異界への門〜魔獣と冒険者達〜

作:牧師


 ある大陸の北方に位置する街ハンブレは人口数十万人を超える大都市である。
街には生活雑貨を扱う様々な店の他に、街の平和を守る衛兵の詰所、魔法使いの所属する魔導師ギルド、盗賊の集まる盗賊ギルド、
そしてそれらと通じ、厄介事や近隣の村からの依頼に冒険者を派遣する冒険者ギルドなどが存在していた。
 冒険者とは、街から街へ旅する行商人の護衛や、小規模の山賊や追い剥ぎの討伐、そしてごく稀に現れる魔獣や、
人の道を外れた魔法使い等の退治を生業とする剣士や魔法使い等の総称である。
 旧世代の王国の遺跡や、魔獣の巣に入り込んで莫大な財を手にする者も居れば、下働きをして日々の生活の糧を得る者まで、
ランクや生活には大きな差があったが、多くの冒険者はいつかは山の様な財宝を探し当てて、王侯貴族の様な生活をする日を夢見ていた。

「北にある集落の調査?いまさら?わたしたちにか?」
 冒険者ギルドから呼び出しを受け、シャロン達六人は準備を整えて冒険者ギルドへ出向いたのだが、冒険者ギルドの一室で依頼内容を確認し、
その内容に思わず首を傾げた。
基本的に、調査などの依頼は駆け出しの冒険者が行う依頼であり、シャロン達の様な高ランクの冒険者には、まず依頼が来る事は無い。
「領主様からのご依頼だ。今回の調査は高ランクの魔法使いを含めた冒険者達にという事だ。それと……」
 ギルドの職員は厳重に封のされた小箱を取り出し、収められている手の平大の精巧な宝石細工を確認して魔法使いのステラに手渡した。
「それは特殊な魔法陣を生み出す宝石細工だ。ある魔獣を発見した場合。全力を尽くして、その宝石細工で処理して欲しい」
 ステラが職員の顔をみつめると、一筋の汗が職員の頬を伝った。
それを見逃さなかったステラは、怖い位に優しく微笑み、「せ・つ・め・い。よろしいですか?」とやんわりと問い質した。

 冒険者ギルド職員の話によれば、今回の依頼は、ある領主同士の小競り合いの後始末だという事が分かった。
その領主達は境界線上にある小さな村の所有権を互いに譲り合わず、最初はほんの小さな嫌がらせの応酬だったものが次第にエスカレートし、
最後は一方の領主が異世界から魔獣を召喚する事態にまで発展した。
 その魔獣により、呼び出した領主の領地は、一ヶ月も経たずに壊滅。
呼び出された魔獣はもう一方の領主の領地に侵入し、現在も何処かに潜伏し、村々を襲い続けているという事が分かった。
 更に言えば、現時点でかなりの数の冒険者を送り込んだが、魔獣を退治したという報告は皆無と言う事である。
「つまり……、駆け出しの冒険者達を百人以上犠牲にして、よ・う・や・く・事の重大さに気がついて、本腰を入れた冒険者ギルドが、
魔導師ギルドと共謀し、領主の了承をえて、私達の様な高ランクの冒険者に依頼したと?そう、言いたいんですね?」
 普段はおしとやかなステラが、珍しく怒りをあらわにして職員に詰め寄っていた。
「やめなステラ。こいつに言っても仕方が無い。で、その魔獣の能力は分からないんだな?」
 シャロンの仲裁によって職員は胸を撫で下ろし、自分が知りうる限りの情報をシャロン達に伝えた。
しかし、それが魔獣の力の全てではない事は、お互いに良く分かっていた。

 一週間後、シャロン達は調査の依頼があった村に辿り着いた。
移動手段に馬を使った為、実際にはかなり遠方まで進んだ計算になる。
「此処か……、酷い有様だな」
 村に足を踏み入れたシャロンが、最初に口にしたのはその言葉だった。
魔獣に襲われた村では、村の彼方此方に石像に変わった村人が立ち並んでいた。
ある村人は逃げる姿で石に変わり、ある村人は幼い子供を抱かかえた姿で石に変わっていた。

 村に着いたシャロン達は最初、お互いが見える位置で石像に変えられた村人を調べ、情報に偽りが無いか確認していた。
魔獣に襲われた村人は、女、子供に留まらず、妊婦、赤子、老人と戦闘能力を持たない者まで容赦無く石像に変えられていた。
「うわっ……、アリエス、見てこの子……。ちょっといやらしくない?こっちの子も……」
「なに、ヴァネッサ?うわぁあっ………、人間って……こんな所でしちゃうのかな?」
 双子のエルフで弓使いのアリエヌとヴァネッサが顔を赤くして、ある少女達の石像をみつめていた。
一人の少女は自分を慰めている姿で石像に変わり、もう一人の少女はその少女のふとももに股間を擦り付ける様な姿で石像に変わっていた。
しかも、広場のど真ん中で、である。
それがまともな状況でない事は二人にも良く分かっていたが、淫靡な姿の石像に目を奪われ、周りの気配を探るのを忘れていた。
「よっ!!何を見てるんだ!!」
「ひゃあぁぁっ!!」
「うわぁぁぁっ!!」
 わざと気配を消してアリエスとヴァネッサに近づき、後ろから二人の肩を叩いて、急に声をかけたのは盗賊のセリーヌだった。
アリエスとヴァネッサは驚いて少し飛び上がり、それを見たセリーヌは肩を震わせて笑いを堪えていた。
「相変わらず良い性格をしてますね。そのうち後ろから矢が突き刺さりますよ」
「そうそう、今度敵に出会ったら気をつける事ですね。手が滑るかも知れませんし」
 その場を立ち去ったアリエスとヴァネッサに、セリーヌは小さく舌を出し、「ふん!!当てれるものなら当ててみな!!」と毒づいた。

 シャロンはプリーストのアデリーヌと村を探索し、アリエスとヴァネッサはステラの護衛をしながら真面目に家を一軒一軒訪ねていた。
しかし、セリーヌは地味な探索にすぐに飽き、シャロンに隠れて村に残された金目の物を、こっそりくすねて懐に仕舞った後、
最初にアリエスとヴァネッサが見ていた少女の石像を興味深そうに眺めていた。
「しっかし、こんな姿で石になるなんて、こいつらが淫乱なのか、それとも魔獣の力でこうなったのか……」
 セリーヌはダガーの刃先で、自分を慰めている姿で石像に変わった髪の長い少女の豊かな胸を突付いていた。
その時、セリーヌの後ろから何かがゆっくりと近づいてきた。
 セリーヌはアリエスかヴァネッサが、先程の仕返しとばかりに気配を消して驚かせようとしているのだと考え、わざと振り返らず、
気配がすぐ後ろに来るまで息を殺して待っていた。
「へへ〜〜〜ん。気が付いてないとおも……。うわあああぁぁぁっ!!」
 セリーヌの背後に居たのは、アリエスでもヴァネッサでも無く、この村の住人を石像に変えた魔獣だった。
魔獣は明るい黄色をしたウミウシの様な姿をしており、違う点といえば胴体にある赤い巨大な目と、襞から突き出た不気味な管の様な物だった。
 魔獣は胴体にある巨大な赤い目を不気味に光らせ、そこから放たれた赤い光でセリーヌの体を包み込んだ。
「なんだ…これ……。からだの…疼きが……。んんっ……」
 赤い光に包まれた瞬間、全身を激しく愛撫されている様にセリーヌの体は疼き、革の鎧の下で乳房は張り、乳首は千切れそうな程に硬く立ち、
口からは熱い吐息と、涎が止め処無く溢れ出した。
 我慢の限界に達したセリーヌは、自ら鎧を脱ぎ捨て、左手で控えめな大きさの乳房を揉み、時折、手の平で硬くなった乳首を押し潰していた。
右手はダガーの柄の部分を銀色の蜜が滴る秘穴に突っ込み、其れを動かすことで、激しい疼きを和らげていた。
 目の前の石像の少女達に負けない程に淫靡な姿を晒しながら、少女達の姿が魔獣の力による物だという事を、セリーヌはその身を持って理解した。
理解はしたが、小さな胸を握り潰す様に激しく揉む左手も、激しくダガーの柄を上下させ、プチュプチュと音を立てて愛液を泡立てる右手も、
自らの意思で、僅か一瞬たりとも止める事は出来なかった。
「ちくしょ……う、こんなに……いい……なん……て…。んんっ!!くるっ!!あ………ああああぁぁぁぁっ!!」
 急激に膨れ上がった絶頂の快楽は、刹那の瞬間で脳裏を真っ白に塗り潰し、その後に齎された快楽の濁流でセリーヌの心を一瞬で押し流した。
絶頂と同時にセリーヌの身体は灰色に染まり、パキッパキッという乾いた音を立てて、冷たく硬い石へと変わり果てた。
 セリーヌの全身を包む鎧や、柄を膣穴の奥深く突っ込まれた鉄製のダガーも石に変わっており、セリーヌの体の一部の様にその存在を残していた。
セリーヌを石像に変えた魔獣は音も無くその場を後にし、次の獲物に狙いを定め、ゆっくりとその背後に向って襞から突き出した管を伸ばした。

 村の片隅で、シャロンは淫靡な姿を晒して石像に変わっている少女達を見つけた。
「おかしいな……。魔獣は一匹の筈だ。なのに何故だ?入り口の住人は逃げる姿で石に変わり、先程の少女はあんな姿で石に変わり、
此処で石に変えられている少女達は、まるで男に犯されている様な姿で石像に変えられてるんだ?」
 男性の多くは村の彼方此方で、手に鍬や斧を持った姿で石像に変わっていた。
おそらく魔獣を退治しようと幾つかのグループに分かれて魔獣に立ち向かい、何らかの方法で石像に変えられた事は疑い様が無かった。
 それだけに、此処で淫靡な石像に変わった少女達の姿はシャロンに理解できなかった。
また、少女達の膣穴が奥まで覗ける程に大きく開かれているにも拘らず、そこに何も存在しない事にも疑問を感じていた。
「シャ…シャロン!!あ…あれ……。んっ、うぶっっ!!」
「どうしたアデリーヌ?変な声を出し……、な……なにっ!!」
 アデリーヌが見たのは、二人の背後に伸びた何本もの巨大な管だった。
アデリーヌはそれをシャロンに教えようと声を出した瞬間、排出された大量のゼリー状の何かに全身を絡め取られ、口を塞がれてしまった。
 そのゼリーは意思を持ち、スライムの様に二人の全身を包んで、鎧やローブの隙間から、容赦なく胎内へと侵入した。
『イタイッ!!そんな……、こんなのがはじめてなんて……。あ…れ…、痛くなくなって……。きもち…い…い……』
 神にその身を捧げるプリーストのアデリーヌは男性経験が無く、この不定形な異形のものに処女を奪われ、膣穴の奥深くまで身慈悲に蹂躙されていた。
そしてスライムの表面から分泌されるヌメリのある体液により、全身を性感帯の塊に変えられ、齎される快楽によって、やがて心までも奪われた。
アデリーヌは生まれて初めての快楽に酔いしれて、甘い刺激で心を蕩けさせ、やがて自らの意思で齎される快楽の世界に堕ちていった。
「こいつ!!どこか核がある筈だ!!何処だ…何処な…んっ!!」
 シャロンの剣には魔力が篭っており、その剣でスライムを斬れば僅かにスライムの身体を焼き、消滅させる事が出来たが、
次々とスライムが排出される管まで剣が届く筈も無く、やがてその身体をスライムに包まれ、男性経験の少ない身体をスライムに蹂躙された。
『何処に入って…。そう…か…、さっきの少女はこいつに…』
 鎧の隙間から侵入したスライムはシャロンの膣穴を、先程まで見ていた少女達の様に、奥まで覗ける程目一杯に広げ、
その体から染み出す体液により、屈強な戦士だったシャロンの精神を犯し、全身を性感帯の塊に変え、這い上がる事の出来ない快楽の沼へと引き摺りこんだ。
『きもちいいスライムが…奥でグニグニって…、ふわぁぁぁっ…、お腹一杯に入っちゃらめぇっ……!!』
『せめて……ステラに……この事……を…。奥に入って……、くぅぅっぅぅっ!!だめだっ!!これいじょう…たえ…ら…れ…。あああぁぁっ!!』
 全身を性感帯に変えられたシャロン達は、そのビンカンな体を余す所なく犯され、この世の物とは思えぬ快楽による絶頂の中、灰色の石像に変わり果てた。
 こうして、村の片隅に、秘穴を奥まで見える程目一杯拡げられ、子宮まで犯された為に、ぽっこりとお腹を膨らませた淫靡な姿の石像が二体増えた。
石像に変わったアデリーヌの顔に以前の清楚な面影は無く、シャロンの顔にも冒険者であった時の勇壮な面影は何処にも無かった。

「いました!!アレが魔獣ですわ!!」
「了解、みんなに知らせるよ」
「足止めは任せて!!」
 アリエスとヴァネッサとステラの三人は殆ど同時に、村の片隅で管を伸ばす魔獣の姿を捉えた。
アリエスは笛を鳴らしてシャロン達に魔獣の存在を知らせ、ヴァネッサは背負っていた弓を構えて、魔獣の体に無数の矢を放った。
 ステラは仕舞っていた宝石細工を確認し、いつでも使えるように呪文を唱え、魔獣から距離を取りながらシャロン達が駆けつけるのを待った。
その間にもアリエスとヴァネッサは、息のあったコンビネーションで魔獣の体に無数の矢を撃ち込み、けっして少なくは無いダメージを魔獣に与えていた。
「遅いわねシャロン…。私達だけで倒し……!!ア…アリエス。あれ…」
 軽やかなステップで横移動するヴァネッサが、村の片隅で淫靡な石像に変わったシャロンとアデリーヌの姿を捉えた。
「シャ…シャロン!!それにアデリーヌも…。よくも二人を!!」
 怒りに燃えたアリエスとヴァネッサは持てるだけ全ての矢を番え、魔獣の体がまるでハリネズミの様になるまで矢を撃ち込んだ。
更に其処にステラの放った炎を纏った魔弾が炸裂し、魔獣は真っ赤な炎に包まれて火柱に変わり、焼け焦げる臭いを漂わせて激しく燃え上がった。
「シャロン…アデリーヌ…」
「仇は討ったわ……。あ…危ないッ!!ステラ!!」
 激しい炎に包まれてなおウミウシ型の魔獣は息絶えてはおらず、それどころか胴体にある巨大な赤い目でアリエス達を狙っていた。
それに気が付いたヴァネッサはステラを赤い光の射線上から突き飛ばし、間一髪でステラがその赤い光に包まれるのを防いだ。
「まにあっ…、あああぁぁん!!」
「ヴァネッサ!!あああっ!!」
 赤い光に包まれたアリエスとヴァネッサは、小刻みに身体を震わせて、その場から動かなかったが、やがて同じ顔をしたお互いの顔をみつめ、
まるで恋人同士のように熱い口付けをし、優しくお互いを愛撫し始めた。

 この魔獣の餌、エネルギーになる物は人の精気であり、ステラ達につけられた深い傷を治す為に、魔獣はより農度の高い精気を必要とした。
それを得る為に魔獣は、今までより強い催淫効果を持った赤い光をステラ達に放った。
突き飛ばされたステラは助かったが、光の効果でアリエスとヴァネッサは快楽の虜になり、まるで恋人同士のようにお互いの身体を激しく求めあった。
 二人はお互いの下腹部を覗き込む様に抱き合い、秘穴から溢れ出るねっとりとした銀蜜を啜りあい、淫核を口に含んで舌で転がし、細く美しい指を根元まで突っ込んだ。
アリエスとヴァネッサが快楽の世界に堕ちると、齎される快楽によりその体から精気が漏れ出し、精気を吸収した魔獣は、徐々に傷を癒し始めた。
「いけませんわ。あまり使いたくは無かったのですが、しかたがありません。この宝石細工の魔法で、魔獣を別の世界に飛ばしてさしあげますわ」
 ステラは魔獣に向って宝石細工を投げた。
宝石細工が魔獣の身体に触れた瞬間、ステラは鍵となる呪文を唱え、魔獣の身体を取り囲む幾重にも重なった複雑な魔法陣を生み出した。
魔方陣に捉えられた魔獣は身動きがとれず、徐々に大きくなる中心の穴に、その身体を飲み込まれようとしていた。
「これでもう、魔方陣は止まりませんわ。もし、これからわたくしをあの光で包んでも、無駄で………」
 魔獣は胴体にある大きな赤い目では無く、頭部に伸びた二本のナメクジの様な目から白い光を放ち、その光でステラの身体を包み込んだ。
白い光に包まれたステラの身体はパキパキという乾いた音を立てて、瞬く間に灰色の硬い石へと変化した。
 僅か一瞬の後、物静かな魔法使いは、魔法陣を発動させた姿のままで、永遠に物言わぬ灰色の石像へと変わり果てた。
ステラが石像に変わった瞬間、魔獣の身体は魔方陣に飲み込まれ、別の世界へと弾き飛ばされた。
魔獣が飛ばされ何もなくなった空間を、ステラは物言えぬ石像になったまま、石の瞳で永遠にみつめていた。
「いいっ…。そこ…すごいっ…。好きっ。大好きっ。アリエス一緒に…いこう……。あああぁっ!!」
「うん…。ヴァネッサ…、わたしも愛してる…。イクッ!!いっちゃうっ!!あぁぁぁっ!!」
 魔獣が異世界に飛ばされた後、魔獣の赤い光で犯されていたアリエスとヴァネッサは絶頂に達し、抱き合った姿のままで石像へと変わった。
こうしてシャロン達は魔獣をこの世界から追い出す事には成功したが、その身を永遠に石に変えられ、二度と元に戻る事は無かった。

 一月後、魔法陣の発動を確認して村を訪れた冒険者ギルドと領主の一団は村の惨状と、石像に変わったシャロン達を目の当りにした。
そしてそれから数ヶ月の長きに渡って村の周辺を徹底的に調査し、ようやく魔獣が存在しない事を確認した。
 石像に変わったシャロン達は英雄と称して領主が城に引き上げ、城内の一室に飾り付けられて、領主のコレクションにされた。
村にあった数多くの少女達の石像も、同じく領主が引き上げ手コレクションに加えたが、その代償として冒険者ギルドに莫大な枚数の金貨が支払われた。

 こうして領主の些細な諍いから始まった魔獣騒動は幕を閉じ、その真相はけっして民衆に伝えられる事は無かった。


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