未知の薬

作:牧師
イラスト:カモノハシ


ピチョン、ピチョンと水の滴る音があたりに響く。
室内に無数に走るパイプから、ぽつぽつと水滴の落ちる廃工場で
男はイスに腰掛け、マットの上で倒れている少女達を眺めていた。
「聖春光女学院、3−1、児嶋真帆」
男は一人の少女の生徒手帳を開き、一人の少女と見比べる。
腰まで伸びた長い黒髪、ふっくらとした顔立ち、柔らかそうな胸、細い指先
引き締まったウエスト、やや小ぶりな臀部、すらりと伸びた足、体の色は
まるで白磁の人形のように白く美しい。
「目を開けたら写真のように、黒く大きな瞳が現われるんだろうな」
男は満足すると、次の生徒手帳を開く。
「聖春光女学院、1−3、高山奈津美」
真帆の横に倒れている、小柄な少女に目を向けた。
やや栗色の髪は短めのツインテールにしていた、少しほっそりとした顔立ち
小振りな胸、華奢な身体つき、高校生とは思えそうに無かった。
「写真のようなややツリ目なのかな?しかし、見た目は生徒手帳が無ければ
 小学生と間違えそうだ」
男は失礼な事を平気で言い放つ。
「最後に先ほど楽しませて貰ったのが、聖春光女学院、3−1、逢瀬綾香か」
男の視線の先には、壁に押し付けられた格好で、灰色の石に変えれらていた。
髪を振り乱し、腕は何かを押し戻す様に伸ばされ、足を無理やり広げられ
それを拒む形で石像に変わったその姿は、男に陵辱された事を物語っていた。
「なかなかいい具合でしたよ、綾香さん」
石化した綾香の瞳には、まだ涙が貯まっていた。

「そろそろ残りの二人で楽しませて貰うとしますか」
男はイスの横に置いてあった、クーラーボックスのような物の中から、
薄いピンク色の液体の入った瓶を取り出した。
「さあ、そろそろ起きて貰いましょう。この薬を飲んだ後にね」
男は真帆と奈津美の口にピンクの液体を注ぎ込んだ。
二人は液体を無意識で飲み込むと、熱い吐息を洩らし始めた。
「んっ、あん」
「はぁ、んぁ、ひぅん」
真帆と奈津美はまだ意識は戻らないまま、体の疼きで喘ぎ声を上げていた。
「まさに夢見心地ですか?これは普通の人は理性も保てない程の媚薬ですからね」
まだ完全に意識は戻らないまま、二人の指は胸や股に伸び、クチュクチュと
淫らな音を奏でていた。
「んんぁっ、あれ?わたし何をして・・・。ひゃん、ここは何処?」
真帆は意識を取り戻したが今置かれている状況が理解できない。
自分が無意識に自慰に及んでいた事が、混乱に拍車を掛けていた。
「ひぃん、んぁ、ああぁぁん、ああっ先輩、真帆せんぱぁあいっ!!」
奈津美は真帆の名前を呼びながら絶頂に達した。股からは銀色の液が潮を噴いていた。
「はぁぁ、はぁぁっ」
隣で荒い息をする奈津美を目の当たりにし、真帆は少し冷静になる事が出来た。
「貴方誰?此処は何処なの?」
真帆は男を睨み付け、強い口調で問い質した。
「此処は君達が立ち入り禁止の看板を無視して、肝試しに来ていた廃工場だよ」
確かに真帆達は奈津美の提案で、町外れの廃工場に肝試しに来ていた。
「よく来るんだ、君達みたいな連中が。確かにこの地下一階までは破棄されたが
 この先のエリアはまだ生きている、君達は不法侵入者なんだよ?」
男が言い放つと、冷静になっていた真帆は罪悪感に駆られた。
「勝手に敷地内に入った事は謝ります、でも私にした事の方が酷いと思いませんか?」
真帆の台詞を聞いて、男はニヤニヤと笑いながら言葉を続けた。
「酷い事と言うと、逢瀬綾香ちゃんを、あんな姿にした事かな?」
男の視線の先に真帆が目を向けると、陵辱されたとしか思えない格好で石像と化した
親友の姿があった。
「綾香!!何?!どうなってるの?!人を石像に変えるなんて?!そんな事が!!」
真帆の混乱は頂点に達した。
つい数時間前まで笑いながら語り合った親友が石像に姿を変えた、人知を超える事態を
目の当たりにしては、仕方の無い事かもしれない。
「此処は色々な薬を開発するラボだったのさ。会社は倒産して残ったのは俺だけだが」
男が話をしている最中も、奈津美は一人、自慰を続けていた。
「んっ、まほせんぱぁい、せつなくて辛いですぅ、真帆の此処にキスしてくださぁい」
どう着ていたのか解らない位に肌蹴させた服の間から見える、
小さな胸の膨らみを真帆に向け、奈津美はキスをせがんでいた。
「ほら、奈津美ちゃんがキスをおねだりしてるよ、優しい先輩はしてやらないのか?」
男の言葉を聞くとキッと睨み付け、真帆は怒鳴リ声を上げた。
「一体私たちに何をしたの?」
石像にされるのかも知れない恐怖を振り払い、男を問い質す。
「今飲ませているのは気持ちよくなる薬さ、君には少し量が足りなかったみたいだが」
男はグラスに先ほどの薄いピンクの液体を注ぎ、それを持って奈津美の方に歩み寄る。
「奈津美ちゃん・・・」
男が一言、二言語りかけると、奈津美は嬉しそうな顔でそれを残らず口に含んだ。
「な、奈津美どうして?」
近づいて来た真帆を抱きしめると、奈津美は強引にキスをした。
そして口の中の液体を、真帆の喉へと残らず流し込んでいった。
「けほっ、けほっ、何をするの?あああぁぁあぁっ」
奈津美に流し込まれた媚薬は、即座に真帆の体を蝕んでいく。
「真帆ちゃん、君達も綾香ちゃんと同じようにじっくりと味わおうかと思ったが
 奈津美ちゃんに免じて二人で存分に楽しませてあげるよ」
股からピュッピュと潮を吹く真帆を楽しそうに見ていた奈津美は、再び唇を奪うと、
お互いの上着を全て剥ぎ取り、胸を擦り付け、快楽を貪った。
自由な手でスカートとパンツも脱がせると、靴と靴下だけの格好になる。
「真帆せんぱぁい、夢が叶いました。いつもせんぱいを奪いたいと思ってました」
奈津美は真帆の胸を舌で愛撫すると、下腹部を摺り寄せ、下の口でもキスをした。
クチュクチュと淫靡な音を響かせ、奈津美は満足そうな笑みを浮かべていた。

その後、三十分ほど二人の行為を眺めていた男は、クーラーボックスから新たに
薄いクリーム色の液体を取り出し、グラスに注ぎ始めた。
「もう良いだろう?綾香は普通の石になって貰ったが、二人にはコレを飲ませよう」
男は薬の入ったグラスを持ち、再び奈津美に近づき、そっと囁いた。
「奈津美ちゃん、このまま真帆ちゃんを独り占めしたくは無いかな?いずれ彼女は
 好きな男性を作り、君から離れていく。そうならない為にコレを二人で飲むと良い」
男の言葉を聞くと、奈津美は頷き、グラスの液体を半分口に含むと、先ほどと同じ様に
キスをして真帆の喉に流し込む。
真帆が飲み下したのを確認して、奈津美も残りの半分を飲み込んでいった。
「もうしばらく二人の時間を楽しむが良い、その後は私が楽しもうじゃないか」
男は再び行為に及んでいる二人を眺めると、一人呟いた。
「奈津美っ、ああぁん、んんっ、かわいいわ、ひゃん」
「真帆せんぱあぁぁい、んぁ、ひぃいん、・・・、あ・・・れ・・・?」
数分ほど起って奈津美は異変に気が付いた。
「指が動かない。何これ?まるで大理石みたい」
奈津美の指先は白い大理石へ変化していた、指だけでなく、足も白く変色を始めていた
気が付くと真帆の体も大理石に変わろうとしていた。
「まさか今飲んだ薬は・・・。酷い、約束が違います・・・。」
奈津美は目に涙を浮かべ、男に視線を向けようとしたが、真帆のキスが阻止した。
「ダメよ奈津美。私から目を離そうなんて」
そう言って真帆は、再び奈津美の唇を塞いだ。
その間にも体は徐々に大理石へと変わっていく。
真帆のスラリとした足も完全に白い大理石になっていた。
「別に嘘は付いて無い。これで真帆ちゃんは永遠に奈津美ちゃんの物だよ」
男の目の前で、奈津美と真帆は髪の毛の一本も残す事無く、白い大理石に姿を変えた。
大理石になっても二人は見つめ合っていた。
抱き合っていた為、少し真帆の胸が押し潰された様に見えるのが残念な事だった。
「説明も受けずに知らない薬を飲むからさ、最も、此処に肝試しに来た時から、
 君達の運命は決まっていたのかも知れないが・・・」


男は石像に変えた少女達をエレベーターで地下に運んだ、そこには小さな女の子から
大学生位までの女性が、様々な石に変えられて、無造作に飾られていた。
その隣の部屋では、無数のガラスの筒の中で、未知の薬がボコボコと泡を立てていた。
部屋の明かりに映された男の影は、人の姿をしていなかった。
そして、獲物が迷い込むのを待ち続けている。
新たな薬を飲ませるモルモットとして・・・。


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