かくれんぼ 後編

作:牧師


 咲夜達が淫靡な姿の石像に変わった後、公園の中にはまだ三人の少女がいた。
コンクリート製のドームの中には、高橋美奈穂(たかはしみなほ)と倉田未来(くらたみらい)が隠れていた。
 ドームに隠れていた為に、二人にはまだ十分に催淫効果が及んではいなかった。
 今まで聞いた事の無い友達の嬌声が響き、二人がドームの穴から僅かに顔を覗かせて様子を見る度に、
白い粘液から漂う甘い香による催淫効果が、少しずつ美奈穂達の体を蝕んでいた。

『なんだろう?この感じ・・・。みらいちゃんを見てたら胸がどきどきしてきちゃった・・・』
 催淫効果は美奈穂の心にある変化を齎した。
美奈穂は未来に恋をしていた・・・、催淫状態が齎した擬似的な恋愛感情ではあったが、
まだ恋をしていなかった美奈穂には、十分過ぎる程に効果があった。
 頬を紅潮させ、唇から熱い吐息を漏らして、無意識のうちに美奈穂は未来の顔をみつめている。
「み・・・みらいちゃん!!」
「ん?」
 ガツッと歯と歯がぶつかる鈍い音が響いた。
振り向いた未来に抱きつき、強引にキスをした美奈穂だったが、二人とも口を閉じていた為に、
思いっきり前歯をぶつけてしまった。
 しかし、催淫状態だった美奈穂はそれでも唇を離す事無く、そのまま強引にキスを続けた。
不思議な事に未来も抵抗する事無く美奈穂のキスを受け入れ、進入してくる舌に吸い付き甘い唾液を飲み下した。

「んっ・・・、ちゅぷっ・・・チュル・・・あ・・・」
 この時、美奈穂だけではなく、一緒に隠れていた未来も催淫状態に堕ちていた。
誰から教えられた訳でも無く、しかし何かに導かれるように美奈穂は未来の秘所に手を伸ばし、
未来の穿いていたスカートを強引にずらすと、パンツの下に手を滑り込ませて、クチュクチュと柔肉を捏ね回した。
「みらい・・・ちゃ・・・ん、あああん!!」
 美奈穂は更に快楽を求め、少し大きくなった胸を、未来のまだ膨らみ始めてもいない胸に押し付けている。
未来は幼い身体を小さく震わせて、絶頂へ押上げようとする快楽に耐えていた。
「美奈穂ちゃん・・・ひゃうぅっ、ダメッ、ヘン…になっちゃ…、くぅうん・・・ああん、や・・・やだやだっ!!」
 未来の純潔は美奈穂の激しい指使いで散らされ、銀色の愛液に破瓜の血が混ざってはいたが、
辺りに充満した甘い匂いの催淫効果で未来の痛覚は既に無くなっていた為、激しい快楽のみが齎されていた。
 未来を責める事で美奈穂は自らを高揚させたいた。
その為、更に未来に対する愛撫が激しさを増す、未来の狭い膣内に根元まで突っ込んだ人差し指と中指で愛液を絡め、
柔らかい蜜壷をプチュプチュと、辺りに愛液が飛散する程に激しく捏ね回した。
「ああっ、な・・・に?やあ・・・っ、み・・・みなほちゃあん!!あああああああん!!」
「みらいちゃあああああああああん!!」
 ほぼ同時に未来と美奈穂は絶頂に達し、その甘美な快楽の代償として小さく柔らかい身体を灰色の石へ変えた。
美奈穂は快楽で焦点が合わず半開きになった瞳をそのままに、未来は瞳を硬く閉じたまま永遠に・・・。

 最後の一人、鹿島ちとせ(かしまちとせ)は巨大なナメクジから最も離れた所に隠れていた事もあり、
催淫状態に堕ちてはいなかった。
 それだけではなく、ちとせは甘い香りが齎す催淫効果に対する耐性を持っていた。
 耐性が無ければ、1歳の子供でも、やがて自らの指で快楽を求め口や秘所に指を突っ込んで掻き回し、
やがて齎される快楽による絶頂で、自らの身体を石へ変えてしまう。

「お・・・おかあさんかおまわりさんに知らせないと・・・」
 ちとせは公園の外周沿いをナメクジに気付かれないようにゆっくりと進み、入り口に後少しの所まで辿り着いた。
残り僅か数メートル、しかしその地面はナメクジの体から染み出す甘い匂いのする粘液で覆われており、
粘液を避けるならばナメクジに逆から回り込み、入り口を目指さなければならなかった。
 ちとせは少しだけ考え、そして意を決して粘液を踏み越えようとした。
「あ・・・」
 粘液に触れた瞬間、ちとせの小さな足はたちまち灰色に石に変化し、バランスを崩したちとせは、
粘液の上に倒れこんでそのまま粘液の上を一メートル程滑った。
 巨大なナメクジの身体にあたりって止まった時には、ちとせの体は完全に石へと変わり果てていた。

 数時間後、公園内には無数の石像があった。
おやつの時間に戻ってこない子供を心配して様子を見に来た母親達、サッカーボールを持った少年達、
学校帰りに中華まんを片手に公園に立ち寄った女子高生など二十数人が、淫靡な姿で永遠に動かなくなっていた。

 その時になってようやく巨大なナメクジは自らを取り巻く結界の変化に気がついた。
巨大なナメクジが作り出した薄暗い結界は、さらに巨大な薄ぼんやり輝く結界に包み込まれ、
その結界の外には巫女装束に身を包んだ5人の少女が待ち構えていた。
「ようやく見つけました、かくれんぼはここまでにして貰います」
 腰まで届く漆黒の髪を手で軽く払いながら、巨大なナメクジに向って一人の少女が呟いた。
「こそこそ隠れまわったお前に襲われて、周辺の町で石像に変えられた二百人を超える人々の恨みを思い知らせてやる」
 手に札を持った少女が目の前のナメクジを睨みつけ、怒りに震える声で言い放った。

 少女達は祓い衆という組織の一員で、人々に仇なす淫獣などを退治、封印する事を生業にしている。

 淫獣とは、淫は陰に通じ、陰は闇と同意、この世ならざる闇より産み落とされ生態は殆どが謎に包まれる獣。
様々な生き物の姿を模し、その殆どが、人間など精神的に進化した生物を特殊な能力で快楽に誘い精気を奪う事、
吸精した対象を石等に(結果的に)変える能力を持つ事、高い再生能力と催淫能力を持つ事位しか伝えられてはいない。
 その淫獣を古来より封印、滅殺する組織が祓い衆だった。

 巨大な結界を展開している羨道静(せんどうしずか)を筆頭に、静の双子の妹の羨道焔(せんどうほむら)、
やや幼いが強力な防御結界を展開できる夕凪美加(ゆうなぎみか)、封魔の家系の高清水美菜(たかしみずみな)、
怒りで震える手に札を握り締め、今にも襲い掛かりそうな日向楓(ひなたかえで)が今回の事件を任されていた。
 静がそのまま結界を維持し、結界に入った焔達が巨大なナメクジ型淫獣を取り囲んだ。

「この子達の無念も晴らしてあげる、火炎滅法大蛇の札!!」
 楓が手にした札を巨大なナメクジ型の淫獣に向け放つと、札から全身が炎で出来た巨大な蛇が現れ、
巨大なナメクジ型淫獣を燃え盛る炎の身体で締め付けた。
 ジュウジュウと巨大なナメクジの体が焦がされる音が辺りに響き、焔や楓達は早くも勝利を確信し、
その光景を見守っていた美菜が小さな壷を取り出し、封印の術式に入ろうとした時、事態が急変した。
 炎で出来ていた蛇の体が灰色の石に変化し、ピシッピシッと音を立てててひび割れ、粉々に砕け落ちた。

「そんな・・・、たかが淫獣が、うぶっ・・・、んっんんん」
 いつの間にか楓の方を向いていた巨大なナメクジ型淫獣は、焼け爛れた身体を驚異的なスピードで再生させながら、
口と思われる場所から二本の触手を伸ばし、一本を楓の秘所に、もう一本を楓の口に潜り込ませた。
 並みの淫獣では触れる事さえ叶わない清められた袴の中に進入し、陰部に貼り付けた、強力な淫獣でさえ跳ね除け、
催淫効果を無効にする札を、ナメクジ型淫獣の触手はやすやすと貫いて、何者の進入も許してはいなかった膣内を、
奥深くまで蹂躙し、最深部でその動きを止めた。
『う・・・うそっ、こんなに簡単に、は・・・入って、ひゃああああん、きもちいぃぃぃっ、と・・・融けちゃう』
 最深部にまで突き入れられた黄色の触手の先からピンクの霧を噴射し、この世の物ならざる快楽で、
楓の魂を融かして行った。
『きもちぃ・・・、あ・・・消えちゃ・・・』
 ナメクジ型淫獣は口に突っ込んでいた透明な触手で、キラキラと金色に輝く楓の魂と精気を吸い上げ、
その粒子が体から抜ける速度に応じて、楓の体が灰色の石に変わって行く。
 結界の外でその様子をみつめていた静や,結界内で固唾を呑んでいた焔達も事の重大さに気がついた。
自分達が淫獣だと思っていた相手が、石獣であったことに・・・。

 石獣、高い再生能力を持つ反面、催淫能力は淫獣に劣る、淫獣との最大の相違点は、黄色い触手を持ち、
そこから出すピンク色の霧で、人間の魂を融かし、透明な触手で吸い上げる事だ。
 魂を吸い尽くされ石像に変えられた人間は、人間であった石像にしか過ぎず、もう二度と元には戻らない。

「まずいわ・・・、まさか石獣だったなんて・・・、美菜!!多重封印術の準備をお願い。美加は全力で石獣の攻撃を防いで、
姉さんは万が一の時にお願い・・・」
 目の前で魂を吸われ、石像に変わり行く楓の事は諦めて次の手を用意し始める、焔達には他に選択の余地が無かった。

 やがて魂を吸い尽くされた楓がナメクジ型石獣の触手から解放され、ゆっくりと顔から地面に倒れた。
ナメクジ型石獣は、次の目標を美加に定め、再び黄色の触手と透明な触手を美加に向けて放ったが、
美加の展開する幾重にも張り巡らされた防御結界にことごとく弾き返され、二本の触手を体内に戻し、
代わりに巨大な丸い目玉で美加の姿を捉えた。
「なに?きゃあぁぁぁっ!!」
 ナメクジ型石獣の目から青白い光が放たれ、その光が美加の展開している防御結界を少しずつ水晶に変えていた。
「こ・・・こんなことが・・・、いやぁぁぁぁぁっ!!」
青白い光はやがて美加の両手も水晶に変え、そのまま美加の身体を巫女装束ごと水晶像へと変えていった。
透き通る水晶像に変わり果てた美加の秘所からは、トロトロと愛液が滴り続けていた。

「このままだと美菜の術が完成するまでに皆石像に変えられてしまうわ・・・。時間を稼ぐにはもうこれしかないわね」
 焔は意を決して両手の中指に金色に輝く指輪をはめ、短い呪を唱えた。
「美菜!!姉さん後はお願い!!封魔の霊剣!!」
 焔の体が光り輝き、次の瞬間、ナメクジ型の石獣のからだがまるで毛虫の様に、無数の輝く剣に貫かれた。
ナメクジ型の石獣を貫いた輝く剣は一時的に石獣の自由を奪い、その力の全てを封じ込めていた。
其の代償として、焔は魂と精気を指輪に吸い上げられて、術を唱えた姿のままで大理石の石像に変わり果てていた。

「七重封印術、永遠の虚空」
 ナメクジ型石獣が輝く剣を半分程度打ち破った時、美菜の封印術が完成した。
宝玉や札、乙女の髪で編んだ縄がナメクジ型石獣を幾重にも封じ、最後に小さな壷にナメクジ型石獣を封印した。
「なんとか終ったわ・・・、犠牲者は焔、美加、楓・・・、それに二百人を超える人達ね・・・」
 静は命を賭してナメクジ型石獣の動きを封じた、大理石像に変わった焔のツルツルとした固い頬を撫でていた。

 その後、石像に変わった焔、美加、楓は宗家に送られ、永遠に安置される事になった。
咲夜達の他、二百人を超える石像は、それぞれの地区の山奥に祠を建てて、厳重に封印された。
石獣に石像に変えられた人をそのままにしておくと、弱い淫獣が誘き寄せられて、更なる犠牲が出るからだ。

 咲夜達は永遠に終る事の無い淫獣や世間という鬼から、かくれんぼを続ける事になった。


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