究極のプライベートビーチ 前編

作:牧師


「いっくよ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
 長い髪の少女が数人の少女たちと、砂浜でビーチバレーを楽しんでいた。
澄み切った青い空、綿菓子の様な白い雲、そしてその雲に負けない位に白く美しい砂浜。
そんな砂浜でビーチバレーをしている少女は、長い黒髪の少女の藍原愛美とその妹の百合、そして愛美の親友の浅木さくらと妹のイチゴの四人だけで、
南国の楽園を思わせる海岸には、彼女達の他には誰もいなかった。

「あ…、お姉ちゃん強すぎだよっ!!またボールがどこかに行っちゃったじゃない!!さくらさん今回は私が行くからここで待ってて」
 少女達がビーチバレーを始めて十分程しか経っていなかったが、愛美の打ったボールは何度も広い砂浜の彼方此方に飛んでいっていた。
今まではその度に親友のさくらがボールを拾いに行っていたのだが、今回は、申し訳なく思った百合が砂浜を転がるボールを追いかけた。
「ごめ〜〜んっ、百合。よしっ!!旅館に戻ったらお姉ちゃんアイス買ってあげちゃうっ」
 ボールを追いかけていき小さい影になった百合から「やくそくだよ〜〜〜〜っ」と返事が返ってきた。

「どこいったんだろ……。も〜〜う、お姉ちゃんたら力任せに打つんだから……」
 軽いビーチボールはそんなに転がるものではないが、何故かビーチボールはコロコロと海岸の端にある岩場まで転がっていた。
「あ、あった!!あ…あれ?」
 ビーチボールは百合の手が僅かに触れた瞬間、きめの細かい白い砂に変わって砂浜へと消えた。
次の瞬間、砂浜から生えた人間の手の様なものが百合の右手を掴み、細い腕の付け根まで白い砂浜の中へ引きずり込んだ。
「きゃぁぁっ!!何コレ?あ…あれっ?手が……抜けない」
 百合がどんなに力を入れても、砂浜に引きずり込まれた腕は抜ける事が無かった。
次第に砂に埋もれた腕から感覚が無くなり、何処からともなくパキッ…、パキッと言う乾いた音が響いていた。
「あああっ……、て……手が…動かないっ…。な…なに…?きゃぁぁぁぁっ、つ・・・冷たいっ!!」
 砂から現れた無数の人間の手の様なものが、百合のお尻や腰、太ももなどを次々に掴んだ。
掴まれた百合の体はパキッ…パキッ…と乾いた音を立てて、硬い灰色の石へとその姿を変えていた。
白く柔らかかった百合のふとももや小さな胸も、砂浜から生えた人間の手の様なものに掴まれて、ゆっくりと灰色の石へと変わっていった。
「いやあぁぁぁぁっ!!おねえちゃぁぁぁぁん!!」
 不思議な事に少し離れた場所に居る愛美の耳に、百合の叫びが何故か届く事は無かった。
百合は愛美たちに気付かれる事無く、岩場の影で灰色の石像へと変わっていった。
着ていた水着は白い砂に変わって砂浜へと消え、百合はまだ幼いその裸体を晒して、物言えぬ灰色の石像へと変わり果てた。

「…………百合ちょっと遅いわね…。もしかして見失ったのかな?」
 待ってる時間は長く感じるものだが、この時、百合がビーチボールを追いかけて既に五分程経っていた。
「ちょっと遅すぎるよね。ごめんさくら、私百合を探してくるね」
 入れ違いを防ぐ為にさくらとイチゴをその場所に残らせて、愛美は五分程前に百合が消えた岩場へと向って歩き始めた。

「ゆ〜〜〜〜り〜〜〜〜っ。ホント、何処まで探しに言ってるのかな?」
 百合が探してるビーチボールを自分が打って飛ばした事は棚に上げ、愛美はブツブツと呟きながら辺りを探し始めた。
数分後、百合を探していた愛美は、百合が石像に変えられた海岸の端にある岩場を探し始めた。
「あ…、あそこかな?ゆ〜〜〜〜り〜〜〜〜っ、まだ見つかってないなら、もうビーチボールはいいから、もどるわよ〜〜〜〜〜っ」
 僅かに距離があった為に、愛美は百合の身体に起った異変に気がついていなかった。
そして、愛美が百合に向って数歩進んだ所で、愛美の左足を砂浜から生えた人間の手の様なものが掴んだ。
「きゃあっ!!な・・なに?あ…足が……」
 砂浜から現れた手の様なものに掴まれた愛美の左足は、パキッ…パキッ…と乾いた音を立てて、ゆっくりと足首から硬い灰色の石へと変わり始めた。
灰色の石へ変わった愛美の左足は、痺れた様に動かず、石と変わり重量をましたその細い足は、愛美がそこから逃げる事を阻んだ。
「石ッ!!足が……いしにぃぃっ!!なに?この手!!なんなのよぉっ!!」
 愛美は石になった足を引き摺り、そこから逃げようとしたが、数歩と歩かぬうちに、砂浜から現れる手のような物に体中を掴まれ、
腰まである美しい黒髪や、引きまった腰、細い腕、ボリュームのある形の良い胸をゆっくりと灰色の石へと変えられていった。
ボリュームのある形の良い胸や、ピンク色の襞を僅かに覗かせる秘所を包んでいた真っ赤なビキニの水着は、白い砂となって崩れ去った。
その為、愛美の胸や秘所は白日の下に晒され、やがて肌色の柔肌は、白日の下に晒されたまま、灰色の硬い石へと変化していった。
「ゆ………り…………、さく………ら………」
 身体の殆どを灰色の石に変えられた愛美の脳裏に浮かんだのは、目の前で石に変えられた妹と、愛美と百合が戻ってくるのを待っている親友の姿だった。
その時、砂浜から現れた手の様なものは愛美の頭部を掴み、ついに石化は愛美の顔を灰色の石へと変え始めた。
愛美の美しい唇も、形の良い鼻も石に変えられ、瞳からは僅かに残されていた光が消えようとしていた。
『お…おねがい…、さくら……。さがしに……こない……で……』
 石になる最後の瞬間、愛美が願ったのは、親友のさくらが自分と百合を探しに来ない事だった。
もし探しに来れば、さくら達も自分たちと同じ様に、砂浜から現れる手の様なものに、硬く冷たい灰色の石に変えられると分かっていたからだった。

 数秒後、砂浜にまた一つ、魂を閉じ込められた少女の石像が完成した。
妹の百合と違い、立ったままで、身体を僅かに捻らせ、何かから必死に逃げようとしている姿で愛美は石像に変わっていた。
 そして愛美の願いも虚しく、さくらとイチゴは愛美と百合を探しに砂浜へと歩き始めていた。

つづく


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