王国の興廃 後編

作:牧師


夜明けと共に、魔族による人間狩りが始まった。

王城に程近い城塞都市ファルト、その四方の門から五人の魔族が進入して来た。
「止まれ、書状は持っているのか?あっ」
ゴーナの前に立ち塞がろうとした門番が、精気を吸われ、灰色の石像に変わった。
衛兵が手に槍や弓を構え、ゴーナの前に立ち並ぶ。
「貴様何者だ!おとなしく此処から立ち去れ」
衛兵の隊長と思われる男がゴーナに言い放つ。
「邪魔よ」
ゴーナの目の前の空間にヒビが入り、現われた巨大な眼から放たれた光りに射抜かれ
衛兵達は一人残らず灰色の石像に姿を変えた。
ゴーナが門を潜り抜けた後にも、ピキピキと体が石へ硬化して行く音が響いていた。

北の門から侵入したのは、小さな女の子の姿をした魔族だった。
「さあ、街を石像の並ぶスイカ畑に変えてあげるね」
女の子の姿をした魔族が呪文を唱えると、スイカの蔓が地面を緑で埋め尽くしながら
瞬く間に延びていく。
蔓に触れた人は全身を絡め取られ、蔓が触れた部分から次第に灰色の石へと変わった。
「何?家の中に蔓が入ってくる。ああっ、体が動かない」
扉の下を潜り抜け、緑の蔓がメイアの家に侵入してきた。
家に侵入したスイカの蔓は、メイアの全身を瞬く間に絡めとり、徐々に石に変える。
メイアの耳にパキパキと体が石化する音が聞こえ、さらに恐怖を煽る。
「いや、誰か助けて!石になんてなりたくない」
頬を伝う涙もスイカの葉に落ち、小さな石の欠片にされて行く。
やがて、全身を蔓に絡め取られ、メイアは灰色の冷たい石像に姿を変えた。
視界を埋め尽くした蔓が街の至る所で人を襲い、絡め取られ石に変えられた人達が
灰色の瞳で変わり行く街の姿をみつめていた。
「契約だから魂を吸い出して、スイカの実に変えないで、あ・げ・る」
次第に小さくなる悲鳴、家族の助けを請う懇願、自らの身に起きた事に対する狼狽、
それらの声を、楽しそうに女の子の姿をした魔族は聞いていた。

「北と南はダメだ、東に逃げるぞ!!」
男が家族を連れて、全力で走って逃げていた。遠くでは人々の悲鳴が聞こえる。
「一体あいつらは何なんだ。それに軍は何をしてやがる」
既に王城が落ちたことを知らない男が、救援に来ない軍に腹を立てていた。
「此処は無事か、アリア、エーティ助かるぞ」
男は妻子に向かい安堵の言葉を掛けた。
目の前の門の周りに魔族の姿は無く、門が開放されていた。
「門を抜けた、アリア、エーティ助かったんだ」
男が側にいた妻子に話しかけた時、地面から現われたスライムが三人の体を包んだ。
「うごっ」
「ゴボッ、ぱ・・・ぱぱ、まま」
「貴方、エーティ」
三人の体はスライムに服を溶かされ、ゆっくりと石に変えられて行った。
「お願いだから、エーティは見逃して」
アリアの願いも虚しく、体の小さなエーティは最初に灰色の石像に完全に変わる。
そしてアリア達もその後を追う様に、体を冷たい灰色の石に変えた。
三人の周りにはスライムに石像に変えられた、無数の犠牲者が立ち並んでいた。
「逃げられると思うたか?」
老人の姿をした魔族の手に、プルプルと震えるスライムが現われ、地面に落ちていた。
スライムは地面と同化して、次の獲物が掛かるのを待ち構えていた。

「この街から生きて逃げれると思わないで下さいよぉ」
西の門出待ち構えていた魔族は、か弱そうな女の姿をしており、
此処なら突破可能と、期待した人々が数百人程集まっていた。
「この位集まれば何とかなるな、おい皆!!あいつを倒して脱出だ」
男が号令を掛けると、人々は手に斧や棍棒などを持ち、魔族に向かっていった。
「酷いです、私になら勝てるとおもったんですねぇ」
魔族の女は少し怒った顔をし、呪文の詠唱を始めた。
「刹那の永遠、静止する時ですぅ」
魔族の女が黒い球を放つと、球から半径数十メートルの空間が、暗い静寂に包まれる。
空間が元に戻ると、そこには人々が止められた格好のまま石像と化していた。
「たくさんの精気、おいしかったですよぅ」
魔族の女は立ち並ぶ無数の石像に向かって、にこやかに微笑んでいた。

「お母さん」
「いいから、此処から出てはダメよ」
二人の娘を床下の倉に隠し、母親は息を殺して辺りの様子を伺っている。
「神様、この子達をお助け下さい」
母親は娘の無事を心から神に祈った。街の彼方此方から悲鳴が起きては消えていた。
「こんな事が起こるなんて、夢なら覚めて」
「夢では無い」
いつの間にか母親の後ろに、男の魔族が立っていた。
「魔族!!」
母親が振り返り、後ろに下がると、男の指がミミズの様に伸び、母親を絡み付く。
それは強引に母親の上下の口に潜り込み、精気を吸い始める。
「んっ、ふっ、うぅん」
母親は着衣ごと石に変えられて行く。
必死の抵抗も虚しく、母親は全身を石と化して動かなくなった。
「こんな物か」
魔族の男は石像に変わった母親から触手を離すと、床下の倉に触手を伸ばす。
「お姉ちゃん」
「んっ、痛い」
情け容赦なく、床下に隠れた二人の娘に触手を潜り込ませ、精気を吸い上げる。
精気を吸い尽くし、二人の娘を服ごと冷たい灰色の石像に変えた魔族の男は、
周囲の家にも進入し、隠れていた人々を見つけ、精気を吸い尽くして石像に変えた。

太陽が中天に昇りきる前に、街には誰も動く人が居なくなっていた。
街中の人間の精気を吸い尽くした魔族達は、他の町や村を目指し、散って行った。

日が沈み、夜が来ても魔族の人間狩りは続いていた。

「ふふっ、眠ってるみたいですね」
小さな村前で女の子の姿の魔物がクスクスと笑っていた。
「眠りに就いたままで、苦しまない様に石にしてあげます。石化の夢見」
女の子の姿の魔物が呪文を唱えると、薄っすらと靄が村全体にかかる。
「んっ、ああっ」
一人の少女は夢の中で体が石になっていく体験をしていた。
石化が進行すると、そこから心地よい快楽が生まれていく。
「気持ち良い、これは・・・夢・・・」
少女にもこの体験が、夢の中の出来事だという事がわかっていた、
夢だから抵抗せず、石になる快楽を受け入れ、愉しんでいた。
「どうしてこんなに気持ち良いの?ああっ、イクッ」
少女は夢の中で全身を石に変え絶頂を迎えた。
時を同じくして、現実の少女の体も夢と同じように灰色の石に変わっていた。
「夢の中で起きた石化は、現実の体も石に変えてくれるわ」
村では人々が次々に眠ったまま、灰色の冷たい石に姿を変えていった。
「この人で最後、この村もたいした事は無かったですわね」
女の子の姿の魔物は住民を全員石に変えた村を後にすると、次の村に向かった。
日が昇るまでの間に十を超える村が、眠りに就いたまま石に変えられて行った。

落城から六日が過ぎ、国民の九割が魔族の術で姿を石に変えられていた。
襲われた町や村から脱出した人が居ない為、情報は何処にも伝わる事が無く、
ある日、突然襲い来る魔族に精気を吸い取られ、人々は次々に石化していった。

国境に程近い村にまで、魔族の手は伸びようとしていた。

三人の娘と一人の少年が森の中を草を掻き分け、慎重に進んでいた。
「フェミニー姉さんもう直ぐ国境だ、僕達助かるよ」
「お兄ちゃん、ノエル助かるの?」
「油断してはダメ、魔族が居るかもしれないわ」
「そうだよ、お母さん、お父さん・・・」
四人に全ての財貨を持たせ、父親と母親は村に残っていた。
しばらく森を進むと、小さく開けた場所に出た。
「ここで少し休もうよ」
一番年下のノエルがフェミニーに話しかけると、何処からか声が聞こえてきた。
「ソニアがお姉ちゃん達を此処で石に変えて、永遠に休ませてあげる」
目の前の空間にピンク色の光が集まり、小さな少女が現われた。
「私はソニア、男の子の精気は好きじゃないから、お兄ちゃんは見逃してあげる
 でもお姉ちゃん達は気持ちよーく石にしてあげるね」
ソニアはにっこりと微笑むと、ピンク色に輝く霧のような物を撒き散らした。
「何これ?あああぁっ」
「んっ、気持ち良い」
ピンクの霧に包まれたフェミニー達は、体中を愛撫される様な快楽に襲われた。
幼いノエルも初めて味わう感覚に身を任せていた。
「姉さん何をしてるの?ノエル、ミレルまで・・・」
兄弟のクレイヴが見ているにもかかわらず、三人は自慰に没頭している。
その光景をソニアが楽しそうに眺めていた。
「おにいちゃんは見逃してあげるから、早く逃げたらいいよ。
 それともお姉ちゃん達が気持ち良くなってるのを、ずっと見ていたいのかな?」
ソニアはミレルに近づくと、小さな胸にキスをして、乳首を舌で転がした。
ミレルの口からは艶かしい喘ぎ声と、熱い吐息が漏れていた。
「気持ち良い、気持ちいいよぉ、もっと吸ってよぉ」
ミレルの口から信じられない様な台詞が飛び出す。
妹の見せる女の顔に、クレイヴは驚いていた、辺りをよく見ると姉のフェミニーや
幼いノエルまでも同じ淫靡な顔をし、指を激しく駆使して快楽を貪っていた。
「おねえちゃんは此処を舐めて欲しいのかな?」
ソニアはミレルから離れ、フェミニーに近づくと、おもむろに股間に顔を埋めて
ピチャピチャと音を立て、ヒダを一枚一枚丁寧に舌で愛撫していった。
「あああぁっ、それ良い、んっあぁ、もっと舐めて」
フェミニーの眼は既に焦点が合っておらず、完全に快楽に支配されていた。
「お姉ちゃん達の精気、とってもおいしいよ、お礼に体を石にしてあげるね」
フェミニーから離れたソニアが、小さく呪文を唱えた。
その瞬間、フェミニー達は今までの数倍の快楽を感じ、一気に絶頂に達していった。
「あああぁぁっ」
「何か来る、気持ちいい、あああぁん」
「ああっ、堪らない、イッちゃう、イクー!!」
グレイブの目の前でフェミニー達は絶頂に達し、その姿のまま石に変わって行った。
「姉さん・・・。魔族、フェミニー姉さん達を元に戻せ!!」
グレイブは素手でソニアに襲い掛かる、ソニアは片手で受け止めると、グレイブを
近くに生えていた大きな木まで弾き飛ばした。
「おにいちゃん、ソニアが小さいから勝てると思ったの?そんなの無理だよ」
ソニアは気を失ったグレイブにクスクスと笑いかけ、かき消す様に居なくなった。

落城から七日後 王城 謁見の間

玉座に座るワットラントの前に、目隠しをされたシャロン姫とラピス姫が連れられ
その目の前には大きな蓋をされた盆が置かれていた。
「二人の目隠しを取れ」
ワットラントが命じると、ゴーナが二人の目隠しを外した。
「貴方は誰ですか?・・・なっ!」
「お母様、お義姉様達も・・・」
シャロン姫とラピス姫が王座に視線を向けると、色とりどりの宝石に変えられ、
美しい輝きを放ちながら、王座の周りに立ち並ぶメディーナ王后達の姿が眼に入った。
「美しく仕上がっているだろう?貴様達には、気に入らぬか?では、これはどうだ?」
ワットラントが視線を向けると、ゴーナが二人の目前の盆に乗せられた蓋を取った。
「お父様!!」
「きゃーーーーっ」
シャロン姫とラピス姫の眼に映ったのは、塩漬けにされたブリガント国王の首だった。
それを見て、空気を引き裂くような悲鳴が幼いラピス姫の口から辺りに響きわたった。
「気に入りましたかな?」
シャロン姫とラピス姫の反応を、ワットラントは満足そうに眺めていた。
「存分に精神の責苦を味あわせてやりたい所だが、明日からは移民団への指示などで
 多忙になる我が身だ、最後の愉しみにさせて貰うとしよう」
ワットラントは腕輪に七色に光る勾玉をはめ込んだ。
「私もメイド達の精気を吸って魔力が上がっていてな、ようやくこれが使える」
シャロン姫とラピス姫が立っている紅い絨毯の左右には、等間隔で台座が並べられ、
石像に変わった二十人のメイドが、そこに立たされて飾られていた。
「ラピス此処に来い、シャロンはそこを動くな」
ワットラントが命じると、ラピス姫の体は意に反して王座に向かい歩き始めた。
「いや、体が勝手に動く。お姉様、シャロンお姉様、助けて!!」
ラピス姫が助けを求めても、シャロン姫は自分の体を指一本動かす事が出来なかった。
「服を脱げ、その後でこの薬を飲み干して貰おう」
ワットラントの手には黄緑色の液体の入った瓶が握られていた。

ラピス姫がシュルシュルと着ている服を脱ぎ捨てると、白く美しい裸体が現われた。
ワットラントの手にあった薬を受け取り、ラピス姫は自らの喉に流し込んでいく。
「んくっ、んくっ。けほっけほっ、苦い・・・」
余りの薬の苦さに咽返り、幼いラピス姫は目に涙を浮かべていた。
涙を浮かべるラピス姫の顔前に、ワットラントはグロテスクな肉茎を突き出した。
「口で奉仕しろ」
「奉仕?いやっ、ああっ、んっ、ちゅぷっ」
幼いラピス姫はワットラントの言葉の意味を理解できないでいたが、
体が勝手に動き、目の前のグロテスクな肉茎を小さな舌でチロチロと舐め始めた。
「拙い舌使いだが仕方が無いか。ラピス、楽しめる様に味覚を少し変えてやろう」
ワットラントの腕輪の勾玉が光ると、肉茎を舐めていたラピス姫に変化が現われた。
「何?・・・甘い、これ甘くておいしい。んっちゅっ、ちゅるっ、ちゅぷ」
ラピス姫に掛けられたのは、肉茎から感じる味が甘露の様に甘く感じる魔法だった。
心が蕩ける程の甘さを貪欲に求める様に、ラピス姫の口淫は激しくなっていった。
「褒美をくれてやる。飲み干すが良い」
ラピス姫は小さな口で肉茎を出来る限り口に含み、そこから放たれた熱い精液を
コクコクと喉を鳴らしながら満足そうに飲み干した。
「はぁぁん、おいしい、あ・・・」
甘い感覚を堪能した淫靡な表情のまま、ラピス姫の体は動けなくなっていた。
ラピス姫は足元からピンク色に輝くモルガナイトに変わって行く。
「黄緑の薬は、精液を取り込むと、体を宝石に変える薬だ、美しく固まるが良い」
ワットラントに見つめられながら、ラピス姫は口で奉仕した格好もまま
小さな胸も、肩まで伸びたしなやかな髪も、淫靡な表情のまま残す所無く、
全身をピンク色に輝くモルガナイトの石像に変えていった。

『ラピス!!お義母様達もこうしてあの男に宝石像に変えらてしまったのね』
声が出せないシャロン姫は心の中で嘆き悲しんでいた。
「最後はシャロンか、何の薬でどんな宝石に変えてやろうか」
ワットラントは幾つもの薬を取り出すと、瓶をカチャカチャ鳴らしと選び始める。
「これが良い、シャロン、服を脱ぎ、ここまで来い。ゴーナ、ラピスの宝石像を
 メディーナとセレネの側に移動させろ」
ワットラントが命じると、ゴーナは手を触れずにラピス姫の宝石像を移動させた。
メイドたちの石像を、均等に並ぶ台座の上に飾ったのもゴーナだった。
「これでいいかしら?かわいく見える角度を選んであげたわ」
ゴーナはワットラントに見える様に、ラピス姫の宝石像の角度を考え移動させた。
淫靡な表情のラピス姫が、ワットランドを宝石の瞳で見つめている様だった。
「流石はゴーナ、良い仕事だ。シャロンやっと来たか。ん?」
ワットラントはシャロンのまたに視線を走らせると、その異変に気がついた。
「何だこれは?義妹のラピスが宝石に変えられる様を見て感じておったか」
ワットラントは愛液で濡れた右手をシャロン姫の目の前に持って行くと、
人差し指と中指でヌチュヌチュと愛液で糸を引かせて見せた。
「か・・・、感じてません」
顔を真っ赤にしてシャロン姫は声を絞り出した。
「ほう、まだしゃべれるとは、よほど恥かしかったようだな、淫乱皇女め」
ワットランドはニヤニヤと笑いながらシャロン姫を声で嬲っていた。
手にしていた真っ青な液体の入った瓶の蓋を開け、シャロン姫の口に流し込んだ。
「うぶっ、んっ、ケホッケホッ」
無理やり喉に薬を流し込まれ、シャロン姫が咽返す。
「シャロン此処に座れ、そして自分で胎内に押し込むのだ」
ワットラントはイスに座ったまま、自らの陰茎を受け入れるよう命じた。
『いや、いやっ、止まって、私の体止まりなさい、あっ、痛いッ、裂けてしまう』
シャロン姫は心で拒絶したが、体は命じられるまま、後ろ向きになり、
ワットラントの陰茎を自らの陰口にあてがうと、一気に押し込んだ。
「純潔を捧げた相手が、親の仇とは皮肉だな、シャロン腰を動かせ」
ワットラントが命じると、目に涙を浮かべ、シャロン姫は腰を上下させ始めた。
『痛い、お腹が張って苦しい、誰か助けて、ウッドランド・・・』
シャロン姫は心の中で、今は亡きウッドランドに助けを求めた。
「存分に苦しんで頂こう、最後の王族だ、快楽のうちに石に変われると思うな」
ワットラントの飲ませた薬には、快楽中枢を鈍らせる効果があった。
その為シャロン姫は、快楽を与えられる事無く、破瓜の痛みに襲われていた。
「シャロン、憎い男の精を子宮で味わうが良い」
そう言いワットラントは、白く熱い精液をシャロン姫の一番奥で勢い良く放った。
『いやっ、胎内で出さないで、熱い、熱いわ、え?何この音・・・』
シャロン姫の耳には、体の中からパキパキと何かが硬化する音が聞こえていた。
「シャロン、お前の体はこのまま膝の上でサファイヤの宝石像に変わるのだ」
陰茎を引き抜くと、そのままの形でシャロン姫の胎内が奥まで青いサファイヤに
変わってるのが見えた。
『この音は、体がサファイヤにされてる音?いやです、宝石になんてなりたくない
 誰かこの音を止めて!!』
シャロン姫の懇願虚しく、足のつま先やヘソの上を青く輝くサファイヤに変える。
宝石化は柔らかく豊かで形の良い胸に及ぶと、青く硬い宝石に変えていった。
「シャロン、優しく微笑むが良い。王族の滅ぶめでたい瞬間だ」
『いや、この男に笑顔なんか見せたくない。ああ、顔が』
涙ぐみながらも命じられるままシャロン姫は満面の笑顔を見せ、そのままの表情で
青く輝くサファイヤの宝石像に変わって行った。
「これでこの国は完全に滅んだ、宝石の瞳で永遠にこの部屋を眺めているが良い」
ワットラントは青く輝くサファイヤの宝石像に変わったシャロン姫を床に置くと、
服装を整え部屋を後にした。

翌日 移民団の第一陣が到着し、その指揮にワットランドは全霊を注いだ。

「んっ、いたたっ」
森の中でクレイヴが目を覚ましたのは、移民団が来るその当日だった。
「フェミニー姉さん、ノエル、ミレル」
クレイヴの目の前には、絶頂に達した姿のまま石に変わった姉達の姿があった。
服は石化しておらず、体の部分だけが冷たい灰色の石に変えられていた。
「フェミニー姉さん、お金預かるね」
フェミニーが腰に着けていた皮袋を外し、クレイヴは銀貨を預かった。
「僕は強くなる、フェミニー姉さん達を必ず助けるから、それまで此処で待ってて」
クレイヴは石になった姉にキスをして、将来の救出を心に誓った。
一度だけ振り返ると、その後、国境に向かい森を全力で走り抜けた。

十年後
五万の兵を引きつれ、この国に攻め込んだ軍の先頭には逞しく成長し、
断魔の神槍と呼ばれるクレイヴの姿があった。

魔族の力を借り興した国は、成長した一人の少年の手により廃され様としていた。

これも一つの運命なのかもしれない。


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