で助けが来るのを待ち続けていた。
「魔族の反応・・・、近いわ、このホールに二体いる」
全隊員が辺りを見渡す。
空気がまるで凍り付いたかのように張り詰める。
隊員達は、自らの背筋に冷たい汗が流れるのがわかった。
「ん〜、激しいノックをして入ってきたのはだぁれ?おねえちゃんたちかな?」
その時、二階に続く階段から一人のパジャマ姿の少女が眠そうな顔で降りてきた。
百二十センチ程の小さな体、抱き締めたら折れてしまいそうな細い腰、膝まで伸びた長い金髪。
眠たそうな半開きの瞳は、南国の海を思わせるような蒼、血の様に赤い唇、真っ白な肌。
まるで精巧に作られたフランス人形が歩いているようだった。
「あの少女も魔族なの?センサーの故障じゃないわよね?」
A小隊の隊長の東祥子(あずましょうこ)が、B小隊の隊長の榊唯菜(さかきゆいな)に確認した。
「私のセンサーの反応は・・・、魔族に間違いありませんわ。B小隊、射撃準備をして下さい」
「A小隊も射撃準備をして、合図をしたら一斉掃射。急ぎなさい」
祥子と唯菜が指示を飛ばすと、全隊員が一斉に少女の姿をした魔族に銃口を向けた。
「ふぅん・・・、そんなおもちゃでシャルルを撃つんだ?番人さん、あいてをしてあげてね」
シャルルが合図をすると白銀の鎧のうち、ランスを手に持つ二体がゆっくりと動き始めた。
「さ・・・最初の二体分の反応はこの鎧だったのね!!A小隊、右の鎧に一斉掃射!!」
「B小隊は左の鎧を狙って下さい。兆弾は問題ありませんから遠慮なく行きましょう」
各小隊がそれぞれ目標の魔族に向かって一斉に射撃を開始する。
タタタッタタタッ・・・、カチャッ、カチッ、タタタッ・・・と射撃と弾倉交換の音が止め処なく続いた。
鎧型の魔族に無数の黒い穴が穿たれていく。
「これだけ撃っているのにまだ倒せないの?あっ・・・」
ガチャンと大きな音を立て、右の鎧型魔族が膝から崩れ落ち、そのまま黒い灰の様になり、消え去った。
数秒後、左に居た鎧型魔族も同じ運命を辿った。
射撃音がピタリと止み、僅かな時間、静寂が訪れた。
「そんな・・・。ジェナ、ラファ、サシャ。おねえちゃん達を石にしちゃえ」
シャルルが呼ぶと、メイド姿の三人の少女が祥子達の前に姿を現した。
「私はジェナと申します」
「私はラファと申します」
「私はサシャと申します」
三人は両手でスカートの裾を軽くつまんでで持ち上げ、声を揃えて挨拶をした。
その優雅な身のこなしに、隊員は彼女達が魔族である事を一瞬忘れた。
そして、ふわりと舞ったかと思うと、ジェナ、ラファ、サシャの三人は音も無く、隊員との間合いを詰め、
フルフェィスのヘルメットの額に指を当て、微笑みながら呟いた。
「ひやあああああん」
「快楽のルビー、ジェナが心まで蕩ける様な快感でルビーにして差し上げます」
「うわあああっ、やめて、来ないで!!」
「恐怖のサファイヤ、ラファが背筋も凍り付く程の恐怖の中でサファイヤにして差し上げます」
「あっ」
「驚愕のエメラルド、サシャが何が起きたか理解できない位一瞬でエメラルドにして差し上げます」
三人の魔族が額から指を離すと、宝石に変わっていたボディアーマーとプロテクターが粉々に砕け、
中から快楽、恐怖、驚愕の表情を湛え、宝石像に変わり果てた裸の女性達が現われた。
「あああっ浅香さん、広尾さん、河野さん・・・、此処に並んでる少女達はこの魔族の仕業だったのね」
「許せませんわ、B小隊、一番近い魔族を包囲。特殊ナイフによる近接戦闘で対応して下さい」
唯菜が指示を飛ばすとB小隊はボディアーマーから一斉に特殊ナイフを引き抜き、魔族に斬りかかった。
しかし、相手が人の姿、しかも少女である事が隊員達の心に躊躇いを生んでいた。
襲い来る特殊ナイフを軽々とかわし、魔族は一人、また一人と次々に隊員を宝石像に変えていった。

『このままだとみんな宝石像にされてしまう。私がやらなきゃ・・・』
祥子と唯菜の次に古参の隊員である源さやか(みなもとさやか)が覚悟を決め、持っていたナイフを捨て、
刃渡り四十センチ程の別のナイフを構えた。
「あれは・・・、源さん、はやまっては駄目!!」
祥子がさやかの手に握られたナイフに気がつき、彼女の行動を止めようとした。
「はああああっ」
さやかはラファに体当たりし、ナイフを深々と差込むと、柄の部分を九十度程回した。
「いたっ・・・、ふふっ、こんな物で魔族の私が倒せるとお思いですか?」
ラファは余裕の表情でさやかの体に手を触れ、サファイヤの宝石像に変えようとした。
「三・・・二・・・一、さよなら」
そういった瞬間、ナイフの刃内部に仕込まれた小型特殊爆弾が炸裂し、ラファを内部から吹き飛ばす。
「ぎゃあああっ」
引き裂くような悲鳴をあげ、魔族の少女のうち一人が灰の様になり、崩れ去った。
その傍らには、焦げ付いたボディスーツに身を包んださやかの姿があった。
「源さん、源さん・・・、返事をして・・・」
祥子がさやかに通信を送ると、かすかに声が聞こえた。
「隊長・・・、大丈夫・・・です。丈夫なボディアーマーのおかげで助かっちゃいました・・・」
その時、ホールで飾られていた少女のうち、恐怖の表情でサファイヤに変わっていた少女が元に戻り、
パタパタと力なく床に倒れていった。
「A小隊、今から全力で少女達とさやかをひずみから救出して。急いで!!」
「B小隊は援護に当たって下さい、彼女達に魔族を近寄らせては駄目ですわ」
祥子と唯菜は、まだ無事な隊員に的確に指示を送った。
この時点で宝石像に変えられていない隊員は、祥子と唯菜を含めても、A小隊五名、B小隊四名。
戦闘を継続する事も困難な情況だった。
「ふふっ、こんな時でも他人の心配?人間ってホントおかしいよね」
お互いを庇いながら元に戻った少女達を救出する祥子達を見て、シャルルはクスクスと笑っていた。
「頑張っているおねえちゃん達に少しだけ時間をあ・げ・る」
シャルルは隊員の一人芹沢円(せりざわまどか)に後ろから抱き付くと、小さな声で術を発動させた。
「え?きゃあっ」
隊員のボディアーマーが一瞬で小さなトパーズの欠片になって崩れ落ち、一糸纏わぬ姿にされた。
「芹沢さん!!あの魔族は一体何をする気なの?」
唯菜がシャルルに向かって特殊ナイフを構えると、他の隊員たちもそれに習った。
「うふふっ、シャルルがこのおねえちゃんを愉しんでいる間だけ、元に戻った子達を助ける時間をあげる。
 嫌なら今すぐ、このおねえちゃんをトパーズに変えて、ジェナとサシャに再び襲わせ始めるよ」
祥子達にとって究極の選択だった、提案を受ければ仲間である円を見捨てる事になる。
祥子と唯菜が判断を迷うと、円は微笑みながら思いを告げた。
「隊長・・・どちらにしても、私はもう助かりません、だから・・・」
「芹沢さん・・・、ごめんなさい。わかったわ、貴方の好きにしなさい」
ヘルメットの下で唯菜は涙を流しながら、他の隊員に指示を飛ばし、倒れている少女達を運び始めた。

「柔らかい、ん〜っ、ぷにぷにしてて、とぉ〜ってもいい感触」
シャルルは正面に回り、円の胸を両手で揉み扱き、ぷにぷにとした肉の感触を楽しんだ。
「あれ?気持良くないのかな?そうだ、ジェナ、サシャ、二人で奉仕してあげて」
シャルルが命じると、メイド姿のままサシャは後ろに回りこみ胸を優しく揉み始め、
ジェナは円の股間に顔を埋めた。
「んっ、ちゅ、ちゅる、んっ・・・」
シャルルは円に軽くキスをすると、そのまま舌を絡め、唾液を啜り、徐々に激しいキスをしていく。
「はいシャルル様、形の良い素敵な胸です、では優しく奉仕させて頂きます。
 今はこんなに柔らかいのに、もう直ぐシャルル様に硬いトパーズにされてしまうのね」
サシャが優しく胸を揉むと、それだけで円に、意識を融かされてしまいそうな快楽が駆け抜ける。
『きえるっ、蕩けて消えちゃうっ、こんなに気持良いの初めて』
悶える円に構わず、ジェナは血の様に赤い舌で膣口のヒダを舐め始める。
「かしこまりました、では失礼します、んっ、ちゅぴっ・・・、ちゅっ、ちゅるっ・・・。
 んっ、おいしい、とっても素敵な味の蜜です」
わざと円に聞こえる様に大きな音を立て、愛液を舌で掬い啜り上げる。
その度に胸だけで無く、下腹部からも意識を白く塗り潰す様な快楽の波が円に押し寄せてきた。
『すごいっ、今まで味わった快感なんて、全然問題にならないくらい!!もっと!!もっと感じさせて!!』
快楽が押し寄せる度、円の手足が指先からキラキラと輝くトパーズに変わっていく。
「ほらほらっ、おねえちゃんの体がトパーズに変わっていくよ。怖い?それとも気持ち良い?」
シャルルが精気を吸い上げた事により、円の手足は付け根の部分まで宝石化していた。
宝石化した手足の筋肉は伸縮しない為、僅かに体を動かすと筋肉が引っ張られた格好になり、
足が攣った様な痛みが襲ってくるのだが、今の円にはそれすらも快楽に変えられていた。
「き・・・気持ちいいですっ、ああっ、シャルル様もっと良くしてくださいっ」
円は完全に理性を失い、シャルル達の齎す快楽に支配されていた。
「ふふっ、しょうじきだねっ、じゃあ最高の快楽の中で完全にトパーズの宝石像になっちゃえ。んっちゅっ」
シャルルが円に再びキスをすると、唇が触れた瞬間、今までとは比べ物にならない快感が駆け抜ける。
円は体を弓形にしならせ、瞳を大きく開いた表情のまま、一瞬でトパーズの宝石像に姿を変えた。
トパーズの宝石像に変わった円を、シャンデリアのオレンジ色の光が反射して美しく輝いていた。

「綺麗な宝石像の完成っ。でもその間に倒れてた子達はみんな運び出したみたいだね」
シャルル達の居るホールから、元に戻っていた少女達の姿はなくなっていた。
「ふふっ、あのおねえちゃんたち。戻ってきたら気持ち良く宝石像にしてあげないとね」
シャルルはトパーズの宝石像に姿を変えた円に後ろから抱きつき、硬くなった豊かな胸を撫で回していた。
ジェナとサシャはそれぞれ左右に立ち、次の戦闘に備えていた。

「準備は出来ましたか?」
ひずみの入り口前で三人の少女が特殊スーツの状態を確認していた。
祥子や唯菜達の装備とはあきらかに違い、白いフルフェイスのヘルメット、半球形の白いブレストプレート、
背中にはバックパックに四本のブースター、腰、足首にも小さめのブースターが覗いていた。
「小型無限加速炉作動、退魔結界展開、反重力フィールド作動、システムオールグリーン、オールオッケ〜」
一際小柄な少女が軽い口調でシステムを確認していく。
「稼働時間は10分が限界、その時間内で魔族を倒すしかないわ」
三人の少女は背中のブースターを軽やかに作動させながらひずみ内部に侵入して行く。
「あれが対魔族用個人結界武装・・・、完成していたなんて・・・」
その後姿を雅、祥子、唯菜の三人がみつめていた。

つづく


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